妖精の森脱出
〜イレイナの家の前〜
私は今、全く身動きが取れない状態だ。
何故なら、メイド2人に挟まれているからだ。
「アンナお嬢様、どこかお怪我をされているのでは?」
「そうですよ!アンナお嬢様は、見た目か弱そうなんだから」
私は帰って早々、テトラとヘプタに見つかり両側から抱き着いてきて今の状況だ。
アリスちゃんとスイゲツ、クロワはもうどっかに行ってしまった。
それより、胸と胸で挟まれるのはとても良いのだが、ヤバイ窒息しそう!help me!
声が出せないと思っていると、2人の頭に拳骨が落ちる。
「こら!アンナ様が窒息しそうじゃないですか!貴方達はただ単にセクハラしたいだけでしょう!アンナ様に付いていくには、まずは自制心を鍛えなければいけませんね」
モノさんは伸びた2人の襟を掴んで家の方へ向かって行った。
ようやく解放された私が立ち上がっていると、私より少し背の高い銀髪ショートヘアのメイドさんが近寄ってきて、深々とお辞儀する。
「アンナ様、初めまして私ペンタと申します。マスターに代わって言伝に参りました。挨拶は不要ですので、話を進めさせていただきます。
はじめに作戦に協力していただきありがとうございます。作戦が成功したのもアンナ様の協力あってこそです、ありがとうございます。
次はテトラとヘプタのメイド2人についてですが、メイド長のモノがただ今、再教育中なので少しお待ちしましたら此方にお持ちします。
最後にこの森からの出方ですが、これをお持ちください」
ハイスピードでの話で、ぽかーんといる私にペンタさんが手で握れるほどの大きさの、深い緑色の結晶を渡された。
「これは?」
「これは妖精の森の出る為のキーになります。この結晶に魔力を少し込め、その場に投げればゲートが開きます。一度っきりなのでご注意ください」
「分かりました」
私は渡された結晶を上に上げて見ていると、ペンタさんが顔を近づけ耳元まで来る。
「マスターの言伝とは関係ありませんが、他のお仲間の人達にも伝えておいてくださいね、特に魔物などには」
耳元で囁くと、笑みを浮かべて、お辞儀をする。
「それでは、またの機会を楽しみに待っています。家に入らなかった他の人達もマスターはアンナ様のご友人なら喜んで招待するでしょう」
言い終わると、くるりと回って家の方へ戻っていった。
………やっぱりバレてたか…
「はぁ、あんまり詮索しない方がやっぱりいいね」
私は渡された結晶をポケットに入れてアリスちゃん達が行った方へ歩いて行った。
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アリスちゃん達と合流し、アリスちゃんの今後について話し合っていると、モノさんがテトラとヘプタを連れて戻って来た。
2人とも初めて会った時のしっかりした感じだ。
「アンナ様、お待ちいただいてありがとうございます」
「大丈夫ですよ、2人とも捨てて行くのはイレイナとの約束を破りますしね」
「こんな者達ですが、これからよろしくお願いします。」
「分かってますよ、仲間は絶対に守ります」
「………これでも姉妹なので、よろしくお願いします」
モノさんは深くお辞儀をし、テトラとペンタの方に向く。
「さて貴方はこれからアンナ様の元で奉仕するのですが、今日教えた事を絶対に忘れてはいけません………分かりましたか」
「「分かっております」」
「よろしい………」
モノさんは2人を交互に見て、納得したのかうなづくと2人を両手で抱きしめる。
「モ、モノお姉さん!?」
「モノ姉!?」
「貴方は大切な姉妹です………マスターの家族の一員です、顔が見たくなったらいつでも待ってます、頑張ってきなさい」
2人は目に涙を浮かべ、モノさんに抱きついて服を濡らすのだった。
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数分すると泣き終わった2人から解放されたモノさんがお辞儀をして去ってから、アリスちゃん、クロワ、スイゲツ、テトラ、ペンタで森の中を進んで行く。
