草原での泊まり②
夜も更けて草原のにポツンと1つ建つ家は電気を消して暗くなっていた。
一階の一部分以外は。
テーブルの周りにはシルヴィア、クズハ、テトラ、ヘプタとスイゲツがテーブルの真ん中にいた。
明かりは机の上に1つ蝋燭を置いただけなので、うっすらと周りの人の顔が少し見える程度だ。
「で、なんでこんな時間にここで集まってるだ?」
集まってから10分は経ったのに誰一人喋らない中、集まる前からこの場にいたスイゲツが痺れを切らして言った。
「………今日のアンナ可愛かったな………って思ってて」
「………は?」
「拙も同じく」
「私もです」
「そうでしょ!やっぱり、私服のセンスあるわ」
「あれは良かったわ。けど、カチューシャとかも欲しかったわ」
「いや、カチューシャは不要ですね」
「私も要らないと思います。お嬢様は耳がありますので、カチューシャを付けると邪魔になると思います」
「しかも、付けたらおかしくなりそうなんですよね」
「………一理あるわね」
「で、さっきの質問なんだが、なんでここに集まったんだ?」
スイゲツは呆れた顔で全員の顔を見渡す。
「そうね、集まった理由は女子会よ」
「………は?」
スイゲツは訳も分からず聞き返し、考える前にクズハが話し始める。
「女子会よりは親睦会の方がいいのでは?」
「親睦会ならアリスって子も連れてこないといけないでしょ?まぁ今後来るかも知れないけど」
「で、女子会とは何を?」
「……………女子会はアンナに対する態度のことで話し合う場よ」
「………これは重要ですね」
「重要ですよ」
「拙はこの話し合いはするとは聞いてましたけど、名前が女子会って………」
「い、いいじゃない!多分女子しか集まらないと思うし」
「………なぁ、我違う所行ってもいい?」
「ダメ」
「駄目です」
「え?何で!?」
スイゲツは訳も分からず聞き返すと、シルヴィアとクズハがこちらを見る。
「だってスイゲツがアンナと付き合いが長いって聞いてるから、1番危険だと思う」
「拙も同じ考えです」
「…………我水妖精ぞ?」
「関係ないわよ、このメンバー見たら分かるでしょ?」
ここに居るのは、人間、ハイエルフ、オートマタ二体だ。
「仕方ないか……」
スイゲツは諦めてこの場にいることにした。どうせ無理矢理抜けようとしても捕まるだろうと思ったからだ。
「さて、始めるわよ。まずは全員の今の立場からね」
シルヴィアのこの話から始まり、夜空が少し赤くなってきた頃まで、全員論争し合っていた。後半の殆どがアンナがいかに可愛いかの話だったが。
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窓からの日光の光で目が覚め、目を開けると目の前にアリスちゃんの可愛い寝顔があった。
一部屋に2つベッドがあるのだが、アリスちゃんが寝れないと言うので一緒に寝てあげたのだった。
寝かし終わったら元のベッドに行こうと思ってたのに寝ちゃってたか。
体を起こして手で伸びをする。
「ふぅ………さて、起こさないとアリスちゃん」
「すぅ………すぅ…………」
声を掛けるだけじゃ起きないか、朝食とかまだだろうし、先に準備して後で起こしにきてあげるか。
そう思いベッドから降りて、部屋から出て階段を降りていく途中で、鼻に何かが焼けるいい匂いがした。
キッチンまで行き中を覗くと、テトラとヘプタが朝食を作っていた。
「あ、お嬢様おはようございます」
「おはようです」
2人とも私が覗いたのに気づいてすぐにお辞儀をする。
「おはよう、朝早いね」
「私達はオートマタなので睡眠の必要はないんですよ」
「そっか、オートマタだったね」
すっかり忘れていた。人間味がありすぎて忘れてしまう。
「けど、1時間は横になりたいですね」
「体は肉ですからね」
「働き過ぎないようにね、疲れたらすぐ休むこと」
「分かりました」
「了解です」
「分かったらいいよ、それで朝食はなに?」
「今日はエッグベネディクトです」
「おお!美味しそうだね」
キッチンを見ると、パンの上にベーコンを乗せ、その上に半熟卵がトロリと掛かっていてとても美味しそうだった。
「もうすぐ出来ますので、席で少し待っていてください」
「分かったけど、アリスちゃん達を呼んでくるよ」
「私が行くので、お嬢様はテーブルに行っていいですよ」
ヘプタがエプロンをしまい、早足でキッチンから出て行った。
私も先にフォークなどの準備をしようと思いテーブルに向かったら、全て準備し終わっており、昨日座った席に着く。
