|オレらはモンスター!!_SS:聖圏マグナリア(中編)|
Phase2:_ウルスガンド
イダシアの塔は聖圏でも主に高位な人々が住まう場所である。
しかし、ほとんどが居住する広大な第1~4階層まではそれほど高位という者でなくとも住んでいたりする。第5階層からぎゅっと幅が狭まるので基本的に「高貴」とされる人々はそこから上に居住している場合が多い。
特に8階層からは嶺滝と呼ばれ、“神の言葉を零れ聞き得る場所”とされている。
そうした嶺滝に住まう人の中でも“別格”とされる存在がいくつかある。
別格たる理由は「ひときわ高貴」だったり「隔離したい存在」だったりと、様々だ。
隔離したいというのは公にできないような……例えばこっそりと罪ある人を断罪する(処刑=断じる)ものだったり、“禁歌”を可能とする血統であったりと、国家の技術や知識を護る意味でも隠したい人々がこれにあたる。
他にひときわ高貴というのは最初に紅い炎で導かれた人の末裔だったり、歴史の過程で何らかの功績を成した家柄や個人などがこれにあたる。
そうした中でも上記両方に該当する珍しい存在がある。第9階層たるセイデンに住まう一族の1つ、“ウルスガンド家”だ。
ウルスガンド家は【聖歌団】と呼称される部隊の部隊長を代々輩出している家柄である。聖圏が誇る主戦力部隊たる聖歌団だが、そこでもウルスガンドの血統だけがもつ声帯音を用いた歌は戦術兵器として運用される。
最初にこれが発覚したのはノーマン・ウルスガンドによる発声であり、音響無しのソロでも一般家屋を軽々と弾き飛ばしたと伝えられている。
そもそも彼が神託による声の兵器化を施された最初期の存在ということもあるが……何にせよ伝説的な逸話とともに現代でもその威力を血統に残し続けている。かのロキア=スローデンを足止めしたウルスガンド部隊の逸話などが有名であろうか。
またウルスガンドは“最初の信徒”の血統だ。大教父の教えを最初に受けた一族の1つでもあるのでその時点からして別格な存在なのである。
つまり戦史における活躍と一族の始まりが合わさったことで、ウルスガンドは超別格と言ってよい存在となった。これに並ぶ家柄を数えても両手の指を使い切ることはない。
現当主であるマルスティン・ウルスガンドは聖歌の指導者として名を馳せている。非常に穏やかで情に深い人としても有名であり、下層人(塔の外に住む人々)にも丁寧に接する奇特な紳士としても知られている。
マルスティンには幼い頃からの許嫁があって、それは同じく別格とされるアーガスト家の令嬢だった。幼い頃からともに過ごした彼女は今でこそ妻となり、夫を支える温和で美しい淑女として高名である。
栄誉も資産も信仰も潤沢で疑いなく幸せなウルスガンド夫妻。
誰もが理想として憧れる彼らだが……さらに人々が羨む理由がある。
それは高貴なる階層でも一際“可憐”とされ、人々から愛される存在……。
一人娘のアルフィース・ウルスガンドである。




