草原での泊まり①
草原を爆走し続けて30分。
私達はある重大は事に気付き、馬車を止めている。
「王都って方向どっちだろう……」
ゲートを出てからここまで、ずっと草原が広がっており方向感覚が分からなくなっていて、みんなで周囲を見渡しているとテトラがスコープで石レンガで出来た街道を発見し、今は街道まで来てどちらに進むかで悩んでいる。
「王都は方角どっちだろう?」
「確か………北では?」
「北でしたらこちらの方向ですね」
クズハは方角を覚えており、テトラが方向を指差してくれた。
あっちか、と思っているとシルヴィアが首を横に降る。
「クズハが言ってるのは、アルーらからの方角で今いる所からじゃないでしょ」
「あ、そっか………けど街道が続いてる道、大体南北方向だよね」
太陽を見て方角が分かるため、街道は南北方向に続いているのは分かった。
「んー…………そこまで急ぐ旅でもないし、北に行って王都じゃなくて、違う街ならそこで少し滞在して王都に向かえばいいかな。みんなはそれでいい?」
「私はアンナが行く所なら何処でも付いて行くわよ」
「拙もです」
「愚問ですよマスター」
次々と全員了承していき、北に行く事に決まった。が、気づくと空が夕焼け色になりつつあった。
「って、話してる間にもう日が沈むから、ここで泊まろうか。夜は危険だからね」
「賛成ですね、そろそろお腹も減ってくる頃でしょう」
「ガウェインはもうお腹空いてるんでしょ」
「はっははは、マスターは分かってますね」
「感だけどね。それじゃあみんなちょっと離れてて!」
みんなを私から少し離して私はアイテムボックスを操作し、手の平サイズのミニチュアハウスを取り出す。
それを目の間に起き、離れたみんなの所に戻ると、ミニチュアハウスが大きくなっていき、二階建ての洋風の家が建った。
もともとASOで一緒にいた人以外は、絶句していたり、目を輝かせていた。
「お姉ちゃん凄いね!」
「凄いでしょ、この家は16人まで入れたはずだからみんな入れるよ。クサントスとペーダソスも入れるからね」
私はアリスちゃんの手を引き家のドアノブを開け中に入る。
入ってすぐの家の一階は、リビングになっており、円形のテーブル、ソファ、暖炉などがあり、照明は上に吊るしてある電球のようなも魔法灯が光っている。
「広い!」
「16人は過ごせる場所だからね、かなり大きいよ」
アリスちゃんが顔をキョロキョロさせている間に、みんな家の中に入った。
「玄関から右に行くとキッチン、左はトイレとお風呂、階段を上がると個人部屋、中央は見ての通りのリビングで、奥はペット、魔物用の部屋だよ。まずは晩御飯から作って食べようか」
言い終わり私はキッチンへ向かおうとすると後ろから肩を掴まれる。
ビックリして後ろを振り返ると、メイド服の2人、テトラとヘプタだった。
「お嬢様、料理は私達で作りますので、リビングにてお待ちください」
「そうですよ、私達メイドの仕事を、ましてやお嬢様が取るのはダメですよ」
「……たぶん使い方分からない物とかあると思うよ?」
キッチンは日本の現代風なので蛇口や冷蔵庫などはイレイナの家で見たので知っていると思うが、電子レンジや洗浄機などは知らないはずだし、コンロはあったが仕組みが違うので分からないと思う。
「ぬ………アンナ、拙がこの2人にキッチンの事を説明しますのでリビングでお待ちになってください。ほら、2人とも行きますよ」
私が説明する前に、クズハが連れて行ってしまった。
私はぽかーんとしていると、この家に慣れているガウェインはアイテムバックに装備を直して、食器を並べていた。
「アリスちゃんとシルヴィアも、ガウェインがやってる食器を一緒に並べて置いて。私はクサントス達を連れて行くから」
「分かったわ」
「はーい」
私は玄関にいたクサントスとペーダソス、クロワをリビングの奥の馬小屋に連れて行く。
『ここに来るのも久しぶりだな』
「最近はずっと町にいたしね」
『主人はやはり凄いですね…』
「謙遜だよ、他にも持ってる人はいたしね、よし出来た」
私は藁と野菜を置いておく。
「それじゃあ、何かあったら念話で連絡してね」
『『了解』』
私がリビングに戻ってくると、テーブルの上には食器が人数分並んであったが、1人もリビングには居なかった。
キッチンにでも見に行ってるのかな?
