狂気の産声
ぼんやりと意識が覚醒する。
(…ここはどこだ?)
そこはどこか洞窟じみた場所だった。
とりあえず服は着ているみたいだ。
「ふむ、新たな同胞が生れたか。」
「魔王様、お待ちください。」
先頭にいる2人の話声が聞こえてくる。
片方は魔王らしい。
「解析スキルの結果、種族は人間、職業は狂戦士、俗にいうハズレです。」
(ハズレ、か。まあ、才能もないしそんなもんだろ。)
とわりと冷静に判断できている。
と、そこで職業がおかしいことに気づいたが、その思考をする前に2人の話が続き、
「狂戦士か。思考能力の低いただの獣だ、従属魔法で従属させて使い捨てが精々か。」
その言葉につい返してしまう。
「それは困るな。」
「な、返事をしただと!?」
従者?の反応に魔王も反応する。
「狂戦士じゃないのか?」
「いえ、確かに狂戦士…あっ!魔王様、常時能力に鉄の意志が存在します。」
「鉄の意志、勇者がもつ鋼の意志の前段階の能力か。これは厄介だな。」
(鉄の意志…か、もう腐ってボロボロだろうけどな。)
「魔王様、処分しましょう。」
「断る!」
力が溢れてくる。
どうやらスキルが発動したようだ。
常時発動スキルなのだろうか、力が沸いてくる。と同時に狂暴な感情が溢れだす。
多分、狂戦士が保有する基本のスキルなのだろう。
しかし、意識を飲まれることなく使えるのは意志の力があるからだろうか。
そこからは戦闘が始まる。
名も知らぬ従者?は瞬殺、魔王との距離はあったが他のお供も沈めすぐに肉薄した。
「狂戦士の力も制御して指標性を持たせれば強いのだな。」
返事はしない。するのもめんどくさい。
「その力、我が配下として振るわぬか?」
これは、俺の力に怯えるというものではなく、ただ配下に欲しいだけだろう。
「そんな趣味はないし、興味もない。」
「そうか、ならば滅べ。」
俺の相手をしながら魔法の詠唱らしきを始める。
詠唱が完成すれば多分負ける。
他に何か手はないかと頭を張り巡らせると、いくつかの魔法が使えることに気づいた。
そのうちのひとつを唱える。
「怒り、哀しみ、嫉妬、そして狂え。狂気乱舞!」
どうやら自分を含む範囲魔法だったようだ。俺の心が軋む。
魔王にもある程度効いているのか詠唱が止まった。
基本の常時発動スキルが魔法の効果を喰い、力が更に増したのを感じた。
多分だがこの魔法、負の感情が強いと効力が強いのかもしれない。
そのままの勢いで押しきるも止めを刺すまでには至らない。
しかし、魔王の居城からの脱出する隙はできたので脱出させて貰った。
魔王軍に大打撃(狂気乱舞の同士打ちの被害が大きい)を残して。
魔王を倒すには力がたりない、なので逃げさせてもらった。
空腹は感じない。どれだけ歩いたかはわからない。一矢も報いて満足もした。
村も見えて来たし俺はもう疲れた、このまま倒れよう。
そして意識を手放すのだった。
更新は1,2週間を目処に。
改稿は誤字修正が主。
内容改変の際は必要になった新しい方の投稿の前書きに記載。