表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/135

白い夢



現在、私達はシルヴィアとアリア達の迎えと合流し王城付近まで歩いて来て、誰も居ない静かなテントの中のベッドで横になりシルヴィアに魔法で治療してもらいながら腕がこうなってしまった経緯を話していた。


「そう、ここまで酷使するなんて……アンナ、その技あまり使わないでね。「再生」があったとしても後遺症が残るかもしれないわ」


「日に1回なら問題ないよ、2回やったらこうなっちゃったけど」


「それでもよ、他の人がやれば腕が力に負けて腕が消し飛ぶわよ」


数ヶ月前の私だ…。


少し気まずそうなアンナとは別に深刻そうな顔でシルヴィアは腕を付与魔法を駆使し治していく。

さて、ここからが本番よ。


「アンナ、今からお喋り禁止ね、分かった?」


「分かった」


意識を集中して腕に「麻痺」をして腕の中をレントゲンのように見ながら、内部で千切れた筋繊維を元のように繋ぎ治していく。

額から汗をかき、頬を伝い首に流れ落ちていく。

うわぁ、エロ……って何思ってんだ!?


真剣にやっているシルヴィアを見てむらっときたアンナは煩悩を打ち払おうと目を瞑り無心にする。


脳内のイメージを消せ!真っ白に真っ白に真っ白に、真っ白、に、真っ白………。





ふわりと浮遊感と共に目の前が睡魔が襲い暗くなっていく。


いや、シルヴィアが治療中なのに寝たらだめだ、起きなきゃ。


眠気を押し殺し目を開けると、目に白く眩しい光が入る。

目をパチパチさせ慣らして目を開けると一面真っ白な空間に座っていた。


「え、何処ここ?さっきまで確かにテントの中に居た筈だけど……あ、夢か」


頬を両手で抓るとヒリヒリと痛みがある。


「それじゃあ夢じゃないのか……」


「いや、アンナさんこれは夢ですよ」


背後から突然男性の声が聞こえびくっと反応して振り向くと、肩まで伸ばした黒髪にスラリとした顔立ちの紺色の服を着た若い男性が立っていた。


「いやはや、まさかこの光景を見て夢じゃないと発言されるとは驚きましたよ。これは貴方にとっては日常茶飯事ですか?」


何だこの地味にイラッとくる喋り方は……。


「いえ、ないですけど……すみませんが貴方と会った事ありましたっけ?」


「ああ、私は名前を知っていてもアンナさんは顔合わせは初めてでしたね」


男性は右手を胸に当てて頭を下げる。


「初めまして私は……名前は「悪魔」と言います」


「悪魔…?種族じゃなくて名前が「悪魔」なの?」


「はい、名前が「悪魔」です」


「悪魔」は名前の所を強調して言う。


「そうなんだ……何で貴方がここに?」


夢なら知人が出て来ると聞くが、今目の前にいるのは全く赤の他人の男性だ、普通は夢には出ない筈だ。何か理由がある筈だ。


「ちゃんと私が現れた説明はするのだが、あと1人あって欲しい人物がいてな。少し待ってろ」


そう言うと「悪魔」はその場からフッと姿が消える。


現れた説明、誰かが私の精神を操ってるのか?痛みは何もないけど……まさか、今治療しているシルヴィアにも何かやられたのか!?

そうならば、いや、どっちにしろ「悪魔」に聞き出さないとな。


「殺意剥き出しておっかないな」


さっきの「悪魔」とは違う女性の声が背後から聞こえ振り向き際にに手刀を首に打ち込む。

だが、振り返った瞬間に視界に映ったのは白い風景に背中に硬い壁なようなものに当たった。

誰も居ない?いやこれは…。


違和感があった。重力が胸から背中の方向に力がかかっている。

と、言うことは私は地面に仰向けで倒れているのだ。


「ふん、たわい無い。我の力を持つ人間がこの程度で倒されては困るがな」


私の頭の方から声が聞こえる。

すぐに体を起き上げると、腰まで伸びた長く鮮血のように赤い髪にアメジストのような眼を持ったスレンダー美女が「悪魔」の横に立っていた。


「今何を……」


私が声をかけると何かした張本人の美女は呆れた顔になり、アンナを無視して「悪魔」に話しかける。


「ねぇ、この子本当に我の力を使う事が出来るの?」


「出来るようにするって私達決めましたよね?」


「言ったさ、けど今さっきのを理解出来てないのは想定外なのだけど?」


「さっきの技は私もされたら何をされたか分からないと思いますよ」


「あんなものただ片手でひっくり返しただけだぞ」


「そうなのですか……まぁ、それより時間がないので座りっぱなしのアンナさんに自己紹介をお願いしても?」


「ああ、我はストレングス。コイツみたいに変な名前じゃない」


「えぇ、酷いですね」


「お主は黙ってろ」


ストレングスは「悪魔」を一瞥して、アンナの目の前で膝を曲げて、アンナの顔の高さにして目を合わせる。

何かされるのか…?

