召喚
今私達はアルーラの町の外に出て、草原のど真ん中にいる。
移動方法はペーダソスに乗って一瞬だ。ペーダソスには首輪を付けてもらった。ソフィアさんが言っていた目印だ。クロワは仕方がないのでバックの中にいて貰うことにした。クロワは「放置プレイですね!分かります!」と喜んでいたが…。
「さて、召喚出来るかやってみるか」
「何を召喚するの?」
「あれ?言ってなかった?」
「アンナの昔の従魔としか聞いてないわ」
「私が移動する時に乗せてくれた8本足の馬、スレイプニルだよ」
「…凄いので移動してたのね…」
「あと人も呼ぶかも」
「人?」
「出来るかわからないけど」
そう言い何もない草原の方に手を向ける。召喚魔法の為の呪文を言う。
「我の呼ぶ声に応えよ!我が従魔よ」
周りの雰囲気が変わる。目の前には魔法陣が現れ、周りは時が止まったかと錯覚する感じだ。
「そして我の招集に応じろ!いでよクサントスよ!」
ここで何も起こらなければ召喚は失敗だ。
魔法陣は輝きを増し、周りは風で荒れ狂った。目が開けていられない。
よし!これは最高だ!
風が止み、魔を開けて見るとそこには、ASOで見慣れた漆黒の8本足の馬、スレイプニルのクサントスがいた。
「クサントス!私が誰か分かる?」
クサントスは私の事をじっと見て来る。
「クサントス?」
『やはり我が主人であったか。失礼した、我はあのクサントスだ』
そう言いながら頭を下げてきた。
「おぉ〜、クサントスも念話出来たのか!」
『!?………それはこっちのセリフだ。主人と話せるとは思ってなかったぞ。』
「あはは、そうだね。そっちは何かあった?」
『ん?何もないぞ。主人がいつもの時間で来るのを待っていた』
時間の経過がしてない?ゲームだからしてないのかもしてないけど。
「分かった、ありがとう」
『そんな事はいいが…その後ろのは何なんだ?』
「エルフの彼女がシルヴィア、スライムがクロワ、黒の馬がペーダソスだよ」
『あなたの方がマスターより先に従魔になった先輩か…』
『凄いですね。主人の事を知り尽くしてそうです…』
私のことそんなに知らないと思うよ。……そうだよな?
『主人の事ならある程度は知ってるが…あとで話してやろう』
「はいはい、やめやめ、クサントスはなにを言うつもりだ」
本当に怖い。何かやったかな?
『ははは、主人は女々しくなったな。さっきあった時、誰だか分からなかったぞ』
そんなに変わったのか…。けどゲーム内ではロールプレイしてたけどな。
そう思っていたらシルヴィアがクサントスに近付いた。
「凄い…。これが馬の中で最高と言われるスレイプニルなのね」
『ありがとう、主人には初めてあった時と戦場で蹴散らした時ぐらいしか褒めてくれなかったよ』
まぁ、そうだけど。ゲームで感情伝えるのって難しくない?
「あとシルヴィアは念話使えないよ」
『なに!?それを先に言ってくれ主人よ』
「プププ、話通じてないのに」
『主人は変わらんな…』
クサントスを手に入れたのは、ガチャでだ。このガチャ色々出る、武器や防具、スキル、魔物、NPCまで出てくる。食費を浮かせてよくやったものだ。そしてスレイプニルはD〜SSSまである中のSSランクの魔物である。地上最速は他にいるが、1500m走をするならスレイプニルが勝つだろう。
「他の子は元気だった?」
『いつも通りだと言っているだろ』
それなら良かった。今は大きさ的に呼べない奴や、私のMP的にも呼べない奴らがいるからな。
『こちらに呼ぶ予定か?』
「今は無理だね…MP的にも。そうだ!私転職したんだ」
『は?何だと!あんなに侍好きの主人が転職!?』
「いや〜魔法使いたくて転職したんだ。大太刀だって魔法剣士なら使えるし」
『そうか…主人の好きなようにやるがいい。我は主人と一緒について行くだけだ』
「流石クサントス、前からそんな感じだと思っていたよ」
良かった。弱者には興味が無いとか言われたらどうしようかと思っていた。あとこれも聞いとこ。
「クズハはなにしてた?」
『主人の家の掃除を他の奴らとしてたが?』
普通のプレイヤーは宿でログインをするのだが、トッププレイヤーになってくると自分の家を持つようになってそこからログイン出来るようになる。
「ここに呼べると思う?」
『分からん。我も主人の声がしたから、その声に応えただけだからな』
声が届くのか…。よしやってみよう!
