初仕事②
〜シルヴィア視点〜
はぁーー。今日は初めて冒険者ギルドの仕事を受けている。アンナと一緒なら良かったのだが。まさかこうなるとは……。
「っと考えていますね、あなた」
そうだ。こいつと一緒なのだ。アンナは私とこいつを仲良くさせようと思ってこうしたのだろうが。逆効果だと思う。
「悪い?私はアンナと一緒に行きたかったの」
「拙は主人の命令なので、仕方なく、あなたと一緒に回っているのです」
「仕方なくね…」
「はぁ、主人の勇姿を見て起きたかったのに…」
「それはこっちのセリフよ」
本当こいつは人に喧嘩を売るのが得意よね。昨日、こいつの事を優しいと思った私が馬鹿だった。
「あなたのことはほっといて、拙は主人の為に獲物を狩って来ますのでここで待っといてください」
「はぁ?私がなんで待たなきゃいけないの」
「足手まといだからですよ」
「あなたよりは殲滅するのは得意だと思うけど?」
「はぁ、この森を潰してどうするんですか。あなたやっぱり馬鹿でしたか?」
「じゃあこうしましょ、どっちが魔物をどれだけ狩れるのか勝負よ!」
「分かりきった勝負はしたくないのですがね。いいですよ、どうせ私が勝ちますし」
「私の種族、忘れてない?これでも森林族だから森の中は得意なのよ」
「結果は変わりませんよ、それで勝負の勝者は何が出来るんですか?」
ふふ、そんなの決まってるわ。
「敗者は勝者の言う事を一回なんでもすることよ」
「いいですよ。ではこれを渡しましょう」
クズハはアイテムバッグを渡してきた。
「もう一つ持っているので、渡して起きます。フェアが良いので」
素直に貰っておく、このバッグは使えるし…。
「じゃあ1時間後にここに集合よ。いい?」
「いいですよ、拙はこっちで」
クズハは左の方に行くらしい。
じゃあ私は反対ね。
「ヨーイスタート!」
私は「気配遮断」を発動して森を進んで行く。下を見ると、土に足跡が付いている。出来てまだ新しい。これを追っていけば直ぐにでも魔物に会うはずだ。
足跡について行って3分、目の前にはゴブリンの巣が出来ていた。
ラッキー♪これであいつと差が出来るわ。
「ウッドアップ」
ゴブリン達の下から木が出てきて、ゴブリンを突き上げる。
あとは空中にいるゴブリンを倒すだけだ。
「メガファイヤ」
ゴブリンを一瞬で焼き上げる。火加減を間違えると全て灰になるから注意だ。
総勢15体のゴブリンの死体が出来上がった。
「あら、魔石もあるわね」
魔石とは魔物の内部でたまに見つかる石。強い魔物ほどよく持っている。色は魔物ごとに違う、ゴブリンは薄茶色だ。
「これでも結構稼いだと思うけど、あいつには負けたくないからもっと狩ろう」
シルヴィアはそう考えながら森の奥に進んで行った。
クズハはもうゴブリンを30体は倒していることを知らずに。
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〜クロワ視点〜
私は今マスターと別れてクサントスさんと一緒にいる。
クサントスさんは凄い!マスターの事をよく知っている。
『主人は戦いに負けた時は凄く機嫌が悪い。その時の主人に近づいたら細切れにされそうな感じだ。敵さんがそうだったからな』
『おぉ〜』
いいなぁ。私はその時に近づいて切られてみたいな。
マスターと会った時は激しかったなぁ。最近は何もやってくれないから寂しい。
『クサントスさんはマスターとどこで会ったの?』
『我は主人の家だな』
『家?』
『ああ、我は初めはその世界にいなかったんだと思う、存在自体がな。そして我が主人は我の元になるもので作ったのではないかと考えている。それに我が初めて主人と会った時、主人は大喜びしていたしな』
『じゃあマスターは生物を創り出すことが出来るの!?』
『あの主人だ。世界のトップの所に立っているとは聞いた事があるしな』
『世界のトップ…』
マスターが…そうだ、マスターは私に初めての快感を与えてくれた人だ。
ダンジョンで私の前に立った人達は私に何も出来なかった。私に押し潰されるか、逃げて飢えて死ぬしかないのだった。
だがマスターは生きてしかも私を見捨てずにいてくれたのだ。
世界のトップなんて当たり前だったのかもしれない。
『それでも主人は負けてくることはあったがな』
『マスターを倒すなんて………ベヒモスって奴が倒してた』
『ベヒモスだと!どこにいる!』
クサントスさんがいきなり焦り始めた。あれってそこまでヤバイ奴だったのか。
