第4話:どうして、こうなったのか?
閲覧及びブックマークありがとうございます。
筆が遅いし拙い文章ですがお楽しみ頂ければ幸いです。
今回、短めになっております。
どうして、こうなったのか?
私は今、戦場に居る
喧騒が飛び交い倒れた仲間が横たわる
鉄と鉄とを打ち合わす音が響き
振り下ろされた刃が肉も骨も断ち切る
燃え盛る炎で肉が焼ける匂いが立ち込め
魔法によって凍えるような寒さが体を突き刺す
ここは戦場
「オーダー入りました!!ハンバーグセットが8!次にグリルステーキセットも8!それからお子様ランチが12!最後にアイスが6!急いで下さい!」
「オーダーの追加が多過ぎて物を焼く場所が足りません!どうしましょう!!」
「大変です!事前に仕込んでいた材料が底を尽きそうです!どうしますか!?」
「足りなかった野菜類を仕入れてきました!他に不足している物は無いですか!?」
疲労困憊で疲れ果て厨房の一角に作られた休憩スペースに横たわり一時の安らぎを貪る同僚達
鉄鍋と鉄製のヘラが忙しなく動き食材を炒めながら軽快な音を鳴らし
私特製の包丁が骨も肉もバターを切るように難なく両断し調理され
大きな鉄板の上で次々と肉が焼かれ丁度良い焼き加減のところで、熱せられた小さな鉄板に乗せられ次々運ばれていく
魔法で作った大型の冷凍庫の中には作り置きしている食材やデザートに出されるアイスなどが大量に詰め込まれている
そう此処は厨房と言う名の小さな戦場、私は今ある宿屋の厨房で必死に戦っていた
どうして、こうなったのか?
◇
事の始まりは約三ヶ月前、魔獣の蔓延るあの街から出て次の住む場所を探そうとその辺をウロウロしていた時の事だ
人目を避けるために森の中を進んでいると何処からか複数の獣の声とそれから逃げる足音を私の耳は捉えていた
足音からして追いかけている獣の数は2匹、大柄で周りの木々をなぎ倒しながら
獲物を捉えようと追走している
逃げている方は歩幅が小さく足音が軽い、時折零れ出る様な悲鳴の音は高く子供の声だと判断できる
其れが左斜め後ろ、8時の方角から此方に向かってきている、木々で視界が悪く視認する事はまだ出来ないが着実に近付いて来ているのが分かる
あら?逃げてるだろう子供の足が速い何か魔法でも使ってるのだろうか、しかしこんな所に子供か…
こんな森の深くまで子供が一人で来る事はまず出来ない、あの街を出てからウロウロと彷徨ったが何処かで不作が続いたとか何処かの領地の税が重すぎて生活が苦しいといった事も聞かない事を考えると口減らしなどでは無いと思う
なら何だろうなと考えていると漸く視界にその姿を捉える事が出来る、先に目に入ってきたのは身の丈3メートルになろうかと言うほど大きな熊が2匹並んで周りの木々を薙ぎ倒し進む姿だった、そしてその熊の前を長い黒髪を後ろで三つ編みに纏めた女の子が必死に熊から逃げていた
もうその顔は涙や鼻水でくしゃくしゃになりもう今にも全てを諦めてしまいそうなほど悲痛な顔をしていた、だか女の子は足を止めず我武者羅に走っていた
あんな顔を見たら助けない訳には行かないでしょう、あの女の子は苦しみながらも挫けそうになりながらもまだ生きる事を諦めていないそんな人を見殺す事などあってはいけない
「其処の女の子!!そのまま真っ直ぐ走りなさい!!」
「…っ!た、たす…たす、け……」
私の声に気付いたのか、此方に顔を向け女の子は喘ぐように必死に助けを求めた
「大丈夫!ちゃんと助けるから!だからここまで来なさい!!」
助ける為にもあの熊をどうにかして処理するしか無いがアレだけ大きい熊を仕留めるとなると魔法を使いたい、しかしあの女の子を巻き込んでしまう可能性が万が一にもあるから容易に使う事ができない
うーん、遠距離で威力がある武器はあるにはあるがとても珍しいと言うか、まずこの世界にある方がオカシイ物を私は持っているが今回それを極力使いたく無い
それは「銃」という代物で私自身も構造が分かっていないが高速で弾丸を撃ち出し目標物を破壊する兵器だ
コレの製作者は「自分の元いた世界にはもっと凄いものが沢山あったが自分で再現できたのはコレくらいなものだ」と笑っていたがコレでもトンデモナイ物に仕上がっている
私は製作者の知識を纏めた資料の中の銃の項目を読んだ時、使っているものとの差異を指摘した事がある
銃、筒状の銃身に込められた鉛玉をを火薬の爆発によって撃ち出す物、と記されていた、一方私が使っている銃は火薬が使われていない
この銃は魔法を発射する装置だ、言うなれば絵本などでよく描かれる魔法使いの杖の様なものだと製作者は言っていた
魔法を放つ銃は汎用性が高く弾を装填する時間も物質召喚の魔法でほぼノータイムで出来て連発も可能だ、魔法を撃つだけなら弾自体を必要としない、威力も自在に操作可能まさに万能兵器だって言ってたけど欠点がある
