告白と旅立ち
あのシルヴィアと寝た夜から4日経った。
1日目にクズハとガウェインが準備をしてくれたので、2日目はお世話になった所を回った。
冒険者ギルドではソフィアさんが悲しそうな顔で「町から出る時お見送りに行きますから」と言ってくれた。
グラートにも伝えたら「君たちみたいな優秀な冒険者を他には渡したく無いんだけど……また此処においでね」と少し寂しそうな声でサヨナラを告げた。
カミーユさんはクロワ達が離れるのを聞いて凄く残念そうになっていて「また来てくださいね」
と言い小屋に戻って行った。
次に門のところに向かいアルノルトさんと話した。アルノルトさんとはこの町に入るために色々をしてくれた優しい人だ、この町から出る事を言うと「見送りの時に話そう」と言われて渋々身を引いた。
次にアリアに会いに行った。あのスタンピードの後からずっと仕事でいっぱいだったらしく王都に出かけたりしていたので話す機会が無かった。
ちょうどギルドに報告に来てたので話をした。私があの時アリアに聞きたかったキスをした事を聞いた。
「何であの時キスしたんですか?」
「直球ね………今時の女の子の挨拶はキスじゃなかった?」
「いえ別に」
分かんないけど。
「そう思ったのよ。感謝の気持ちとして受け取っといて。それより町から出て行くの?」
「うん、お別れの挨拶に来たの」
「え〜、アンナともっと話したかったのに………アンナは何処に行くの?」
「王都だよ」
「良かった、ならまた会えるかも。数日は此処と王都を行ったり来たりするけど王都にいるなら少しは会えるかも」
「じゃああっちで待ってるよ」
「また会いましょ」
こうしてアリアとは王都でまた会う約束をして別れた。
宿にいるマリネさんとは3日後に出ると話すと「此処での行為は内緒にしておくから、またおいで」と言われて私は恥ずかしくなった。消音してた筈なのにバレてたんだ、今度はちゃんとバレないように徹底的にしようと思った。
3日目は食料を買いに行き、殆どお金がなくなってしまった。家具を買い過ぎだと思うけど。
そして今は朝日が昇り、家から人がまばらに出て来ている時間だ。門の所には他にも業者の人が馬車を引いている。私達もクサントスとペーダソスに馬車を引っ張って貰う、この馬車が1番お金がかかった、この1週間の稼ぎが殆ど無くなるぐらいだ。
殆どの荷物はアイテムボックスとアイテムバッグに分けて入れているので、馬車にはあまり荷物は乗っていない。無いのはおかしいので少しは乗せたが。
荷物を乗せているとアルノルトさんが来た。
少し探していたようだ。
「まさか馬車を買っているとはな」
「まぁそれだけ稼いでたんですよ」
「それじゃあ何でこの町から出るんだ?」
「私が特訓する為ですよ」
「ほほぅ、アンナちゃんは野心家だな」
「名誉とかはいりませんよ、ただみんなに追い付きたいだけですから」
「………そうか、なら言える事は1つだ。アンナ呑まれるなよ」
「呑まれる?」
「ああ、何事にも言えるがな。力を求めるのは良いが呑まれ過ぎると戻れなくなる。勇者も違う点から見たら怪物でもあるんだ、それを忘れるな」
「?」
分からない。力を求めるのは良いのに、それに呑まれるな?どう言う事だ?
「まだ分からないかもしれないな。まぁ大人の忠告だと思ってくれ」
「分かった。ありがとうアルノルトさん」
「ああもうすぐ門が開く、それまで待っていてくれ、俺は門を開けてくる」
そう言いアルノルトさんは門の方へと歩いて行った。それと入れ替わるようにソフィアさんが来た。ソフィアさんは私の前に来るなり笑い始めた。
「ふふふ、やりましたよ」
「どうしたんですか?」
「アンナさん達は王都に行くんですよね?」
「はい、王都に行くつもりですけど」
「よしっ!」
ソフィアさんが凄い喜んでる。ほんとにどうしたんだ?
