第6話:魔素溜まり
閲覧有難うございます。
毎回投稿が遅れてしまって申し訳ないです。
これからもペースが不安定になると思いますが何卒よろしくお願いします。
魔素溜まり
さてと、やる事は決まった
目下の目標はこの子のお父さんを探し出し、怪我を治療して無事に人里まで送り届ける
太陽の位置からして今の時間は昼を少し過ぎた辺りか、森の中と言うのも考慮するともう少し経つと暗さが増してくる
そうなるとなるべく早めに見つけ出さなければ、私はこの子の家がある場所は分からないし、送り届けるにしても暗くなれば道が分からなくなる可能性が高い
まぁ、分かりやすい道も出来ているし、その穴が空いている場所まではすぐに着くことが出来るだろうから、捜索の時間は余り心配しなくても大丈夫だろう
今後の方針をボンヤリと考えながら、焚き火の後始末や出した道具の片付けなど色々して出発の準備を終える
「よし片付けも終わったことだし、早速貴女のお父さんを助けに向かおうかな」
「は、はい!宜しくお願いします」
「困ってる時はお互い様だからさ、そんなに畏まらなくても良いよ、それに私が好きでやってることだし」
手をヒラヒラ振りながら気にしなくて良いと言ってるのに女の子は更に恐縮してしまう、うーむこの子の真面目すぎるわ、このままでいるのも気まずいし話題を変えよう
「そうだ、本当なら貴女にはここに残って休んでいて貰いたかったんだけど、私貴女のお父さんの顔も名前も分からないから貴女も一緒に来てもらえるかな?そうすればすぐに本人の確認も出来るし、そのまま貴女達が暮らしてる場所まで直接送る事も出来て一石二鳥で事が済むんだけど…どう?」
「は、はい!一緒に行きます!」
「よーし、じゃあ貴女はその狼に乗ってね」
「…え?お、狼に乗るんですか?」
女の子の後ろに居る狼を指差しながらそう言うと驚きと怯えを含んだ顔で聞き返してきた
「そうよ、貴女は体調が万全じゃないし結構な距離を移動することになるから、一緒に行くならその子に乗って行った方が安全かつ確実だと思うのだけど…もしかして動物は苦手だったりする?」
「いえ…あの、何というか…乗っても大丈夫なんでしょうか?噛まれたり振り落とされたりしませんか?」
あー……そうだよね…立ち上がると余裕で私の身長を追い抜く程の大きさの狼を見たら普通は怖がるよね…ここ最近普通の人と触れ合う機会がそんなに無かったから感覚がズレて来てるな…気を付けよう
「あぁ、ごめんね、いきなり狼に乗れとか言われても困るし怖いよねでも大丈夫、その狼は優しい子だから噛まないし人を乗せても嫌がらないから心配しないで」
「そうなんですか?」
私の話を聞いてまだ不安そうな顔をしながら女の子は後ろを振り返り狼を見つめる、すると狼が女の子のすぐ側までゆっくりと近づき、頭が女の子の前に来るように向けて伏せをした
「ほら、危なくないから撫でてみて?とっても大人しいから安心して良いよ」
光を反射するツヤのある黒い毛並みを見つめ女の子はおっかなびっくりしながら躊躇いがちに狼の頭に手を伸ばす、そっと指が狼の頭に触れ、ゆっくり撫で始めると次第に毛並みに沿って感触を楽しむように手を動かし始めた
「ね?大人しいでしょ?」
「はい、いままでこんなに大人しい狼見た事もないし触ったのも初めてです」
「ふふっ、ずっと触っていたくなっちゃう位良い毛並みでしょう?」
返事をしながらずっと狼の頭を撫で続ける女の子を見て微笑ましいものを感じてつい頬が緩み少し笑いながらそう言った
「はい、フワフワでモフモフしてて思ってたより柔らかいんですね…」
こっちの言葉が聞こえてはいるようだがかなりお気に召したのか暫く撫でくりまわしていると、ハッと我に返ったのか顔を赤くして俯いてしまった
「…すいません、とても良い触り心地だったので…つい夢中になってしまいました」
