クズハ
〜クズハ視点〜
拙は主人のアンナ様に創られた存在だと考えている。
拙が主人と出会ったのは今から523日前の宿の個室の中でだった。主人は拙を見て「よく出来てるな〜」と言った。拙はすぐに分かってしまった、拙はこの人に創り出されたのだと。こんな事が出来る人の配下になるのはなんたる幸せかとその時から思っている。
だが今はそれだけでは無い、主人の容姿、性格、強さに惹かれるようになった。私も主人の様になってみたいとずっと思っている。
こちらに呼び出されてからは主人はよく話してくれる様になった。前より話し方に仕草も可愛くなっている。
忠誠を誓うのに何ら問題無いがシルヴィアと同じ様に好きになってしまうのはどうするか考えた。
ガウェインと同じで配下が主人を好きになるのはおかしいと思ったからだ。
その結果、シルヴィアがヘタレだったので拙と競争させて、さっさとくっ付ければ拙も諦めがつくと思いシルヴィアを急かして昨日の夜にくっ付ける事は出来たが、拙は胸が締め付けられる様になった。
昨日の夜は泣き続けた、そうしないと自我が保てないくらいだった。
朝に起きて目元は赤くなっていて、主人の前に立つ前に身嗜みを直しているとノックがなった。
外に出て見ると我が主人が少しやつれた様子で挨拶をしてくれた。
「おはよう、昨日は何処かに出掛けてたみたいだから先に食べてたよ」
「拙に気を使う事はいりませんよ。それより昨晩はお楽しみだった様で」
「え!?何で知ってるの!?消音した筈なのに」
音が聞こえないと思ったらそういう事だったんですか。音ではバレないでしょうが、朝にその様な顔で出て来たらバレる人にはバレますね。しかも喉元にキスマーク付いてますし。
「ふふ、拙は主人の事はいつも見てますから今の顔を見たら分かりますよ。主人、眠たいですよね?」
「う、うん。シルヴィアは今寝てるから一緒に寝て来るよ。それより頼み事があるんだけど」
「はい、何でしょう?」
「明々後日からこの町から出て王都に行こうと思ってるの、その準備をして欲しくてね。クズハがここにまだ居たいなら延期するし、ここで住みたいならここにいるけどどうする?」
「愚問ですよ。主人が行く所に拙は行きますので、ガウェインにも同じ質問は無意味ですよ、主人と一緒に着いて行くと言うはずですから」
「ありがとう、ガウェインにも聞く予定だったけどクズハが伝えてくれない?」
「分かりました。準備は拙が考えておきますので主人は今日はゆっくりお休みください」
「ありがとう、今日は休んでおくよ」
「では明日また来ます」
「うん、おやすみ」
主人はそのままシルヴィアの部屋に戻っていった。よかった私の事はバレて無さそうだ。
今日の予定は決まった、まずは旅の準備とこの世界においての付き合いの事について調べられる事だ。
まずはガウェインを呼びに行こう。
今日は暑いため半袖とスカートにしよう。服装を考えてアイテムバッグから取り出し着替えて、部屋から出る。
ガウェインが泊まっている宿は冒険者ギルドの近くの宿だ。そこの客は殆どが男で女性は大概こっちの宿に泊まっている様だ。
宿に着いてドアを開ける、1階は飯屋の様で席は殆どが埋まって居た。少し見渡すと金髪の髪が見えたのでそこに行く。
しかし此処は男だらけだ、女が入って来ただけで周りを囲んで来る。しかも朝から酔ってる様でなお悪い。
「おい嬢ちゃん、一緒に飲まねぇか?」
「いりません、あなた達より強い人に会いに来ただけですから」
「おいおい釣れない事言うなよ。そんな奴俺より弱いだろ?」
「ギャハハ、俺たちに勝てるのなんてそう居ねぇよな?」
「当たり前だろ。だから嬢ちゃん一緒に飲もうぜ」
はぁ、呆れる。目の前に居るのがあなた達より強いのも分からないなんて、冒険者を辞めたほうがいい。
馬鹿だなぁー、と考えて居ると金髪の長身長のガウェインが来る。
「おはようございます、クズハ。ご飯は食べたので行きましょう」
「ええ、行きましょう。コイツらが邪魔ですけど」
ちょっとおちょくるとすぐにかかって来る。頭が回らない奴は簡単に倒せる。
「おい、なんだとコイツが俺らより強いと?」
「身長がデカイだけじゃねぇか」
「3人で勝てると思ってるのか?」
馬鹿3人がガウェインに向く、しかしそれを止めようとする聖者が出て来た。
「辞めなさい!此処での暴力は禁止よ!貴方達分かってるでしょ!」
「分かってるが、冒険者は舐められたら終わりなんだよ、だから見せしめでやらないとなぁ!」