ソフィアさんは真面目な顔になり説明してくれた。
「ごほん、私目は今後から王都の冒険者ギルドに移ることになりました、そこでもアンナさん達の専属受付になりました」
「おぉー」
「私はこっちでの仕事をやってから行きますから少しの間待っていてください」
「はは、あのグラートの事だから仕事をいっぱい押し付けられたの?」
「よく分かってますね……」
「まぁあっちで待ってますよ。頑張ってください」
「はい、では私はギルドに行くので此処で失礼します。また王都で会いましょう」
ソフィアさんは手を振りながらギルドの方へ向かって行った。
もうアルーラの町から出るのか……。
そう思うと寂しく感じる。1ヶ月近くいたのだ、此処での事は濃かったなぁ…。
そう思い、馬車にみんなが乗り込み私も乗る。
馬の手綱を持っているのはガウェインでその横にクロワがいて、馬車の中にはクズハとシルヴィアが話していた。
「さぁみんな、アルーラの町の見納めだよ」
「また来るでしょ?」
「来るから見納めじゃ無いか」
「けどすぐには戻って来ないから見ておくのも良いわね」
そう言いシルヴィアは馬車の窓から町を眺める。私もその隣に行き、見てみる。
町は朝日に照らされ、家の屋根が綺麗に反射して、キラキラとしていた。この町は綺麗だと思っていたけど、この様な綺麗なアルーラの町は初めて見た。
「綺麗ね……」
「そうだね」
「此処では色々あったけど結構楽しかったわ」
「私もだよ、懸念材料はあの男達だけだけど」
「分からないものは考えても無駄よ。そんな事より王都ね、どんな所か楽しみだわ」
「王都ソリヤテル、楽しみだね」
話しながらシルヴィアを見る。シルヴィアも気づいた様でこっちに向く。
「アンナ……私達付き合い始めたのよね」
「そうだね」
「それならキスしてもおかしく無いわよね」
「そうだね………え?」
「あむ!」
「ん!」
シルヴィアに顔を掴まれてキスをされる。私もシルヴィアの顔と腰に手をかける。シルヴィアは舌を入れて来て口の中を舐めるのだ、その舌が甘いので、私も舌を絡めてしまう。
長い間キスをした。キスをしているととても幸せになるのだ、シルヴィアに求められると思うとなお感じてしまう。
終わると私はシルヴィアを求めてしまう、シルヴィアに近づこうとすると大きな音が鳴り響く。クズハが合唱して叩いた音だった。
「主人、他の人が見てしまう可能性があるのでこの様な場所ではおやめください」
忘れてた、ここは馬車だったんだ。少し恥ずかしい……。
私の後ろにいたシルヴィアが少しにやけながら答える。
「いいじゃない、見てるのなんてあなたぐらいだし」
「それでもです!やめてくださいね」
「じゃあ一緒に混ざる?」
「へぇ?」
シルヴィアの言葉にクズハは硬直する。その時に私はシルヴィアに背中を押されてクズハにもたれかかって、そのまま転倒してしまった。私がクズハの上に乗り、床ドンしてるみたいだ。
「……主人……」
「ごめんクズハ、すぐにどくよ」
退こうとして足に力を入れようとすると、シルヴィアが乗っかって来た。
「ダメよ。アンナはクズハにも答えて上げなきゃ」
「え?」
「ふぇ!な、何を行ってるのですか!シルヴィア!」
「ふふふ、私が知らないと思ってるの?クズハはね3日前から結婚について色々調べていたのよ」
え、それは初耳だ。何で結婚なんて……。
「な!?や、やめなさい!シルヴィア!」
「調べたのは結婚できる人数なの、何でか分かる?アンナ」
結婚できる人数?何で?
「ほんとにやめなさい!やめてください!シルヴィアーーー!」
「それはね「わーーーー」結婚したいからよ、て煩いわ!」
「んんーー!」
シルヴィアは私の上からクズハの口を抑える。
クズハが結婚?
