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質問と急襲



コルトとカストリアの取っ組み合い(喧嘩)が始まってから5分後、今は先程まで兄弟喧嘩が行われていたとは思えない静けさの部屋に変わっていた。


その室内では先程まで暴れていたとは思えない程静かにじっと座っているコルトとカストリアと、隣に居るメイドも自身が知っている中でも強い2人を物理的に喧嘩両成敗して止めた目の前でニコニコと笑ってこちらに向いて座っているアンナを見て少し恐怖している。


しかし、アンナ本人は笑顔の通り別に怒ってはおらず、ただ喧嘩を止められて満足しているだけなのだ。

しかし3人から見たら怒りを通り越して笑っているようにしか見えないのでかなり恐ろしく感じている。


「やっと落ち着いた事だけど今から質問してもいい?」


そんなアンナが話しかけて来るのだ。さっきの事を思い出し3人とも同時にビクッと体が震える。


「ねぇ?何でそこまで怯えてるの?」


「お、怯えてないです。質問をどうぞ???」


震えた声でカストリアが言うとその口調を少し不思議に思うが自身の事の方が大事なので質問をする。


「まずはシルヴィアの居場所は知ってるけどガウェインは何処にいるの?」


「彼は多分だが今はここ、闘技場内に居ると思うぞ。我の命令を聞くまでの間は殆ど自由だからな」


「それじゃあ、何で私に会いに来ようとしないの?」


「ちょっとした鎖を付けているからな。勝手にアンナに会われたら我が困るな」


「ふーん、そうなんだ……じゃあ次は何であんな形でシルヴィアに合わせたの?」


気付いた時から不思議でならなかった。バレるとは思っていなかったのだろうか?


「それは本人がやりたいと言ってな。「治療など出来るから医務室に行かせてください」ってな。条件付きで行かせたのがあの結果だ。声や姿、匂いとかも色々と変えたんだが……何で分かったんだ?」


「そりゃ愛の力かな。言ってて凄く恥ずかしいけど」


「そうかお主の愛の力か……」


少し照れながらアンナが言うとカストリアは明らかに不機嫌そうに呟く。

この言葉は禁句だったかな?マズイ?


少しカストリアの事を気にしていると、カストリアの隣に居るコルトがカストリアから見えない位置の手でイケイケと合図をしてくる。

それじゃあ、話してもいいのかな?


「じゃあ次は何で男性に偽装してたの?」


さっき分かった事実の事がどうしても気になり過ぎて質問すると、カストリアの顔が真っ赤になり、かなり恥ずかしそうにもじもじしながら下を向いて話し始める。


「それは……その………ちょっとした家系の事情がね……」


「あ、そう言う事情なら別に…」


「いや、そんな面倒くさい事情なんぞないぞ」


私がまたマズイ話をしたのかと思い引こうとするとコルトがカストリアの話を真っ向から反対する。

何かに察したカストリアがコルトに突掴みに行こうとするが横にいたメイドが羽交い締めをする。


「え、じゃあ何で?」


「そりゃ、こいつが男が好きになれないから男装して女を娶ろうとしてるだけだからな」


「いっ、一旦黙れよ!クソ兄貴が!」


「まぁまぁ、落ち着きなさいよ」


「テメェもだよ!邪魔すんな、このクソ兄貴が!」


「「クソ兄貴ばっかり言われると悲しくなるぞ」」


「ハモるな!!!!」


微笑ましいなと思って話を聞いていて、ふと気になる事があった。


「えっと、メイドさんも兄貴なの??」


メイドさんはどう見ても女性である。

もう一度ちゃんと見ていくが顔、体、匂いなども女性だ。それにちゃんと胸も出ているし完全に女性だと思う。

カストリアがただコルトの事も纏めて行っているせいで兄貴と言っているのだろうか?


