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死んだ私はヒトでなし  作者: 時雨山
第一部:出会い編
10/11

第9話:祭の前の騒動

毎回読んで頂きありがとうございます。


投稿がすっかり遅くなってしまい申し訳ありません。


今回の話も短めですが楽しんでいただければ幸いでございます。


あれから一週間、早朝の料理の仕込みから昼時のお客を捌くまでが一連の流れとして習慣になってきた。


そして今日も日が昇る前から起床、手早く身支度を済ませ庭に向かう。

早朝の冷たい空気を深呼吸をして肺に取り込む、その後は準備体操と柔軟を念入りにして毎朝の日課である訓練を行う。


庭を出て体調の確認と村周辺の見回りも兼ねた緩めの走り込みをする。村の中を音も無く走り抜け、塀と堀を跳び越えて森の中へと入っていく。

道無き道を疾走し、時には木の枝を足場に木から木へと跳び移りながら徐々に速度を上げていく。


周りを見渡しても別段問題がある様な物も無かったので走り込みを適当な所で切り上げ宿に戻り、次の訓練に移る。



地面をしっかりと踏み締めて臍の下辺りに力を込め、拳を軽く握り半身に構える。

目の前に見えぬ敵を想像しその相手に向かって拳を振るう

左右の牽制から地面を強く踏み込み相手の懐に飛び込む、右の掌底を顎を打ち抜く軌道で突き出すが当たらない


カウンターを貰う前に一旦後方へと距離を取り立て直しをする

左腕を前に右腕は腰溜めにしてジリジリと距離を詰めて行く

相手との間合いを見計らい自分の射程圏内に入った瞬間

私は地を蹴り、飛び回し蹴りを繰り出した、案の定相手には避けられるが着地と同時にステップを踏み距離を詰める

互いの息使いが分かるほどの位置で殴り合う、殴打、抜手、手刀、肘打ち、蹴り、関節技、ありとあらゆる攻撃を織り交ぜながら

時に防ぎ、時に逸らし、一進一退の攻防は続く。



気が付けば空が白み始めもうすぐ山の向こうから日の光が差す時間まで私は想像した相手との戦いをしていた。

想像した相手との模擬戦闘は私の負けで決着が着いた、ずっと前から行って来た日課の一つだが未だに勝てるビジョンが見えてこない…


激しい運動をしてびっしょりと汗をかいてしまった、着ていた服が汗を吸って気持ち悪い。

取り敢えず庭の端にある井戸に向かい水を汲み上げる

井戸の側に置いてある桶にそれを移して顔を洗う、汲み上げた水は手がかじかむほどに冷たかったが

激しく体を動かし熱くなった今の私には心地よく感じられた。

その後は部屋に戻り、汗ばんだ体を湿らせたタオルで拭き、着替えを済ませ厨房に行くとアンナさんが朝食の仕込みをしていた。


「アンナさん、おはようございます。」


「あ、リアさんおはよう。」


「何か手伝う事ありますか?」


「朝食の仕込みはもう直ぐ終わるから…うーん、何を頼んだらいいかしら?」


頭を傾げながら悩むアンナさん

昼時のお客は嫌になるくらい多いが朝食を食べに来るお客は殆どいない、大概が宿泊している旅人や行商人なので朝食の仕込みは割と早めに終わるのだ


「そうですか…それならお昼時の仕込みを手伝います。この野菜の皮を剥いておけば良いですか?」


調理台の脇に置いてある野菜の山を見ながらそう提案する


「お願いしても良いかしら?」


「これくらい幾らでも頼んで下さい。」


「ありがとう、そう言ってくれると助かるわ。もう直ぐミーシャも来るだろうし、私もこっちが終わったら直ぐ行くから。」


笑顔でそう言ってアンナさんは仕込みの作業に戻る。


「さてと…私も作業を始めないと」


積み上げられた野菜の山に少し唖然としつつも作業を始める

ただ皮剥きと言っても泥を落としたり悪い物が混じっている場合はそれを省いたりとやると意外と疲れるものだ、少量ならまだしもコレだけあるとアンナさん1人じゃとてもじゃないが終わらないだろう…

