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ホームシック


「夜だけど今からやるの?」


「はい、早くにカタをつけたいので」


今、私達は話し合いが終わり、家から出て小屋の前でメイドさん達が準備をしているのを待っている。

目の前では沢山のメイドさん達が小屋とこの広場を行き来している。

この森は昼より夜はかなり寒く、今はアイテムボックスから出したコートを着ている。


「はぁーー夜は寒いね」


「アリスちゃんはまだ寒いか、ちょっと待ってて」


マフラー、手袋、耳当て、懐炉、湯たんぽ、etc……


「お、お姉ちゃん、そんなに要らないよ」


「ダメだよ、小さい頃は風邪を引きやすいんだからちゃんとしないとね」


「い、いいよ、私あったかいから」


「そう?」


前からアリスちゃんに抱きついてみる。

あったかい、子供は新陳代謝が高かったからあったかいのかな?それともコート着てるからかな?まぁあったかいならいいか。


「アンナお姉ちゃん離して」


アリスちゃんが腕の中で暴れて離そうとする。


「ごめん、ごめん、アリスちゃんはあったかかったからついね」


「もう!ちゃんと先に言ってね」


アリスちゃんは顔を赤くして、よれた服を整える。

服を整えるなんて小さくても女の子なんだなぁ…。


私がアリスちゃんと話していると後ろから声をかけられる。


「アンナお嬢様、準備は出来ていますか?」


「テトラか、こっちは出来てるよ」


私はコートのボタンを少し開けて中を見せる。中に着ているのは弥生鎧シリーズである。戦う時には着替えられないので、事前に強いのと戦う事を知っているから本気で行こうと思ったからだ。


「テトラは出来てるの………」


私は準備出来てるのかテトラを見てみると唖然となり声が止まる。

服装は森に隠れるような緑と黒の迷彩柄のような服でまだ分かるのだが、テトラが背負っている武器で驚いている。

私が驚いて固まってあるのを見てテトラはその武器を説明し始める。


「アンナお嬢様は初めて見ますか?これはですね、遠距離から攻撃できる武器なのですよ。

弓があるじゃないかと突っ込むかもしれませんが、これはそこらの弓とは比べ物になりません。

この小さな筒の先から……」


「いや知ってるよ、銃でしょ?」


テトラが背負っていたのは、元の世界、地球にあった遠距離武器である銃である。

テトラが持っていたのはその中の銃身が長くスコープがついているためスナイパーライフルだろう。


「……………はぁ、知っていたのですか……」


テトラは残念そうに肩をすくめる。

私に説明したかったのだろう。私に説明したいのなら、逆にこちらの世界のことを言ったらいいのだけどね、まぁそんな事教えないけど。

そう思っているとテトラは名前が少し違うと言う。


「これはですね、遠距離型魔撃銃ですよ」


「遠距離型魔撃銃………長いね、スナイパーライフルって言えばいいのに」


「スナイパーライフル………言いやすいですね」


「今後からそう言ったらいいよ、多分同じだと思うし。それよりそれはどうやって手に入れたの?」


私はさっきから気になっていた入手方法を聞く。

言った後に書いたらダメかと思ったがテトラは何も気にしないように言う。


「これはマスターが作ったのですよ」


「イレイナが作ったの?」


「はい、貰った時に聞いたのですが、確かある人からそう言う物があるとかで作ってみたら出来たとか」


「じゃあテトラしか持ってないの?」


「私の他にメイド仲間は種類は違いますが魔撃銃は持ってますよ」


「そうなんだ………」


この世界に着てから一度も見たことが無かったから、存在しないと思っていたけどあったからこの後からの戦い方も考え直す必要ある、って思ったけど杞憂に終わりそうだ。


けど誰がイレイナに教えたんだ?異世界人に教えてもらう事を1番に考えたが、イレイナは異世界人である私に色々話を聞いてきた。内容も殆どが日常のことばかりだから、この銃を教えてもらった人にその時に聞いたと思う。

しかし私に聞いたと言う事は、イレイナは異世界人自身に合ってなくて、イレイナの知り合いが異世界人に会ってその話を聞き、それをイレイナに作ってもらおうと話したのだろうな。


「その魔撃銃はいつ貰ったの?」


「この魔撃銃は20年は使っている私の相棒ですよ」


「そうなんだ………」


それならアリアさんは関係無いか。

じゃあそれより昔にもこっちにきている異世界人は居るんだな、しかも長い間使えるんだなぁ……………この?

