第3話:その日出会った
視点切り替えがあります。
◆が表記された後に視点が切り替えられてます。
流血などの残酷な表現があります。
苦手な方はご注意ください。
その日出会った
「うおおおぉぉぉぉ!!!!」
気合を込めた斬撃が迸る、魔獣からの攻撃を逸らし避けつつ幾重もの斬撃を繰り出すが余り効いていない様子だ。
あの銀色の体毛と分厚く鉄のように硬い皮が刃を通さず全て弾き返されている。
だがそれで良い、今は時間を稼いでくれもうすぐ術式が組み上がる。
奴は打撃や斬撃に対する防御が著しく高い、しかし並の魔法では決定打にはならないだろう。
ならば特大の魔法を食らわせるのみ、護衛の剣士が魔獣を牽制し注意を逸らしている内に早く術式を完成させねば。
今こうしている間にも着実に剣士は疲弊し攻撃を逸らし切れず幾つもの傷が体に出来ている。
だが魔獣が本気で無いのか分からないが致命傷はまだ受けていないのが唯一の救いか。
「ワシが攻撃する前に合図をしたら奴の目を潰せ、如何に早い動きが出来ようとも目が見えなければ反応が遅れる。そこで畳み掛ける、良いな。」
護衛の一人である魔法使いの娘に作戦とも言えぬ作戦を言い渡す。
娘は神妙な顔で頷いてゴクリと喉を鳴らす様を見てあまり気負うなと言っておく。
しかし高威力の魔法は術式に時間が掛かり過ぎるのがもどかしい。
時が引き伸ばされたように長い。
焦る気持ちを抑えつつ漸く術式が完成した。
「今じゃ!離れよ!」
「眩き光よ我が前を照らせ!閃光!」
合図と共に剣士は魔獣と距離を取り身を屈め、娘が杖を掲げ呪文を唱える。
瞬間瞼を閉じていても目を焼く光の爆発が起こる。
予めそれを知っていたワシはすかさず待機状態にしていた術式を解き放つ。
「雷の雨!」
ワシが構え魔獣に向けた杖の先から紫電の輝きが雨の如く魔獣に降り注ぎその体を打ち貫く。
目を潰された魔獣は反応が遅れ直撃を食らうがその攻撃に耐えた。
だが直後攻撃の発射された方にその大きな顎門を開け飛び掛かってくる。
たが、それはもう予想済みじゃ。
「雷の刃」
ワシは待機させておいたもう一つの術式を解放する。襲いかかる顎門に極大の雷の刃が突き刺さり弾き飛ばす事に成功する。
何の策もなしに魔法使いが棒立ちになっていては殺してくれと言うもの。
幾重にも策を巡らせ罠を張り自分の土俵で戦うのが魔法使いじゃ。
今の攻撃で相当のダメージを与えられた筈、先に罠に嵌められた時は意表を突かれ動きが乱れはしたが準備が整えば此方のものじゃ、所詮魔獣など恐るるにたらんわい。
この時はそう思っておった。
殊の外事態がうまい方向に進み、気を良くしていた
最初に感じた絶望感も何処かへと消え、魔獣とはそこまで怯える必要の無いモノだとさえ思ってしまった。
油断していないつもりだった、いやあの時のワシは油断していなかった筈だった
だが上手く行ったのはそこまでだった。
弾き飛ばされた魔獣が周囲の建物を巻き込みながら転がっていき土煙が濛々と立ち昇る
すかさずワシと魔法使いの娘で追撃の魔法を畳み掛ける、幾筋もの魔法が光の尾を引き次々と打ち出されていく
土煙で視界が悪く魔法が当たっているか分からないが雨霰と降り注ぐ魔法を避けれるわけがない
暫く打ち続けた後、陣形を組み直し防御障壁を展開する、警戒しながら相手の出方を窺う
風が吹き視界が良くなって来たその時
急に強い向かい風が吹いたかと思えば前衛をしていた剣士の腕が吹き飛んでいた
、周りを見れば魔法使いの娘の方も鋭利な刃物で斬られたかのように肩をザックリと斬り裂かれ傷口からは血が滲み出ている
他の二人も同様に腕や足を負傷している
一拍遅れてワシの身にも異変が起こっている事に気付く
左肩から右腰にかけて大きく袈裟斬りに
線が入っている、そこからジワリと赤い血が滲んでくる
馬鹿なっ…!攻撃だとっ…!?