少し構えるが、予想とは裏腹にストレングスは話し始める。


「萎縮するな、ただ話すだけだ。


さっきのお主の攻撃自体は並みの相手なら殺すことが出来る強力な手刀だった、褒めておこう。

だが、未知の相手との戦闘で背後を取られた場合はすぐさま距離をとることをオススメする。その時ちゃんと相手を見ながら離れる事だ。


お主は戦闘経験が豊富だが、背後を取られる事が殆どなかっただようだな。これからは我が出来る限り色々と教えてやる。

分かったか?」


「は、はい…」


アンナが恐る恐る返事するとストレングスの口角が少し上がったように見えた。


「よし、次は明日、今晩寝た時だ。ちゃんと覚えておけよ、それじゃあな」


気付かぬうちに指を近づけ来ていたストレングスは私の額に体が浮く勢いのデコピンをする。





「いッッッだ!?」


アンナは涙目を浮かべ、額を押さえながらベッドから跳ね起きる。


「ど、どうしたの!?まだ腕が痛い?それとも他の所が?」


「え、シルヴィア?ってここは……」


シルヴィアが心配そうに駆け寄って来て、アンナは驚いて周りを見渡す。テントの中に戻って来ていたようだ。


「いや、変な夢見ちゃって心配させてごめんね」


「夢なら良かったけど…治療は寝てる間に終わったけど本当に痛みはない?」


「大丈夫、腕は普通に動くよ」


心配するシルヴィアに手を握ったり、腕を振ったりして治っているのを見せる。


「ならいいけど、あと1日腕での筋トレとか素振りは絶対にしちゃ駄目よ。振りとかじゃないわよ、絶対に駄目よ、分かった?」


「わ、分かったよ…」


顔を近づけて来たシルヴィアの迫力に少し驚きながらも頷くが、シルヴィアはさらに近づいて来た。


「し、シルヴィア…?」


アンナの戸惑いを無視して顔を近づけて来る。


「シルヴィア、ここじゃまずいよ…」


「誰も居ないし、私が治療するのに人を近づけさせないようにしたから誰も来ないわよ」


シルヴィアの人形のように綺麗な手がアンナの頬に触れる。

1ヶ月以上シルヴィアと触れ合ってなく我慢の限界だったアンナは自然と体がシルヴィアに引き込まれていく。


久し振りに見る綺麗なシルヴィアの顔。

陶器のように滑らかで綺麗な肌、エルフの先の尖った長い耳、翡翠色の綺麗な艶のある髪、同じ翡翠色で透明感のある眼、全てが私を魅了する。


「アンナ…」


「シルヴィア…」


シルヴィアの薄桃色の唇が触れる。

と、思ったがオホンっとアンナともシルヴィアとも違う誰かの咳が聞こえる。


「ノックせずに入ったのはすまないけど、ここでイチャイチャするのはやめてくれないかしら?しかも、妹と同じ性癖だとわね」


長いスカートのメイド服を着た金髪の獣人のレーヒィアがテントの入り口の幕を上げて立っていた。


「「レーヒィア!?」」


シルヴィアとアンナは驚いて2人ともその場から飛び跳ねて離れる。


「いや、そこまで驚くか……まぁいい、話はすぐ済むわ。

アンナ、シルヴィア、妹を救ってくれてありがとう、また家族を失う所だった」


レーヒィアは直角に頭を下げる。

さっきシルヴィアに聞いた話でカストリアの治療をしたのがシルヴィアだったらしい。


「いや、私は何も…」


「そう謙遜するな、お礼は後で…カストリアが起きてからちょっとした晩餐をするつもりよ。私からは……貴女達に王城の一室、貸してあげるわ、ちゃんと防音対策はしてある部屋よ」


「いや、別に防音じゃなくても…」


「そう?そこはサービス、大声出しても問題ないわよ」


う………使わせて頂きます。


「そろそろ私は行かなきゃならないから、部屋への案内は後で私の使いの者、メイドをここに来させるわ。それじゃあまたね」


「え、ちょっとま……」


アンナが言い終える前にレーヒィアはテントの外に颯爽と出て行った。


「あ…行っちゃった…」


「まぁ、彼女はお偉いさんだし今は仕事が山積みよ」


「そうだねって、シルヴィア!?」


ベッドの少し離れた所に座っていたシルヴィアがいつの間にか肩が触れる所まで来ていた。


「ねぇ、お言葉に甘えてその部屋でする?それとも…」


「それとも?…ンンッ!」


アンナの獣耳にフッと息がかかる。


「ここでする?」


「駄目だって誰か来るでしょ!」


「いえ、このまま行って構いませんよ、おかずになりますので」


また声が聞こえて驚いてそちらを見ると、レーヒィアと同じメイド姿をした女性2人が熱心にこちらを見ていた。


「いや、おかずにするなよ!てか、貴女達もそっちの好みなの!?」


「私は両方です」


「私は…どちらかと言えば女性の方がですかね…まぁ、それよりアンナ様方をお部屋へ案内します。その後じっくり見せてもらえればよろしいかと」


「案内は嬉しいけど、見せないよ」


「「まぁまぁ、そう仰らずに」」


「ハモるな!何と言っても見せないからな…行こうかシルヴィア」


アンナはやれやれと思いながらベッドから降りてシルヴィアの手を取り降ろしてあげる。

2人は顔を見合わせて微笑み合うとシルヴィアとアンナは互いの手を握って、変態メイド2人の後をついていったのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



その日の夜、王城内で大事件が起こった。

王城のとある一室にて心臓を抉り取られた変死体が2つ見つかったのだ。


騒ぎを聞きつけアンナとシルヴィアもその場に向かうとそこには床一面に血が広がり、壁の側には血の抜けた青白い顔で地面に仰向けになったコルトとレーヒィアの死んだ姿があったのだった。



不備な点があれば感想にて優しく教えてください。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