勇者サイド〜下調べ〜
今回は勇者クラスの話です。説明が多いと思いますが見ていってください。
〜野村 奈々美 視点〜
勇者召喚から7日間が経った。毎日の殆どが訓練であり、今は貴重な休憩時間だ。その休憩時間に私は、雪乃と図書館での調べ物に没頭していたが、目の前にいる雪乃は読んでいた本を置き、机の上に突っ伏した。
「ダメだぁ〜。もう眠たくなって来たよ」
「そうね。さっきまで訓練だったし仕方ないか…。日本居てもここまで体を動かす事は無かったもんね」
「そうだよね。5日前なんか初めての訓練での筋肉痛が酷かったよねw」
「しかも筋肉痛は回復魔法で治るなんて思わなかったわ」
今読んでいた本を机に置いた。題名は「周辺国家とその歴史」だ。ちなみに雪乃が読んでいたのは、「マカナダンジョンの魔物図鑑」というものだ。
「それもう読まないなら読ませてね。明日からそこに行くんだから、ちゃんと見とかないと」
「そんなに魔物の事覚えられないよ!絵もついてるけど、見た目全く同じなのに10種類もいるなんて分からないよ」
「そんな事………全部同じ絵ね」
5ページほど見たが、全て同じ絵で狼のような魔物が描かれてあった。
それでも仕方がないので知り得る情報を取っておく。書かれてる事は流石に違ってそれぞれ能力が少し異なっているらしい。
「ななみんはよく集中して読めるよね。コツとかあるの?」
「無いと思うわ。強いて言えばそれにのめり込もうとすればいいんだと思うわ」
「それを集中と言うでは無いか?」
話に入り込んで来たのは、調べ物を頼んでいた暁人である。
「そうとも言うかも。それで調べて来てくれたの?」
「ああ、なかなかに骨が折れたぞ。気配遮断スキルがあっても城外に出るのも大変だ」
暁人に頼んでいたのは、この国の一般庶民の生活についてだ。
「まずは料理だな。露店で販売されているのは大体200メルだった。食べたのは見た目フランクフルトのやつだが、味は普通、日本のコンビニとかで買った方が美味しいはずだ。中に入る店は大体600メル以上1500メル以下が普通の店で、高い所になると、倍以上は普通にするそうだ。
次に服は日本の服とは違いもっと質素だ。農民とかになると1人につき5着服があるくらいだそうだ。
次は職業だ。別にステータスで働いている人がその職業でないと行けない決まりは無いらしい。
ただその方向で働くものが殆どらしい。
次に人種だ。この街には勿論だが人間族はいて、他に森林族、土族を数人確認出来た。
次は奴隷だ。奴隷の販売は普通にしてあり、奴隷に落とされるものは、借金奴隷、犯罪奴隷などが落とされるらしい。密売奴隷は禁止されているらしく、見つかった者の処罰は処刑になるらしい。
次に主教はこの国では女神デューイ・スティファヌを崇拝している。人間族に無宗教家はほとんどいないな。
次はギルドだ。ギルドは冒険者ギルド、商会ギルドがあるらしい。俺が思っていた冒険者とは違ったが…。ああ、すまん考え事をしてしまった。冒険者の仕事と言えば、何でも屋だ。掲示板に貼られた仕事を受けて、仕事に向かうらしい。そして冒険者ギルドに入ると、証明書の様な物を発行してくれるらしい。それがあれば違う国にも入国量が掛からないらしいが、冒険者ギルドで一定量の仕事を受けないとギルドから除籍され、一生ギルドで働かなくなるらしい」
「多いねぇ〜」
「へ〜」
「俺は頑張ったぞ。冒険者ギルドに入った時も数人に気配遮断を無効されていたからな。冷や汗をかいたぞ」
調べて来てくれたのは、非常にありがたい。私が知りたかった事も知れたし。
暁人が周りを見てから小さな声で喋り始めた。
「こんな事を調べさせたのは、王城から抜け出すつもりか?」
「え!そうなの?」
「ええ、抜け出すつもりよ。来た時から考えてた事じゃ無い。この国多分だけど隣のスベーリア王国と戦争するわ」
「えぇえっ!?」
「その情報はどこから仕入れた?」
「暁人は街に出たから民間人の話してる内容聞いてるでしょ」
「確証が無い情報は持って来たく無かったからな。だがあれは本当なのか?」
「今城の内部で兵が召集されていて、武器の密輸も結構されているわ」
「見て来たと…」
「見て来てないわよ。兵士達が話している内容を聴いただけ。それに常時見られてる感じがするから、監視されているわね…」
「…本当に強くなって来たな奈々美」
「勇者様と比べたら私なんて雑魚だわ」
ステータスカードを見て、これまでの訓練の事を思い出しため息が出る。
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名前:野村 奈々美
