冒険者ギルド③
地下でグラートを治して、今はギルドマスターの執務室にいて、ティータイムになっている。
「はっははは。いや〜完敗だったね。どこが弱いんだよ。普通に強いじゃないか。しかもあの魔法剣士だったなんて」
「最後まで手加減してくれた、グラートさんのお陰ですよ」
「そんなこと言わないでくれ、ははは」
いや、私は冗談じゃない。この人もっと強いと思う。それにアレ付けてるし。シルヴィアも気付いているようだ。
「その指輪ステータス劣化がかけられてるんでしょ?」
「ありゃ、エルフにはバレちゃうか…」
「アンナも分かっているでしょ?」
「そりゃね」
私もそれ持ってるし。
「これが何かをわかるなんて、君たちは面白いな。シルヴィア君は魔法を無詠唱で打ってきたり、魔法師なのに剣でかかってくるんだものな。アンナ君に至っては速すぎて全く分からなかったよ,。しかも回復魔法も使えるなんて、ははは」
グラートが笑いながら見てくる。うん、ウザい。それを破ってくれるのがソフィアさんだ。
「ゴホン、ギルド長、アンナさんとシルヴィアさんのランクはどうするんですか?ギルド長が弱くなってても負けるのなんて初めてですし」
「私達は目立ちたくないから、Fからで良いですよ」
グラートはため息をついて答えた。
「それがダメなんだよ。強い者を下の階級で遊ばせてたら、その階級の冒険者達の仕事がなくなるからね。それぞれあった仕事をしてもらわないと」
「じゃあ、別に下の階級にずっと居るつもりないし、普通に上がっていく予定だったから良いかな〜って思ったけど、目立つから無し」
「普通なら喜ぶんですがね」
「私はコツコツやっていきたいの!初めから目立ちたく無いの!だからランクはFでお願いします」
アンナに行っても無駄と思ったのかシルヴィアを見ているが、
「私も目立ちたく無いから」
「はぁーー。我儘だね、君たち。良いよ、どうせ何かやっていけば、君たちならすぐにランクは上がると思うし」
「ありがとう、ギルドマスター」
満面の笑みで答えてやろう。
「君みたいな可愛い子に笑顔で言われるのはいいな。……どうしたんだいシルヴィア君、君怖いよ」
シルヴィアを見るとグラートを凄い睨んでいる。
「どうしたのシルヴィア?」
「いえ、何も無いわ。コイツを殺したくなってしまっただけ」
危ないよ!まだギルドマスター何もやってないよ!
「じゃ、じゃあこれで僕は失礼するよ。後はソフィアにギルドの事を聞いてくれ、また今度」
明日から立ち上がり、そそくさと部屋を出て行った。ここあなたの部屋だよね?
「ああ、行ってしまいましたか…。ホントあの人なんでも私に仕事を押し付けてくるんです。酷いですよね」
「そうですね」
色々出来ちゃうんだろうなソフィアさんは、美人だし完璧人間かも。
そこからはソフィアさんに、ギルドの事について教えてもらった。
ギルドの仕事は、冒険者ランクに応じた仕事しか受けられない。具体的には、上下1つ差のランクの依頼まで。ランクはGが灰色、Fが白色、Eが赤色、Dが鉄、Cが銅、Bが銀、Aが金、Sが黒色のカードになる。狩ってきた魔物の買い取りは、ランクG以外なら全て可能。一年間の内に一定量の仕事をしなければ、ランク降格や処分となる。冒険者同士ののいざこざは、冒険者の負担となる。ギルドは一切関与しない。
「こんなところね。他に聞きたいことはある?」
「従魔の登録とかはいるんですか?」
「従魔がいるんですか!やはり凄いですねアンナさん達は。ああ、まずはギルドにて登録してください。登録したら従魔と分かるように目印を付けてください。あと町の中で暴れたりしたら討伐対処になることがあります。その所は注意してください」
「分かりました」
クロワまペーダソスも賢いから大丈夫だな。
「あとはギルドカード作成をするだけです。2階に行きましょう」
今は3階にある執務室だ。執務室から出て階段を降りてすぐの扉を開いて中に入った。真ん中には丸い水晶玉が置いてあった。
「ではこれに触れててください。すぐにすみますので」
「アンナが先にやってもいいわよ」
「ありがとう!」
少しワクワクしてたからなギルドカード楽しみだ。
水晶玉に手を触れると淡く光り出した。その横ではソフィアさんが水晶の横にある機械にカードを入れていた。
「はい、出来ました。これがアンナさんのギルドカードです」
おぉーこれが私のギルドカードか、白色だけど。このあとすぐにシルヴィアもカードが出来た。
「カードにはご自身のステータスが書かれています。表記したく無いものを隠せることができます」
私はカードを見てみる。へぇーこっちでは自分の年齢見れるんだ……………13歳?
「えぇぇえ!?」
「どうしたのアンナ!?」
「不備がありましたか?」
「いえ、ステータス見て驚いただけです、はい」
「ああ、たまに居ますね。自分がどれだけだったのか気になってた人が落ち込んだりしますし」
まさかまだ中学生始まりの歳だとは……。高校生ぐらいだと思っていたからショックだ。
私はギルドカードに、名前、種族、職業、年齢だけを表記した。シルヴィアも同じだった。
「アンナさん、シルヴィアさん、これで冒険者の仲間入りです。特例ですが、アンナさん達の担当受付に私がなりました。今後もよろしくお願いします」
「担当受付?」
「はい。Bランク以上パーティーには1つのギルドにつき1人担当の受付が対応します。アンナさん達はこのアルーラのギルドしか担当受付は居ませんが」
「何から何までありがとうございます」
「いいですよ。期待のルーキーなんですから」
私達は下へ降りていって、受付の所まで戻ってきた。
「今から仕事してみますか?もうすぐ夕方ですが、採取ぐらいならすぐ近くにありますし」
どうしよったかな。お金は欲しいし…。そうだ!
