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救援からの絶体絶命



アンナの周りが心綺楼のように赤く揺らめき立つ。

目の前の敵を叩き潰す。クロワに手をかけ、更には無関係の少女さえも巻き込んだこのクズを徹底的に殺す。


両手を塞がれた状態のまま突撃しようとするアンナを焦ってアンナの腕を掴み止める。


「おい、アンナ!その両手はどうするのだ、武器すら持てないだろ!少し冷静になり少しぐらい待って!」


「……ごめん…」


やはりスイゲツに怒られるのは慣れてないようでスイゲツの叱咤にびくっと驚き、アンナの怒りが鎮まる。


「謝るより先に腕を出せ、手錠は我が切断してやるから」


スイゲツの手が刃物のように鋭くなり、刃に当たる部分が万華鏡のように光がキラキラと反射する。


これは水を高圧で打ち出し水圧カッターにして、更にチェーンソーのように連続で回転させ切れ味を増している。

アンナの持つ「春光」より単純な切れ味は高く、スイゲツの鋼鉄以上の硬さの体、首を簡単に断つ事が出来るのが証拠である。


アンナが出した両腕にはめられた手錠をスイゲツは手を振り下ろして一瞬で切断する。


アンナはこの行動にびくっと驚く。

いつもの慎重なスイゲツなら切断する時もアンナを傷付けないよう気を配ってやるが、今回は躊躇いもなく切ったたのでアンナはかなり驚いている。


「これで今は動かせるだろ。残りは帰ってからだな」


「う、うん、ありがとう」


スイゲツが不機嫌になっているのが分かるが、私が原因かレイアが原因かが分からないので何も言えないなぁ……理由が分かってから後でちゃんと謝っておこう。


アンナは深呼吸して意識を戻し、鞘から刀を抜き出し構える。


私達が話している間に回復したレイアと茶髪の女が既に起き上がって砂埃をはたいていた。


「追撃して来なかったのは駄目だな、私達は回復してしまった。スイゲツらしくないぞ?」


「ほぉ?追撃しなかった我の何処が駄目だと?」


わざとらしく溜息を吐いてスイゲツを挑発するが、スイゲツは何がおかしな点があるのか聞き返す。


「そりゃあ、こう言う事になるからな」


レイアが指を鳴らす。

その音と同時にアンナ達を中心に円を描くように人影が続々と現れる。


全員女性、って事はコイツらはレイアの分身体か、面倒な。


分身体が武器を構えてジリジリとにじり寄って来る。

見た限りでも軽く見積もっても40人はいる。いつもなら余裕だが、相手はレイアの分身体、並みの攻撃は硬すぎて通らない。

それに私達だけで戦うのはどう考えても不可能だ。


「ずっと私の跡を気付かれないように着けさせていたのだ。流石にアンナ、スイゲツ、格闘家ラークスの3人でもこの数は無理だろ?

大人しくアンナがこちらにこれば私達は他の3人を無事にここから出してやる。

利口なアンナならどちらを選ぶか分かるだろう?」


レイアが不敵な笑みを浮かべてアンナ達に近づいて来る。


アンナ達が弱った時に追撃しなかったミス。

だから、あの時にスイゲツを挑発し、私を倒した当て付けだ。

この包囲網なら流石に簡単には抜け出せない。あの少女は確実に仕留められる。


だが、予想外にもアンナは反抗的な目で見返して剣を構える。


「私が黙って付いて行くとでも?」


「今の状況を見れば分かるだろ?チェックメイトだ。無理矢理連れて行くか、大人しく付いて来るか。どちらか選べ」


レイアがアンナに手を差し伸べた。

だが、アンナが出るのではなく、アンナの横に居たスイゲツが前に出る。


「じゃあ、我は貴様を殺すと言う事にするかな」


流石のこの状況に血迷ったか?

そう思いレイアは全員に号令をかけようと手を挙げて、スイゲツの顔を見てゾワリと寝首を掻かれるような感覚になる。


不敵な笑みを浮かべ、既に罠に掛かった手足を動かせない獲物をどう調理するかと考えているような顔だ。


「全員退避!」


すぐさま周りにいる分身体に命令し、レイアも剣を構えたが、スイゲツはもう既にやる事を終えている。


「もう既に遅い「山窮水断」」


スイゲツが急激に魔力が高まり、魔法の発動と同時にレイア達の周りに息を吸う空気がない程の大量の水が満たす。


これで私を殺す気か。

だが、私は見た目は人だがスライムだ。水中は既に慣れている。


レベラル湾の海底でも生きて行けるクロワと同じ体であり、その状況での経験もあるレイアにとってこの状況は何も問題はない。

ただのスイゲツの徒労だ。


腕を4本に増やして、増やした二本の腕の指の間に薄い膜を張る。


これで水中で戦うのは造作もない。水中では剣の速度は遅くなるが相手も同じだ。

スイゲツに向き剣を構えるようとして気付く。

アンナとスイゲツ、2人の姿しかない。


ラークスと小娘は何処行った?

スイゲツが魔法を発動してから今まで僅か数秒、この短時間で目の前から消える事は不可能だ。

そうと考えれば……。


「お前ら逃したな!」


「ん?今頃気付いたか。貴様が自慢げに我らの周りを囲んでいる間にさっさと逃げて貰ったぞ。有利だと勘違いして要求してくる姿は無様だったぞ。我は笑いを堪えるのが大変だったわ」


「ちっ!」


半分は小娘の方にいけ、残りは私と一緒にスイゲツをやる。分かってると思うがアンナは傷付けてもいいが殺すな。


レイアと同様の姿になっている文体に命令し、一斉に左右に動き出す。

レイアもアンナ達の方向に突撃するが動きが止まる。

生物の生きる為の反応、前進するのは辞めろと体が固まってしまう。


だが、それが功を成して目前を高速の何がが横切り、前髪がはらりと散る。

驚いたレイアに言い忘れたかのようにスイゲツが言う。


「ああ、そうだ。我は笑いを堪えるのが大変だったが、アンナは別だぞ。まぁ、もう遅いがな」


レイアの前には紅黒き稲妻を纏い、紅眼と金眼の爛々と輝かせているが静かに水中に漂っているブチ切れたアンナがに目の前に居たのだった。



不備な点があれば報告お願いします。

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