魔獣が魔法を使う事は知っていた、だから全員に魔法による防御障壁を施していたのだぞ…それを…あっさりと破壊して尚…この威力………ダメだ…勝てる訳が…ない……
風がゆらりと吹きその奥から魔獣が姿を表す………体に一つの傷も見えぬ無傷のままで
…クソッ!…化物がっ
魔獣の顔には未だ厭らしくニヤついた笑みが張り付いていた
コレで終いか?と此方に問うて来ているようなそんな人を小馬鹿にしたような感じが伝わってくる
ジリジリと魔獣が距離を詰めてくる
さあ、次はどうする?とでも言うように
此方の反応を楽しむように
此方が怯える様を噛みしめるように
一歩、一歩を時間を掛けてゆっくりと此方に向かってくる
もう目と鼻の先に魔獣が迫っている
ワシらを喰らうために大きな顎門を広げ
迫るもうその息遣いまで感じられる
これまでか…護衛の者達には済まないことをした
この者達だけでも逃がせれば良いがもうそれも無理か
済まないワシを恨んでくれ
諦めるしか、喰われるのみかと思った時黒い何かが魔獣に襲いかかった
魔獣より一回りほど小さい狼が数匹魔獣を取り囲むようにして攻撃を仕掛けている、狼達は的確に魔獣の攻撃を躱し果敢に攻撃しているが余り効果が無いように見える、だが決して退かず一定の距離を保ち攻撃を続ける
なぜこの狼達は敵わない相手に戦いを挑んでいるのだろうか
それに何か動きが妙だ、先程から時間を掛けて魔獣を誘導するように徐々に此方から引き離し始めている、それに何かを待っているかのような感じがする
そう思ったその時、狼達が合図でもしたかのように一斉に魔獣の側から飛び退いた瞬間、矢の如き速さで魔獣の懐に何かが飛び込んで行った
瞬きをする一瞬の間に魔獣が体をくの字に曲げ、大きな顎門からは血を吐き出しながら真横に吹っ飛んでいく
その有り得ない状況を目を見開きただ呆然と見ていた、そしてその有り得ない状況を作り出した者に目を奪われていた
金糸のように嫋やかな長い金髪を風に靡かせながらその娘は魔獣を睨みつけていた、凛とした表情の中に何処か愛嬌を感じさせる顔立ち、新雪を思わせる色白の肌、強い意志を感じさせる大きな瞳は青空の色のようだ
魔獣がすぐには動けないと判断したのか娘がこちらに近づいて護衛の剣士に何かを手渡し二、三言葉を交わすとワシの元まで走って近づいてくる
「大丈夫ですか?私の声が聞こえますか?今手当をしますのでもう少し頑張ってください。」
鈴の音のような心地のよい声でワシの様子を診ながら話しかけてくる
「すいません、傷口を直接見るので服を切ります」
そう言いながらテキパキと娘は服を切り傷口付近の血を清潔そうな布で丁寧に拭い傷を診ている
「こらなら、大丈夫。…癒しの光よ此処に集え"ヒール"」
娘が翳した掌から暖かな光が傷口に当たると見る間に傷が塞がっていき数秒後には最初から傷など無かったかのように綺麗に傷が消えておる
これ程までの見事な回復魔法を使えるとはこの娘は何者だ?
