「オラはモンスター(心の天秤ー前編)」
サルダン帝は唯我独尊、絶対的な自信と圧倒的な実力によって帝域全土を発展・混乱させた稀代の英雄的破壊者である。
竜の転化と呼ばれる存在は歴史上に多数存在したが、彼ほど人間離れした能力と性格を兼ね備えた存在は他になかった。おおよそまともな人類では太刀打ちできない振る舞いは敵味方問わず、当時の人々をまるごと翻弄させた。聖圏においてすら、同じ時代で同じように稀代な指導者であった自国のアグリサスよりサルダンの記録が一部で多いくらいである。
この世界においてまったく異次元から来たかのような存在だったサルダン帝。それでも彼が現在、人々からなんやかんやと親しまれているのは「一応、他人のことを考えてはいた」からであろう。ただし、彼の良かれが人類にとって本当に良いかどうかは別として……。
もう1つ。今では薄れた話ではあるものの、サルダン帝がどうにか人々から「化け物」として見放されなかった理由がある。それは当時において唯一彼と肩を並べることができ、また“友”と呼ぶことができた存在だ。
その存在たる“ロキア”という男は歴史に偉大な将軍として名を残してはいる。だが、その本質は“サルダンの友人”だったという事実にあり、そのほうがよっぽど稀代な者であったと評せる。
ロキアはサルダンと同じく転化だったのではないかと言われている。伝説によればそもそも、祖竜ダリアから始まったとされるブローデン家、及びウォーレンダリア皇国というものは志しを同じくする竜の転化と共に興したものらしい。
共に人々を導こうと誓った両家だが、歴史の中でそれは度々に仲違いをおこし、離れたりくっついたりを繰り返しているとされる。時代に不揃いな様子で表れる両家の転化が同時代に存在し、そして出会った時。それは時代の大きな節目を迎える兆候だとされている。
おとぎ話、もしくは茶のお共に語られるような古の伝説……それがあながち嘘でもないのかなと、人々がそのように思ったのはサルダンとロキアの存在であった。
これも伝説に過ぎないが……まだ若かったサルダンと少年のロキアはたまたまマバラードの海岸で出会い、漁師として頑張っていたロキアをサルダンが邪魔したことで喧嘩に発展。そこでロキアの力に驚いたサルダンが直々に帝国の軍へと勧誘した……という話が今に伝わっている。
その話には何の証拠も正式な記録もない。しかし、ともかくロキアという男が軍に在籍し、サルダンほどではないものの人間離れした力で人々を率いたという歴史的事実は確かに存在する。
サルダンにとってロキアという男はよほど重要だったのであろう。リィオッドォの渡河戦においてロキアが失われたことによって、サルダンという男は人間として完全に壊れてしまったといえる。かのドゥアンダの殲滅戦における歴史的な激怒、その後帝域全土に無理やり行った無茶な土木工事、彼の暴走を止めるべく立ちはだかったローゼンハック卿との海上争乱、そして迎えた哀愁に満ちた破滅……。
良くも悪くも帝域に変化を加えたサルダン=ブローデン。彼の死後数百年が経った今においても彼の存在は帝史に忘れがたいものであり、その存在は帝域の至る所で片鱗を遺している。
そうした彼の圧倒的な存在感によって薄れてしまったが……当時の人々にとってロキアという男もまた重要な存在であったことは併記しておきたい。誰にでも優しく、強く、そして親しみやすくあった男……。
それが失われた悲しみと喪失感は帝域全土にしばらく暗い影を落としたらしい。
今でこそ一般的にあまり言われることはないのだが、当時の人々は日々の中でよく言ったそうである。
“ ああ、我らが母なる祖竜よ――
失われた【スローデン】をどうか、我々に還してくださいませ…… ”
引用元:「オットー=ブランによるグランダリア戦記」より
|オレらはモンスター!!|
サルダンの祝祭を3日前にした帝都の夕暮れ。そこでちょっとした騒動が起こった。
