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叛逆



アンナとスイゲツが接触したと同じ時間に王都ガダリーマークにある一軒の古い民家で、クロワはベッドで横になって暇をしていた。


「はぁ…………暇、暇過ぎる」


何も見えないし、動かせないから何も出来ずに暇をしているとドアが開く音がして、少し警戒するが知っている人物で気が少し楽になった。


「うわぁ、隠れるだけの家にしたら勿体ないくらい良い家じゃない」


「ん?試合に出てるんじゃなかったの?レイヤの「私」」


金髪の美人の女性、レイアがベッドに近づいて行き近くの椅子に座り、クロワの状態を見る。


「それに本当に弱ってるのね「私」」


「何も見えないし、弱ってるから力も殆ど無いわ。そのせいで暇なのよ、アンナが帰って来るまでの暇潰し相手になってくれない?」


「それはご愁傷様、私は暇潰し相手にはならないから」


「酷いな私の頼みなのだから聞いてくれよ「私」」


「嫌よ………そうね、やっぱり付き合ってあげるわ」


レイアは椅子から立ち上がるとベッドの側まで歩いて行く。


「え、何するの?私殆ど何も出来ないけ、かひゅ」


レイアが近づいた瞬間にクロワは自身の胸にに衝撃が入る。手で探り掴むと分かる、レイアの手が胸に突き刺さるのを。


「ここまで弱っていれば、本体より弱い分体でも意図も簡単にやれるものですね」


「お、お前……」


「あと、アレだけ…」


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!」


レイアは右手を突き刺していたが左手も突き刺し、体の中を両手で掻き回し始め、クロワは余りにもの激痛に絶叫をあげ部屋中に響き渡り、抵抗して暴れる。

何処にいたのか、突然出て来たエネがベッドの上で暴れているクロワの口を手で塞ぎ、他の「レディース」の団員が手足を抑える。


「ドMなんだからこれは気持ちいいでしょ?それとも初めての感覚で気が狂ってるとか?」


「レイア、さっさとやりな。さっきの叫び声で誰か来るわよ」


「問題ないわ、ほら」


右手を引き抜くと黒い真珠のような漆黒の丸い球体を取り出す。クロワの動力源、心臓部にあたるスライム核である。

そしてさっきまで必死で暴れていたクロワは一気にに力が落ちて、手足を抑えていた団員は手を離しても何も抵抗出来ない状態になる。


「ふふ、これが核ね。いただきま〜す」


レイアは待ってましたとばかりに、核を口に放り込み、口の中でコロコロと楽しそうに転がしてから、ゴクリと飲み込み、レイアは自身の体の中心から力が込み上げて来るのが分かる。


「やっぱり凄いな、文体は固定量の魔力だけしかなかったけど、魔力が徐々に増えて行くのが分かるよ」


「感想は後にして、アンナは何処に居るか分かるの?」


「ああ、ちょっと待って………」


エネが急かし、レイアは目を瞑りアンナの場所を探っていき、ある事に気付きクロワを睨みつける。


「やってくれたな!」


今にもクロワに飛びかかろうとするレイアをエネが後ろから羽交い締めする。


「いきなりどうしたの!」


「こいつ、アンナの催眠を解いてるやがる!それに自身の事も連絡してる!」


一気に殺気立ったレイアを見て、クロワはやってやったとばかりに震える口でニヤリと笑って煽る。


「深呼吸をして落ち着け、アンナは後で何とか出来るけど、この状況を知った怒り狂ったアンナが来る可能性、迎え撃つ備えは無いわ。だからこの場から逃げるのが先よ。コイツはどうせもうすぐ死ぬ、今殺しても無駄だよ」


