第1試合
急いで帰って来たアーギットとフミヨの2人の話を聞き、スイゲツは悔しそうにしている2人の肩を叩きながら歩く。
「いや、今日の目的はアンナが何故闘技場に来たのかではない、我々の協力者を探し得る為だ。それに帰りに接触出来る可能性もある。そう悲観するな」
「………分かりました。すみません、気を使ってもらって」
「いいさ、それにまだ帰って来てない奴が居るぐらいだ」
スイゲツは諦めたような顔をして外を見ながら通路を歩いて行く。
「それで今は何処に向かってるんですか?」
「さっき説明していた元々の目的、看護師の話を聞こうと思ってな。今は医務室に向かってる」
「あぁ、言っていた人ですか。けど行って話してくれますかね?誰かに口止めされてるんじゃ?」
「なるべく穏便に済ませるよ。まぁ、最悪は無理矢理体に聞くか…」
「物騒な……」
アリアが少し引くがスイゲツは真剣に話していて、本気で考えている。
「最悪だがな、って言ってる内に着いたぞ」
通路の左手に医務室の看板が見え、スイゲツが全員に目を配ってからドアノブに手をかける。だが、スイゲツはドアノブを手に掴んだまま引こうとしない。
アリアがどうしたのか聞こうとした時にスイゲツが口を開き、
「すまないが1人で入ってくる。少しの間、試合を見て来てほしい」
「え?急にどうしたのよ。それに試合って」
「発信機が少し動いていてな。ちょいと気になるから見て来て欲しいんだ。試合は4試合だけだからスムーズに進むだろう。見て来てくれ」
「………分かったわ。みんな行くわよ」
「え、ちょっと!」
アリアがフミヨの腕を引っ張り無理矢理連れて行き、アーギットが少しスイゲツを見てからアリアの後をついて行った。
スイゲツは3人が離れて見えなくなるまで見届け握っていたドアを開ける。
医務室の中には銀髪が綺麗なエルフの女性、シェイルが座って本を読んでいて、スイゲツが入って来たのを確認すると本を閉じ溜息をつく。
「はぁ、いきなりビックリしたわよ……」
「すまない。初めに話とかないと一から説明しないといけないだろ?まぁ、それよりお主のことを説明してもらわないとな……」
そう言いスイゲツは近くの椅子に座り、鋭い目でシェイルの顔を見たのだった。
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スイゲツに言われた通りアリア、アーギット、フミヨの3人は観戦席に座り、第1試合が始まるのと探しに行ったジョーを待っている。
そしてアリアは気になっていたさっきのスイゲツの言動について2人に質問する。
「ねぇ、スイゲツは何であんな事言ったんだろ」
「?、私達にアンナさんを見てほしかったんじゃ?」
フミヨが答えるとアリアは首を横に降る。
「それじゃあ、私達はアンナが出場する第3試合まで待っとくことになるでしょ。スイゲツがそんな無駄な事するかしら」
「そう言われてみれば………」
「そうだな。俺達を医務室から話したかったんだろうな」
そこにポテトを食べていたアーギットが口を挟み、それにフミヨは驚く。
「え、分かってたの?」
「……まぁな。スイゲツさんの話し方おかしかったしな」
フミヨが何か言いかけた瞬間にゴングの音と共に司会者ザックの声が闘技場に響き渡る。
『紳士淑女の皆様、本日もようこそいらっしゃいました!今からは始まるのは前日とは違いバトルロイヤルを勝ち抜いた猛者達のトーナメント戦だ!』
一気に闘技場の観客達のボルテージが昇り、大歓声が上がる。
『そして、その映えあるトーナメント第1試合の1人目の選手、第4グループで選手を薙ぎ払い、薙ぎ倒し怪力無双していた無名の女剣士、ハァンミルだ!』
ザックの声と共にアリアの右手から、薄手の服装をした大剣を担いだ金髪の女性、ハァンミルが出て来て、またも特に男性から歓声が上がる。
何故なら薄手の格好で巨乳という男なら誰でも反応してしまう格好である為仕方がない。
『そしてハァンミルに相手するのは女性のみの冒険者パーティー「レディース」のリーダーであり、第7グループで戦いながら美しく舞っていた、美団のレイア!』
左手から美しい金髪をたなびかせた絶世の美女と呼べる女性、レイアが出て来てまたも歓声が上がる。
2人はステージ上に登ると2人の間の距離が10m程で足を止め、ハァンミルが大剣を方から抜き出す。
「初めまして、ハァンミルと言う。貴殿の話はよく聞く。どうかお手柔らかにお願いする」
「ふふ、私はレイアと申します。トーナメントでは素晴らしい戦闘を見せてもらいました。こちらこそお手柔らかによろしくお願いしますね」
弱気なことを言いながら覇気を思いっきり当てて来るハァンミルにレイアも腰からレイピアを抜き出し、レイピアを向ける。
観客達が大興奮の中、アリアの通信機に着信が入る。相手は1人しかいない、スイゲツだ。
突然の事に驚きながらも通信に出る。
「もしもし、どうしたの?」
『今、アンナは試合に出ているか?』
「え、今は出てないわよ。出てるのはハァンミルとレイアって選手」
ステージ上を見渡しながら答えると、通信先から何かを叩いた音が聞こえ、
『クソ!我の間違いだ!この発信機はアンナが踏んだものじゃない!踏んだのはクロワだ!』
「え!?じゃあ今ステージにいるのは」
「我も今見ているが、どちらか片方がクロワだ!」
その発言に驚いたと同時にザックの大声が広がる。
『さぁ!選手は揃い、そして今ゴングが鳴る!』
ゴォーーン‼︎‼︎‼︎
アリアの思考が追いつく前に、ハァンミルは大剣を振り上げて突進し、レイアはレイピアを横に水平に構え試合は始まったのだった。
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