空から降ってきた勇者の俺。
死は眠りに落ちるのに似ていた。
ひどく疲れている時の、それだ。
横になって目をつむり、なにかのワンシーンのような映像がまぶたの裏で勝手にはじまるのを、「あ、これは夢かな」と思いながら、ベッドに意識が吸い込まれていく、あの感じ。
自分が眠りにつくのだと分かっていながら、抗うこともなく落ちていく、あの感じ。
それと同じで、俺は自分が死ぬんだと分かっていた。
それはもう抗いようもないことで、だから俺は、眠りに落ちるように終わりを迎えられることに、安堵していた。
レスト・イン・ピース。俺よ、安らかに。
残念ながら、そうはならなかった。
「……なっ」
意識が戻ると俺は本当に落ちていた。
比喩じゃない。物理的な現象だ。
耳を切っていく空気がビュービュー鳴っていて、ピースにも安堵にも程遠い。
落下の風圧で波打つ体がグルンと回転してしまって、仰向けだったのがうつ伏せになってしまう。
おかげで、別に見たくもなかった地表が見えてしまった。
なんか夜らしく真っ暗ではあるが、明かりが灯ってるせいか、距離感は掴める。
ものすごい遠い。
つまりは、すごい高度だ。
要するに、激突すると死ぬ。
パラシュートなど背負ってないし、背負っていたとしても使い方が分からない。
よって俺は死ぬ。
さっき死んだばっかりなのに、もう死ぬ。
つか、地面が近づいて来る。
かなりヤバい。
どうやら街があるらしい。日本っぽくないけど、街だ。
あとなんか松明持った大勢の人たちが騒いでる。
上空を見上げて、小粋なイタ飯屋でかかってるイタリア民謡と言うかなんかのCMでかかってたみたいな感じの歌
◯〜△@〜! おーおー! $◎〒〜@〜! おーおーおー! ←こんな感じ
を陽気に唱和してたり、手を叩いたりわーわー言ってたり、とにかくすごい盛り上がり方で、それはなんと言うか何十年ぶりの日蝕だとか彗星だとかに沸き立つ観衆って言うか、まあとにかく、みんな笑顔だ。笑顔な気がする!
って言うか、本気でもうヤバい。
あー! 地面! 地面くる! 来る来る来る来る! あー! あー! おやめください! おやめください地面様!
◯〜△@〜! おーおー! $◎〒〜@〜! おーおーおー!
ドォォォン!