エネが羽交い締めをしながらレイアを正論で宥めると、レイアは深呼吸をして落ち着いたようでエネに離すよう言い羽交い締めを解いてもらう。


「ふぅ………アンナが来るかどうかは分からないけど、衛兵が来そうだから移動するわよ」


部屋の中から次々と出て行き、最後にレイア1人だけ残り、クロワを睨み続けていた。


「死に損ないが無駄な足掻きを………まぁ、私の糧となってくれた事は感謝するよ、元「私」だったもの」


そう言いレイアは髪を束ねて、新しく気持ちを入れ替えて部屋から出て行った。


そしてベッドの上で虫の息のクロワはかなり焦っていた。このままではレイアに言われた通りに死んでしまう。

アンナには核があるギリギリの時間の間で連絡はしたが、ここに来るかも分からない。

アンナには酷い事をした。自身の欲のせいで仲間のスイゲツ、友達のアリアを殺せと命じてしまった。


もう人の体を保てなくなって来て、ドロドロと体が溶けていく。今まで人をかなり殺して来て、いざ自身の番になると何も出来ない死は理不尽だと分かった。


最後はアンナに見送って欲しかった。これが最後でいい、だからこの願いを叶えて欲しい。


そう思っても無駄だと思いながら意識が薄れていくのを感じていく。


『その願いは承諾出来ぬな』


突然脳内に声が響き渡る。

この脳内に直接話しかけるのは「念話」スキルだ。誰だと思い気配を探ろうとするが、その力さえもなく誰か分からない。


『死にかけのお主に、2つの選択肢が与えられる。1つはこの場で無残に死ぬか、もう1つは金輪際欲に溺れず、人を食わさない事だ………お主ならどうする?』


意識はまだギリギリある。だから意識がなくなる前、その答えを即座に答える。


『私は生き続け、アンナやスイゲツ、アリア達の償いをしなければならない!そして私が食らって来たクソ野郎共や死んだ人達の分も生きなきゃならないんだ!

だから、私に呪いでも規制でも、封印でも何でもかけてくれていい。生き延びさせてくれ!』


力の限り頭の中で叫び、疲れ切り意識が薄れて行く。


『承知した、では、は………』


了承してくれた事で安心し、クロワの意識は闇の中に沈んで行った。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「これでよし」


スイゲツはアンナに言われた家に来て、死にかけのクロワを回収して外に出る。外には凄く心配して涙目のアンナを待機させていた。


「ど、どうだった!クロワは無事?何処にいるの?」


「変な誤解を生むから先に言うが我は培養液を作り出せる。だから、今は我の体の培養液の中に突っ込んでいる。スライム核を抜かれて無事ではないが死ぬ事はない、安心しろ」


「あ、そうなんだ。よかった……」


アンナは安心して、その場で緊張をほぐれて崩れ落ちる。


「それで、外で待っている間に我へ攻撃して来た事でのしっかりとした謝罪を考えておいたんだろうな?」


スイゲツは地面に座り込んだアンナを見下ろしながらかなり威圧しながら顔を近づけると、アンナは即座に土下座する。


「ごめんなさい!操られてたけど、半分意識はあったから、えーと、本当にすみません!」


スイゲツは土下座しているのを数秒見てからアンナの頭を片手で鷲掴みして持ち上げる。


「お主、謝罪の仕方知っておるのか?流石の我でも怒るぞ?」


「怒ってるじゃ…い、痛い!痛い!本当にごめんなさい!スイゲツを攻撃してしまって本当にごめんなさいぃぃぃ痛い!」


「……………まぁ、仕方ないから許す」


頭から手を離すとアンナは尻餅を突いて痛そうに転げ回り、少ししてお尻を撫でながら起き上がる。


「うぅ…痛い」


「頭の痛みは無くなっただろ?」


「他の痛みで紛らわすのは蚊に刺され時ぐらいでいいよ………それでクロワは自身の分体にやられたって聞いたけどどうしてだろう?」


「何簡単な事だ。分体にクロワが食らって来た人のそれぞれ人格を持たせたのだろう。だから、クロワ本体の事をよく思ってなかった分体が現れたんだろうな。そしてこの弱ってる時に謀反を起こすのは絶好の機会だ」


「そうか、人の人格を……」


「あとは記憶と技術とかもかもな。人の姿になって、急にあのレベルの剣術を使えるとは到底考えられん。記憶と技術を受け継いだんだろう」


「だから、あそこまで強くなってたんだ」


「そうだな。まぁ、憶測だからちゃんとした話は後でクロワ本人に聞くしかないだろうな」


「そうかぁ………」


「それでどうする?クロワの分体でも探しに行くか?」


「そうする。クロワの核を取り戻さないといけないし、クロワの仇を取らないと」


アンナは手を握り込み気合いを入れる。


「気合いを入れるのはいいが、お主は闘技大会で優勝しないといけないんだろう?次の試合、獣王戦だぞ」


「あ、そうだ…………ど、どうしよう。今は優勝が目的じゃないんだ、獣王を法に引っかからずに直接殴りたいから闘技大会出てる感じなんだよ……」


その発言が意外過ぎてスイゲツは驚く。


「なんだお主は分かってたのか」


「そりゃ、気付くよ。逆に分からないと思ってるのかな?」


「まぁ、相手からしたらな……」


「むぅ……」


「それを踏まえてどうする?我はクロワの意識が戻って、話を聞いてから分体を探す方がいいと思うぞ」


「じゃあ、そうする。スイゲツは私より先を見越して言ってくれるからね」


「それじゃあ、闘技場に戻るか。闘技場に居るアリアにも謝る準備しておけよ」


「……分かってるよ」


やる事が決まり闘技場に向かって歩いて行行った。



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