第6試合
アーギットは試合が終了し、一安心して息を吐くと足にピクッと痛みが入る。
「いつっ…やっぱりこれ使うと筋肉痛なるな…」
「赤修羅」の効果で無理矢理ステータスを向上させているので至極当然の結果である。
明日までには治るけどこの後の事考えてなかったなぁ…。
スイゲツに言われてたこの後の事を思い出し、使うのを失敗したなと思いながらステージから降り出口に戻ると、通路の端に見慣れた姿、フミヨが笑顔で立っていた。
「流石、その組み合わせは強いよね」
「何でフミヨが……あ、次の試合か」
「まぁ、出番すぐだしここで待っとこうかなって。それより、この後の事忘れてるでしょ」
流石は長年の友だ。俺が忘れている事を分かっている。
アーギットは図星を突かれ少し恥ずかしそうに頭をかく。
「ああ、さっきまで忘れてたよ。お陰で筋肉痛だ」
「本当馬鹿なのか、頭いいのか……」
「天才と馬鹿は紙一重だ。それに前の事を言うなら、お前の方が頭悪かったろ」
「はいはい、そうですよ〜、その馬鹿な私は力を余り使わないで行くよ」
フミヨは少し小馬鹿にアーギットを揶揄ってからステージに歩いて行く。
いつもの事なので全く気にしないアーギットは試合前のいつも通りの台詞を言う。
「頑張って来いよ」
「……言われるまでもない」
自信満々のいつも通りの返事が返ってくると言う事は、いつも通り本気で戦うと言う事だ。
まぁ、あいつが本気ならすぐに終わるか。それならさっさとアンナさんの所にでも戻っておくか。
そう考えるとアーギットは鼻歌交じりで通路を進んでいくのだった。
アンナが座っている席にアーギットが戻って、串焼きを食べながら少し待つと第6試合が始まった。
黒煙のナギメは初手でステージ上前面を覆うほどの煙幕を張り、その中で戦闘しようとしたようとした。
しかし、フミヨはナギメが何処に居ようと関係ないように、土石魔法でステージ全面を花が開くようにせり上げさせて、ナギメを場外に出して試合終了という素晴らしく早い無血試合試合となった。
「いや〜早かったねぇ…」
「いや、お主も人の事は言えんだろ」
アンナが感心しているのに、スイゲツは数時間前の事を思い出し、呆れながら突っ込む。
「そんな事ないよ」
「相手が盲目だと知っててたから、消音して一気に斬ったろ」
「それは一番楽だからで………そうです、早かったです」
スイゲツのジト目に耐えられなくなったアンナは諦めて降参する。
やはり口論ではスイゲツには勝てない。
そう思って降参の手を挙げていると放送が入る。
『ステージの修復の為、誠に申し訳ございませんが第7試合開始を少しお待ちください』
放送を聞き観客達から少しの溜息が聞こえてくるが、目の前のステージの状態が分かっているためみんな納得し文句を言う人は誰もいない。
この目の前の光景を生み出した瞬間を見れて、むしろ喜んでいるのでは。
と、私は観客達の顔を見てそう思う。
さて、この時間どうするか。
やりたい事がある時に、その事を出来ない時間は凄く暇に感じる。
どうしよう、目の前のステージが修復されるのを見てるか、スイゲツと何か今後の事で話すか。
色々とアンナが何をするか考えていると、観客の声で聞こえずらいが自身の名前が呼ばれた気がして後ろを振り向く。
「アンナ!」
私の名前を呼びながら誰かが抱き着いてきて驚く。
あれ、この匂いは…。
薄々分かりながらも顔を確認する。
「お久し振りです、マーニさん」
「久し振り、初日から音沙汰無しで心配してたら、やっと今日試合で見かけたから探したのよ」
「ごめんなさい、ちょっと忙しくて……」
「サルナは私より心配してたのよ。さっき会った時も様子が違うって会ったのに心配してたわよ」
ちょうどその時はクロワに操られてた時だ。意識があんまりなかったから、雑に扱ってしまった気がする。
「う、後で謝やまらないと…」
「え、アンナさん、バカ弟に何かされた?」
「いや、何もされてないよ!?私が逆にやっちゃったかなって…」
「え〜そう?まぁ、あのバカ弟はちょっと鈍臭いから、アンナさんが悪いと思ってても何ともないよ。逆にアンナさんに謝られたりしたら萎縮すると思うわ。
それにさっき獣王様と戦って嬉しくて、今はベッドの上だからね」
「そうかなぁ…」
そう言われても、私は気が気でないので後であった時には必ず謝ろう。
そう思っているとまた放送の音が入る。
どうせ修理が長くなる説明でもするのかと思っていた。
『第7試合、ジョー選手が棄権しました。修理次第第8試合を行います』
「え………!?」
私はその放送でジョーに何が起こったのか、不安と心配で入り混じったのだった。