謎の少女と街
林の中にある街道を休憩を挟んで走ること3時間、ゴブリンの集団やウッドフールに襲われたが、前の馬車に乗っているクズハとテトラの手によって一瞬でミンチになる。
そのため私達後ろ側は結構呑気にトランプで遊んでいた。
「うーん、どっちだろう……」
「ふふふ、右の方がいいかもしれませんよ」
「じゃあ右」
「あっ」
「よし!揃った!上がり」
「お見事ですマスター」
「流石ねアンナ」
今はババ抜きをしており、6人づつで人を入れ替えながら遊んでいた。
また入れ替わってトランプを配り直していると、クズハが現れる。
「主………なにを呑気に遊んでいるのですか」
「うっ、ごめんなさい」
「まぁいいです、それより前方500m先で人が1人倒れているようです」
「え!すぐに助けに行かなきゃ」
私は立ち上がろうとするが、シルヴィアとクズハに止められる。
「待って、こんな林の中で1人倒れているなんて、罠かもしれないわ」
「そうです、知能ある魔物かもしれません。その可能性を考えて、今はテトラが全方位を見渡している途中ですので、すこしお待ちください」
「………嫌だ、それが人である可能性が少なくてもあるのなら救える命は早く救う、罠なら罠で対処する」
クズハとシルヴィアの手を退け、「神速」を使い走り出す。少しすると倒れている人を見つけた。背の低い黒髪ロングの女性がうつ伏せで倒れていた。
すぐに近づき仰向けにして声をかける。
「大丈夫ですか」
「………………お」
「お?」
「…………お腹減った………」
「…………………え?」
この人は何を言ってるんだ?と困惑しながらもバックからおにぎりを5個出して渡した。
その少女はおにぎりを貰った途端にかぶりつき、ほんの数秒で食べ終わった。
「ふぅ………ありがとう、空腹過ぎて死にかけてた」
「………いえ、どういたしまして……」
「恩人さんのお名前は?私はアカネだよ」
「私はアンナです」
「ふぅーん、アンナ君か」
なんだろう、この少女には何故か分からないが、ですます口調で話している。初対面なら当然だが、何故だろう会うたびこのように話してしまいそうな感じがする。
私がそんな変な感じのことを考えていると、後ろからクズハとテトラが来る。
「お嬢様、お好きに動いても構いませんが、安全を保障してから動いて欲しいです」
「そうですよ、アンナの考えは素晴らしいので、やるなら私達に命令してください。それで彼女は?」
「おや?君たちもアンナ君のパーティかな?私はアカネだよ」
「はい、左様でございます」
「ふーん、君強いね……」
アカネが言った途端に全身の毛が立ち、私とクズハ、テトラが一瞬で武器を持ち身構えた。
「冗談だよ、命の恩人に何もする気は無いよ。逆に何か出来ることならしてあげたいくらい」
アカネは笑いながら立ち上がる。その時に気づいたが、両腰に2本の刀がぶら下がっていた。
「ありがとうね、それじゃあ私は旅を再開するよ。また会えたら何かしてあげる、またね」
アカネは手を振りながら街道を走って行った。
テトラとクズハは緊張が解けて、武器を収める。
「お嬢様、あの少女何者なのでしょうか」
「分からない………けど、悪い人ではなさそう」
「そうですね、戦闘狂かもしれませんが………今更ですが、アカネが向かった方向が私達が向かう方向と同じですね」
「そうだね……またすぐに会うかも………」
私はアカネが向かった先を見ながら、ぼんやりとしながら返事をしていた。
アカネと会ってから街道を馬車で走らせて3時間、林を抜けてあたりが少し暗くなりかけた頃、街道の先の方に光が見え、近づくにつれて大きくなりその光は街の光だと分かった。
「やっと見えてきた、あれが海洋の街、レベラルだね」
「………やっぱり違ったか」
「違った?」
「なんでも無いよ、メーラさん」
私達の目的の王都ではなかったが、まぁメーラさんの護衛をしたから仕方ない。それに、ここはここで元の世界に戻る為の情報など色々と調べれそうだ。
私は少しの期待をしながらレベラルの門に向かって行ったのだった。
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