私はキッチンに向かうと入り口でクズハとシルヴィア、アリス、ガウェインがキッチンを覗いていた。
私も覗くと、キッチンで大きな中華鍋を豪快に振るっているヘプタと、その中華鍋にまな板で食材を高速で切りながら入れて行くテトラの姿は圧巻の一言だった。
10分ほど待つと大皿に料理を乗せ、リビングで食事を始めることにしたのだが、目の前で席の取り合いが行われている。
「お嬢様の横は料理などをお渡しする席ですので、横に座るのは私テトラとヘプタです」
「そんなこと私でも出来るわよ!それに私ならアンナの適量も分かるわよ」
「それなら拙の方が知ってますよ」
シルヴィア、クズハ、テトラ、ヘプタが言い争っている間に、アリスちゃんが私の右側に座り、左側にはガウェインが、私の前のテーブルの上にはスイゲツが入ったビンを自身で置き食事を始めた。
「お姉ちゃん、この料理美味しいね」
「美味しいね、野菜の炒め物だけど何を使ってるんだろ」
「この魚料理も美味しいですよ」
「アクアパッツァかな?」
「魚よりこっちのサラダの方が美味しいぞ」
「それはスイゲツが魚嫌いなだけでしょ。あ、アリスちゃん口元についてるよ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
シルヴィア達は私達が食べ始めたのに気づくのに数分たち、気づくとんそそくさに残りの席に座りガウェインの方を睨みながら食べ始めた。だが、ガウェインはどこ吹く風のように食べるのだった。
私はふと気になった事を聞く。
「みんなはどの部屋で寝たい?大体は造りは同じだけど」
聞くのと同時に一斉に食事の音が止まり、全員こちらを見てくる。
「アンナは何処の部屋で寝たいの?」
「私は特にないかな」
「じゃあ、私と一緒に寝ましょ」
シルヴィアが言った途端にメイド2人とクズハが立ち上がる。
「シルヴィアさん?何を馬鹿なことを言ってるんですか?」
「え?別に1人1部屋とは言ってなかったからね」
「拙もどうかとは思いますよ、ここは平等にするべく1人1部屋にしましょう」
「………仕方ないわね」
「それで、どの部屋がいいの?」
私は催促するが誰も返答がない。
どうしたんだ?と思っていると、ガウェインがため息をつき話し始める。
「マスターはどの部屋にするかでみんな返答が変わるでしょうね。私は階段近くの右部屋でお願いします」
「そういうことね、私は階段から右3つ目で。あと、今日はアリスちゃんと寝るから」
「「「「…………え?」」」」
「一緒に寝てくれるの?」
「まだアリスちゃんは慣れてないと思うしね」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「スイゲツはどうする?」
「我はここでいいぞ、警戒しやすいからな」
「ここは大丈夫だと思うけど?」
「万が一だ。我は別に睡眠は必要とせんからな」
「毎回ありがとね」
「別にいい、それさっさと料理を食べなければ冷えるぞ」
「食べてる途中だった、てっシルヴィア達はどの部屋がいいの?」
私がアリスちゃんと寝ると言ったあたりから固まっていたシルヴィア達が一斉に言う。
「右奥がいいです!」
「階段から右2つ目でお願いします」
「私は左3つ目」
「拙は階段から左3つ目で」
「ヘプタが右4つ目で、テトラが右2つ目、シルヴィアとクズハが私の前の部屋ね。じゃあ、料理食べ終わっちゃおうか」
私は料理を食べ始め、テトラとヘプタはウキウキで、シルヴィアとクズハはアイコンタクトをして料理を食べ始めた。
晩御飯を食べ終え、先程選んだ部屋に行って、お風呂の準備をする。
順番は男性が最後になる以外は部屋順で、階段から見て右から時計回りで行く。
なので、テトラ、私かアリスちゃん、ヘプタ、シルヴィアかクズハ、ガウェインとなる。