「え!?クズハ誰かと結婚するの?」
「違うわよ、そ「んんーー!」結婚したい相手はアンナよ」
シルヴィアは絶妙にクズハが言うタイミングとずらしてその答えを言った。
私は少しの間固まった。私が男だった時にはこんなにモテなかったから衝撃が強すぎたのだ。
「ふふふ、言っちゃったわ、ごめんねクズハ」
「な、何をするんですか!主人、さっきのはその、あの、あれなんですよ、えーと、その……」
「クズハは私の事が好きなの?」
「………」
クズハは顔を赤くして私から目をそらした。私が待っていると観念した様に話し始めた。
「はい、拙は主人の事が好きです。しかし拙は主人の配下、主人に恋愛を持ち込むなど配下失格です……」
「私はクズハの事を配下だと思った事はないよ」
「え……」
それはクズハにとって衝撃だ、支えて来た主人に初めから捨てられていたのだと思うと絶望した気持ちになる。
しかしアンナはそのまま言葉を続ける。
「私はクズハの事を家族だと思ってたの、家に居た全員が家族だと思ってた。私に部下や配下は要らないからね」
「主人……」
「だから主人って言われるの少し嫌なんだ。それで慣れてるから仕方ないけど、今後から変えて行こうと思ってたの」
クズハはそれを聞き涙を流し始める。1つに主人を不快にさせてた事に、2つに拙が主人の家族と言われて嬉しくなったのだ。
「拙は主人の家族だったんですか」
「前から思ってたよ。まぁクズハは強いて言えば娘って感じだったけどね、私より身長大きいけど」
「娘ですか……」
ちょっと照れくさいな、私はこう言うのは言わないのになぁ。
「だからね、私を恋愛対象として見てくれるのは嬉しいんだけど、私は前までクズハの事を娘だと思ってたから、付き合う前に分かり合う為の時間をくれない?」
「せ、拙と付き合ってくれるんですか?」
「うん、だから時間が欲しいんだ」
クズハはアンナと付き合えるという事実だけで身が弾けそうなくらい心臓がバクバクしている。アンナに決心して言わないと思う。
「あ、主人と付き合えるなら待ちます……」
「アンナって今日から言って、付き合うなら当然だよ」
「分かりました、アンナ大好きです」
「今は娘として愛してるとしか言えないから、時間をかけて分かって行くよ」
そう言いクズハをじっと見る、黒い髪に整った顔、スタイルも良い、娘だと思っているが凄い自分好みである。まぁ自分で作ったのだから当たり前だが。
クズハと私が照れあいながら見つめ合っていると、シルヴィアはクズハと私がグズグズしてるのを積極的にする為に私の尻尾を掴んだ。
「ふにゃっ〜ぁ…」
私の体から一瞬で力が抜けて、クズハの上に倒れこむ、下にいるクズハは大慌てになる。
シルヴィアは尻尾の先を触って絞る様に尻尾の根元まで触ってくる、そこ弱いのにぃぃ…。
「や…やめてシル……ヴィア…んん…はぁ、はぁ……」
「キスするなら今よ」
「え?あ、はい!」
「ふぇあ、んん!」
クズハが私の顔を持ちキスをして来た。シルヴィアと違ってソフトタッチだ。クズハの唇も柔らかいな。
私が大人しくなっているとシルヴィアがまた尻尾を弄り始めた。
「うにゃ!あむぅんん〜〜!」
口を開けた途端クズハが舌を入れて来た。さっきのままでいいのに!
尻尾も触られて大変なのに、キスもされたら私のおかしくなったちゃう。
「レディ達、もう馬車が動きますよ」
「「………」」
時が止まる。クズハとシルヴィアは顔が一瞬で冷めた様になる。声を掛けたのは救世主ガウェインだ。ガウェインは私達に近寄る。
「恋は盲目とは言いますが、マスターに対して失礼ですよ。マスターはこちらが預かりますので馬車の中で静かにしたください」
シルヴィアとクズハは何も言わずに私を差し出す。私はまたお姫様抱っこされて馬車の運転席に運ばれ、ガウェインの横に座らされた。
「ふぅ、あの2人はマスターが許したとしてもやり過ぎですね。マスターこれから長い旅ですがよろしくお願いしますね」
「……ありがとうガウェイン……私は寝るよ……疲れた……すぅ………すぅ………」
そのまま私はガウェインにもたれ掛かり眠ってしまった。
ガウェインはもたれ掛かって来たアンナの顔を見る、その顔はすごく安心した様な顔だった。
それを見てガウェインは鼓動が激しくなる。すぐに前を向き心を落ち着かせる。
ガウェインもまた恋という病気にかかっていたのだ。しかしガウェインは忠誠心の方が高い為それを乗り切る。
アルノルトさんが門を開けてくれたのでそのまま通る事が出来た。後ろでは2人が羨ましそうにガウェインを見ている。
門を抜け、馬車は街道をゆっくりと走る。
眠っているアンナを起こさないように……。
アンナ達は王都ソリヤテルへ向かう。
王都へは早くて1週間かかるが、アンナ達はどのようになるのか。
しかし王都ソリヤテルにいる奈々美とはまだまだ会えない宿命にある。
アンナ達はただ空が晴れて、そよ風が吹く街道を走って行くだけだ。
いや〜無理矢理クズハの事を入れてしまってちょっとぐだぐだしてしまいました。
奈々美の方も少しづつ進めていきます。
説明回を入れて次章に入ります。
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