「良いよ良いよ気にしないで、さてとこれでその狼が大人しくて良い子だってわかってもらえたかな?」
「はい、本当に大人しいです」
「じゃあほら、早速乗った乗った早くしないと日が暮れてしまうよ、早く貴女のお父さん助けてあげないとね」
土を払いながら立ち上がり女の子にそう促す、緊張を解くのに思ったより時間かかったな…でもまぁ良いや、ササッと終わらせよう
◇
その後熊が薙ぎ倒した木々を目印に女の子が逃げてきた道を遡って目的地へと向かう、多少歩き辛いがこの程度の悪路なら私は慣れたものだし女の子も狼に乗っているから然程の問題もなく進む事が出来たのだが
目的地に近付くにつれて野生動物との遭遇率が上がって来た、オマケにその殆どが目を血走らせて攻撃的になっていた、
コレはちょっとマズイかも…
動物が襲ってくるのは別段マズイ事はない、私の狼達が私の目の届かない位置で勝手に排除してくれているお陰で寧ろ襲ってくる動物は殆ど居なかった、問題はどうして動物達が凶暴になっているかが問題なのだ
動物達が凶暴になっている原因に幾つか思い当たる物があるが動物達を観察して見るに恐らくアレだろうねぇ……
ハァ…厄介事だ、辛うじて私一人だけで対処の出来る程度のものだが時間も手間も掛かる類の厄介事だ
気落ちしつつもたまに襲ってくる動物達を適当に処理しつつ、目的の場所までたどり着く、そこは円を描くように周囲に木が生えておらず背の低い草が生えている程度で一休みするには丁度良い雰囲気の広場になっていた
たがその広場の中心付近に大きな穴がぽっかりと空いていてせっかくの良い雰囲気が台無しである、そんな事を考えながらも穴に近づいて行く
「貴女のお父さんはこの穴に落ちたのね?」
「はい、この場所で丁度休憩をしていた時に突然地面が崩れて荷物ごと穴に落ちたんです、でもすぐにお父さんから怪我をして自力じゃ出れそうにもないって返事があって、助けようとしたら…」
「熊が出て来て逃げ回って偶然私が助けたと、取り敢えず早めに穴から救出して手当てしないと、貴女はここで待っててね」
そう言いながら探査魔法を使う、穴の深さはそれ程深い訳ではなさそうだ、真っ暗で何も見えない穴を入念に調べていると、穴の底で生体反応が一つあった大きさからして女の子の父親だろう、早速穴の中に入っていこうかと思ったが一応念には念を入れて装備を整えていこう、道具箱のリストを見ながら必要な物を出して装備する
「灯りの準備よし、もしもの時の武器類よし、治療道具よし、大体準備完了かな?じゃあ行ってくるね」
装備の確認を済ませ女の子にそう言ってひょいと穴の中に飛び込み飛翔魔法を使いながらゆっくりと降下していく、降下しながら周りの様子を確認する、所々に鮮やかな光が煌めき瞬いている
うわ…やっぱり魔素が濃いなぁ…でもまだ最悪の事態にはなってないのが唯一の救いか、まずやる事やってチャチャっと処理を済ませなきゃね
穴底にゆっくりと着地をして周りを見ると散らばる荷物と横たわる男の人が居た、近付き様子を診ると両足の骨折や打撲、擦り傷など怪我の具合は酷いし軽く体が熱を持ち始めている、呼吸は痛みと疲労からか若干弱っているように感じる
簡易ではあるが自ら応急処置をした後も見られるが十分な処置とは言えない、これはちゃんと診察しないと内臓や見えない所に傷があるかもしれない
回復魔法を掛けるにしても治療する位置を確認した方が効き目が違う、本来ここで軽く手当して後は穴から出て少し落ち着いた所で処置したかったけどそんな悠長に構えていられる状況でもない、仕方ないけどここで治療するしか無いようだ
「大丈夫ですか?私の声が聞こえますか?声が聞こえたら返事をしてください」
「う、うん…、助けが、来てくれたのか?」
肩を軽く叩きながら声を掛けると男の人は薄く目を開けてこちらに顔を向ける、意識の確認のために簡単な質問をする
