傲岸不遜
ガウェインの前に居るのは間違いなく自信を負かしたアカネ本人だ。「太陽」の一撃を片手の剣だけで受け止めているのが証拠だ。
「アカネさん……?何故ここに…?」
ガウェインは驚きを隠せずに声が漏れたのを聞いたアカネはため息を付いて話始める。
「「ちょっとヤバいことになってるお前が行ってこい」って言われて飛ばされたの。
いつもならキレてたけど……まぁ目の前のコイツは私が来ないと相手出来ないから仕方ないけどね……」
「それは光栄だ。あの傲慢不遜のアカネが私をそこまで認めてくれているとは思ってなかった……だが、あんたに興味はない。すぐにそこを退けば寿命が短くなる事はないぞ」
「太陽」のその一言でアカネの雰囲気が一瞬で目に見える程の怒気を放つ。
「あぁ?私相手にその口調は何だ?分を弁えろ」
「それはこちらのセリフだ。邪魔をするなら死ね」
「太陽」は後退し受け止められていた剣を振り上げ、先程より速さと更に炎を剣に纏いアカネに振り下ろす。
極炎が壁となり迫りアカネとガウェインを飲み込む。
その一撃で闘技場の外周は焼き溶けて垂れ落ち、床は溶岩のように煮えたぎる。
その燃え広がる高熱の炎を「太陽」はじっと見つめ舌打ちをする。
「……何を食らったふりをしている。さっさと出てこい」
2人にさっきの攻撃を避ける動作は無く普通なら死ぬ筈だが、戦っている相手はあのアカネだ。これしきのことで傷すらも付くはずがない。
「太陽」の予想は悪い意味で当たり、目の前の炎が縦に割れて中から火傷すらない無傷なアカネがゆっくりと近づいて来る。
「流石にバレるか。もう少し時間を稼ぎたかったけど仕方ないか、はぁあああぁぁぁ……」
はぁっと明らかにワザと大きな声でため息をするアカネを見てガウェインがそばに居ないことに気づく。
「逃されたか……」
アカネとやるのは骨が折れる。
あくまで目的はガウェインでアカネと今やる必要はない。
ここは一旦退いてガウェインを見つけ出した方が計画的にも楽だな。アカネに悟られる前に行動するか。
「煙火幕」
「太陽」は口から火が入り混じった黒い煙を吐き出し辺り一面を覆い尽くす。
それだけでは退くことが悟られると考え、床を足で叩き割りふわりと浮き上がってきた少し溶けた岩をアカネが居る所に吹き飛ばす。
これで少しは時間は稼げる。
ガウェインはかなりの重症だ。さっきの時間で逃げても距離は限られている。すぐに見つけ一撃で仕留めればいいだけだ。
地面を蹴り空に飛び上がり、煙幕の外まで飛び周りを見渡す。
さっきの地震とガウェインと自身の戦闘で半壊した街が広がっているが肝心のガウェインが見当たらない。
飛び上がってから5秒しか経ってないので見つからないのは仕方ない。
面倒だと内心で舌打ちをした時、ふっと頭に影が入る。
まさかと思い咄嗟に剣を上に振り上げると甲高い金属音が鳴り響く。
すぐさま剣を弾き返し振り返ると宙に浮いたアカネが仁王立ちしていた。
「弱者ゆえの逃げ。いつもの事だから分かってるけど今回は駄目でね………だが、安心するんだ。お前でも私ならすぐに殺せる。ちゃんと苦しませないように気を付けてやる」
「ははははは、私を殺すだと?………たかが人間の分際で傲慢が過ぎるぞ!」
紅の炎がメラメラと「太陽」の体に纏っていく。周りの空気は更に温度が高くなっていき、「太陽」の体は薄らと揺らめき始める。
「ん?何が間違っている。私は世界で頂点に立っているのだ。私は上でお前は下、これ以外の何がある?」
アカネは不適に笑いながら本気になった「太陽」を小馬鹿にする様に指を下に向け完全にキレさせる。
「では、私が人間との核の差を教えてやろう!」
「是非して欲しいね……出来るものならね?」
アカネが手で挑発した直後、2人の剣がぶつかり合う。刹那の間に2人は百を超える攻撃を仕掛け、防ぎ、カウンターをした。
その際に生じた衝撃波はガウェインと戦っていた際とは比較にならない程の威力で、離れた場所にいるアンナの場所にも届く。
衝撃が体を通り抜け、ふわりと少し体が浮く。
背後で何が起こっているか気になるが今は前の事を対処しなければならない。
今のこの手が縛られた状態でコイツの相手をしなければならない。
両腕を塞がれたアンナが注視する目の前には手にレイピアを持った金髪の女騎士、レイアが微笑みながら剣を構えていたのだった。
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