あの鉄腕ファルダードが馬車を破壊し、そのファルダードもまた何者かに破壊された。そこに舞い降りた天使達は久しぶりに竜の闘士と姿を成し、暴れる怪物的な誰かを捕縛。祭りを控えて高揚した市民や客人達は大捕り物に拍手喝采、大いに盛り上がった。
そんな騒ぎも酒の肴となる。幸いにして帝都民にとって悲劇的な事件でもなく、人々はヴァルキュアの活躍を讃えて飲めや歌えやと大いに騒いだ。
大小様々に騒ぎというものはある。それは例え祭りを前にした特別な期間でなくとも、人が大勢集まればそれだけ可能性が多くなるというものだ。それは良くも、悪くも……。
さて、そうして人々が騒いでいる頃合い。祝祭の3日前のこと。
実は騒ぎの中心にあったはずの少女だが、それは謎の女性に連れられていつの間にか城内(赤い城壁の内側)へと至っていた。
そこで太いパイプの下を通り、小汚い裏路地を進み、そして緑の鱗に覆われたような不気味な家屋へと入った。
現在、その家屋の中。革のシートが剥げて古めかしい椅子に腰掛けて、怪しい女が和やかな笑顔を咲かせている。
「まぁまぁ、聞きたいことは色々あるだろうけどさ。とりあえずは一息つきなよ! そうだ、このチップスでも食べるかい? 開けたのいつか忘れたけど……」
怪しい女。それは(自称)占い師の【サマード】だ。彼女はテーブル脇に落ちていた揚げ菓子の袋を猫のように柔らかな体勢で拾い上げる。そして中身を1つ「バリバリ」させると「うんうん、大丈夫。ちょっと湿気ってるけどさ♪」などと袋を差し出してお勧めしてきた。
誰に勧めているのかといえば、それは家屋の入口に突っ立っている少女――【アルフィース】に向けてである。
フレンドリーに菓子を勧められているアルフィースだが……その表情は険しい。怒っているというよりは“警戒している”のであろう。
それはここに至るまでの経緯にあったサマードの行動への疑問もあるだろうし、この家そのものへの不快感もあるだろうし、何より今現在どうなっているのか心配で仕方がない少年と、それに対して以前彼女が行った行為に対しての不満などが総合された結果の具体化である。
警戒感MAXという具合にあるアルフィース。少女はロウソク1本の灯りで薄暗い室内を見渡しながら、怪しい女へと問いかけた。
「パウロは? 彼が安全って……安心していいって、どういうことなのよ。こうして落ち着いたのだから、どうか教えてくださいませんか?」
部屋には物が雑多として散らばっている。どうにも家主の性格は綺麗好きというわけではないらしい。ゴミ屋敷とまではいかないものの、いずれそうなりそうな気配は感じられる有様だ。
それでいて書物が多い。これらはちゃんとして本棚に収められており、本棚そのものが埃っぽいことはともかくとして、本への敬意というか執着のようなものが感じられる。
アルフィースの問いを受けて。占い師サマードはしばらく天井を見上げた後、「やれやれ」といった具合に首を振りながら湿気ったチップスの1つをまた食べた。そして「パリパリ」と鳴らした後にやっと応じる。
「落ち着いた、か……アルフィース、あんたはそう言うけどさ。そうやって入口に突っ立って顔を険しくしている様子を“落ち着いた”なんて私は形容できないね。本当に色々あっただろうし、疲れてあんたがぶっ倒れるなんてあったら私はさ――」
「いいから、教えなさいよパウロのこと!! いい加減にしないと私っ、怒るからね……!!」
「――――やぁれやれ、こりゃご執心なこって。妬けるじゃないのさ……しかし、だとすればどうしてパウロくんは……いや、まぁいいか。ともかくハイハイ! 今、“見せます”からね。ちょっとこっちに来てくださいな?」
サマードはぶつぶつ独り言を零しながら椅子から立ち上がった。それはふわりと両足を一度上げて、反動を用いて「スタっ」と跳ぶような仕草だった。
柔軟な女は腰をポリポリと掻きながら、テーブル上にある“水晶玉”に触れる。それはどうにか片手にのせられる程度の大きさだ。
透明な水晶の玉を撫でつつ、未だ警戒して動かない少女に向けてちょいちょいと指を動かした。