「今からクズハを呼ぶよ」
「アンナ、クズハって誰なの?」
「私の部下である、かっこ可愛い女の子かな」
「へぇ〜、何で呼ぶの?」
そこは疑問に思うよね。
「人手が今後もいると思うから今の内に呼ぼうと思って、パーティー的に考えて、足りない斥候をしてくれる職業暗殺者が欲しいから、私は弱くなってるし」
「そんなんだ、ふぅ〜ん」
シルヴィアにも説明したしやるか!
また精神を落ち着かせ、集中する。
「我の呼ぶ声に応えよ!我が部下よ」
魔法陣が現れる。
「そして我の招集に応じろ!いでよクズハよ!」
どうか来てくれ、頼む!
先程と同じように輝き始め、風が荒れ狂った。
目を開けると、目の前には忍者の服装をした黒髪を1つに束ねた女の子が膝をついて、跪いていた。
「主人の招集より、馳せ参じて来たクズハでございます。此度の命令は如何に」
「何もしないよ!てか立って!」
「承知しました」
クズハは先程のガチャでは無く、毎年やる乱闘イベントのランキング上位5名にもらえた自分で作れるNPCだ。自由度が大きくて、クズハを作るのに1時間は時間を潰したかな。
いや〜あのイベントほんとキツかった。一斉にプレイヤーが、トッププレイヤーを先に潰そうとしてくるのだ。私は路地に入って数人ずつ潰していったが、魔法使って路地ごと破壊してくるし、移動してたら遠距離からちまちまとうってくるし、本当に面倒かった。
そんな事より、これが私の部下であるクズハだ。身長は私より……10cmぐらい大きい…。胸は…頑張れば追いつくかも!
「主人どうかしましたか?」
ジロジロ見てたらダメだよね。
「いや何も無いよ、みんなは何してた?」
「拙とショウヨウとスイゲツが家の掃除を、他が御霊のダンジョンに入っていました」
NPCは普通プレイヤーと一緒に行動しないと動けないが、御霊のダンジョンの様なNPC専用のダンジョンはNPCだけで行動できる。私が欲しい物をとって来てくれるのだ。帰ってきたら欲しいものがあるという、素晴らしいシステムだ。
「そうか、ショウヨウとスイゲツ以外は御霊ダンジョンね…」
「拙が戻り皆を招集しましょうか?」
「いいよ、それより今日からクズハはこっちで働いてもらう」
「はっ!分かりました。差し出がましいと思いますが質問をしてもよろしいでしょうか」
こんな感じの口調や性格にしたのは私だが少しやめて欲しい。
「いいけど、その口調を他のみんなと話す様な感じに変えて」
「滅相もない!拙が主人にその様な話し方では、主人が他の者共に侮られてしまいます!」
「いいよ、私は女の子なんだし侮られるのは普通だよ」
こんなちっこいのを侮らない方が無理だ。
「ダメです!はっ、すみません。拙は主人が侮られているのを見るのが苦しいのです」
「まさかみんなそんな事思っているの?」
「当然でございます。主人の弟子のスイゲツやセッカなども同じでございます」
マジか!そんなに私慕われてたのか。期待に応えないと私から離れていっちゃうかも!
「まぁ私も私でみんなに応える様に頑張るから、そっちも口調かえてね」
「っ…主人の命令通りに……」
無理矢理してるみたいだ…。
そんなクズハにシルヴィアが声をかけた。
「あなたがクズハなのね。私はシルヴィアよ、一応アンナの相棒よ。今日からよろしく」
「主人の相棒?あなた程度の力で主人の相棒?フッ、冗談はやめてほしい」
「へぇ〜、あたなより強いと思うけど?」
「相手の力量も分からないとは……そんな事も分からないなんて主人の相棒なんて不可能ですよ」
待て待て!なんで喧嘩になる!
