マール奪還③
〜アリア視点〜
私はジョーとサイクロプス2体と対峙している。
他のBランク冒険者達が1体、Cランクが1体、Dランクが周りの雑魚を蹴散らしている。
今の所は問題無いが、ボロが出るとたちまち崩れるのは見えている。
そんな事を考えながら戦うのは厳しい。ゲームとは違うと実感する所だ。
初めて実感したのは王都のスタンピードだ、私はあの時一瞬戦えなくなって居た。スタンピードの中で1人で魔物を斬り伏せて居た時に、ふと頭に浮かんだのだ。ここはゲームでは無い、リアルだと。それが頭に浮かんだ瞬間、私は恐ろしくなった。しかしここは戦場、休ませる事などない。後ろから魔物が襲ってくる、私の一瞬の考え事は直ぐになくなり、私はただの魔物掃除機となった。そこから戦いが終わるまでは殆ど覚えて居ない、忘れている方が幸せだと思っている。
「そんな事より、前のことよね」
前にいるサイクロプスを見る。ジョーと2人でサイクロプス2体を抑えるのだ、サイクロプスは気を引き続けないと直ぐに違う冒険者の方へと向かう。
私は「駿足」サイクロプスの真下に入り込み、武技を使う。
「片手剣五ノ型「一閃」」
まずは足からだ。
足を切り落とす勢いで斬る、しかし肉まで届いているが切り落とすまではいかなかった。
倒れかかった方にジョーが槍で追撃をする、私は空いたサイクロプスがジョーに攻撃するのを防ぐのに倒れた方の背後から回り込み武技を使う。
「片手剣三ノ型「三辻」」
背中を斬りつけ背中に6本の線が入る。
だが浅い、背中は硬いのか。
ジョーに襲いかかろうとして居たサイクロプスがこちらを向く前に反対から回り込み横腹に向けて武技を使う。
「片手剣四ノ型「凸」」
剣は横腹に深く突き刺さった。
横腹は硬くは無かったか、ならそこを狙い続ける!
剣を抜こうとするが、ビクともしない。サイクロプスは顔をこちらに向けて笑った。持っている棍棒を振り上げ叩き落として来た。
コイツ、私を嵌めただと!
アリアは剣から手を離し、「縮地」で一瞬で距離を取る。
「ジョーコイツら、あたまが回るぞ」
ジョーはサイクロプスの棍棒を避け続けている。
「分かった、それを踏まえて戦えば良いだけのことよ!」
そうだ、これは対人戦だと思えば良い。
結構簡単そうに言うが、実行するのは難しい。
アリアはアイテムボックスからお気に入りの剣を出す。
「さぁ窮奇!奴らを蹴散らすぞ」
アリアが持つ剣が輝き始める、その輝きが終わると目の前には牛型の魔物が居た。
「さぁ窮奇!コイツを抑えろ」
「モオォォオ!」
「グオォォォゥウウ!」
窮奇はサイクロプスに突進し、サイクロプスを転倒させる。その隙にアリアが新しい剣「炎光」を出し、サイクロプスに向かい、ジョーの方にも魔法を打つ。
「業火よ、対象を滅却せよ、ヘルファイヤ!」
「グオォォオ!?」
サイクロプスの真下から火柱が立ち上る。サイクロプスはそこから逃れようとジョーから離れる。
「ありがとさんアリア」
「一気に攻めるわよ」
窮奇が抑えているサイクロプスの顔に近づきたい、窮奇の上を走るか。
窮奇の上に飛び乗りその上を走る。丁度顔を出して来たのでそこに武技を当てる。
「片手剣四ノ型「凸」」
「グオォォォオオオ!」
煩い!目の前で叫ばれるとこうも煩いのか。だがサイクロプスの弱点、目を潰せたのだかなり楽になる筈だ。
「こっちのサイクロプスの目を潰した!ジョーそっちはまだいける?」
「まだ行けるぞ!」
棍棒を避けながら槍を当てている、流石私の相方ジョーだ。
まずはこっちを倒す。
炎光を構えて、サイクロプスの首を落とせるところに行く。そして武技を発動する。
「片手剣ニノ、ぐはっ!」
横から何かにぶつかられた、「生物探知」に引っかかってない筈だ。
当てられた方を急いで見るが何もいない。
どう言うことだ私は何に当たったんだ。
数本脇腹が折れている。マズイ何処にいる!