「はい、助けにきました、意識はどうですか?ご自分のお名前は言えますか?ここが何処だか分かりますか?」
「ん?あ、あぁ…俺の名前はサイモン、ここは…まだあの穴の中か」
思ったより意識はハッキリしているようで質問には若干の間を開けて返答するサイモンさん、続けて質問をする
「サイモンさん、私の指を見て下さい、何本に見えますか?」
「三本だ、大丈夫だ眩暈や視界がボヤける事も無い」
うん、意識もしっかりしてるし目もちゃんと見えている、質疑応答も問題なさそうだ、これならちゃんと問診が出来るし触診して痛む場所を確認できる
「落ちた時に頭や胸などを強く打ち付けたりはしませんでしたか?少しでも痛む所があったらすぐに言ってください」
「…あぁ、落ちる時に頭や目は何とか守る事が出来たが、その他を強か打ち付けて最後は着地に失敗して両足が折れてしまった、体のあちこちが痛いが運良く荷物に入っていた緊急用の鎮痛剤のお陰で今はまだ何とかなってるよ」
私の質問にサイモンさんはしっかりと私の目を見て答えてくれた、だがやはり我慢しているのか話している時も顔を顰める事が目に付いた、とにかく診察と治療を始めなければ
「サイモンさん今貴方をこの場から動かすのは危険と判断しました、ですからここで診察と治療を行います」
「すまないが頼む…」
サイモンさんの了承を得てテキパキと診察を開始する、上着を脱がし服を退けると至る所に痣が出来ているのが確認できた、特に脇腹の痣は肌が赤黒く変色していて見るからに良く無い状況だ、慎重に患部に触れると激痛から体を退け反らせサイモンさんは苦悶の表情を浮かべる
「…全て見透す眼」
魔法を使い外見だけでは分からない体の中身を診察する、強く打ち付けたせいで内臓の中で出血を起こしている放置すれば危険だ、透視魔法でじっと傷を見ながら意識を集中させる
「…癒しの光よ此処に集え"ヒール"」
暖かな光が痣に染み込むように体内へと入り込み傷が癒えていくのを確認する
「よし、内臓の傷は塞がった、後は何処か異常のある所は…腕の骨に肋骨のヒビ以外は無しか、足より先に腕と肋骨から治療しないと」
患部を透視しながら回復魔法を順に掛けていき最後に打撲や擦り傷などの外傷を治療して全ての処置が終了した、怪我は綺麗に治ったけれど消耗した体力はすぐには元に戻らないし若干の発熱などがあるので早めに安全な所で休ませなければ
「サイモンさん終わりましたよ、コレで一先ずは安心ですが早く安静にできる場所で休んだ方が良いです」
「すまない助かった、でもそうゆっくりもしてられない、一緒に森に来ていた俺の娘を…ミーシャを探さなければいけない、穴に落ちた後悲鳴が聞こえてそれから無事かどうかが分からないんだ…一刻も早く探さなければ…」
「それなら大丈夫ですよ、私は貴方の娘さんにお願いされてここに来たんですから、娘さんは大した怪我もなく今頃穴の外でお父さんが無事に出て来るのを待っていますよ」
調子の悪さも相俟って顔を青白くして立ち上がろうとしたサイモンさんに娘さんが無事な事を伝える
「ほ、本当か!?よかった…無事だったのか…悲鳴を聞いた時、息をするのを忘れる程恐怖したが…そうか…よかった……本当によかった」
娘の安否が確認できてサイモンさんはその場で腰が砕けへたり込んでしまった
「さぁ、早くここから出て娘さんに無事な姿を見せに行きましょう」
「あぁ早くそうしたい、だがこの大穴からどうやって出るんだ?むしろお嬢さん、お前さんはどうやってここに来たんだ?見たところロープなんかも見えないが?」
「魔法を使ってここまで降りてきましたからね、帰りも魔法で飛んで帰りますよ、あ、荷物全部持って行くのはちょっと難しいので一旦地上に出たら私が回収しますね」
そう言うと少し驚いた顔をして私の顔を見てくるサイモンさん
