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雪織  作者: 雨滴
2/2

水の球体と花

文字数が全然足りなかったのでおまけです。

花の妖精リィルと水の妖精ルーレはいつも一緒。リィルが纏う花の香りとルーレが纏う霧が合わさって、二人の周りにはいつも花の香りがする霧が漂っています。今日もくるくるとお互いの周りを飛びながら、二人は楽しそうです。

「ねえねえ、ルーレ」

「なあに、リィル」

「もうすぐ、雲の大精霊さまのお誕生日ね」

「そうだね。今年の贈り物は、何にしようか」

仲のいい二人はいつも一緒に一つの贈り物を用意しているのでした。

「キラキラしたものがいいかな、ゆらゆらしたものがいいかな」

「可愛らしいものがいいかしら、華やかなものがいいかしら」

二人は顔を見合わせると楽しそうに笑い、声をぴったり合わせて言いました。

「いつものあれで決めようっ」


「表なら可愛らしいもの」

「裏なら華やかなもの」

リィルが高く花びらを投げ上げると、花びらはひらひらと舞いながら落ちて来ます。そして舞い落ちた花びらの向きは。

「表」

「可愛らしいものね」

リィルは花びらを拾い上げ、もう一度投げ上げる準備をしました。

「表ならキラキラしたもの」

「裏ならゆらゆらしたもの」

そして投げ上げられた花びらはひらひらと落ちて来て。

バサッ。

なんと鳥に攫われてしまいました。きょとんとした顔のリィルとルーレ。きょとんとしたまま顔を見合わせ、同時に笑い出しました。

「キラキラしたものじゃなくて」

「ゆらゆらしたものじゃないもの、だね」


川の上に浮かぶリィルとルーレ。ルーレは水に手をつけていて、リィルは腕いっぱいに花を抱えています。何をしようとしているのでしょうか。

ルーレが手をつけている周りの水がふるふると震え始めました。その震えが大きくなったり小さくなったり、何回か繰り返して次第に穏やかになっていくと、リィルがそこに持っていた花を投げ込みました。花は水に入ると揺らめき絡まり、一つの形を成すとぴたりと止まりました。そしてルーレが水から手を上げると水の中に花が閉じ込められた球体が出来上がっていました。満足そうなリィルとルーレ。しかしルーレが一度水辺の草の上に球体を置こうとしている間に、リィルのすぐ側で魚が跳ね、水飛沫を浴びてリィルはバランスを崩して水の中に落ちてしまいました。

バシャン、という音に振り向いたルーレは慌てて球体を置いて水に潜り込みました。水に潜ったルーレは、魚と戯れていたリィルを見て呆れたような顔をし、リィルを連れて水から上がりました。

「心配したよ、リィル」

「ごめんね、ルーレ。でも、水ってルーレに似てるのね。水の中で遊ぶの楽しかったわ」

「じゃあ今度一緒に水遊びをしよう」

「そうしましょう」

そうして二人は笑い合いました。

「楽しみね」

「楽しみだね」


そうして雲の大精霊さまのお誕生日の日。二人は順番を待ちながら今日も楽しそうです。

「苺のケーキがとても美味しかったわ」

「蜂蜜のゼリーも美味しかったよ」

にこにこ笑う二人の間をふとそよ風が通り過ぎました。なびく髪を押さえて言います。

「今日は空が青くて綺麗ね」

「風も気持ちいいね」

リィルは小さく首を傾けて言いました。

「贈り物、喜んで頂けるかしら」

ルーレは鏡写しのように首を傾けて言いました。

「喜んで頂けるといいね」

そうして二人は楽しそうに笑い合いました。


「お誕生日おめでとうございます。雲の大精霊さま」

綺麗に声を重ねた二人を雲の大精霊さまは微笑ましそうに見つめました。

「今年も二人で用意してくれたのね」

「はい、雲の大精霊さま」

「どうぞ、雲の大精霊さま」

雲の大精霊さまは球体を受け取ると少し驚いたような顔をしました。雲の大精霊さまの珍しい表情に、リィルとルーレは誇らしい気持ちになりました。

「触り心地がいいし、可愛いわね。ありがとう、飾らせてもらうわ」

二人が頷くのを見届けて、雲の大精霊さまは続けました。

「いつまでも、仲の良い二人でいてね」

リィルとルーレは嬉しそうに頬を綻ばせて、一緒に頷きました。

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