テトラが入っている間に、私は部屋に行ってアイテムボックスから服を色々出して、アリスちゃんに合う服を選んでいた。
ASOでの服は装着すると服の大きさを調整してくれるのだが、ここではそう上手くはいかず、私の大きさの服でもかなりぶかぶかだ。
私が悩んでいるとノックの音が聞こえた。ドアを開けると、ヘプタがメイド姿のままだが少し顔が赤くなっており、湯上りだなぁと思わせた。
「お嬢様、お風呂空きましたよ」
「分かった、ありがとう。………ヘプタは服とか作れる?」
「はい、ある程度は作れますよ」
「ヘプタはこの後やることある?」
「いえ、ないですね」
「それは良かった、アリスちゃんに合う服がないから、街に着くまで用の服を作ってもらおうと思って」
「了解です、お嬢様がお風呂に入っている間に作って起きますので、採寸させてくださいね」
何処から出したのか、ヘプタの右手にはメジャーを持っていて、一瞬で採寸し終わった。
「出来たらお風呂場に持っていきますので、今から作ってきます」
これでアリスちゃんの服のことは片付いたな。
「それじゃあ、お風呂入りに行こうか」
「う、うん」
服、下着などを持ち、部屋を出ようとするが、アリスちゃんがずっともじもじしている。まさか………。
「アリスちゃん………お風呂苦手?」
アリスちゃんの動きが止まり、私から顔をそらす。
「はぁ、髪とかお姉ちゃんが洗ってあげるから一緒に行こうね」
アリスちゃんの手を引っ張り、お風呂場に向かた。
お風呂に入り、アリスちゃんの髪を洗って、何事もなくお風呂から出た。
アリスちゃんの髪を洗っていたら、シルヴィアが毎回私の髪を洗ってくれる理由が分かった気がする。
サラサラした髪を触るのは気持ちいい、自身のはそうとは思わないが、他人のを触るのは何故か気持ちいい。
お風呂を上がり、脱衣所に行くとヘプタが服を持って待っていた。
「お嬢さ………まずは服を着てくださいね」
「今お風呂から出たところだから仕方ないね、早く服着るけど」
私が服を着ている間、ヘプタが作った服をアリスちゃんに着せていて、私が振り返りアリスちゃんの方を見ると、フリフリが付いた黒のゴスロリ衣装を着ていた。
めっちゃかわいい。
「思った通り似合ってますね」
「…………めっちゃかわいい」
「あ、ありがとうござぃぁぅ」
恥ずかしくなって声小さくなって、顔を隠すのかわいい。
私がアリスちゃんを見ている横でヘプタがゴソゴソと何かしている。
「お嬢様の分もありますよ」
「………………え?」
あまり見たくないが横を見ると、アリスちゃんが着ている服の白色版を持っていた。
「お嬢様が急に作れと言ってきたので大変でしたよ」
「そ、そうだったね。ありがとう、ね」
「いえいえ、お嬢様が喜んでくださってるので満足ですよ………お礼はこの服を着てくださるだけで結構ですよ」
「………分かりました」
渋々服を脱ぎ、ヘプタが作った服を着る。ASOの中の世界にもゴスロリ衣装はあったが、私は初めて着た。
着替え終え、鏡の中の私を見てもの凄く恥ずかしくなり、両手で顔を隠す。
「流石お嬢様、似合ってますよ」
「お姉ちゃん可愛い!」
「あ、ありがとうね、じ、じゃあ脱ぐよ」
「1日だけその服装でいてくださいよ」
「え?嫌だよ」
「私はこの服装のままなのに、お姉ちゃんは着替えるの?」
「そうですよ、お嬢様もこの服装のままでいいでしょ?」
「くっ…………分かったよ……」
私はアリスちゃんとその服装のまま脱衣所から出て、次にお風呂に入るシルヴィアとクズハを呼びに行くと、2人に抱きつかれたのだった。
今日が平成最後の日ですね。
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