アルフィースは呼びつけられたことがこれも不満なのか……眉間にシワをつくって訝し気に近いづいていく。
サマードが「まぁまぁ、これを見て?」と言った。不満そうなアルフィースは疑いながらも水晶玉を覗き込む。
すると、そこには――
「……あれ、どういうことだコレ。この光景って……」
「何よ、コレ。これって……ん? これって“私達”じゃない?」
なんと! その水晶玉には“古びた家屋の中で水晶玉を覗き込む2人の女性”が映っているではないか。部屋の天井から視界をとったかのように頭上から2人の姿が映し出されている。この現象は確かに凄いは凄い……だが、しかし。
アルフィースは「なんなの?」と首を傾げて怪しい女を見る。サマードは「どうして?」と首を傾げて不満気な少女を見た。
「ちょっと……何よコレ。パウロじゃなくて私達が映ってて……凄い技術で大変興味深いとは思いますけどね? そんなことよりこれがどうしてパウロの安全を証明しているというの??」
「いや、おかしい。だってあの時……はっ!? まさか、アルフィースあんた……“あの時の札”をあんたが持っているのかね!?」
「はぁぁ?? あの時の札って……何のことよ?」
「いや、だからあの時……ほら、ウォールナット村の入口で私が渡しただろう!? ほらほら、私の……コレ! こういう自己紹介のカードを渡したじゃないの!?」
「ウォールナット……自己紹介・・・・・あっ?! あぁ~~~、あの時のやつ?」
アルフィースは思い出した。それは数日前――あの怖い鳥みたいな赤眼の男に襲われた村の入口で、この占い師サマードが宙に浮かべて渡してきた札。
現在、サマードが取り出して見せている「(大体)100%的中!美人占い師サマードです☆」の文字とポップな彼女のイラストが描かれた詐欺みたいなカード……まさにこれを少女と少年はあの日確かに受け取った。
そして、確かそれは……。
アルフィースは猫の刺繍が施されたピンクの布袋を取り出した。財布であるその中から“2枚のカード”を取り出す。それらはどちらも同じものだ。
そう、どちらも同じ……。
「――――って、なんでよ!? どうしてあなたが2枚ともカードを持ってるの?! なるほど、どぉ~りで! それならパウロくんに渡した方を視たってここが映るわけだわ!!」
「えっえっ……な、なによ。これがどうしたって――」
「あのねぇ! それはあなた達がここに近づいてきたことを察知するために渡した御守りなの! その札を媒介にしてこの水晶玉に映そうと思ったの!! それをどちらもあなたが持っていたら……パウロくんを映せるわけないじゃない!? どうしてあなたがどっちも持っているのかしら!?!?」
「し、知らないわよ。そんな、だってコレただの自己紹介のカードだと思ったから、それで……それで特に理由はないけど私が預かったの!! 何よ、悪いですか!?」
「悪いっつぅか……うぅ~ん、まぁでも別に視えなくたってパウロくんは大丈夫だろうけど……でもあなたが納得しないわよね、これ絶対」
「よく解りませんけど、ともかくこれにパウロを映せるの!? だったら早くしてよ、早く彼を映して……私に彼の姿を見せて!!」
「だぁぁ~~~からぁ!? そうするためにそのカードを……いや、でも説明しなかった私も悪いか。いやそんなことよりどうすっかね……っと。そうだ、アレならイケるか??」
軽く凄まれてビックリしながらもアルフィースは毅然として彼の安否確認を訴えた。一方のサマードも一応は非もあることだしと、すぐに鋭い剣幕を鎮めて考え始める。
占い師は下くちびるを噛んでしばらく考えると……「あっ、イケそう!」と再び水晶玉を撫で始めた。
水晶玉の中で色とりどりな文様が渦を巻くようにグルグルと混じり合っている。それは実際のところ文様ではなく、不規則に読み取られる現実の光景の欠片である。
そうしたグルグルとした様子が落ち着いてくると……映し出された。水晶玉の中で若干に湾曲して映る光景。
それは――