『もうマスターが倒しちゃったよ』
『流石主人か…何人で倒したんだ?』
『マスターと私、シルヴィアだけだよ。私とシルヴィアは殆ど何もしてないけど』
『そうか…あれは主人と主人の友人方10名で倒した事があると聞いた事があるが…まさか1人で倒してしまうとわ』
『マスターですからね』
この2組は悠々な感じで森を散策していた。
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〜アルーラ冒険者ギルド〜
今は魔物の素材の買取所に来ている。相手は勿論ソフィアさんだ。
「どういう事ですか!」
ソフィアさんがキレてる。そりゃそうだ、私だってこうなるとは思ってなかった。
ソフィアさんの目の前のカウンターには、ゴブリンのツノがカウンターからはみ出るくらいあるだ。
カウンターの広さは横2m、奥行60cmはあるだろう。そこから溢れるくらいだ多過ぎる。
「ゴブリンのツノだけでもどれだけあるんですか!」
そう他にもあるのだ。私が狩ったワイバーンとかだ。私なんてまだマシな方だ。それより問題なのが…。
「何なんですか、シルヴィアさんとクズハさん貴方達狩り過ぎですよ!」
この2人がこのゴブリンのツノの山を築いたと言ってもいい。私はこれの10分の1ぐらいだ。
その2人はそこで正座させている。
「はぁー、こんな事されると冒険者の低いランクの方達の仕事が無くなるんですよ。こんな事は今後しないでください。分かりましたかお二方」
「すまない、拙とこの女とで勝負をしていたもので、以外気をつける」
「分かったわ、流石にやり過ぎたと思ってる」
「それならいいです。次やったらギルドカード無効にしますから」
お、恐ろしい!この世界で身分証明書で1番楽なのに。しかもそんな事されたら働く先が無くなる。
「で、ゴブリンのツノだけで何個あるんですか…他の職員を呼ぶしかないか…」
ソフィアさんは鈴を鳴らした。すると2人のガタイがいい男性が出て来た。
「おう、ソフィアさん魔物の解体か?」
「いえ、違うんです。このゴブリンのツノの山の数を数えるんです」
「「は?」」
2人ともカウンターを見て固まった。
仕方ないと思う。こんなの見た事ないだろうし。
「スゲェー」
「これ全部嬢ちゃん達がやったのか?」
「殆どそこの2人」
正座している2人を指差す。
「嬢ちゃん達が今話題になっていたギルド長を落とした女なのか」
「「は?」」
「なんだ?違うのか?話によるとギルド長が女で動くなんて惚れたに違いないって話だぞ」
ちょっと待て。グラートが?惚れた?寒気がする。
「ソフィアさん?」
「その、あの模擬戦闘の事は他人には話ではいけないんですよ。だからこんな話が広かったのかもしれません」
「そういう意味なら落としてるわね。アンナが」
「「「え!」」」
「意味が違うよ!クズハも信じないで!私は女の子の方が好きだよ!」
「「「えぇ!」」」
あー!またやっちまったよ。早く誤解を解かなきゃ!
「そうだったんですか!ならあの話は本当だったんですか」
「「あの話?」」
もうこれ以上変な噂は聞きたくない。
「アンナさんが止まっている宿、あそこは女性しか入らないんですよ。だからあの宿は女性向けの宿なんです」
あぁ、だから男性がいなかったのか。
「その宿で泊まっている冒険者の方がいて、その方が怒ってらっしゃって、なんだろうと話を聞いたんです」
まさか…。
「その話は3日前の夜にやってる声がうるさ過ぎて夜眠れなかったと、それを聞いててアンナさんとかもあそこの宿にオススメしたなと思い、可哀想にと思ってましたが、やってたのってまさかアンナさんでは?」
ソフィアさんは
「………」
ソフィアさん、そんなに見ないで!他の人も見ないでーー!
「アンナを虐めないで、この子獣人だから仕方なかったのよ」
「あぁ、あれですか」
「ああ、あれか」
「クスリ無かったのか?可哀想に」
やめて!そんな目で見ないで!私を慰めないで!
もうダメ嫌だ………。
「プシュ〜〜」
「「「あっ」」」
私はその場で気を失ってしまった。
その後はシルヴィアとクズハがゴブリンのツノを全て換金して、総額45700となった。
他の魔物の素材は後日、鑑定して払ってくれるそうだ。
私が目が覚めたのはギルドから帰って、宿の中でだった。
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