目の前から突如棍棒が現れ、私を吹き飛ばした。
「ぐきゃっ!」
ヤバイわ、相手が何か分かったが私は何も出来ない、腕が折れている。無理矢理体を起こして見る。目の先にはサイクロプスが居るが、他の奴らよりかなりデカイ。
「最悪よ、まさかキング級も出てくるなんて」
キング級
その種の頂点に立つ魔物、その殆どが体が大きく、力が普通の物より倍は強くなって居る。
コイツはサイクロプスの種の頂点だから、キングサイクロプスだわ。
「大丈夫か!アリアっぐ!」
ジョーが助けに来ようとするが、目の前にいるサイクロプスが邪魔をする。立場が逆になっていた。
「やっぱり腕が折れてる。私はここで敗走かしら、まだ死ねないからね」
立ち上がって窮奇を呼ぶ。
「窮奇!コイツを抑えて」
窮奇は抑えていたサイクロプスをその場で開放し、キングサイクロプスに突撃した。
「グオオオ‼︎‼︎」
だが窮奇が突撃するタイミングに合わせて、棍棒を振り落とし窮奇の頭にぶつけた。
窮奇はその場に倒れて粒子となって消え去った。
窮奇がやられたか…けど逃げる時間は稼げた。
アリアは「縮地」でジョーの背後に回って来て居たのだ。
「ジョー、私は一旦引くわ、あなたはどうする?」
「俺が引いたらもう終わりだろ、一旦撤退はいいと思うが」
「全員撤退ね、そうしましょう。もうアルーラに連絡は行ってる筈だし応援も来る筈だから」
「了解だ!」
ジョーはサイクロプスの棍棒を槍で流して、サイクロプスの体制を悪くさせた。
「逃げるぞ」
「全員撤退!一旦引くわよ!魔術士達は道を作りなさい!」
サイクロプスと対峙して居た冒険者達が半分に分かれてDランクの冒険者達に混ざり、門の方角への魔物を掃討するが、魔物の量が多すぎて倒しきれない。
「くっ!ダメか」
「おいおい、まだ諦めるなよ。その腕をまずは直してこい」
「そこに行くまでにあなたが倒れるわ。そんな事出来ない」
万事休すか…。はぁ、やっと同じ祖国の人と会えたのになぁ、アンナ………服を着ているの見たかったわ。
私は顔を上げて、空を見る。流星だ…。最後に見れてよかったかも………流星?今は真昼間だ見える筈がない!
再度顔を上げて流星を見る。
あれ……こっちに来るような……来るわね。
「ジョー、流星が落ちて来てる」
「おいおい、変な冗談はよせ、空を見ても見える筈が………落ちて来てるな」
だが光は少し青緑だ。高音過ぎたらそうなるのか。流星はこっちに向かってくるごとに少しずつ見えてきた。あれって……馬?
「馬かしら」
「はぁ!?マジかよ」
見ていたら急に方向を変えた、流星ならあり得ない起動だ。新種の魔物か。
起動を変えた途端、物凄い勢いでこちらに来た!
「あ………ら……」
「声?」
なんか聞いたことのあるような…。
そう思っていたら距離が数十mの距離まで来た。
それは戦車であり、全体を青緑の雷で覆われていた。
乗っているのはアンナだ!
「アラララライ〜〜!」
「え?」
アンナが乗っている戦車が私達の上を通り抜け、魔物を弾き始めた。
ドガッアァァーン‼︎‼︎
「はっはー!この私の戦車を止めれるものなら止めてみせるがいい!雑魚ども!」
その戦車が通り抜けた後は雷で焼け、魔物は全て絶命していた。
周りの冒険者達は唖然としている、さっきまで絶体絶命だったのに、一瞬で魔物を倒す存在が現れたのだ、驚くのは無理もない。アリアもその1人であるからだ。
「なにあれ………」
「あれって、彼女だよな黒猫の…」
「ええ、アンナよ多分」
あんの見た事無い!ASOでも見た事なかったわ。
「そんなことより、全員!魔物を掃討するわよ!Bランクはサイクロプスを抑えて!一気に巻き戻すわよ!」
「「「「「「「「オォォォオ!」」」」」」」」
アンナが戦車に乗って現れた事によって一気に戦況は動くのであった。
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