アンナが困惑していると、3人とも動きを止めてコルトとカストリアはメイドの方を見て、説明しろと目で訴える。


「はいはい、するわよ。まずは自己紹介がまだだったね。私はレーヒィア、カストリアとコルトは兄弟で、まぁ見ての通り可憐な美少女なんだけど……男なのよ。まぁ、こんな事説明するより触ってみたら分かるわよね」


そう言いアンナに近づいて来たレーヒィアはアンナの手を取ると自身の股間に手を当ててくる。


あ……………ある。


アンナは衝撃の事実を受けて頭の処理が追い付かず混乱し、カストリアとコルトはいきなりそんな馬鹿な行動をするとは思っておらず、すぐさまレーヒィアの頭を2人でぶん殴り止めさせる。


「おい!いきなりお嬢ちゃんにやるのはおかしいだろ!」


「そうよ!今後我の妃になる予定なのよ。そんな汚いものつけるな!」


「いったぁ……そう言うけど、この美少女レーヒィアちゃんの事をすぐに男と分かるわけ無いんだから、論より証拠、すぐに分かるのはこれしか無いのよ。分かる?」


「「分かるか!」」


再度2人でレーヒィアの頭をぶつ。

そんな光景を見ていて少しずつ理解してきたアンナはまたカストリアが気になる事を口走っていた。


「ちょっと待って、カストリア………妃ってどう言う事かな?」


「………………あ」


今まで秘密にしていた事がバレてしまったように、カストリアの顔に無数の汗が噴き出す。


「もしかして試合に勝った時の約束って、まさかだけど結婚しろって言うつもりだった?」


「いや、その……えーと……………はぃ…」


先程とは比にならない程顔を真っ赤にし体を縮こませて答える。

これはマジなやつか。


「え、何で私のことを?初対面の時、私かなり印象悪かったでしょ?」


「それは別に………」


「え、尚更何で?」


「……………一目惚れです」


「一目惚れね、一目惚れ、一目惚れ…………一目惚れ!?」


アンナは大声を出し目を見開いて驚いてしまう。


「いつ?」


「……シルヴィア達を捕らえた時に没収した自画像で……」


「え、自画像?」


全く身に覚えのない、自画像なんてこの世界に来てから描いて貰った覚えはない。


「その自画像は今はどこに?」


「今持ってる」


カストリアは胸ポケットから一枚の掌サイズの紙を取り出しアンナに渡し、受け取ったアンナはそれを見る。


「あ、写真か…………何でこんな写真あるのよ!?」


受け取った写真にはアンナ自身の着替えている時の姿が映っていた。

この撮り方、完全に私に隠れて撮ってるでしょ。誰が?それにこっちの世界に来てからの撮った写真だ!

まさかシルヴィア?いや、シルヴィアとは色々とやってるしこんな事する意味ないし………誰だ?


「ねぇ、これって本当にシルヴィアから取ったの?」


「そうだけど」


再度確認するが言っている通りシルヴィアからだ。

アンナは分からなくなり一生懸命誰が撮ったか考えていると、突如地面が揺れ始める。


「うおっ、地震か!」


コルトが叫ぶと同時に揺れは更に強くなり始めて壁に掛けてある時計が落ちて来たり、クローゼットが倒れて来るのを抑えてゆれをたえる。

約20秒間、激しい揺れがやっと収まりアンナは抑えていたクローゼットから離れる。

かなりひどい地震だったな。煉瓦で出来てるここが壊れなくてよかった。


ふぅっと一息付いているアンナはカストリアを見ると先程までの少女の顔ではなく、王としての真剣な表情に切り替わっていた。


「さっきの揺れはかなりマズイな……コルト、すぐに兵士達に避難誘導と被害情報を集めさせろ。避難場所は城の空き倉庫に集めさせろ。無論入りきらないなら道場でも通路でも庭でも使わせてやれ。レーヒィアも王城のメイド達を掻き集めて医療機関の手伝いに行かせろ」