◆
私が仕出かした事であの人達が危険な目に会うかもしれない、そう思うと私の足に更に力が入る
まだ街から離れてそんなに距離が離れている訳では無いがほんの僅かな時間で人は死ぬ事もある、其れは私が一番分かっている
早く早くと焦るほどに街が遠のくような錯覚に囚われる
街に早く着いてもあの人達を探せなければ意味が無い事に気付き魔法を使う
「付き従う影」
魔法名を唱えると私の影の中から数匹の黒い狼と鷲が姿を表す
現れた狼達に走りながら指示を出す
「先に街に行ってさっき見かけた人達を探して、まだ魔獣に会ってないなら適当に誘導して街の外まで出してあげて、もし魔獣と交戦しているようなら私が来るまで足止めをお願い、後なるべく襲われてる人達から魔獣を遠ざけてくれると嬉しい」
そう指示を出すと了解したとの意思表示をして狼達は街へと目にも留まらぬ速さで走っていく
鷲にも空から捜索をお願いして
私も街に向けて只管に走る
最悪な予感が拭えない、もしかしたらもう魔獣の餌食になってしまったのではと思ってしまう、頭を振り最悪な思考を振り払う、今は全力であの人達を助ける事だけを考えるんだ
◇
街から出てからの速度よりも意識して速度を上げていた為思いの外早く街に着いた、だがあの人達が街に入ってから既に二刻程の時間が経っている
兎に角探さないとと思っていると狼達から『見ツケタ』という連絡が入る
『何処にいる?』
『街ノ真中クライ、怪我シテル』
『大丈夫そう?』
『アレナラマダ死ナナイ、ダケド早クシタ方ガ良イ』
『分かったありがとう、足止めと誘導をお願い』
『了解シタ、場所ハ鷲ガ教エル』
報告を受けて空を見る鷲が街の中心から少し外れた位置をぐるぐると旋回している
その場所を目指し疾る
崩れた瓦礫も荒れた道も慣れたもので平地を走るのと変わりなく疾走していく
目的地に辿り着くとそこには銀色の巨大な狼が鬱陶しそうに私の狼達を追い払おうと攻撃していた
だけどそれじゃあ私の狼達は捉えられない、その子達は其処らの兵士よりずっと疾いその数倍は無くちゃ擦りもしない
だが私の狼達も倒れている人達に被害が行かないように注意しながら動いている為中々攻勢に出られないでいる
でもそれで良い、少しだけだが徐々に距離が離れてきているだがまだ十分な距離が取れていないもう少し離さなければ
『まだ近い、もう少し離して合図をしたら即離れて』
『了解シタ』
徐々に距離が離れる、…あと少し
…………今だっ!!
『離れて!』
指示を出すと同時に私の狼達が一斉に飛び退き距離を取る、あの巨体にいつも使ってる武器じゃあまりにも威力があり過ぎて他に被害が出そうだ、なら直接打撃を叩き込む!
「身体強化!」
身体強化の魔法を使い全力で前に踏み込む、足元の地面を踏み砕き矢よりも疾い速度で魔獣の懐に飛び込む
そして渾身の踏み込みの速度を保ったまま光輝く右の拳を横っ腹に叩き込む、魔力を込めた拳から破壊のエネルギーが迸りその巨体を地面から引き剥がし吹き飛ばす
良い感触で入ったがまだ仕留めきれてはいない、けどアレなら暫くの間立てはしないだろう、今の内に怪我人の手当てをしなきゃ
見たところ重症なのは壮年の剣士とお爺さんが危ない、剣士の方は自分で止血をしているが、お爺さんの方は胴体を大きく斬られ倒れている
私は先ず壮年の剣士の元に近づき増血剤を渡しながら話しかける
「そのまま止血をしていて下さい、なるべく心臓より傷口を高い位置に上げていて下さい、お爺さんの手当てをしたらすぐに戻ります」
「あ、貴女は…いったい何者なんだ?」
「其れは後ほど、今はまだのんびりと話せる場所も暇もありません」
それだけ言って私はお爺さんの所まで走る怪我の様子を診ながら声を掛ける
「大丈夫ですか?私の声が聞こえますか?今手当をしますのでもう少し頑張ってください。」
取り敢えず直接傷を見なければいけない
「すいません、傷口を直接見るので服を切ります」
ハサミを取り出し服を手早く切り、傷口を綺麗な布で丁寧に拭い診察する
大きく斬られてはいるけど出血は少ないこれならまだ間に合う
「こらなら、大丈夫。…癒しの光よ此処に集え"ヒール"」
息を整え回復魔法を唱える傷口がみるみる塞がり傷一つない状態まで戻る
よし、コレでお爺さんは大丈夫だ早くさっきの剣士の人を手当てしないと
「まだ動かないでいて下さい、他の方の手当てもしなければならないので、念の為にコレを置いていきます。増血剤と痛み止めです」
お爺さんを寝かせたまま剣士の元に戻ろうとするが万が一魔獣がまた襲い掛かって来ないとも限らない
