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アンナのつく理由



アンナは即座に剣をスイゲツの首元に突きつける。だが、スイゲツは驚きも恐怖の顔もせず淡々とコーヒーを注いでいる。


「我に脅しは無駄だぞ」


「分身か………何でここにいるの?」


剣を突きつけられながらコーヒーを平等に注ぎ終わると椅子を引き、アンナに座るよう促す。


「まぁ、座って話さないか?」


「斬るぞ」


「斬りたいなら斬ればいい。だが、殺せもしないのにそんな事は言わない事だ」


「分身の後で本体もやってあげるよ」


「ふ、それなら昨日、霧から抜ける時に我を切った時に雷魔法を直に流せば良かっただろ?」


ニヤニヤしながらアンナを顔を見ていると、アンナは話に応じて剣を鞘に収めて椅子に座る。


「話を聞いてから消してやる」


「ふふ、何そのセリフ、後で負ける奴のセリフじゃない」


スイゲツは口を押さえて笑いを堪えようとするが漏れ、アンナが顔を赤くして怒り出す。


「う、煩いな!話をしろ、話を!」


「ふっふふふふ………すぅ、はぁ………さてと落ち着いた事だし、聞きたい事があったんだ」


スイゲツは細い目で椅子にもたれてコーヒーを飲んで話を聞くアンナの顔をじっと見る。


「アンナ、お主半分意識はあるだろ」


ピクリとアンナの眉が動き、飲んでいたコーヒーを机に置く。それを目視したスイゲツは話を続ける。


「気付いたのは少し前だ、考え事をしてたいたら違和感があった。霧から逃れた瞬間、あの瞬間、我は死んだなと思っていたが、今生きてるように死ななかった」


「時間がなかっただけ、今なら殺す」


「いや、お主なら我を一撃で殺す事なんて造作無い筈だ。さっきの試合を見て更にそう思う」


「クロワを担いでたから急いでただけ」


「クロワは邪魔にならないようにしてただろ、嘘は辞めろ」


「じゃあ本体でこっちに来なさいよ、証明してあげる。それとも分身も消してあげてもいいよ」


スイゲツはまた含み笑いをして、アンナの頭に血がのぼる。


「何、私が貴女を殺せないと思ってるの?」


「ふふ、いやなに。さっきまでの話で我が分身体だ、なんて一言でも言ったか?」


ニヤリとスイゲツが笑うのを見て、アンナは剣を背から抜き出しスイゲツに向けるがスイゲツは笑っていて余裕の表情のままで、


「ほら、すぐに斬らないじゃないか。殺すなら一撃で殺してくれよ………それとも分身体じゃない可能性はあるけど、分身体なら中に何かを仕込んでるかも知れないから迂闊に攻撃出来ないと思ってるかな?


アンナは図星らしく少し嫌な顔になった。


「なら、鑑定でもしてみればいいけど、アンナは鑑定嫌いだものね〜アンナには無理かなぁ〜誰かに頼まないとね、我とかシルヴィアとかにね」


「ーーーー!やってやるわよ!鑑定すればいいんでしょ!」


怒りで顔が真っ赤になったアンナは剣をスイゲツに向けながら、片手で「賢者のモノクル」を取り出しかけるて鑑定をすると、視界がグワンと曲がる。


その瞬間、アンナは机に倒れ込み。スイゲツに水の手枷で手足を封じられる。


「相手の挑発に乗ってしまう、前からお主の弱点になるから治しておけと言っただろ。それに我は鑑定出来んと前からずっと言ってるだろうに」


アンナは目が覚め、力を込めて枷を壊そうとするが身体中が動かない。


「やっと効果が出てきたか」


スイゲツは知っているようで、アンナは回らなくなってきた舌を使って聞く。


「何を、した……」


「なーに、簡単な事だ。コーヒーに混ぜ物を、薬を仕込んでおいただけさ。注意力が弱くなってきてるな」


「く、そ、動か、ない………」


「結局、人出は要らずに済んだか………さて、これで安心して話し合えるな。いや、一方的な話になるか」


スイゲツは机の上に突っ伏した状態のアンナの前でコーヒーを飲みながら話を続ける。


「まずはさっきと同じ事を言うが、お主は半分意識はある。今さっきも私に剣を向けるより斬っていたらこうはなってなかっただろうな。

多分クロワは自身が縛るより、いつものアンナの方が好きなのだろうな。普通なら闘技場まで行かせてないだろうしな」


アンナはもう口が動かせない程に薬が効いてきた為、何も反論出来ない。それを知ってかスイゲツはアンナの事を気にせず話を続ける。


「そしてここで疑問が生まれる。なら何故お主がクロワの協力をするのかだ。お主も気付いてるだろ?クロワが人を食ってるのは分かっておるだろう。

まぁ、話せんからそのまま続けるがお主はクロワを殺しかけた事の償いをしたいのだろう?」


それを聞いた瞬間、アンナは目つきが変わり、怒りの表情でスイゲツを睨む。


「おお、怖いな。やはりお主の性格だから、そんな事だろうと思ってたが、そう思ってるなら、後々我に攻撃した事でまた後悔するぞ?」


スイゲツは後々泣き噦るだろうなと思って言うが、アンナは睨みつけてくる。


「まぁ、その事は置いておいて。まずはお主の催眠を解除しないとな」


スイゲツは手を伸ばしてアンナの頭に手のひらを向ける。


「純水が如く 浄らかなれ「明鏡止水」」


頭に触れて解除しようとした瞬間に、アンナが突然涙が流れ始める。それに気付いたスイゲツは手を頭に触れる前に止める。


「この薬に泣く効果は無いはずだけど、どうした?まさか元に戻るのが嫌なのか?だが、それは受け入れられないぞ。私は嫌だから元のアンナに戻って貰うぞ」


スイゲツが触れようとするが、アンナは力を振り絞ってそれから逃れ、机から転がり落ちる。


「もう、その薬は最低3時間は効くから観念して捕まるのだな」


スイゲツが椅子から降りて頭に触れようとすると、アンナが頑張って首を横に降る。


「ん?そんなに嫌なのか?………それとも訳ありか?口だけ薬の効果を消してやろう、出来るか分からないが」


スイゲツはアンナの口に触れると、魔力を調整して「解」と言い、アンナの口だけを動かせるようにする。


「よし、流石我。これで少ししたら喋れるようになるだろう」


痺れが取れてきて口が少しずつ動き始める。


「あ………やく……す…げつ、はやく、これを解いて」


「それは無理だ、お主の催眠を解いてからだ」


「それは、もう大丈夫、だから」


「大丈夫?詳しく理由を言え」


「今さっき、催眠を解かれた。クロワに催眠を解かれたんだ。今はクロワが危ないんだ!早く助けに行かなきゃ!また仲間を失いたくない!」


アンナは涙を浮かべながら涙声で叫んだのだった。



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