「――っと、できたできた。ちょっと角度悪いけど……視えるよね? どうやらあの勲章は彼の近くにあったようだ、何よりさね! 失くさなくって偉いぞ、パウロくん!」
「あっ…………パウロ!? 本当だ、パウロが映ってる!! ねぇパウロ、大丈夫……って、何よこの場所!? これって檻の中じゃない!? 大変、やっぱり助け出さないと!! ……パウロ、今行くからね? 無理をしちゃダメだから……あなたは怪我をしているのよ。大丈夫、私が助けるから!!」
水晶玉にパウロの姿を確認したアルフィースはそこに語りかけ、そして駆けだそうとする。
それを見た占い師サマードはその身を翻し、少女の前へと軽く跳ぶように出でた。そして少女の手を掴んで「チッチッ」と指を振ってみせる。
「ハイハイ、待った待った! 助けるってそりゃ無理さね。なんせそこは帝都治安局本部、その地下にある拘置所ってところだ。正規の手続きを踏まないと入れっこないよ」
目元に刺青のある顔で愛嬌ある笑顔を見せてみるサマード。だが、少女アルフィースは鼻息荒く掴まれた腕を振り払おうとする。
「放っしてよ、無理ってなに!? 無理じゃないもの、私が彼を助けるんだもの!!」
「どぅどぅ、ハイハイ……アルフィース、私を見なさい。そしてちょっと落ち着きなさい……?」
「うっ!? ……ま、また……なん、なの……あなた、それって……」
薄暗い部屋の中で見据えた怪しい女の瞳が赤く輝いた。それによって少女アルフィースはくらくらと立つのもやっとな有様になる。
倒れそうな少女を支えて、ボロボロな椅子にそっと腰掛けさせるサマード。占い師の女は「あんまり連続して使わせないでよ……」と困った表情で少女の頭を撫でた。
「パウロくんはね、あれだけの騒ぎを起こしたのだから……そりゃちょっと捕まってしまうわよ。でも、だからって何か危険なことをされることもないわ。むしろその檻――拘置所を最高級のセキュリティ完備、3食付きでそれも無料の宿だと考えれば悪くないんじゃないかしら? しかもなんと、怪我の治療だって高い品質のものを受けられるわ! ……っ痛つつ」
サマードは赤い輝きを失った瞳を閉じて、まぶたの上から軽く指で擦っている。
そのように言われても……意識を朦朧とさせながら、少女は納得いかない様子で何故か辛そうなサマードを睨んだ。
「だって、あんな檻……まるで牢屋じゃない? パウロは悪くないもの、あんな場所に入れるなんてあんまりだわ……やっぱり、助けないと……」
「まるで牢屋ってか、まぁその親戚みたいな場所だよね。だけど牢屋と違って長く出られないってこともないし……とにかく。彼が“悪くない”って、それはあなた目線の話でしょう?」
「だって、だって悪くないもの……彼は私が叩かれたから、だから怒ってあの人達と……」
「――ハァ。あのね、アルフィース? 冷静に彼が行ったことを考えると……あれだけ人がいる大通りのド真ん中で道を破壊して、経緯はよく解らないけどたぶん鉄腕の男をぶっ壊して……そして明確に国家の警備隊へと抵抗した。あなた達は互いの事を良く知っているけど、ここの人たちはあなた達のことを全く知らないのよ? 安全か危険なのか……事情は判明せずとも、現状を踏まえて他の人たちの安全を考えれば、一度捕らわれるってのも仕方がないことじゃない?」
「それは……でも、だって……だってパウロが可哀想よ」
「可哀想? どうかな……確か聞いた話だと彼は野宿だって平然とするらしいし、外に比べたらあの場所はよっぽど快適でしょうよ。それに、あの場所の方が自分の行いってものを冷静に振り返れるんじゃない? 実際に彼が暴力を振るった事実は間違いないのだし……」
「…………。」
言い返したい。言い返して無理にでも会いに行きたいけど……でも、彼女の言うことも理解できる。だからアルフィースは俯いた。
感情に任せて無茶をして、これ以上彼との距離を広げたくないから……。
「うっ……グスっ……うぅぅ……」
「……ハァ。まったく……解ったわよ。今日はもうこんな時間だから無理だけど……明日になったら会いに行ってみましょう? 面会くらいはできると思うから」