「いや〜鎧も出ないし、妖精も襲ってこないのは静かで楽だね」
「少し前までそこらじゅう戦闘が起きてたなんて思わんな」
私とスイゲツが話しながら歩いて行くと、後ろに居たテトラが私を呼ぶ。
「アンナお嬢様!どこに向かっているのですか?キーは持っているのでは?」
「あ………言ってなかったか、もうちょっとしたら分かるよ」
歩く事5分、私達はアリスちゃんと初めて会った少し開けた場所に出てくる。
私はみんなから離れて木の近くまで行く。
「みんな、お待たせ出て来ていいよ」
私が誰も居ない空間に声をかけると、何もなかった場所から突然馬車が現れる。
その光景にスイゲツ以外のみんなが驚く中、馬車から翡翠色の髪をたなびかせながら走って来た少女に抱き付かれる。
「アンナ………」
「……シルヴィア……苦しい…もうちょっと離して」
「いやよ!さっきは抱き着くのもダメだって言われたから我慢したのよ!」
「……ごめんね」
私も手を回そうとすると、背後から抱き付かれる感覚がする。
見上げてみるとクズハだった。
「主、拙も我慢してました…」
「ご、ごめんね」
私は2人を交互に宥めるのだった。
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シルヴィアとクズハにサンドイッチ状態になってる間、ガウェインが馬車から降りてアリスちゃん達に説明してくれたらしい。
そして今は自己紹介が終わり、馬車内でみんなそれぞれ話し合っている。
『いやーまさかマスターが「召喚」でみんなを呼び出していたなんて』
「我が召喚出来たなら出来るはずだ、という事で召喚したという事だ」
スイゲツは私召喚の事で質問したので、元から知っていのだ。
召喚したのは敵との戦闘前、目的地まで移動中に召喚したのだ。そのため、少し遅れてしまったのは仕方ない。その時より前にスイゲツに質問していたので、スイゲツだけ知っていたので、クロワは知っていなくて当然だ。
「シルヴィア達がいる理由はそういう事、それじゃあこの森から出ようか」
「マスター、どうやって出るのですか?焼き払うならお任せあれ」
「ガウェインが言ったら冗談でも出来そうだからやめてね。この結晶に魔力を込めれば、ゲートが出来るらしいよ」
私は馬車の先頭に行き、魔力を込めた結晶を投げ、ペーダソスとクサントスの目の前に落ちる直前に結晶から緑色の円が広がり、円の向こうは草原が広がっていた。
「よし、繋がったから出発進行!」
アンナが手綱を握り、ペーダソスとクサントスの魔力が馬車に籠る。
私が手綱をとった事に気づいたシルヴィア達は止めようとするがもう遅かった。
初速でも普通の馬車より速く、シルヴィア達が行くよりも、ゲートから草原に飛び出し加速していき、誰も止めれず静かだった草原の中を爆走するのだった。
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〜妖精の森、イレイナの部屋〜
周りに本を浮かせながら椅子に座り本を読んでいるイレイナの元に、人型状態のシラバスがティーセットを持って入ってくる。
「主が出れないのは仕方ないですが、手伝って貰ったアンナ殿には悪い気がしますね」
シラバスはイレイナの横でお茶を入れ、そのお茶をイレイナは一口飲む。
「アンナには、悪かった、よね……」
「まぁ、急遽あの方からアンナに手伝わせろと連絡来ましたからね」
「ほんと、あいつ、前まで音沙汰なし、だったのに、しかも、アンナのこと、知ってるなんて……」
「案外アンナ様と知り合いなのかも……」
「もう少しで、あいつに呼び出されるはず、だからその場で、聞いてやる」
イレイナはお茶を一気に飲み干すと、怒りを納めるため本を読みふけるのだった。
明日は元号が変わる日ですね。
私は平成最後の日は記憶に残ることをしました。
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