「オレってマジモンスター(3)」
「はぁ~~~~いっ、よろしゅう御座いますともぉ♪ お部屋をお1つ、お客人をお2人、全てプラン3にてご提供させて頂きまぁぁ~~~~っすぅ♪」
ニッ――コリと。向日葵かと見まがうほど満開に咲いた“老人の笑顔”。宿屋“ほほえみ”の店主はその店名に恥じない素晴らしい笑顔で“4人”を迎え入れた。
手と手を擦り合わせながら「お荷物は!?お荷物をお持ちいたしますよ!?」と荒い呼吸で迫ってくる老人店主。これの勢いに怖気た少女アルフィースは「な、ないですわよ!?」と思わず隣の下僕の背後に隠れた。
「爺さま、どうかお頼みいたしやす。……いぁ~~~すっかす悪ぃっぺなぁ。いいんか? 飯まで食わせっちくりぇてぇ?」
ペコペコと頭を下げつつ。パウロ少年はチラリと、物を奢ってもらう人間特有のはにかんだ笑みを横の人に向けている。
「うわぁ……。つか、あんだけ良ーっつってんのに、あんたもしつこいな」
横に立つジェットは少年のあんまりに卑しい笑みをみて若干引きつっている。
まぁ、それはともかくジェットは店主から鍵を受け取り、スタスタと2階へ昇り始めた。
「うへへ、そんじゃお言葉に甘えっとすっぺか! 楽しみだすなぁ、オラぁもう腹がぺっこぺこだっけして……」
「それで、部屋は――そうだな。俺とパウロが3号室、そんでキミとアルが1号室でいいだろう?」
「気安く呼ばないでよっ!!」
ここに来て少女アルフィースが噛み付いた。噛み付くと言っても本当に子犬のように甘噛んだわけではなく、態度として食って掛かったのである。こうして結局お世話になることになった今でも少女は今一納得しきっておらず、ジェットという青年への不信感と拒絶感は消え去っていないようだ。
そういった反抗的状態である彼女が「仕方ないわね、ありがたくお金の支払いをするがいいわ!!」と、一応は世話になることを認めた理由。それはあの時暗がりから姿を見せた女性の存在が大きい。
「ジェット……また、わざわざ引っかかるような言い方しないの。――ごめんね、アルフィースさん。ジェットはイイ男だけど、誰にだって口が悪い病は昔から治らないのよ」
「オイオイ。人の性格を病のように言うものじゃぁありませんよ、“ミリス”さん??」
「あら、御免なさい。何度言っても改めないから、てっきり不治の病なのかと――」
ジェットも大概だがこの大人びた女性、【ミリストリア=ロイダー】もまた割とキツい冗談を飛ばす人である。それとも少女相手にムキになっている大の男を叱っているのであろうか。
――先ほどまでいがみ合い、「ムムム」と互いに態度を硬化させていた少女と青年。そういった状況に割入ったミリストリアはなんとなく青年の意図を察すると、「せめてシャワーくらい使いませんか?」と少女に優しく言葉を掛けた。
彼女の落ち着いた口調と暖かみのある振る舞い――少女アルフィースはそこに「求めていたもの」を感じたのかもしれない。それにその時の少女にとって“シャワー”の単語は強烈に印象付くものだった。ちなみに、シャワー(お湯や水が出る管のついたもの)は帝域にも聖圏でも存在する利器だが、成り立ちは少し異なる。
つい先ほど交わされたミリストリアを主導とした会話によって、すっかり全員が彼女のペースに乗り、気が付けば宿の中に入っていた。
話題の方向性があやふやにされるうちにアルフィースも憤りを一時忘れ、誘われるようにミリストリアの後を着いていった。彼女の表情や言葉遣い、そこから感じられる余裕のある空気が少女の警戒を和らげたのであろう。
そうして宿屋に入った一行だが……ジェットは階段上で振り返って部屋割りのことを話した。その内容に、ミリストリアは疑問があるらしい。
「?? ジェット。この子達と私達で部屋を分けないの?」
「オイオイ、ミリス。オレらはともかくとしてだな……」