種族:人間族
年齢:17
職業:魔法師
レベル:1
体力:250
魔力量:226
物理攻撃力:13
魔法攻撃力:35
防御力:13
器用さ:25
素早さ:13
スキル
速読lv1、気配探知lv1
魔法スキル
火魔法lv1、水魔法lv1
パッシブスキル
言語理解lv-、魔力量増lv1、剣術lv1
ユニークスキル
4属性魔法適正lv-
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ステータスは訓練したら少しずつ伸びている。魔法も2属性は覚えれた。スキルは本の読みすぎで「速読」が手に入ったし、魔法師でも剣は振っていたので「剣術」も手に入った。雪乃と暁人も同じ感じで上がって来ている。
そしてこっちが勇者、直樹のステータスだ。
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名前:池澤 直樹
種族:人間族
年齢:17
職業:勇者
レベル:1
体力:500
魔力量:545
物理攻撃力:60
魔法攻撃力:60
防御力:45
器用さ:35
素早さ:60
スキル
身体強化lv2、豪腕lv1、縮地lv1、気配探知lv1
魔法スキル
火魔法lv1、水魔法lv1、土魔法lv1
パッシブスキル
言語理解lv-、剣術lv2、状態異常耐性lv1、取得経験値2倍lv-
ユニークスキル
全属性魔法適正lv-
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やはり取得経験値2倍は大きい。ステータスの上がりようも私の2倍以上だ。このスキルは2つもレベル2になっている。1週間でレベルは上がらないものらしい。最低でも2週間はかかるらしい。魔法の方も私より多いし本当にふざけるな。チートの権化だよ。
「逃げ出すにしても、まずは明日のマカナダンジョンに行く事だな。3人1組で、1組に1人の騎士が付く。パーティーはこの3人でいいがバランスが悪いな」
「それは仕方ないわ」
何故マカナダンジョンに行くかと言うと、この国の訓練を指揮している騎士団長マクベスが、訓練で得られない実戦経験を得て欲しいらしい。この人本当に強い。あの勇者 直樹を未だあしらってるくらいだ。
「逃げ出すチャンスはこれしかないと思うわ。あとあとで考えてると逃げ出せないかも知れないし」
「タイミングはこれしか無いと思うが、騎士が付いてくるだろ?確実に俺らより強い。それはどうする?」
「女の武器で倒して見せるわよ。色仕掛けして後ろに回り込んだら、睡眠薬の粉末を顔にかけておさらばよ」
「国際手配されるだろうな」
「そんなの覚悟の上でしょ」
「ま、待ってよ話が早すぎるよ〜」
「「………」」
やっぱり雪乃だなぁ〜と2人は思いながら、雪乃に説明して、明日に備えてご飯を食べ、睡眠に入った。
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アナスタリカ聖王国王城○○○
そこには貫禄がある50代くらいの、未だに勇者の前に出てこないこの国の王アルスタリカ・ヴァレア・ゴルディウスが鎮座し、その横には王女のレティシアが、机の周りに大臣などの国の上層部の人物が集まっていた。
「さて、勇者どもは今のところどうだ。レティシアよ」
「徐々に洗脳は出来ています。職業勇者に状態異常耐性があるため少し時間がかかりますが、スベーリア王国との戦争にも間に合いそうです。」
「ふむそうか…。問題は無いのだな」
「1つだけ懸念している事があります」
「なんだ、申してみよ」
「勇者の中に逃げ出そうとしているものが数名いるとの知らせを、暗部から聞きました」
「ふむ…。確か明日はマカナダンジョンに行くのだったな」
「はい。逃げようと考えているなら、このタイミングは逃さない筈です。」
「対策はもちろんしてあるのだろぅ?」
「勿論です。1組3名にして、そこに我が軍の騎士を1名入れる予定です。勇者の成長速度は早いですが、ダンジョンの三層までしか行きませんので、レベルが上がっても、我が軍の騎士には勝てません」
「……騎士たちには勇者に背後を取られるなと伝えておけ」
「はっ。御命令通りに」
「次にスベーリア王国との戦争については……」
王城の一室で行われた会議は、日付の変わる時まで続いていった。
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