「はいちょっと待て、何で喧嘩し始めるのクズハ、シルヴィア」
「私はこの女より強いと思うからよ」
「拙は主人の相棒に合ってないと思いそう発言しましたが」
「私はアンナが記憶を失ってからクロワの次にずっといるのよ。後から出てきた新参者に色々言われたく無いわ」
「ハッ、あなたは主人の面倒を見てくれた事は褒めましょう。だが、相棒云々は関係ありません。主人の相棒にふさわしい方はもっと他にいます」
ダメだ。この子らエゴが強い。
「まぁ待って。シルヴィア、私はシルヴィアのことを相棒だと思ってるよ。強さ云々は気にしないで、私の方が弱いし。クズハはシルヴィアが私の相棒だということを認めて、お願いだからこれ以上争わないで!」
大きな声を出して言ってみた。これで納得してくれるかな?目を開けてちらっと見る。
シルヴィアは少し勝ち誇った様な顔で、クズハは少し悔しそうな顔をしていた。
(ふふふ、私のこと相棒だって、やった!それにさっきの最期の必死そうな顔も可愛かったなぁ)
(あの人を主人の相棒と認めるしか無いか…それにしても主人は可愛らしくなった………本当に可愛いですね)
2人が考えてることはあまり変わらなかった。アンナは知り得ないことだが。
良かった、納得してくれたか。これで戦いの時に支障が講じることも無くなるだろうな。
そう考えているとクズハが質問してきた。
「主人、他の者達もこちらにお呼びになるのでしょうか?」
「はい、尊敬語アウト」
「っ…主人、他の者達は呼ぶのですか?」
そこが妥協点か。
「人に会う時はアンナって言ってね。間違えたらお仕置きするから。質問の答えは今は無理だね。MPというより召喚魔法で制限されてる」
「?、主人はアイテムで拙を呼んだのでは?」
「私ね、魔法剣士に転職したの」
「なっ!ということは今は弱体化されているのでは?」
そこはクサントスと同じ反応か。
「そうだよ、今はレベル23の雑魚だよ。さっきの説明の続きね、レベル1だからまだ2体までしか呼ばなかったの」
今の私のステータスには、召喚魔法lv1【2/2】と表示されている。
クズハの返答がないな、………絶句してる。
そんなに私が転職するのがおかしいのか。
「主人が転職するなんて…あんなにレベルが下がるのを恐れていらっしゃったのに…」
「前はね、今は魔法使いたいから変えちゃった」
「主人の御心のままに」
「そうだ。召喚されてなんか変わった事とかない?」
「ありませんが」
一応鑑定魔法でステータスを見ておく。あっ弾かれた。
「主人よ、すみません。「隠蔽の首輪」はすぐに外します」
「ごめんね、私も忘れてたよ」
再度ステータスを見てみる。クズハとクサントスのステータスはこれだ。
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名前:クサントス
種族:スレイプニル
レベル:200
年齢:1
HP:39500
MP:17800
STR :14570
VIT :9840
AGI :14800
DEX :650
INT :12400
主従:マスター【アンナ】
スキル
俊足lv9、空歩lv6、気配探知lv6、突進lv6
魔法スキル
風魔法lv8、土魔法lv5
パッシブスキル
風圧無効lv6、体力増大lv6
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名前:クズハ
種族:人間族
年齢:1
職業:暗殺者
レベル:200
HP:19740【2500】
MP:18900【2500】
STR :9080【4500】
VIT :3470【2500】
AGI :11230【2500】
DEX :13400【2500】
INT :7560【2500】
装備
装飾:漆黒雷の腕輪
頭:双玉の髪留め
胴:黒美の上衣
右腕:黒美の手甲
左腕:黒美の籠手
脚:黒美の袴
靴:黒美の草鞋
武器:小太刀【闇霧】
スキル
投擲lv10、魔力操作lv6、神速lv10、気配遮断lv10、消音lv10、探知lv10、暗殺lv10、技量lv8、偽装lv10、鑑定lv8
魔法スキル
火魔法lv6、深闇魔法lv6
パッシブスキル
短剣術lv10、剣術lv8、弓術lv6、魔力量増lv6
装備スキル
雷属性付与lv6、弱体耐性lv6、影移動lv6、透明化lv6
武器スキル
霧化lv-、収集lv6、盲目化lv6
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ステータス変動は起こってないし、状態異常もなっていない。
ゲームでは関係なかったけど、年齢はどうするか。クズハは「偽装」でいけるが、クサントスがなぁ。誰もクサントスを鑑定しないと思うしいいか。
「クズハ、クサントスこれからよろしく」
『主人よ、前からではないか』
「拙は前から主人の為に働いています」
通じ合ってないのに、同じ事言ってる。
「そうだね。これからもよろしく」
パーティメンバーにクズハとクサントスが入った。
一応クサントスとペーダソスとクズハの主人の言い方が、
クサントスが「しゅじん」
ペーダソスとクズハが「あるじ」です。
ややこしいですね。
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