「……本当? 明日、パウロに会えるの……?」
「大丈夫よ、任せときなさい。だからそんな悲しい顔していないで……せっかくだし、少しあなたと話しておきたいこともあるしね?」
「明日……パウロ、ごめんね? 今日は会えないけど……だけど……きっと……うぅぅ」
「もうっ、泣かないでよぉ~! なんだか私が意地悪してるみたいじゃ――――ん? ってか、さっきあなた“叩かれた”って……それはどういうことなの??」
「うぅぅ……へぇぇ?? 叩かれたのは……私が道でぶつかってしまった人に……イスパール?の長男とか言ってたかな……その人になんか、叩かれた。それでパウロが怒ってくれて……」
「――はぁぁあ?? 真実かよそれ、許せねぇな!? イスパールって、あの真都のクソガキか。そろそろマジでヤキ入れないとダメかもしれんね……」
サマードは口元をひん曲げて怒りを露わにした。
薄暗い部屋の中でロウソクの火を背にした彼女の表情。その瞳に青い光が灯ると、本能的にかアルフィースは椅子の上で身を屈めた。
「……ま、その辺は後々にってことにしといたげるか。ともかく、明日はお出かけするから今日はしっかり休んでおきなさい。彼に会った時、目の下に濃ぉ~~いクマでもあったら恥ずかしいでしょ?」
サマードは自分の目の下を指で擦ってみせた。「ニヘヘ」と朗らかに笑っているその目元には刺青が入っているせいで、彼女はクマがあるのかどうかよく解らない。
占い師の言葉を聞いて……アルフィースは少し頬を赤くしながら顔を背ける。
「別に……うん、そうね。今日はゆっくり休みたいかも……」
「うむうむ、よろしい。じゃ私はちゃっちゃと夕食でも用意すっからさ、君はシャワーでも浴びてゆっくりしなさいな。そうそう、着替えは必要? サイズ合うのあったら貸そうか? ……あぁ、言っとくけど料理に期待はしないでくれ。得意じゃないんだ、家事全般ってものがさ」
そう言いながらサマードが指を鳴らす。すると、家屋の奥から光が射し込んできた。それはどうやらロウソクではなく電灯による灯りらしい。
あまりに自然な動作だった。少女は光が灯ったことに対して特に驚くこともない。
電灯の点いた奥を見てから、アルフィースは占い師の方を向いた。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせて頂きますわ……あの、サマードさん?」
「ん、なんだい? あれ、そういやそっちってシャワーとかあるんかね? まぁ、旅の途中で使ったりしたか……」
「先ほどから色々と無礼をしてしまいました……ごめんなさい。今日は助かりました、明日もどうかよろしくお願いします」
「ぉ・・・んおぉ……まぁ良いってことよ。ってか、そんな畏まりなさんなってぇ~、もっと気楽にさ! 女同士、気を遣わずに居てくれ給えよ。そうじゃないとこっちが気疲れしちまうからね?」
「……うん。じゃ、ちょっと借りますね……失礼」
そう言って家屋の奥へと入っていく可憐な少女。
頭を下げて礼をした姿……そのあまりに自然で美麗さすら感じる動作に……雑多な家屋の主はどう応えていいかわからず、視線を下に向けて照れくさそうに笑った。
「・・・・・聞いた通りに“おませさん”だねぇ。いや、あの人の評はやっぱりちょっとおかしいよ。“口が悪くて生意気なませた子供”だなんて……そんなふうには見えないけどね? まぁ、なんか相性が悪そうな感じはあるけどさ……」
占い師サマードはそう言うと、ごちゃごちゃとしたテーブル上に視線を落とす。
そこにある1枚の手紙。どうやら少女のことを辛口に評価したらしいその文面……。
内容に疑問を抱きながら、しかし納得もしつつ。それはともかくとして占い師サマードは台所へと向かった。
ロイダー印の冷蔵庫を開いてみると……そこにまともな食材が無いことに気がつき、「あちゃ~~」と。
ガサツな占い師は気まずそうに、苦笑いして天井を見上げた――――。
|オレらはモンスター!!|




