妖精の森
馬車は草原の中を走り抜ける。
私は少し前に起きて今は運転席でペーダソス達を操っている。ガウェインは馬車の中に戻っている。
やっぱり風を感じるのはいい。
「ア………は…………わ!」
後ろからシルヴィアが何か言っているが風の音で聞こえない。
「え?なに?」
「は……………」
うん分からん。まぁ止まってみるか。
そう思いペーダソスとクサントスをゆっくり止める。場所の中からシルヴィアとガウェインが出て来た。
「どうしたの?」
「ぜぇ、ぜぇ、は、早いわ、アンナは操縦しちゃ、ぜぇ、ダメだって言った、ぜぇ、でしょ」
「はぁ、はぁ、マスター早過ぎますね、中に居たらぐちゃぐちゃになりそうですよ」
「ごめんね、今からはゆっくり走るよ」
「ダメよ、アンナは馬車内に戻って!」
「えぇ!…私は……ダメなの?」
私は少し涙目で下から見上げる。それだけでシルヴィアは鼻血を出す。
「グフッ……いいわよ、たまになら」
「ありがとうシルヴィア!大好き!」
「ガハッ!」
シルヴィアは胸を押さえてその場に崩れ落ちる。
その光景を見ていたガウェインは思う。
(草原の、マスターの周り、牡丹咲く)
変な俳句を歌って、微笑ましく2人を見ていた。
クズハも後ろから見ており鼻血を出していたが誰にも気づかれることは無かったのだった。
私は空を見上げる、少し雲があるがいい天気だ。太陽は私の上にあり、お昼ぐらいだと分かる。
「丁度いいしお昼ご飯でも食べようか」
「……そうね、私もお腹が減ったしね」
「マスター、何を食べるのですか?」
「シルヴィア、今料理作れる?」
「簡単のでいいわよね」
「まぁ旅だしね、本格的なのはいいよ」
「分かったわ、じゃあ料理の準備しましょ」
私はアイテムボックスからシルヴィアに言われる物を出していく。
私が出しているとクズハが馬車から降りて来て、私に少し恥じらいながら謝って来た。
「すみませんでした、アンナの邪魔をしてしまって…」
「行きの?もういいよ、私もクズハの事を改めて見ているから」
私はクズハの目を見て言うと、クズハは目を逸らして顔を赤らめている。まぁクズハは元々私好みだよね。
私がクズハを見ているとシルヴィアが指示をだす。
「はいはい、クズハは肉を食べる大きさに切って、ガウェインは火を付けておいて、アンナは包丁で野菜切れる?」
「切れるよ!」
「あんなに長い刀使えるなら使えるよね」
「そうかもしれないけど、私だって料理はして来たよ」
「あのアイテムボックスの中のがアンナの料理?」
「あ、アレは違うよ。あの料理は私の部下の……」
「へぇーじゃあ今日はアンナが作ってよ」
その言葉にガウェイン、クズハが食いつく。
「おお、マスターの料理ですか。私も食べてみたいです」
「アンナの料理は食べた事がありません。凄く食べてみたいです」
「えぇ〜私はシルヴィアに作って欲しいんだけど」
「3対1よ、アンナが作ってね」
そう言いシルヴィア達は準備に取り掛かった。
はぁ、仕方ない、作るか。
まずは火は………ガウェインがもう付けてるか、しかも周りを石で囲っている。じゃあ肉は………もう大体一口サイズになってるか。野菜は………シルヴィアが切ってくれたのか。
一応言っておくが、普通の野菜だ、異世界だからと言って変な物ではない、名前は違っていたが。
そう考えて料理何しようかなと思っているとシルヴィアが横に来る。
「シェフ、今日は何にしますか?」
「シェフって、うーん………じゃあカレーにしようかな」
「カレー?」
シルヴィアは知らないようだ、千年も寝ていたら分からないよね。
ガウェインとクズハは知っている筈だ、ショウヨウは結構作ってたからな。
私はアイテムボックスの中からカレーのルウを出す。シルヴィアは不思議そうにそれを見る。
「それがカレーなの?」
「いや、これはカレールウでこれを溶かして食べるんだよ」
「へぇー変わってるわね」
「けど美味しいよ」
火の所に行き、鍋でさっき切ってくれた野菜と肉を炒める。炒め終わると鍋に水を入れ、混ぜる。その後アクを取り、カレーのルウを入れてとろみが出るまで混ぜる。
あとはお皿に盛り付ける。え?ご飯いつの間に作ったのかって?アルーラでは売ってなかったから私が持っているご飯(炊きたて)を使う。
私の周りは、みんなカレーを見ていた。
「よし、出来上がりだよ」
「いい匂いね、食欲がそそられるわ」
「おおカレーですか、マスターも作れたのですね」
「アンナはなんでも出来ますね」
「なんでもは言い過ぎだよ、よし食べようか」
いつの間にか出ていた机と椅子に向かう。
私の横はシルヴィア、目の前にはクズハ、その横がガウェインとなった。
「じゃあ、いただきます」
「「「いただきます」」」
私は久々のカレーを食べる。
うん、うまく出来たかな、隠し味は今回使ってないけど。
シルヴィアが一口食べると、凄く驚いたような顔になっている。
「アンナ!凄く美味しいわ」
「美味しいけど、まだまだカレーは奥深いものだからね、色々アレンジして行くと進化していくよ」
「これより美味しくなるのね、今度一緒に作りましょ」
「そうだね、また作ろっか」
シルヴィアも喜んでくれたようで良かった。みんなもカレーを食べている。
ペーダソスとクサントスは野菜を食べてもらっているが、クロワはカレーを食べている。
『マスターこれは凄いね、私もまた食べたい』
「クロワはもっと辛いのがいいんじゃないかな?」
『これより辛く出来るならもっとも辛いの食べたい!』
「言うと思ったよ」
みんなと喋りながら食べているとすぐに食べ終わってしまった。
私は生活魔法の「クリーン」でお皿を綺麗にしていると、ふと目に入った森に気づく。
「あれ?森なんてあったかな?」
「ほんとですね、あったでしょうか」
「あの森は………妖精の森ね」
「「「妖精の森?」」」
私、クズハ、ガウェインが同時にシルヴィアに聞く。
「妖精の森はね、森自体が魔法で隠れていて常時移動してるのよ。中には妖精達が沢山居るらしいわ」
「シルヴィアは初めて見たの?」
「初めてよ、滅多に見つかるものじゃないわ」
「へぇー凄いんだ………なんで見つけれたの?」
「さぁ?私達を歓迎してくれたのかしら?」
私はASOでの妖精を思い浮かべる。
初めに浮かぶのは私の初めてのパートナーのスイゲツだ。あの子は見た目子供なのに大人口調なので少し違和感がある。
それより、ASOでの妖精はイタズラ好きだ、スイゲツは違うかったが。
イタズラの内容は色々あり、いきなり頭の上から水が落ちてきたり、整備された石畳の道でいきなり落とし穴に落ちたり、酷いのになると火だるまになっているのもあった。
まぁ妖精はなかなか怖いのだ。目に見えてもすぐに消えるし、攻撃は当てようとするとすぐに空中に逃げるのだ、私も何度苦渋を飲まされたか、空歩が出来るようになってからは逆の立場になったが。
妖精は結構面倒だ、ここは入らないようにしよう。
「妖精の森か……まぁ早く王都に行きたいから、先に進もう………」
私がみんなの方を見ると、誰1人その場には居なかった。
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