鎧と少女の正体
スイゲツは分かったようで口を笑わせていた。
私は未だに分からないのですぐに聞く。
「なんなの?」
「まずはお主が使っていた再生の効果はなんだ?」
「え?再生の効果?えっと触れた物や人を元に戻すスキルだよ」
「何秒前の状態に戻るのだ?」
「私はいつも1時間前に戻るように意識してるけど」
それを聞きスイゲツは笑った。
「ふっふふそれは良かった、ならさっきしまった大太刀を出せ」
すぐにアイテムボックスから春光を出す。しかし違和感があった。
「軽い?………………うわっ!重くなった」
さっきまで普通の重さだったのに、さっきみたいに重さが急に増えた。
それを見てスイゲツが手を伸ばして春光に触れる。少しすると私に指示する。
「再生を使ってみろ、元に戻る筈だ」
「え?わかった」
春光に触れて再生を使う。
春光が淡く光り再生すると、刀の部分から何か薄っすらと黒いものが出たような気がした。
それと同時に春光自体も軽くなる。
「あっ!軽くなった!」
「やはりか、あやつの正体が確実になったぞ」
「え?なんなの?」
スイゲツは胸ポケットで私に向き答える。
「あやつの正体は、簡単に言うと微生物だ」
「微生物!?」
えぇぇえ!?微生物って、病気の細菌とかだよね?剣が細菌なの!?
「剣が細菌なの?」
「違う、あの剣は普通だ。我が言っているのは金属を食う微生物の事だ、あの剣と鎧にはその微生物が付いていて操っているのだろう、だから私の鑑定にも引っかからんし、呼吸も心拍も聞こえない。それでさっきの大太刀に鑑定ではなく病気鑑定をしたら当たったのだ、だからお主の再生をしたら微生物がいた部分が再生して微生物自体が追い出されたと言う訳だ」
私は信じられなかった、金属を食う微生物がいるなんて初めて知った、しかも操るなんて。
「………そんな存在いるの?」
「実際に目の前にいるだろ」
「そ、そうだね………剣じゃ相手に出来ないか」
私は冷静になり春光を構えるが、また同じ目にあうと思い春光をアイテムボックスになおす。
それを見てスイゲツが指示する。
「近接戦はやめておけ、遠距離からの魔法の弾幕で倒せるがあの鎧を一撃の元に消しとばすのがいいな」
「え?火属性魔法で溶かしたらいいんじゃない?」
「鎧を溶かすだけならいいが、我らが相手しているのは微生物だ、生物の生存本能を舐めていると負けるぞ」
「まさか、あの鎧が無くなったら次に私のの剣を食うつもり!?」
「そうだろうな、それか体の中に入って来るかもしれぬな」
スイゲツは制定したが、もっと恐ろしい事を言った気がした。私は確認する為に聞く。
「………体の中?」
「ああ、さっきの少女が何故あやつに何故斬られたのか分かるか?」
分からない、今更だがなんでだ!?あの子は何も金属系統は持っていなかった、なら襲う必要は無い、だが実際は襲っている、なんでだ?
