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クロワ復活



刀を振り下ろしレイアを切り刻んだ瞬間、落ちる残骸の中から目的のアレを掴み見る。

アンナの手のひらには漆黒の球体、クロワの核が転がる。


安打と共に核を握りしめ、核をポケットに入れてアンナは足元の血のように散った黒の粘液、元レイアだったものを見ると刀をしまいその場にしゃがみ込み、加害者でもあり被害者でもある彼女のことを思い手を合わせ目蓋を閉じる。



数秒の黙祷の末に立ち上がり、アンナはその場を去ったのだった。




「お?終わったようだな。アンナの事だからもう少し早いと思ったが手こずったのか?お前達はどう思う?」


外でのアンナとレイアの戦いが終結したのを感じ取ったスイゲツは周りに漂っている分身体達に声をかける。


しかし、分身体達は水中なのに息切れをしていて体に力が入らず何も言い返せない。


「ん?ああ、そうだった。もう既にそこまで弱って来たか、すぐ楽にしてやる」


スイゲツの一言と共に分身体全員の体から水の刺が突き出し、息が止まり形が保てなくなって液体状になった。


「外は硬くても中は柔らかいっと……」


スイゲツはポケットから出したメモ帳に言った事をそのまま書きポケットにしまう。


「さて、まずは合流するか」


指を鳴らし魔法を解除すると、今さっきまで周りにあった大量の水が一瞬で消えて、スイゲツと元分身体の液体だけが地面に落ちる。


綺麗に着地したスイゲツはすぐにアンナの元に向かおうとすると、既にアンナがはっきり目に見える所まで歩いて来ていて、慌ててアンナの元に向かう。


「ちゃんとケリをつけれたか?」


「うん、ちゃんと核も取り返したよ」


アンナはポケットから核を取り出すとスイゲツに渡す。


「コレを戻せば起きるよね?」


「起きて貰わないと困る…」


スイゲツの手に魔法陣が浮かぶ。

ボーリング玉程の大きさの黄色い液体が現れ、中に黒いモノが漂っている。


コレがクロワか……想像してた人が培養液に入ってるのとちょっと違ったな。


アンナがそんな事を思っている間にスイゲツは液体に腕を入れ、クロワに無理矢理突っ込む。


「さて、後は運任せだ。復活するかこのまま植物状態か……」


ゴクリと2人は息を飲んでクロワを見る。

早く起きてくれ、早く、早く、早く!


その思いとは裏腹にクロワは何も変化がない。


「スイゲツ……まだ、かな…?」


アンナの問い掛けにスイゲツは何も答えずジッとクロワを見る。

愚問か、治しているのはスイゲツ本人だ。何も言わないと言う事は問題ないと言う事だろう。私が変に焦らず待てばいいだけの事だ。


目を閉じて少し落ち着かせてから目を開くと、何がどうなってかスイゲツがクロワを振り上げていた。


「え…?スイゲ…」

「起きてるなら……さっさと、動けや!」


アンナの声を遮る大声を出して、培養液に入ったクロワを思いっきり地面に投げつける。


『痛っっっっったい!』


クロワの懐かしい悲鳴が脳内に響き、地面にぶつけられたクロワがプルプルと動いている。


「はぁ、やっぱり起きてる…」


「クロワ!!!」


スイゲツの素っ気ない態度とは逆にアンナは地面に膝をついてクロワを抱き締める。


「よかった、本当に起きてよかった……」


『マスター、ごめんなさい。私は欲に飲まれてマスターを…』


「いいよ、欲は生存本能に刻まれてるからね。私は魔物でもあるのを知って良かったよ」


『マスター……そんな事知ってたくせに…』


「え?クロワ何か言った?」


『ふふ、何も』


念話だから聞いてくるくせに。


「2人でイチャイチャするのはその辺にして、早くガウェインの所に戻らないといけないだろ?」


「あ、早く行かなきゃ!クロワは私に纏って、スイゲツはそのまま一緒について来て」


「『了解』」


アンナが走り出し、体にクロワが鎧のように纏わり、スイゲツが横について走る。


「お主が言った通りに既にシルヴィア達には連絡して向ってもらっているぞ。ちゃんと怪我人は治して来たらしいぞ」


「それはよかった。私達だけじゃ流石に相手するのは無理だからね…」


「それ程の相手か………お主その腕はどうした?」


走るアンナの腕に力が入っていない事に気付く。


「ああ、ついさっき武技を使ってね…」


「武技?……カストリア王との試合で使ったアレか?それだとしてどうやってレイアを倒した。試合を見て分かったがほぼ同時に8つ程に分かれて斬られた。ただの武技ではあるまい、あの武技はなんだ」


スイゲツの問い掛けにアンナは数秒の沈黙の後、話し出す。


「あの武技は秘剣「八岐大蛇」。

刀を振り下ろした際に空間屈折をさせて、ほぼ同時じゃなくて、同時に8つの斬撃を生み出し斬る武技だよ。

ただ、無理矢理刀の軌道を8つにしてるから腕への負担は半端じゃないけどね」


「じゃあ、お主は今…」


「今日はもう刀は振れない。けど、魔法があるからなんとか戦闘は出来るよ」


アンナは笑みを浮かべてスイゲツを見る。

だが、スイゲツはそれが創り笑顔だとすぐに見抜き、今のアンナに戦闘能力はほぼない事が分かってしまった。


腕に力が入ってない事同様、急いでいる時なのに走ってる速さがいつもより遅い事もおかしいと思ってたがそこまで酷使したのか……この後のガウェインの援護どうするか。


寝起きのクロワと腕を負傷したアンナ、スイゲツ自身も「鏡花水月」「山窮水断」の2つの大魔法で魔力をかなり消費しているのだ。

アンナの見立てただけでもガウェインが敵わない相手だ。勝てるのは不可能だとして救出するのにも今の状況でかなり困難するだろう。


どう戦うか走りながら算段を立てようと考え始めた時、地面に影が入る。


今は特に快晴とかではなく雲も所々ある天気だ、当然影があるのは当たり前なのだが、アンナ、スイゲツ、クロワの3人が違和感を感じて頭上を見上げる。


「何あれ……」

『うわぁ…』

「鳥なのか…?」


3人の見つめる先、空高くを飛ぶ1匹の鳥。

鋼鉄のような光沢がある黒い体に羽が刃物のように鋭く尖っている。

そしてとてつもなくデカい。羽を広げているとは言えリヴァイアタン並みの大きさである。


そんな馬鹿デカい鳥が羽ばたく。

それだけでかなりの距離があるはずの真下にいるアンナ達の元まで爆風が吹き荒れる。


「うわっ!」


アンナとスイゲツは風に耐え切れずに地面に倒れそうになるのを寸前でクロワが支える。

その状態が数秒続き、風がおさまった後立ち上がり頭上を見るが鳥も雲すらも消え失せ、快晴が広がっていたのだった。



不備な点があれば報告お願いします。

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