『誰かここに来てお爺さんを守ってあげて』
狼達にお爺さんを守るように指示を出す、一匹が来てお爺さんの横に座る
「大丈夫です、この子は私の仲間です。だから警戒しないで下さい、万が一の為にここに居て貰いますのでご安心ください」
ギョッとした表情で狼を見つめるお爺さんを宥めて説明する、すると今度は信じられないモノを見たような顔をして私を見てくる
その視線を無視して剣士の元に急いで戻る、途中斬り落とされたであろう腕を拾いあげ斬られた断面を見る、綺麗に切断されている為接合させる事が簡単に出来そうだ
「お待たせしました、今手当てをしますね。傷口を此方に見せてください」
「其れは私の腕ですか?何故其れを持ってきたのです?」
「今治しますので、動かないでいで下さい。…癒しの精霊の祝福を今此処に"アークヒール"」
"ヒール"よりも上位の回復魔法を唱える、すると斬り落とされた腕と傷口が光に包まれ弾ける、光が見えなくなると其処には薄く傷は残っているものの斬り落とされた筈の腕がしっかりとくっついて治っていた
「回復の次第を確かめます、少し痛いですが我慢してください」
私は唖然としている剣士の手をとり掌を上に向ける、小さな針を取り出しチョンと掌に軽く刺す
「痛っ!」
「痛覚は問題ないですね、指は問題なく動きますか?何処か痺れるような所はありませんか?まだ何処か痛む所はありませんか?」
「あ、ああ…いや、痺れは…無い、痛みもこれと言って無い、動きが少し鈍いが…然程気になるほどでは無い」
「良かった、念の為に布で腕を吊って置きます。後、先程渡した薬を飲んでいて下さい。味はイマイチですが、効き目は保証します。」
それだけ言って他の人達の元に向かおうとしたその時、背後から突風が吹き私の背中を真空の刃が切り裂き赤い血が周囲に飛び散る、斬撃でバランスを崩した私はその場に頽れ地面に血溜まりを広げていく
「ゴフッ!意外に…早く回復して…きましたね。油断…しました、剣士さん…私の事は気にせず…他の人を連れて逃げて下さい、…それとコレを回復のポーションと増血剤です。」
「何を馬鹿な事を!この身を助けてもらった恩人を見捨てて逃げろと?!」
血反吐を吐きながら剣士に逃げるように促すが剣士はその場を動こうとしない
「…貴方が…守るべきは…貴方の仲間のはずです、大切な人たちを…守ってください」
「いや、だがそれはっ…!」
私はゆっくりと言葉を紡いでいく、その声はだんだんとか細く途切れ途切れになっていく
「元はと…言えば私が…蒔いた種なんです、せめて…罪滅ぼしくらい…させて下さい。」
「…それは?どういう事だ?」
「剣士さん…貴方達は…この街の…調査に来たん…ですよね?」
「…ああ、ああ、そうだ私たちは街の調査に来た」
私を見つめる剣士は頷きながら言う
「私が…この街の魔獣を…全部…斃してしまったから…その所為で…街の様子が…変わったから…剣士さん達はこの街に…来てしまった…だから…ゴホッ!」
「わかった!もう良い!もう喋るな!今すぐ手当てをする!レイラ!!この人を早く手当てしてやってくれ!!」
そう叫んで私を抱き起こそうとする剣士の手をそっと優しく包みフルフルと首を横に振る
「自分の…体の事は…一番自分が…わかっています…もう…助から…ない」
剣士はとても苦しそうな顔をして私を見つめる
「そんな…顔を…しないで…ください。さぁ…早く…逃げて…今なら…魔獣も追うほど…力が残って…無いでしょう」
私は無理やり微笑んでみせる
「…せめて貴女の名前を聞かせてくれ、貴女の最後を必ず貴女の家族に伝える。」
「…家族は…いません…それに…こんな事は…今日…あった…事は…忘れる…べきです…こんな…悪夢は…忘れた…ほうがいい」
「…そうか、…すまない。皆撤退だ!直ぐにこの街を離脱する!」
剣士は周りの人達に号令を掛け撤退し始めた
「ちょっと!!ゴードンさん!!彼女はどうするんですか!?まさか、見捨てるつもりですか!?」
「ミラ、彼女の意思を無駄にしない為にも私たちは生きて、この街を出なければならない、彼女の死を無駄にするな。」
「でも!そんな事って!っきゃあ!」
言い争う二人に魔獣の攻撃が襲いかかる、だがそれを私の狼達が防ぐ
「私の…この子達が…後ろは…守ります…だから…早く逃げて…長くは…保たない」
「すまない…すまないっ…!」
剣士達はお爺さんや足を負傷した人を抱えて街の出口まで走って行く、私はその姿が完全に見えなくなるまで見送った
…………もう良いかな?