そう言いガウェインに殴りかかった。少女は叫ぶが当たるのが早い、そのままガウェインの顔に拳が当たるが、ガウェインは微動だにしない。しかも殴った馬鹿が手を抑え始めた。
「ぐぁぁあ、何だ!硬すぎる!」
「あなたの攻撃で痛がる筈が無いでしょう」
「舐めんじゃねぇぞ!」
残りの2名も襲いかかるが、ガウェインは殴ってきた手を掴み、そのままカウンターで肘鉄をぶつけた。馬鹿2名は鼻から血を出してその場で崩れ落ちる。それを見て居た少女は唖然となる。
ガウェインは先に殴って来た馬鹿1名に向く。馬鹿は酔いが醒めたらしく慌てふためいて居る。
「私が太陽下で居なくても倒せるレベルなのに、襲いかかって来るとは相手の力量も分からないのですね」
「わ、分かった。俺が悪かった、だから許してくれ」
「ん?何を言っているのですか?」
「え?」
「この職業では舐められたらダメだと言ったのはあなたです、だから私も舐められたらダメなので見せしめに徹底的にやらないといけません」
「だから謝ってる、もうしないから辞めてくれ!」
「1つ言いましょう、弱者は何も選べないのですよ」
そう言いガウェインはその男の首を一瞬で叩き、気絶させ、馬鹿3人を担いで外に出て行く。私も着いて行こうとすると手で止められたので宿のなかで待つ事にした。
待っているとさっきの少女が声をかけて来た。
「すみません!あんな不快なことになってしまって、しかも相方の人も殴られましたし」
「良いですよ、それにさっきのはわざと殴られた筈です。この場に居る全員に見せつけるためにね」
周りにいた冒険者達は、分かりやすくビクッとなって料理を食べ始めた。
「そうだったんですか……聞きたい事があるんですが……」
「何ですか?」
「お二人の関係は冒険者同士の相棒ですか?」
此処で悩む。真実を言いたいが主人に拙達との関係は隠す事を言われている。さてどう言ったものか。
「そうと言えばそうですね。他にも2人仲間はいますが」
「そうなんですか、皆さんお強いんですか?」
「ええ、彼が1番強いですが」
「そうなんですね……付き合ったりはしてるんですか?」
「ガウェインは誰とも付き合って無い筈ですが」
「そうなんですか!……やった…」
この少女はガウェインを狙っているのか。
少女と話しているとガウェインが戻って来たので、ガウェインに近寄って話しかける。
「どうだったの?」
「処分して来ましたよ。まぁギルドに任せたんですがね」
「そう、じゃあ行きましょか」
行こうとするとガウェインに少女柄近寄った。
「先程はすみませんでした」
「はは、レディが謝ることでは無いですよ。あいつらが馬鹿だっただけです」
「お強いんですね」
「ありがとうございます。ですが私もまだまだですよ、追い付こうと思っている所がありますから」
「そうなんですか……」
「それでは失礼しますレディ」
ガウェインがその場から立ち去ろうとすると、少女は覚悟を決めたようで声を出す。
「あ、あの!今日空いてる時間ありますか?」
「……今日は夜以外は空いてないと思うますが、どうしたんですか?」
「夜、私とご飯食べに行きませんか?」
それを聞きガウェインはこちらを向く、どうぞと合図するとガウェインは少し考えて答える。
「分かりました。夜に此処に来ますので待っていてください」
それを聞くと少女はパァーと顔が喜こんだようになっていた。
「ありがとうございます、夜待ってます」
「ではレディ、また夜に」
拙とガウェインは少女から離れてそのまま宿を出る。ガウェイン罪な人だ。
「今日はどの様な予定なんですか?夜は空いているようですが」
「明々後日に町を出ることになりました。それに伴って旅の準備をするようアンナに言われたのであなたを誘いに来ました」
「私は荷物持ちですね。あれ?アイテムバッグ持って来てますね」
「バレないようにする為ですよ」
「そうですか……ではまず何を買いに行きますか?」
「まずは家具ね、一式買うわよ。主人に貰ったお金で買えるだけ買うわ」
「4人分と考えて買ったらなかなかの値段になりそうですね」
これから準備する事を話しながらガウェインと町を散策して行ったのだった。
その日の夜、ガウェインは宿の看板娘とご飯を食べた時に告白されたのだが、これから旅に出ると言われて断り少女の初恋は崩れ去るのだった。
罪な男である………。
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