「お前さん凄い魔法の才があるんだな、その若さでさっきの回復魔法といい、飛行魔法も使えるとは嬢ちゃん…あんた何者なんだ?」
「何者って、別に何でも無いですよ、ただの通りすがりの旅人です…さて、そろそろ外に出ないと娘さんも待ちくたびれてしまいますよ」
さあ、と言いながら座り込むサイモンさんに手を差し出す、その手を掴んで立ち上がるサイモンさんの様子を観察する、バランスを崩すことも無いし痛むような素振りもない、まぁ後で何か異常があればその都度診れば良いし取り敢えずは大丈夫だと思う
「じゃあそのまま手を繋いでいて下さいね、行きますよ…飛翔」
魔法を唱えるとフワリと体が浮き上がりゆったりとした速度で出口まで飛んでいく、外に出ると私の狼に寄り添って寝ている女の子が見えた、サイモンさんはそれを見てギョッとするが誤解がないように説明をする
「あの狼は私の仲間ですから警戒しなくても大丈夫ですよ、それよりも思ったよりも時間が掛かりましたね、今降りますから娘さんと一緒に待っていてください、荷物を回収したら人里までお送りします」
高度を下げ地面に降りる、私が近づくと狼は顔をこちらに向けてくる
『何か変わったことはあった?』
『獣ガ何匹カコチラヲ狙ッテ居タカラ周リノ皆ニ片付ケテ貰ッタ』
『他には何も無かった?』
『特ニ報告スル様ナ事ハ無カッタ』
『報告ありがとう、それとその子の護衛ご苦労様、この後も少し働いて貰うけど宜しくね』
『了解シタ』
狼の頭を撫でながら報告を聞く、念話が使えるとはこうした会話も人目を気にすることもなく出来るので便利だ
「サイモンさん、娘さん寝ちゃってますし、手早く済ませて来ますね、それまで待ってて下さいすぐに終わらせて来ますから」
「お、おい、大丈夫なのかこの狼?噛み付いたりしないよな?」
「大丈夫ですよ、大人しいし頭も良いですから悪意を持って攻撃でもしない限り噛み付いたり攻撃したりはしませんよ、じゃ荷物を取ってきますね」
自分の身の丈より大きな狼を目の前にして若干引き腰なサイモンさんに微笑みながらそう伝えそそくさと穴の中に入る、さて…ここからが面倒事の本番だ、早くこの魔素溜まりを処理しないと後々面倒になる、まだ動物たちが魔素に当てられて凶暴になる程度で済んでいるがこれ以上は拙い
はぁ……でもまだ運が良かった後一、二年くらい放置してたらまず間違いなく魔獣が生まれてた、それも一匹やニ匹どころじゃない数の魔獣が生まれていた、もしそうなってたらと思うとゾッとする、まずはこの無駄に溜まった魔素をどうにかしないと
ポケットから小指の長さ位の小さい巻き物を数個取り出す
その封を解き宙に放ると放られた巻き物はまるで見えない壁に貼り付いたように宙空に固定される
巻き物には魔法陣が描かれており明滅する淡い光を放っている
「解放」
巻き物の一つに指を当て発動の呪文とともに指を離す、指が離れると巻き物は勢いよく燃え上がりそれと同時に周囲を幾つもの魔法陣が取り囲み多重結界を穴の中に張り巡らせていく
「よし成功した、コレでこれ以上この穴の外に魔素が漏れることもなくなるね、それでお次は溜まった魔素を本来の流れに返す作業と安定化させる為の微調整か…やること多いな…うんざりするけどやらなきゃ駄目な事だし頑張らないと」
気が重くなる自分を叱咤し作業に戻る、しかし魔素溜まりか…
この様な魔素溜まりが出来てしまう主な原因は大地に血管の様に張り巡らされた龍脈の循環が悪くなる事で起こる
龍脈には魔素が大河の様に流れておりその循環が滞ると堰き止められた魔素が本流とは逸れた方向に流れ
その過程で稀に魔素が局所的に滞留し魔素溜まりが出来る
そんな事を考えながら滞っていた魔素を本流に戻す為の魔法を巻き物から解放し恙無く作業を終える
ふぅ…こんな感じで良いかな、しかしこの魔素溜まり本流に戻るまで結構な時間が掛かるね