「――ああ、そうね。それならアルフィースさん、私とこちらの部屋に入りましょうか?」
ジェットの目配せでミリストリアは察した。それはおそらく「まだあどけなさのある少女と少年を同室に放り込んでよいのか?」という確認でもあったのだろうし、それとは別として、ジェットが何か“少年と話がある”と意思表示したことを感じ取ったからでもある。
少年と少女は言われるがまま、分かれて部屋に入っていく。
「ウハーーーーッ、すっげ素敵でねぇの! これがやどってもんだすか!?」
「おう、適当にくつろぎな。ほら、ジュースでも飲めよ」
「アターーーーっス! ほんに、至れり尽くせりだで。極楽だっぺや! ……ッかぁぁぁぁ!! キンッキンの氷みてぇに冷たくって、しかも甘くてうめー!!!」
ジェットと共に3号室へと入ったパウロは宿屋の清潔にされた部屋に感動し、コップに注がれたオレンジジュースに感激の涙を流している。
一方、ミリスと共に1号室へと入ったアルフィースは若干不満のようである。それは室内が狭く、ベッドも質素で香りもあるがままに工夫されていないからであった。
ともかく贅沢な不満であるが、部屋分けに関しては文句ない。1人で見知らぬ部屋に泊まるのはイヤだが、かといってパウロと2人もお断り。あの気に食わないジェットなど論外なので、必然として物腰柔らかなミリストリアこそ付き人として適任であると少女は考えていたからだ。
「・・・ふん。まぁ、辛うじて横にはなれるけど……何よ、この硬いベッド。これでは熟睡できるわけないし、肩や腰に疲労が残ってしまうわ!」
「ねぇ、アルフィースさん。シャワーがあるから使いなさいな。それと、そのドレスは着替えた方がいいわ。とりあえず私の服を使って?」
「あっ、シャワー……!」
「少し大きめになっちゃうけど、違和感なさそうなのを――っと。荷物を彼の部屋から持ってくるわ。もしだったら浴びながら待ってて?」
「・・・・・そうね、どれどれシャワールームは……って、げぇ!? 何よ、この狭さ!! し、信じられない……浴槽もないし。ほんとにほんとに、シャワーがあるだけって。こんなんじゃ肘を壁にぶつけてしまうでしょ!!?」
大げさである。大人のミリストリアはともかくとして、それでも余裕がある広さなのだから子供のアルフィースがシャワー中に肘をガツンとやる心配はまず無い。
ごく一般的なサイズのシャワールームに対して「これでは牢獄ね!!」とヤケになってドレスを脱ぐアルフィースのなんたる傲慢であろう……。
「ジェット。私の旅行ケースをパスして頂戴」
「ん? ……そらよっ!」
「ありがと。それじゃ、またご飯の時にね!」
「おう、何かあったら何でもいいから合図しろよ」
「もうっ、心配性ねぇ……そんな遠くに離れるわけでもないってのにさ」
椅子に腰かけて軽く酒を嗜んでいたジェットは、機械的な杖の先を器用に用いてケースを放り投げた。ケースは軽々と宙を飛び、ミリストリアは反動を逃がすように上手くキャッチしている。
ミリストリアが退室したことを確認すると、改めてジェットは向き直る。押し上げられた帽子のツバの下には目じりが切れ長い、鋭い印象の瞳がある。
「それで……ああ、そうだったな。なぁ、パウロよ……」
「っかぁ~~!? ダミだ、こりぇ。ちぃっとも開かんね! こうなったら捻じ切って……」
「オイオイ、ナニしてんだよ? そりゃ缶のノブを起こして、こう、プシュっとだな……ってか知らないのか? ・・・いや、ってかすげぇな!? スチール缶がそうも容易く捻じ切れるとは――」
「面目ないだす……やっちまった……」
リンゴジュース塗れである。「メシャァッ!」と音を立てて分断された缶から中身のリンゴジュースが炸裂した。おかげでベッドもパウロもリンゴの香りで甘ったるい。