手伝いを買って出た事でアンナさんの負担を減らすことが出来てよかったと改めて感じる。


少し時間が経ってミーシャちゃんも来たので一緒に野菜の皮剥きをする、少しだけ勉強の内容を織り交ぜながら他愛のない話をして笑い合う。

仕込みが終わったのかその話し合いにアンナさんも加わって一気に騒がしさが増すが悪い気はしない…むしろ嬉しいとさえ思う。


何というか、こうして誰かと笑い合い、誰かの役に立てると言うのは幸せなことだ、だから今日も1日頑張っていこう。



昼時の混雑を捌ききり今日も遅めの昼食タイムとなった。

いつものカウンター席で私とアンナさん、ミーシャちゃんの3人でお喋りをしながら食事をしていた。


「今日は昨日と比べてお客さんが少なかったですね。それに村の様子も少し忙しそうですし何かあったんですかね?」


ふと今日のお客入りがいつもより少なかったことが気になり聞いてみる。

するとミーシャちゃんが妙にウキウキした顔をこちらに寄せて話し出した。


「あと何日かしたら、お祭りが始まるんです!」


「お祭り?」


「はい!村の人が全員でやる大きなお祭りなんですよ。村の外からもたくさん人が来てすっごい賑やかになるんです!」


「へぇ、それは面白そうですね。教えてくれてありがとうミーシャちゃん。」


そう言ってニコニコしているミーシャちゃんの頭を撫でると更に笑顔になって嬉しそうにしている。

こんなに嬉しそうにしてるなんて余程お祭りが楽しみなんだね。


「それにしても村の人総出でって凄いですね。どんなお祭りなんですか?」


ミーシャちゃんの頭を撫でながら祭りの詳細をアンナさんに聞いてみる。


「狩猟祭って言ってね、今の時期はその準備で忙しいのよ。村の中央にある広場で色々やるから、舞台作ったり屋台の準備とかで此処まで食べに来る時間がなかったのかもしれないわねぇ。」