少し待つと玄関から少し汗をかいたインナー姿のガウェインが入ってきた。
「おや、マスターおはようございます」
「おはよう、日課をやってたのか」
「こっちに来てからも毎日やってますよ」
「何度か見たけどね。朝食は今から?」
「シャワーを浴びてから食べようかと」
「もう出来てるから早く浴びて来なよ」
「そうですね、早く来ないとマスターに食べられてしまうかも」
「私はそんなに大食いじゃない」
「はっははは、冗談ですよ」
ガウェインは少し早歩きをしながらお風呂場に向かって行った。
ガウェインが行ったと同時に、階段からアリスちゃんが降りて来た。
「アリスちゃん、おはよう」
「…………おはよう」
まだ寝起きで少し寝ぼけているのか、席に座ってもぼーっとしている。
そんな可愛らしい顔を見てると、階段からヘプタがシルヴィアとクズハを担いで降りて来た。
「ど、どうしたの?」
「起きそうになかったので、持って来たんですよ」
ヘプタはシルヴィアとクズハを前の席に置くとキッチンへ戻って行き、2人はテーブルに倒れこんだ。
顔を見ると青ざめているような感じだ。
「だ、大丈夫?」
「…………」
「せ、拙は大丈夫じゃないです」
かろうじて喋れたクズハが起き上がる。
「あのメイド、起こし方が雑過ぎます…………肩を持って上下左右に………振り回すのです………寝起きであれは………ダメです………」
「ざ、雑いね………」
あれ?それならアリスちゃんもこんな感じになってる筈じゃあ?
そう思いアリスちゃんを見るが、少しウトウトしているだけだ。何故だ?
私が色々考えている間に、ガウェインがお風呂場から戻り、ヘプタとテトラが朝食を持って来た。
席に着いたのを見て、私は両手を合わせる。
「それじゃあ、いただきます」
「「いただきます」」
クズハとガウェインが私に続いて言う。シルヴィアも言ってそうだが聞き取れなかった。
その光景を見ていた、テトラとヘプタ、アリスちゃんは手にフォークを持っていたのを止めた。
「お嬢様、それの両手を合わせて言うのはなんでしょうか?」
「これはご飯を食べる前に言う礼儀作法かな、みんな独自のがあるならそれでいいよ」
「いえ、郷に入っては郷に従えとも言いますし、お嬢様がやっているのを私達メイドがしないのもおかしいのでさせていただきます」
「そうですよ、マスターの所ではなかったですが」
「………私もやる」
3人とも両手を合わせて「いただきます」を言い食べ始める。
「この「いただきます」にはどのような意味があるのでしょうか?」
「うーん、「いただきます」は私の国の昔からある伝統的な挨拶で意味は色々あると思うけど、私は食べる前に食材になった動植物にありがとうございますって感謝することだと思うよ……………自身で言っておいてなんだが恥ずかしくなって来ちゃった」
「私は素晴らしい考えだと思います」
テトラはもう一度目を閉じて合掌し、朝食を食べ始めた。
各自朝食を食べ終わった後、旅の準備のために部屋に戻り、私は服を着替えてアイテムボックスの中を整理するため、リストを出していた。
この世界に来てからの分は売れそうなのは売りに出すとして………こっちだよなぁ。
私はASOで集めた素材を見る。
雑魚の素材は売れそうだけど、レア度高いのは無理だよね。「蒼龍の酔余酒」はギリギリ売れるけど、「神鳥ガルーダの羽」とか絶対売れないしなぁ………あとこれもか。
私はリストの1つを選択してアイテムボックス出したのは、少し薄汚れた金色の笛であった。
「その笛はなに?」
後ろで見ていたアリスちゃんが増えを見て顔を傾げる。
「これは…………吹かない方がいい笛かな」
「なんで?」
「ヤバイのが出てくるからだよ、まぁ今後吹くかもしれないけど」
「へぇー」
この笛らどうすることも出来ないので、すぐにアイテムボックスになおす。
「さて、アリスちゃんは準備出来た?」
「服着替えたよ」
アリスちゃんの服装は昨日ヘプタに作ってもらったゴスロリ衣装だ。私もだけど。
「じゃあ、下に降りて行こうか」
アリスちゃんと下に降りて馬車の準備をして待ち、みんな揃うと家を小さくしてアイテムボックスに入れて、また旅を再開したのだった。
令和初日、元号が変わる瞬間に立ち会えたのは初めてで、なんとも言えない気持ちになりました。
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