私は気になって聞いてみる。


「この魔撃銃って………」


「はい、この魔撃銃は20年前、これの前に30年使っていた相棒もいたんですよ」


50年前………そんなに前に居たのか、じゃあ今は居るか分からないか、会って話してみたかったが。

私がテトラの背負っている魔撃銃を見ているとテトラが、腰から小さめの銃、ハンドガンを差し出す。


「アンナお嬢様はこちらで我慢してくださいね」


「いや、私は別に……」


「分かってます、私達メイドは主人の事を先に考えて主人にどれだけ役立てるかが仕事なのです。だからアンナお嬢様が何を考えているか分かってますとも」


「自信満々で言っているけど、私は全くそんな事は考えてないよ」


「そうですか?私は魔撃銃を知っていると分かった時からアンナお嬢様は少し懐かしさを感じてると思ったのですが」


「…………なんで分かったの」


私は純粋に驚く。

驚いている私をほっときテトラは手に銃を握らせる。


「やっぱりですね、使い方は知ってそうですので渡しておきますね。私はこれから狩に行ってくるのでここで待っていてください」


「え、ちょっと!?」


「アンナお嬢様、後ほど会いましょう」


テトラはそう言い私とは逆向きの森の中に走っていった。

ポカーンとしていた私は手にある銃を見る。

見た目は拳銃であり、回転式のリボルバーではなく、オートマチックの方である。


「久々に持つな」


私は片手で持ち、銃を色々な方法で構える。


「大きさはデザートイーグルくらいで、重さはベレッタぐらいか……」


私は昔に父さんに無理矢理持たされて訓練された事を思い出す。

あれは辛かったなぁ、持ち方違うかったら筋トレさせられるし、的を外しても筋トレさせられるし…………けどそのお陰でASOでは銃は使う気にならなかったけど、体は出来てたから強かったんだけどなぁ。


「アンナお姉ちゃん泣いてどうしたの?」


「あれ、泣いてる?」


私は目元から頰に伝って涙が落ちる。

ああ、またか、こんなのでも私はホームシックを感じるんだなぁ。

私が涙を拭こうとすると、アリスちゃんが私の方を持ってジャンプして私の頬の涙を舐める。


「あ、アリスちゃん!?」


「どうしたの?」


「どうしたのじゃないよ!なんで舐めたの!?」


「………人の涙は舐めるものじゃないの?」


アリスちゃんは首を傾げて言う。

誰だ、こんな事アリスちゃんに教えたのは!可愛いアリスちゃんにあんな距離まで近づかせるのはダメだよ!男ならアリスちゃんを攫っちゃうかも!

私は赤面になりながらも注意する。


「アリスちゃん、今後は私以外に絶対しちゃダメだよ」


「…………分かった」


「よろしい」


これで一安心だ。

そう思っているとアリスちゃんが近づいてきて手を横に広げて上下に動かし私に屈むように言う。


「何?」


アリスちゃんは私の耳元に近づいて小声で言う。


「アンナお姉ちゃんは美味しいね」


「ふぇ!?」


アリスちゃんはそう言い離れる。


「え、どう言う…」


「アンナ様、ご準備は出来ましたか?」


タイミング悪く、トリアさん後ろから声をかけて来る。


「あ、トリアさん出来てますよ、てかそれより………あれ?」


トリアさんに返答してすぐにアリスちゃんに振り向くが忽然と消えていた。


「どうかしました?」


「あれ?アリスちゃんは……」


「?アンナ様お一人では?」


「まさか、私はずっとアリスちゃんのと話してたよ?」


「そうですか?私はお一人で喋っていると思ってましたが」


「え?」


あれ?アリスちゃんはさっきまでそこに居たよね?んん?分からん。


「アリスちゃんはどこ行ったんだ?」


「後で私が探しておきますよ」


「ありがとうね」


「いえ、それより只今から作戦を開始しますので、アンナ様はシラバスさんの所に行ってください」


「分かった、そっちも頑張ってね」


「ありがとうございます、ご武運を」


そう言いトリアさんは森の中へと入って行った。


「さてと、確かあっちだったか」


私は前にトリアに言われた方向に向き、1人シラバスの元へと歩いて行く。


その後ろ姿を木の陰で見ていたアリスは呟く。


「あー、アンナお姉ちゃんは美味しかったな………涙であれ程だから血はどんなに美味しいのかなぁ………うふふふ今度頼んでみようかなぁ」


顔を綻ばせながらアンナが向かった方へ向く。


「お姉ちゃんか………………… 今、母と父は居るのかなぁ…………」


アリスは満天の星空を見上げて呟き、少しするとアンナの向かった方へとゆっくり歩いて行ったのだった。






よければブックマークと下の評価ボタンを押してください。執筆が捗ります。不備な点があれば感想にて優しく教えてください。よろしくお願いします。


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