目測で二、三年かな?一気に本流に戻したいけど一気に戻すと周りの環境にも影響するから気長にやらないとなぁ
まぁ時間なら余るほどある、今後も定期的に様子を見にくる事になるし取り敢えずは大丈夫だろう
◇
手早く荷物を回収し、穴の外までやってくるとサイモンさんは娘さんと話をしていた
「すいませんお待たせしました」
私が近付くとそれに気付いたサイモンさんと娘さんは私の方に向き直り頭を深々と下げてきた
「嬢ちゃん、俺だけじゃなく娘も助けてくれて本当に助かった礼を言わせてくれ、本当にありがとう」
「あ、ありがとうございました!」
「気にしないでください私がお二人を助けれたのはただの偶然ですから、それにまだここも安全な場所とは言えませんしそういうのは後でしましょう」
魔素溜まりの処理で思ったより時間を取られてしまったのか、日も傾き始め辺りが薄暗くなってきている
「確かに日も暮れてきたな」
「サイモンさんここから人里までの道は分かりますか?」
「あぁ分かる、ここからなら俺たちの村までそれほど離れていないが森の中はこの暗がりだ足場も悪い、安全を確保しながら行くとなると少なく見積もっても村に着くのに二時間以上掛かるだろうな」
そう私に説明するサイモンさんの表情は少し優れない、怪我は治ったが失った体力まで元に戻った訳ではない、やはりまだ辛そうだ
「サイモンさんちょっと失礼しますね、…彼のものを癒し活力を与えたまえ"リフレッシュ"」
疲労回復の魔法を唱えると魔法の光球がサイモンさんの周りを一回りし頭上で弾け、キラキラと光の残滓を残して消えていった
「疲労回復の効果のある魔法です、どうですか?幾分か気分が良くなりましたか?」
「あぁ、さっきよりは大分マシになったよ、ありがとう」
サイモンさんの顔色は多少良くなったがコレは体力のある内に村まで送った方が良いな
「なら良かったです、でもこの魔法は一時的なものですからまだ体力のある内に早めにお二人の住む村に向かった方が良いと思います」
「そうだな俺もそうだが娘の体調も気になる、森の中を進むのは多少危険だがこのままここに居るよりはマシだな」
私の提案にサイモンさんも思う所があったのか賛成してくれた
さてそうと決まれば手早く準備を済ませて出発しよう
まぁ二人には私の狼に乗ってもらうから日が完全に落ちる前には村の近くまでは行けるだろうし心配はいらないかな
「じゃあ直ぐに行きましょう、幸い荷物はこうして纏まって準備は出来ています」
「わかった直ぐに行こう」
「それじゃあお二人はお疲れでしょうしその子の背に乗って行きましょう」
私はサイモンさんの後ろ娘さんと一緒に休んでいた狼を指差しながらそう言った
「…へ?いやいや…嬢ちゃん俺は平気だ…その狼に乗らなくてもちゃんと歩ける」
額に脂汗をかきながら目が泳いでいる、そんなに具合が悪いのだろうか?
「サイモンさんは無理はいけませんよ、歩けると言ってもまだ本調子ではないんです、それにその子に乗った方が確実に早く村に着けると思いますよ」
「いや、だが…」
私の言葉を聞いて狼の方をチラチラと見ながらサイモンさんは妙に歯切れが悪い
「お父さーん暗くなっちゃうよーはやくいこー」
そんな中、娘さんは嬉々として狼の背に乗り手を振りながらサイモンさんを呼んでいた
「ほらサイモンさん娘さんも待ってますよ、さあさあ早く乗って下さい」
グイグイとサイモンさんの背中を押して狼の背に乗せ村を目指す
多少強引かなと思ったけど、あれ以上問答を繰り返していても時間と体力の無駄だったのでこれで良いとしよう
その後サイモンさんの案内で暗い森の中を魔法で照らしながら歩く事約一時間、当初予想されていた半分の時間で村に無事到着した
閲覧有難うございました。
誤字や脱字など気になることがありましたら報告して頂けたら有り難いです。