「魔物の素材があるんだけど今売れる?」
「はい、右奥のドアに入って待っててください。あとで私も行きますので」
ソフィアさんはカウンターの奥に入っていった。
周りの冒険者に見られて居たので、さっさと右奥の部屋に入って行った。
中には個室が5つ並んで居た。
しばらく待つと奥から2つ目の扉からソフィアさんが出てきて。手招きをして私達を呼んだ。
入ると中はカウンターになって居た。
「さて、魔物の素材を拝見させてください」
私はバックの中から出すふりをして、アイテムボックスからグリーンウルフの革を取り出した。
「これは…綺麗に解体されているグリーンウルフの革ですね…解体も上手いんですね」
私じゃ無いけど。
「解体なども綺麗ですし、これなら1000メルはしますね」
おぉ結構高い!アルノルトさんの借金まであと2000メルだ。アルノルトさんには宿代などももらって居たのでこの値段だ。
「まだあるんで全部出しますよ」
1枚、2枚、3枚、4枚
「えぇ、まだあるんですか?」
5枚、6枚、7枚、8枚合計9枚分のグリーンウルフの革だ
「そのバッグ、マジックバッグですか?あまり人に見せてはいけませんよ。マジックバッグは貴重ですから」
やっぱり貴重なのか。隠しておいてよかった。けど、私のアイテムボックス、殆ど上限無いけど、マジックバッグは容量などあるんだろうか?
「マジックバッグの容量ってどんなくらいですか?」
「容量は物に寄ります。小さいのならそのバッグの2倍くらい、大きくなるとそのバッグの10倍は入りますね。アンナさんのは量的にはどの程度ですか?」
「私のは3倍程度です」
それの1000倍はくだらないが。
「大きいですね。これら8枚も同じくらい質が良かったので合計で9000メルですね」
やっとアルノルトさんの借金返せた。
「こちらが代金です。ご確認ください」
千メル札9枚を受け取り、確認してバックの中に直す。その時に金貨のとこを思い出した。
「ソフィアさん今って星歴何年ですか?」
「星歴ですか?今は2523年ですが」
「え!」
「あれ?間違ってましたか?」
シルヴィアが封印されてから千年間も経っているって事か。横を見るシルヴィアは哀しそうな顔だった。これは大丈夫じゃないな。
「オススメの宿ありますか?」
「宿なら「楠の宿」がおススメです、ルートはこの紙の通りに行けば着きますよ」
用意周到だな。
「ありがとうございます、明日にもギルドに顔を出します」
「ご利用ありがとうございました。また明日会いましょう」
私はシルヴィアの手を取り、さっさと冒険者ギルドを出て行った。
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ここか「楠の宿」は。
見た目は小綺麗な少し年季のある宿だった。
中に入って見る、1階は食堂のようだ。今は夕方なので客はあまり居なかった。カウンターに居た店員の女性の人に声を掛けた。
「いらっしゃいませ、宿のお泊りですか?」
「うん、2人で3日ほど、一部屋でいい」
「親御さんは居ないんですか?」
「私達冒険者だから」
冒険者カードを見せる。店員さんは驚いたようだが本物と分かったようで、
「本物ね。まぁいいんだけど、一泊800メル、食事付きで1200メルよ」
「食事は部屋で食べてもいい?」
「取りに来て返却してくれればいいよ」
「じゃあ、食事付きで3日間」
「わかりました。これが部屋の鍵ね。2階の右側1番奥の部屋よ」
「わかりました。シルヴィア行こ」
シルヴィアの手を引いて2階の部屋にたどり着いた。部屋は綺麗に保たれており、ベッドと机も1つあり、タンスもあって、トイレも付いてる。なかなかいい部屋だ。
「宿に着いたよシルヴィア」
シルヴィアをベッドに座らせた。
「…そうなの…綺麗な部屋ね…」
やっぱり元気がない。そうだ、宿の料理貰えるか聞いてこよう。
「私、料理もらってくるから少し待っててね」
私はベッドから立ち上がろうとすると、シルヴィアが後ろから抱きついてきた。涙腺が崩れかけていた。
「もう……私だけ1人にしないで………一緒にいてよ…」
「シルヴィア………私は一緒に居るよ。……悲しみを溜め込まず、泣いても良いんだよ」
「…うぅ……っ…アンナ………うぅ……」
私に抱きついて泣き始めたシルヴィアは、日が沈みかけるまで泣き続けた。
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「…スゥ……スゥ……」
シルヴィアは泣き疲れてベッドで寝ている。
やっぱり、もう家族がいないという事実が酷すぎたんだろう。58歳でもシルヴィアは子供のような性格だからな。
「………」
日本の私の家族も、私の事で悲しんでるかなぁ…。妹の夏菜は大丈夫だろうか。家事全般は私がやってたからな。お母さんもお父さんもいきなり死んでしまっては仕事どころじゃないからなぁ…。
そう思い返していたら、私の膝の上に水滴が落ちた。
「あれ、雨漏りしてるのかな?」
外は夕焼けの空が広がっている。これは私がここにきてから心の奥に押し込んでいたものだ。現実を見ないようにしてきた。シルヴィアの事を見てそれが崩壊したのだ。
「…うぅ……会いたいよ…お母さん、お父さん、夏菜…っ……うぅ……」
ポタリ、ポタリと水滴が部屋の床に落ちていく。
音が止むとアンナは自然にシルヴィアの横で寝ていた
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