「いいよ、いいよ。宿の店主を呼んでシーツを交換してもらおうぜ。それと、あんたはシャワーでも浴びてきな。リンゴ臭くて仕方ねぇ」
「いやー、もったいね。すまんすなぁ……チュウチュウ」
「カブト虫かお前は!? いや、やめろよ。いいから着替えてこい。ほら、オレの貸してやっから!」
シーツにむしゃぶりつく……というあまりにさもしい行動を見せつけられたジェットは、たまらずパウロをシャワー室に押し込んだ。そのまま放っておくと服までしゃぶりそうだと悪寒を覚えたからである。
まず、シャワールームの意味が解らず呆然とするパウロに驚かされたジェットだったが……。呼んでいた店主がシーツの交換に来たので経緯の説明に戻ると、シャワールームから「熱っちー!!なんだこの硬ったい蛇は!?」と格闘する音が聞こえ始めたので、慌ててシャワールームへと飛び込んだ。
先ほど一般的な広さと評したシャワールームであるが、それは一般的でない高身長のパウロにとっては若干狭いものとなる。彼の逞しい腕が不慮の事故による肘打ちによって壁を破壊しても仕方がないのだろう。
ジェットの判断がもう一歩遅ければ、首根っこを掴まえられて暴れているシャワーヘッドは今頃引きちぎられていたかもしれない。幸い、強く握られた圧力でひび割れる程度で助かった。
ジェットはベッドシーツについての説明に加え、シャワールームの有様を弁解することになった。間違いなく、宿泊代よりこっちのが余程高くついたことだろう。もっとも、本当に金のあるジェットにとっては「仕方ねぇなぁ」くらいの話である。
――ひと騒ぎを終えて、宿屋ほほえみの3号室。
そこにはしょんぼりと項垂れている大柄の半裸少年に、慰めの言葉を掛けている長髪ロングコートの男性という異様な光景が広がっていた。
「まったくもって情けねわ。オラは図体ばっかデカくて……」
「まま、そう落ち込むなよ。店主も言ってたろ? “(こんなにくれるの!!!?)イヤハハハ、腕白で結構! どうぞお気にされず。ごゆるりとくつろいでください♪”――ってさ」
「ほんと、良い人だわ……。ここの爺さん、怒るとよく解んねけど……根っこは心の広い人だっぺなぁ。そりぇはジェットにも言えるこったでよ」
「そう? ま、確かに優しくて格好良いけどさ。だから尚更さ、気にしなくていいんじゃね?」
「うぅ……ジェットぉ、知り合ったばっかで、なんて大らかな心の持ち主なんだ、あんたぁ……!」
感涙による男泣きでひんひんと声をあげているパウロ。それはいいから、まず服を着ろと促すジェット。
ジェットも決して小柄ではない。むしろ187cmと言えばそれなりに高身長の部類である。ところが彼自身は細身であるため、その服を借りたパウロは必然としてパッツンパッツンに生地を伸ばすことになる。まるでタイツかのように、シャツが胸板にフィットした。
「それで、あ~っと……オレはお前に何を聞こうとしてたんだっけ??」
「んぇ? さぁ~……そっただなことオラに聞かれてもな」
ジェットは少し辟易とした様子で機械的な杖の曲がった取っ手部分に顎を乗せた。彼はしばらく唸って考えると、「ハッ!」と思い出して杖の取っ手を光らせる。
「思い出したぜ。そうそう、お前とあの子の関係性っつーか、出会い的なものを聞かせて? 欲しい? みたいな感じなんだけど……」
「んん?? オラとあの子って……あっ! いやぁ~~~、アルフィースつぁんだか? んでも、オラたつだって今日会ったばっかだっけなぁ……」
「はぁぁぁ?? 今日ぉ?? なんだ、そりゃ……」
「ほれ、アルフィースつぁんが森ん中で倒れてたろ? そんで……そうだ! あんの卑怯な連中が、いい年した風にして男ばっかで女子さ囲みおってからに……!」
「?? う、うん??」