「「了解」」


コルトとレーヒィアも真剣な表情になっていて迅速に対応し、すぐに部屋から出て行った。


速い…と驚いているアンナに構わず目の前でカストリアは自身のスキルを使う。


「ファントムエンティティ」


カストリアの周りがガラスが割れたようにヒビが入り、無数にカストリアの姿が写ったと思った瞬間、カストリアが立っていた場所に以前まで見ていた屈強な体をした男のカストリアが立っていた。


「え!今何したの?」


「これはスキル「ファントム エンティティ」で変身したのだ。声、匂い、感触まで全て幻想で出来ている。シルヴィアにやっていたのと同じスキルだ」


「ああ、あれか……」


「スキルのことはもういいとして、我は行くがお主はどうする。ここで残っていてもいいが」


「いや、私でも何か手伝える事があるかもしれないし付いて行ってもいいかな?」


「ふふ、流石は我が惚れた人だ。無論付いて来て構わんぞ」


声も変わってかなりイケボになるんだなぁ。

そう思いながらカストリアの後を付いて部屋を出る。出てすぐにカストリアはやる事が決まっているかのように通路を進んで行く。


「ねぇ、今から何をするの?」


「何、軽くスピーチするだけだ。国民達は今さっきの地震で怯えている筈だ、我の声を聞けば一先ずは安心するだろ?」


「そう言うことね…」


災害が起きた時に大臣が放送するのと同じ事か……言ったのはいいけど私することあるかな?

納得してどうするか考えながら付いて行っていると前からかなり焦った様子の兵士が走って来る。


「何だ?どうしたそこの者」


「カストリア王!大変です!闘技場リングに何者かが外から侵入して暴れています」


兵士が息を切らせて話したのを聞いてカストリアは驚きのあまり声を上げる。


「何!?外からだと?見間違えじゃなくてか?」


「はい、私も実際目の前でステージ上の結界を破壊して入って来たのを見ましたので…」


「……我がすぐに行く。どんな馬鹿が来たかは知らんが品定めしてやる。お前はすぐに兵士達に下がるよう言われたと言って来い」


「はっ」


兵士は敬礼をしてすぐに走って来た道をまた走って戻って行った。


「で、私達は行かないの?」


兵士の後を付いて行ってステージに行くのかと思っていたがカストリアはその場で立ったままだ。

不思議がっているとカストリアは含み笑いして拳をあげる。


「ふふ、当然今から行くぞ……近道でな!」


言うと同時に通路の壁を破壊して隣の通路と繋がり、カストリアはそのまま隣の通路の壁も破壊してステージのある闘技場中央に飛び出る。


「近道だけど破壊して良かったの?」


「結界が破られたのだ。どうせ戦闘した時に破壊するなら今潰しても変わらん。それよりお主、一体誰だ?」


カストリアとアンナのステージ上にはフードを被った姿の見えない人が立っていた。


「ちっ、何でアレが来てるんだよ……まぁ、手加減すればいいか」


アンナ達が来た事に気付くと面倒くさそうに頭をかきいてフードを脱ぎ捨て姿を露わにさせ、アンナはそれを見て驚愕する。


白い髪に獣耳があり、白いフサフサしている尻尾があり、そして背中には3対の6枚の羽が生えていてまるで妖精の森であったイレイナと同じ姿だ。

一瞬イレイナと思ったが、身長が軽く180cmを超える高身長なのが違うし、私を見下ろしてくる赤い赤眼もイレイナとはまるで違う。


だが、かなり似ている。

顔なんか殆ど同じ骨格で髪質も同じである。姉妹、いや双子レベルで似ている。


そんな驚きを隠せないアンナとは違いカストリアは片手に「アスカロン」を持ち、ステージに進んで行く。


「もう一度質問するぞ。お主は誰だ」


カストリアは再度質問すると女性は不思議に頭を傾げる。


「ん?私の姿を見て何も反応がない……じゃあ、死ね」


女性はいつもやっているかのように言うと、いつの間にか手に持っていた赤黒い剣をスッと横に振る。


ただ横に振る。

それだけで目の前で強風が巻き起こり女性の前方にある全てが吹き飛んだのだった。




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