珍しいが故に悪目立ちし過ぎるのだ
かなり昔に盗賊に襲われていた人達を助けた時、何の気なしに銃を使ってしまい
ソレは何だと質問攻めに会い、しかも助けた人の中に貴族の坊ちゃんが居て
銃に興味を持ち、寄越せだ、差出せだのと詰め寄られ断ると散々追いかけ回された記憶がある
あれ以来、如何してもという場面以外では銃を人前で使う事は無くなった
閑話休題
詰まる所、今回銃を使うことによって余計なトラブルを起こしたく無いから他の武器で対応することにする
左腕を前に軽く伸ばし左手首に着けているブレスレットに魔力を流す
すると魔力に呼応してブレスレットが形状を変化させ、細くしなやかで軽く弧を描く弓に姿を変える
何も番えずに弓を引き、射る
瞬間キィィンっという音と共に何かが熊の居る所まで波紋の様に伝わっていく
すると熊たちは直様その場で足を止めて硬直し此方の様子を怯えるように伺っている
その間に女の子は更に距離を離す事に成功し私の所まで辿り着く、熊から逃げる勢いそのままに私の胸に飛び込んでくる女の子を風の魔法で作った空気の緩衝材でしっかりと衝撃を逃し抱きかかえる
恐怖と走り回った疲れから過呼吸気味になっている女の子に疲労回復の魔法と空気の袋を作り処置をしていく
魔法により幾分か落ち着いた女の子は緊張が解けたのか足に力が入らなくなりその場でへたり込んでしまった
そんな女の子を気遣いつつ熊たちから目線はそらさない
だか熊たちは一向に此方に向かってこない寧ろ先に動いた方が殺されるとでも言った感じに微動だにせず警戒している
「よし、ちゃんと魔法は効果が出ているみたいだね、さーてあの熊たちには一体何が見えているのかな〜♪」
幻術の魔法で幻覚を見ている熊たちを観察すると蛇に睨まれた蛙の様だ
多分龍でも見えてるのかなあの怯え様だと、さてさて可哀想だけどサクッと仕留めて終わりにしますか
歌でも歌いたくなる様な良い気分だ、だってあの熊1匹で結構なお値段がするのだ、肉はとても美味しく食用になるし骨も毛皮も上質な良い素材になる、内臓も殆どが薬の原材料になるのでほぼ捨てるところが無い、それが2匹も居るとは私にとっては何とも運が良い
でもあの熊、魔獣じゃ無いのに魔獣を食い殺す程強い個体が居るんだよね、だから一般の人がこの熊に出会ったらまず運が良くなければ助からない
腕の一振りで木々が根元からへし折れ、宙を舞うほどの膂力を持ち、悪路を物ともせずその巨体で薙ぎ倒しながら途轍も無い速さで迫ってくるのだ、おまけに感覚も鋭く隠れようとも直ぐに見つかってしまう
狩りをする上でこの熊にだけは装備が整っていない状態で遭遇してはならないとされているくらい危険な準魔獣級の獣
良くこの子殺されずに逃げ切れたね、風の魔法で足を速くしてたけどコレは多分無意識に使用してたんだろうな、極限状態で体が勝手に魔法を使ったと言ったところかな?
しかし見事な魔力の練り込みだった無意識化の事とは言え、あれ程綺麗な魔力の流れは久々に見た、この子意外と良い才能を持ってるのかもね助けられて良かった、いつの間にか意識を失った女の子を見てそんな事を思いながらまた何も番えず弓を引き、射る
一条の光が煌めいたかと思えばその光は二つに別れ熊たちの眉間に風穴を空ける
一拍の間を置き熊たちはその巨体を地面に勢いよく横たわらせる
ズドン、と言う音と共に地面を震わせながら倒れる熊を見て周囲の警戒をする、こう言った何かが終わった瞬間ほど気が緩み、忍び寄る危険に気が付かない時がある為しっかりと警戒する
今回は保護する対象もいる為、いつもより念入りに安全確認をする
「付き従う影」
狼達をを呼び出し指示を出す
「周囲の警戒をしていて」
『了解』
狼達に周囲の監視をお願いして私は熊を回収しに行く、うん…大きいねとてもじゃないが大きな荷車にでも乗せないと運べないほどの大きさだ
しかし私の道具箱さえあればそんな問題もあって無きような物で、かなりの巨体を誇る熊が2匹いたとしても何の問題もなくすんなりと道具箱の中に収まる
道具箱、銃を作った製作者が作った生き物以外ならどんな物でも入れる事ができる便利なアイテム、しかも道具箱内は時間の流れが止まっているらしく
例えば熱々のスープをそのまま入れておけば何時でも暖かいスープを飲めるのだ、更に使用しない時は亜空間に待機していて私が使う時に意識すると目の前に現れるので凄く便利
入れたいものに近づくか触れるかして対象を決定すると瞬時に収納する事が出来る、更に道具箱から物を出す時は使用者にしか見えないリストが現れその中から選択した物を取り出せる機能も付いている
製作者曰く「前に居た世界の便利な青いタヌキを参考にした」っと言っていたがあの人の元いた世界はそんなタヌキが居るのかと驚愕したのを覚えている
さて、熊の回収も終えたし女の子を介抱して何でこんな所にいるのか聞かなきゃだね