『あの人達、今どの辺にいる?』
『モウ外壁近イ、街ノ出口マデ、真ッ直グ向カッテル』
『そっか、監視ありがとう、じゃあこの芝居に幕を引きますか』
空を飛んでいる鷲に連絡を取り剣士達の位置を確認する、警戒する位置にいない事を確認して横たえた体をむくりと起こす
「はぁー疲れた、敵わないなら早く逃げて欲しいのに、無駄に長く居座って説得するのに時間が掛かってしまった」
固まった体をほぐしながら体の具合を確かめる、傷ももう塞がりかけているし問題無い
でもあの人達を騙して居るのはちょっと心苦しいけど人の命には代えられない
あのままだとあの人達の敵わないのに魔獣に特攻を仕掛けそうで危うかったからね、助けて傷も治したのにまた死にに行かれたらどうしようも無い
しかし、顔を見られても死んだ事になってればいろんな事を追求されなくて良いからこの芝居は妙案と言えばそうだけど
色々面倒だ下準備も即興でやったし
まず魔獣を殺さない程度の攻撃で昏倒させなきゃいけなかったし
その後、私に攻撃を当てやすい位置に陣取らなきゃいけなかったし
万が一の為に狼達をフォロー出来る位置に待機させたし
何より面倒だったのが演技
途中で何度も笑いそうになった
笑いを堪えようとしてプルプル震えてたし、笑うなって思うと更に笑いが込み上げてきて大変だったよ
これだけ面倒なのに上手くいくか半々位だったのだ
まぁ今回は結果的に上手くいってよかった
さてと、そろそろ仕上げと行きますか
私の狼達に文字通り秒殺された魔獣が横たわっている
周りに気を使いさらに手加減とかしなければ私の狼達がこの程度の魔獣に遅れを取るなんてあり得ない
取り敢えず牙を貰っておこう
うん、状態も良いし結構良い値段になりそう
うーん、毛皮はダメだね狼達が容赦なく刻んだから使い物になりそうも無い、まぁ良いやどうせ待つまでの時間潰しだし、そうやって待っていると鷲から連絡が来た
『男 ガ一人で戻ッテクル』
『やっと来た、じゃあ少しだけ距離を取っててね仕上げをするから』
『了解』
やっぱり来た、あの手の人間は仲間を安全な所に置いたら自分一人ででも死地にまた戻って自分を助けに来るだろうと予測していた、悪いけど利用させてもらいます
「…えーと、地獄の業火」
火炎の魔法の最上位魔法の更に上にある秘術に属する魔法を唱える
瞬間極大の炎の柱が空まで噴き上がり文字通り天を焦がす
近くに居るだけでもかなり熱い、近くで此れなら柱の中に居たら塵一つ残りはしないだろう
此れだけ目立つように強大な魔法を使えば、最後の力を振り絞り魔獣を道連れにして自爆したと勝手に思ってくれるだろう
まぁ、もう会うことも無いだろうしどう思ってようと特に問題無いだろうけどね
だか私がその日出会った人達と再会するのはそれから僅か半年後のことだった