ASOプレイヤー
アリアさんは面食らった表情をして固まっている。
この衣装、ASOのアイドル大会での商品のはずだ。私はそんなの興味なかったのでやってなかったが、この衣装は見たことあるのですぐに気がついた。
「何で私の事……アンナもASOプレイヤーなのね。ちょっと待って、アンナってどこかで……」
思い出さなくていいよ、てかやめて!
「そうだわ!黒猫、赤の目、その体の小ささ、ランキング3位の「赤眼の猫剣豪」!」
うわー、言われたよ。通り名だけどその名は聞きたくない。
ここで言うランキングは、イベントなのでのスコアを基準にプレイヤー達が適当に作ったランキングだ。
「そ、そうだけど、私の事はアンナって言ってね」
「名前はアンナだった、忘れてたわ。大太刀を持ってないから全く気づかなかったもの」
私の話は嫌だから、話を変えなきゃ。
「それより、私はこっちの世界に同じ日本人のASOプレイヤーがいるとは思わなかったよ」
「私は…アンナでいいかしら?」
「アンナでいいって」
「ありがとう、アンナは中身は女性よね?」
ぐっ…それは聞かないで!
「あ、アリアさんは?」
「私は勿論女性よ、疑ってる?」
「そ、そんな事ないけど」
私の方が疑われるよ!
「そうね、証拠なるか分からないけど、私はこっちに着てから、あの日が無かったわ」
あの日?………女の子の日か!私は嘘をつくか、まだなったこと無いけど。
「私はまだこっちに着てから2週間もたってないからまだだよ」
「そんなんだ。私はこれでも3年いるわ」
「3年!?」
「その3年間全く、あの日は無かったわ。この体には付けられてない機能なのかも知れないけど」
「それはいい事だね」
「そうかもね……それよりアンナは「巌流島の戦い」をしたのよね!あれは凄かったわ」
「ありがとう、私は負けたけどね」
そう、ランキング1位の「ムテン」と闘った公式試合の名前が無いはずなのに、通称「巌流島の戦い」になっている。
理由はムテンが扱っている武器が二刀流で、相手の私が大太刀、武蔵と小次郎の戦いそのものだからだ。結果は30分間戦って、私の負けとなった。
あいつ強すぎる!世界最強とは言われてるものだが、あれはおかしい、反応速度が早すぎる!私は殆ど防戦一方だったし酷い話だ。
ムテンとは結構仲はいいと思う、ダンジョンも一緒に行った事もあるしね。
「ご、ごめなさい。そうね敗者は聞きたく無いよね」
「その後も3回戦った事はあったけど全部負けたよ」
「公式戦以外に見た事ないわ…」
「そんな事よりアリアさんはどうだったの?」
本当に自分の話なんて聞きたくない。
「私はレベル170でランキングなんて4500位くらいよ、アンナの足元にも及ばないわ」
4500位だったら中の上くらいか、強いな。今の私なら大体15000位くらいだし。
「アリアさんは3年間ずっと冒険者してたの?」
「そうね、他にもこっちに来ているプレイヤーを探したけど見つからなかったわ」
そうか、居ないのか。まだ見つかってないだけかも知れないけど。アリアさんはどうしたのだろう?
「アリアさんも死んだの?」
「アンナは死んだの?日本で?」
「うん、そうだよ。それで女神様に転生させてもらったらアンナになってた」
「そうなんだ……私も死んだのかも。こっちに来る直前のことがあまり覚えてないのよ」
アリアさんも私と同じで、女神様が言っていた例外の人なんだろう。
3年前……3年前はまだASOが発売もされて無いはず、と言う事はこっちの世界、ミドアは地球より時間の早さが早いんだ!