「なるほどだから今日はお客様が少なかったんですね。お祭りか…何だか賑やかそうで良いですね…」


不意に生前の…この身体になる前の記憶が蘇る

病弱だった私は毎日自分の部屋から出る事が出来ず床に臥せている事が多かった。


いつも部屋の窓から外を眺める事くらいしか出来なかったが毎年お祭りの時期になると

家族のみんなが私の部屋に来て部屋の中を賑やかに飾り立ててくれた事を思い出す。


外に出れない私を気遣って部屋の窓から見える庭に兄が出て大道芸人の真似事をしてくれたり。

妹がお祭りの屋台で買って来てくれた髪飾りを髪に付けてもらったり。


舞台でやっていたという即興劇をお父様とお母様が身振り手振りを交えて私に語ってくれた。

お祭りか…この身体になって永い年月を過ごしてきたが生前も含め一度としてその様な場所に自分の足で行っていなかった事を思い出す。


「あの…先生?大丈夫ですか?」


急に黙って物思いに耽っている私を心配したのかミーシャちゃんが声を掛けてくる。


「ううん…何でも無いよ…ちょっと考え事をしていただけだよ。」


「…本当ですか?先生とても悲しそうな目をしてたから少し心配しました。」


そう言われて内心ドキリとしたが表情には出さない様にした。

何というか子供は大人が思っている以上に良く人を見ているものだなと思った。

再度本当に何でも無いと言って強引に話を終わらせるがミーシャちゃんは納得していない顔をしているがこれ以上の追求を避けるために強引に話をすり替える。


「そう言えば舞台があるって言ってましたがお芝居とか何か催し物でもあるんですか?」


「そうねぇ、お芝居があったかどうかは分からないけど…知ってる限りの催し物は森で狩ってきた獲物の自慢大会や獲物別解体早技勝負、薬草クイズ大会、他には確か…」


「思ったより多いですね。全部見て回るのは大変そう…」


そんな話をしていると遠くから荒い足取りで誰かが走っている音が聞こえてきた、進行方向から察するにどうやらこの店を目指して走っている様だ。


外の様子に少し警戒しつつもそんなに慌てて来るなど一体何の用があるのだろうと考えているとお店のドアが乱暴に開かれ血相を変えたサイモンさんが転がり込んできた。


「嬢ちゃん!居るか!」


お店に入るなり大きな声で私を呼ぶ、ただならぬ気配を感じて内心警戒を解かぬまま私は席を立ちサイモンさんの方へ向かう。


「そんなに血相を変えてどうしたんですか?何かあったんですか?」


余程急いで走って来たのか息は上がり服の所々に泥や木の葉が付いている。


「助けがいる。森で怪我人だ、道から足を踏み…外して谷に…落ちた奴がいる。助けようにも、谷は深えし行く道も無えんだ…だから…」


急いで走って来た為か荒く息を吸いながら途切れ途切れにこちらに用件を伝えてくる。此処まで言われればサイモンさんが私に何を期待しているかは言わなくても分かる。


「だから私の魔法で飛んで助けに行って欲しいとそう言うことですね?」


そう言うとサイモンさんは大きく頷いて話を進める。


「あぁ頼む、上から見ただけでハッキリとはわからんがまだ生きているとは思う。こちらの呼びかけに反応を返さないが呻き声は聞こえた。あの調子だと早く助けないとマズイかもしれん。」


「分かりましたすぐに行きましょう。サイモンさん案内をお願いします。」


「任せろ、だが時間が余り無い。最短距離で行くから少し無茶をするぞ。」


その問いに私は頷いて了承の意思を伝え急いで私達は店を出る。

だが大急ぎで走ってきたのかサイモンさんの足取りには力が余り入っておらず少し遅いと感じたため魔法を使用する事にした。


「サイモンさんちょっと待ってください!」


「何だ嬢ちゃん!止まってる余裕なんて無いぞ!」


「足で走るより速いものを魔法で出します!準備しますので少し待ってください。…来て…付き従う影シャドーサーバント


開けた場所で立ち止まり魔法を唱えると私の影から私やサイモンさんの身の丈を軽々と超えるほどの大きな狼が姿を現した。


「うおっ!何だ!?」


驚くサイモンさんを尻目に私はその狼の背にヒョイと跳び乗る。


「ほらサイモンさん、呆けている場合じゃ無いですよ!早く乗って下さい!」


いきなり登場した狼に唖然としているサイモンさんに手を差し出し狼に乗るように促す。


「はっ、すまん。でも突然何も無いところからこんな狼が現れたら驚くなって方が無茶だろ!?」


そんな言い訳をしつつも私の手を取ってサイモンさんは狼の背に乗り込む


「振り落とされないようにしっかり掴まっていてください。」


「おう!頼むぜ嬢ちゃん。」


そう威勢の良い声でサイモンさんは発破をかけてくる、狼に驚きはしたが怖がってはいない様だ…

初めて森の中で狼を見た時は腰が引けていたのを思い出すと結構順応するのが早いなと思った。


………でもそれ以上にミーシャちゃんの方が物怖じしなかったなぁ…などと少し場違いな事を考えながら指示された方向に狼を走らせ森の中を風になって駆けていく。

怪我人の安否が気になるが今はただ、まだ生きていて欲しいと祈るしかない。


全然話が前に進みませんね。

展開をどうしようと毎回無い知恵を搾って考えてはいるんですが中々上手くいきません。

今後も不定期の更新になりますが最後までやり遂げる所存ですのでよろしくお願いします。

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