私が考えいるとスイゲツが答えを教えてくれる。
「結構簡単だ、知ってると思うが生物には血液に鉄分という物が含まれている、鉄分ももともと鉄だ、だからあやつらはそれを求めて襲ったのだろう。そして鉄分を抜かれた少女は死にかけていたのだ」
「だからか……けど体内の鉄分なんて微々たるものだよね?」
「あやつはそれを求める程の極限状態だったのかもしれんぞ」
私とスイゲツが相談していると、鎧の奴が剣を上端に縦に構えて突っ込んで来る。
私は春光を直してしまったので、後ろに下がる。しかし鎧の奴は途中で水の壁にあたり止まった。
「水壁、それでお主はあれを一撃で消せるか?」
「………出来ない、魔力量も少ないし、まず私は火属性魔法のレベルも低い……」
「そうか……我の魔法は知ってると思うがあの程度のレベルだしな、消すのは不可能だ」
どうする、どうする、考えろ何かある筈だ…………………………アレを使ってみるか。
「スイゲツ、あの鎧を消すことは出来る」
「何?先程は出来ぬと……」
「うん、出来るか分からない、しかも私はそれをしたら倒れるかもしれないから使いたくなかったんだ」
「ふむ、そうか………あの鎧を一撃で消せるならいいと思うぞ、倒れた後は私が世話をしてやる」
『私も良いです』
「ありがとう、じゃあやるよ」
私はスイゲツを地面に下ろし、目の先にいる鎧に両腕を向けるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜スイゲツ視点〜
「………これ程とはな………」
私の横には私の契約者であるアンナが倒れていて、横にはスライムのクロワがいた。
そして私が見ている所には先程までいた鎧の姿は何処にも無くただ草地が広がっていた。
アンナが何をしたのかあまり分からない。私の知る魔法の中にはあんな恐ろしい物は知らない、改めてこの主は凄いと思った。
私が驚きを隠せずに見ていると隣にいたクロワが声をかける。
『マスターは寝てしまいましたね、改めて言いますが私はクロワと言います、これからよろしくお願いしますね先輩!』
「そうだね、私はスイゲツって言うのよろしくね」
クロワはそれを聞き固まる、まぁ毎度の事だ仕方ない説明するか。
「私ね、アンナの前以外はこの喋り方なの、今後もこうだからよろしくね、あとこの喋り方の事をアンナに行ったらどうなるか分かってるよね?」
『……分かりました!マスターには言いません!』
「よろしい、ではアンナを少女のいる木の裏まで運ぶわよ!」
『分かりました!私がスイゲツ先輩と一緒に運びますね』
「ありがとね助かるわ」
アンナを少女のいる木の裏まで運ぶ、その間も私は探知で周りを警戒していたが何も来なかった。
少女の元に着き私は少女の容態を見る。傷は完全に塞がっており、息も正常にしていて、鼓動も正常で、爆風の影響も無かったようだ。
「やっぱり何も問題ないか」
『さっき大丈夫って言ってませんでした?』
「それでも気になるからね、それに今見て分かったけどこの子偽装も使えるのね、起きてるんでしょ?」
それを聞き少女の体がビクッと動く。私は鼓動も息も分かるのだ相手が起きているかなんてすぐに分かる。
少し待つと観念したのか少女が起き上がる。
少女は銀髪で肩より少し長めの髪で目はルビーのような赤色をした可愛い子だった。
「………」
「………何か喋らないの?」
「………まさか話しかけてきたのがこんな妖精だったなんて」
「こんなとは失礼だな」
「ご、ごめんさい」
「いや、いいけど。私はスイゲツ、あなたの自己紹介してくれる?」
「………自己紹介それだけですか?」
「名前さえ知っとけば相手との意思疎通は大体出来る、それで名前は?」
「………………」
何をされるか分からないから名前は言いたくないのかな。何もする気ないけど、仕方ない、私の鑑定力を見せてやろう。
「……………名前はアリス、年齢は…」
「な、なんでわかるの!?偽装してたはず!」
「そのレベルなら簡単だよ、レベルは6ぐらいかな」
「!?」
アリスは大きく驚いている、なかなか面白いな、もっとバラしてたくなってきたな。
バラそうとする前にアリスが口を開く。
「はぁ、鑑定されたなら仕方ない、そうよ私はアリス、種族も見たんでしょ?」
「ん?見たがそれがどうしたの?」
「………あなた私の種族を見て何も思わなかったの!?」
「ん?別に」
「………」
アリスは絶句する、そんなに驚く事か?
アリスの種族は人の血を吸い永遠とも言える長い時を生きる種族、吸血鬼であった。
よろしければブックマークと下の評価ボタンを押してください。執筆が捗ります。不備な点があれば感想にて優しく教えてください。よろしくお願いします。