第2試合
スイゲツは怒りのままに壁を思いっきり殴る。すぐに冷静になる為、深呼吸をして落ち着かせる。
「はぁ、バレたか…………我は行く、また後でここで会おう」
スイゲツは紙に時間と場所を書いた紙を置いてドアに歩いて行く。
「ええ、頑張ってね。また後で会いましょ」
シェイルは笑顔で見送り、スイゲツはドアを開けて、アリア達に観客席に行くように連絡して通路を進んで行く。
「まずはハァンミルがどちらかを確認してからか、彼奴がどうかで分かるからな」
地図を思い出しながら自信を液体化して壁の隙間を移動して目的の場所、ハァンミルが気絶している場所に辿り着く。
丁度人が居ないようで、面倒ごとにならなくて済んだと思い部屋に降り立つ。
ベッドに横たわっているハァンミルを鑑定して行く。
「此奴は白、ならレイアがクロワか」
人が来る前に急いで壁の隙間に退散し、外の通路に戻る。そこでふと疑問に思う。
「だが、何故クロワにバレた……」
クロワはどうやってスイゲツが仕掛けた発信機に気付いたのか、その原因が分からなければ今後の事で対処も出来ない。
考え付く限りの選択肢を作り出し絞り込んで行き、一つの結果に辿り着く。
「アリアが探しているタイミングで捨てたという事は、アリアが居るのを見て気付いたのか………探させた我の失態だな」
スイゲツは自分の詰めの甘さを痛感し、壁にもたれる。
アンナが敵になってから、スイゲツは気が気でなく色々な事に頭を使い過ぎて、完璧な作戦を組み立てる事が出来なくなっているのを感じていた。
「はぁ………駄目だぞ、まだ1日経っただけじゃないか………ちゃんとしろ私………試合はアリア達に任せて、外に行くか」
両手で頬を思いっきり叩く。頰が赤くなっているが気にせず、通路を進んで行くと観客の大歓声が響き渡ってきた。
スイゲツは無視して行こうとするが歓声を聞くと少し気になり始め、
「はぁ………気分転換に見に行くか」
思い切って見に行く事にして、急いで登って行くとステージ上には既に選手が出ていて試合が開始していた。
両者共、手に武器を持たずに戦うスタイルのようであるのだが、腕を組んで武術の構えをせず、じっと相手の出方を疑っていた。
珍しい図だと思いながら、スイゲツはアリアが待っていた席に行き、横に座る。
「ここに居たか」
「あ、スイゲツ来たんだ。ずっと医務室で居るのかと思ってた」
「こっちに来るって言っただろ………それで今は誰が出てるんだ?」
「今出てるのは黒髪の手を組んでいる男が無剣のヘルメル、白髪の老けた男が無撃のラークス」
「どちらも武術家なのか?」
スイゲツは気になっていた事を聞くと、アリアではなくフミヨが首を横に降る。
「僕は2人が戦ってる試合を見てきたけど、ラークスは相手に触れずに吹き飛ばす格闘家、ヘルメルは一応剣士らしい、僕は何やってるか分からないけど」
「ふーん………」
スイゲツは再度ステージの2人を自身の自慢の目で観察し理解する。
「ああ、そういう事か……」
「スイゲツはどっちが勝つと思う?」
アリアがスイゲツに興味津々で聞いてくる。
「そりゃ、勝つのは……」
スイゲツが言いかけたと同時にステージ上で動きが起こる。
ヘルメルが右腕を挙げ、振り下ろした同時に2人の間の空中で何かの衝突音が響き渡る。
ヘルメルが攻撃を仕掛けたがラークスに防がれた。
そしてヘルメルは右腕を指揮者のように振り続けるが、相手のラークスは手を後ろに組んだままで全てを防ぎきっている。
「おい、ジジイ。前回と同じような事にはならねぇぞ」
「ふっ、小僧がほざきよる。前回同様、お主の敗北で終わるさ。今も全て防がれてるじゃあないか、このままではすぐに我の勝利で終わるぞ」
「はっ、俺が前回と同じ方法をすると思うか?」
ヘルメルが笑うと同時に、ラークスは背後から来るのを察知し、予想外からの攻撃で反撃せずに横にジャンプすると、さっきまで居た場所が突然切り裂かれる。
「おお、怖いな。危うく斬られるところだった、前回とは違って一本じゃないようだな」
「そうだが、分かったところで全て防げるかな」
ヘルメルの周りに不可視の剣が数本出現する。一本の時に全て防げたラークスの絶体絶命だが、感情は楽しくなってきて、クスリと笑う。
「ふっ、面白い。我も久方振りだが手を動かそうか」
後ろで組んでいた腕を上げて、自身の流派「無衝拳」の構えを取り、地面にヒビが入る程、一気に覇気が膨れ上がる。
「やっと本気か……まぁ、そうじゃないと負けっちまうからな!」
ヘルメルはそれを見て警戒心を上げて、自身が動かせは最大数の7本で四方八方から一気に攻め立てる。
その全ての攻撃をラークスは射程距離に入ると同時に拳を突き出して弾き返し、全ての攻撃がラークスに届かない。
「どうした小僧、こんなものか?」
「クソ!まだだ!」
剣が更に加速して襲って来るが、全て届く前に全て弾き返される。
そしてラークスは焦ったヘルメルの僅かな隙を見逃さず、剣をかわして射程距離まで一瞬で移動して、ヘルメルに拳を打ち込み、地面に崩れ落ちる。
「ふっ、今回はもう少し楽しめるかと思ったが前回と同じ結果だったな………他愛ない…」
ヘルメルが一瞬で倒れて、何が起こったのか分からなかった観客達は静観していたが、ラークスが勝ったのを理解し、大歓声が沸き起こる。
その中でスイゲツは口を押さえて、口が綻ぶのを抑えて興味津々でラークスを見ている。
「あの爺さん、なかなかいいな……」
「え、どうしたの?」
スイゲツがポツリと呟いたのにアリアが反応する。
「………やはりラークスが勝ったと思ってな」
「まぁ、2年前優勝してるからね。当然勝つわよ」
「そうとは限らんだろ、それに次はあまり知られてなかったアンナが出る試合だろ?出るかは分からないが」
「そうね………そう、アンナは凄く優勝したがってたわ。何か理由があると思う、スイゲツは分かる?」
「ああ、その理由は分かってるが話さないよ」
「え、何で話さないのよ?」
「面倒ごとになりそうだからだ」
スイゲツは言い終わったかのように前を向き、ステージを見始めたのでアリアも追求しても無駄だと思い少し想いを馳せるのだった。
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