「アリアさんは覚えてるのでいいから、日本でいた日付は?」
「3月2日よ。その日から地球の思い出がないわ」
私が死んだのは9月3日。6ヶ月の差がある事になる。6ヶ月で3年………1日で2時間程度か。
「アンナはいつだったの?」
「私は9月3日です」
学校の登校途中で死んだなんて言えない。あの男、地球に帰れたらやり返してやる。
「へぇー、プレイヤーに聞くのはタブーだけど、アンナは何歳だったの?」
「私は高2ですよ」
「あれ?見た目よりかなり歳が経ってたのね。私は23歳社会人よ」
「社会人で4500位って凄いと思いますよ」
「ありがとうって言えばいいのかな?さっき居たクズハって、プレイヤー達を1番殺してきた要注意NPC、殺戮のクズハよね?」
「そのクズハだよ」
クズハはASOではかなり恐れられて居たのだ。まぁ、その原因は私が乱戦イベントに連れて行ったからだ。フィールドはゴーストタウンだったから私は室内戦が得意ではないため、NPC参加可能だったので、人手が欲しいからクズハを連れて行ったのだ。フィールド内ではNPCは自律行動出来るので私はクズハにこう言った。
「一定距離離れて、私の邪魔になるプレイヤーを倒しておいて」これが悲劇の始まりだ。
クズハはフィールド上に居たプレイヤーにわざと見つかり弱いふりをして廃墟に入る。そりゃNPCはプレイヤーより弱いのだ狙わない手は無い。そしてプレイヤーが廃墟に入ると首が掻っ切られたり、廃墟ごと爆発させたりしてPKをしまくったのだ。
問題となったのはAIシステムが良すぎたからだ。
NPCは1人づつ専用のAIがつく、そのAIは凄く高度で設定に書いた事をちゃんとしてくれるのだ。例えばツンデレと記入したら、ちゃんとツンもあるしデレもある、やり方は千差万別だが。
そこが問題となったのだ、私はクズハの設定の1つに「綺麗にするのが好き」と打ったのだ。
は?と思うかも知れないが、これがクズハにこう曲解されたと思われる。
「フィールド中のプレイヤーを皆殺しにしといて」
となったと思われる。
まず一定距離がどの程度か決まってないので、フィールド中となったと思う。
次に私の邪魔になるは、私の邪魔=主人の不要物=綺麗にする、といった感じだと思う。
このイベントではクズハが私の倍以上のスコアを叩き出し、クズハは「殺戮のクズハ」として大いに恐れられた。
結局の所、私の指示ミスだけどね。
一応クズハはランキングに入れたら500位には入ると思う、と掲示板とかでは言われていたなぁ。
「ヤバイ相手に目を付けられたのかも。それにしてもこっちに一緒に来たの?」
「違うよ、私が召喚魔法で呼んだ」
「召喚魔法!」
ん?アリアさんそんなに驚いてどうしたのかなぁ?
「無属性魔法よね?」
「そうだね、私が考えて作ってみたよ」
あれはあれで長い時間を使った。
そう思っているとアリアさんが、私の肩を掴んで来た。
「凄いわよ!新魔法じゃない!これを学会に発表したら名声を得れるわよ!」
「わっ!ビックリしますよ、名声なんていりませんからどうでもいいですね」
目立つに決まってる。私はゆっくりと上げていきたいのだ、急に目立ちたくない。
「そうなの、勿体ない……けど流石ね、ASOで初めて武技を作った人なだけあるわ」
「私が初めて公式で見せただけで、ムテンさんとかが先にやってましたよ」
あのバケモノだ、私より遅いなんてあり得ない。チートを使わずにあの強さおかしすぎる。
「私は武技なんて作れなかったわ」
「私は学生ですし時間があったんですよ」
「それでも凄いわ。そうだ、アンナもマールの町の奪還に参加するのよね」
やっぱりアリアさんはマールの町の件で来て居たのか。
「いえ、いきませんよ。私まだFランクですから」
「えぇ!」
「私は最近冒険者になったばかりだし」
「そっか、けど直ぐにAランクになって居そう」
フラグを立てないでください、それは回収しませんよ。
「コツコツやっていきたいんです。昨日は事故を起こしましたが…」
まだ素材取りに行ってないな、行かなきゃ。
アリアさんは分かったように手を叩いた。
「倉庫に沢山あった魔物の素材はアンナのやつだったのね」
「正確には違いますよ。あれはクズハとシルヴィアって言うエルフの女の子が殆どですよ」
「あぁ、アンナが恋してる女の子ね」
やめてその言い方、凄く恥ずかしい!
赤くなった私の顔をアリアさんがニヤニヤしながら見てくる。
「それで〜どこを好きになったのかな?」
「分からないです!私だって何がきっかけかも分かりませんし…」
「ふふふ、恋する乙女ね。私もアンナの事は可愛いと思うから、シルヴィアちゃんと両思いかも」
は、は、は、私はもう玉砕したのですよ。
「アンナ凄く暗い顔になったわね………もう失恋した?」
「うわぁぁぁあああん」
「アンナ!?な、泣かないで、ごめんなさい。ど直球にやに言っちゃって」チャキ
「主人を泣かすとわ、極刑よ」
「ま、待って!まだ釈明の余地はあるはずよ。だから待ってーーー!」
その場にジョーさんが来るまで私は泣き続け、アリアさんはクズハに首元を短刀で抑えられて、カオスとなって居た。
シルヴィアはまだアンナを見つけてはおらず街中を走りながら叫んで居た。
「アーンーナー!どこ行ったのー!」