「そんで助けたろ? そしたら市場が燃えてっけ、“これなんした!?” つって家さ出たらアルフィースつぁんが何か思ったより頑固者で、見ればデッケのがいるろ? そんでおっとぅ(父)が負けてて……」
「・・・・・うん」
「そういうことで、オラは家さ追い出されてアルフィースつぁんをお、おんぶ……うへぁ~~~!? そうだっぺ、おんぶしてさっ。タハーーーーーっ、なしてこんな熱っちぃんだ? オラ、困っちまうだよ!?」
「・・・・・そうか」
困るのはジェットの方であろう。マイペースなパウロの解説にジェットは懸命な想像描写を余儀なくされた。これではきっと、何も解らない。
「大体、なんとなくだが――把握したぜ」
把握したのか。ジェットはどうやらかなりの空想家らしい。もちろん、それは彼の持ち得る膨大な知識と現状の推測を照らし合わせての仮説である。
「1つだけ……“追い出された”ってのは、アルフィースにまつわることでか? 誰に?」
「いやぁ、そらおっとぅ(父)なんだけんど。そらまぁ無茶な話だで……そら確かにオラはアルフィースつぁんとき……き、きき――――いぁ、実際のところあれって夢かなんかでねが? そうでも思わねぇと、オラってば……いぁしかし男の責任問題として――」
なんということであろう。パッツンパッツンに張り裂けそうなシャツをさらに引き裂かんとばかりにもがき、どうやらモジモジとしているパウロの姿。借り物のシャツから現に「ビリビリッ」とした音がほのかに聞こえてくる。
持ち主のジェットの心境や如何に? と言ったところだが、どうやら彼はそのことを気にはしていないらしい。
彼のキレ長い瞳が、迷いによって少し曇った。
「――――パウロ」
「おっ、なした?」
「お前、あの子のことをぶっちゃけ、どんな風に思っている?」
「どんな風にってそら……どどどどど、どんなって!? いぁ、そら、ほれ、あれ……アレ?? なんか上手く言えねっぺ??」
「パウロ、お前……」
「うんむむむむ……やぁ~~~、すまんす。やっぱどう言ったら良いのかオラ――」
「“装怪者”って――――知っているか?」
――機械的な杖のようなものを持つコートの男と、はち切れそうなTシャツ姿で悶える少年が相対する3号室。
むさくるしいソコとは異なり、1号室の華やかなことと言ったら……情景格差として天と地ほどの違いがあると言って過言はない。
「・・・・・。」
「う~~ん、いいわね! 持っててよかったわ!」
泥だらけのドレスは枝葉によって破けてもいた。正直にもう、修繕・洗濯するのも難儀な状態である。よってシャワーを終えたアルフィースは現在、借り物のワンピースの服を着ていた。
薄く水色がかった生地は厚手で暖かく、スカートの先には網目の模様が編み込まれている。ただ、サイズとしては所有者のミリストリアからすると随分小さく思われる。今の彼女がこれを着れば膝上のミニスカートになりかねない。そして普段ズボンを愛用する彼女にとって、それはあり得ない選択である。
「ねぇ、どう? ほら、鏡の前に立って立って!」
「・・・・・。」
「うんうん、似合っているわ! アルフィースさん、スタイル良いからその子もきっと喜んでいるわよ!」
「・・・ありがとぅ」
鏡の前に立つアルフィースはフワフワとスカート部を揺らしたり、ちょっと回ってみたりして様子を見ている。如何にも庶民的で質素なものだと、着る前は乗り気ではなかったのだが……髪形を弄って合うものを探る仕草からして、まんざらでもないようである。
「それならきっと、“彼”も喜んでくれるわよ?」
「・・・・・何の話です?」
「何って……まさかジェットのことではないからね?」
「それは解っています! それでも、ましてパウロのことでもありませんよね!?」
「あらら? てっきり私、アルフィースさんと彼って……」
「付・き・び・と!! あれは付き人、私は主! 釣り合いを見れば解りそうなものですけどね?」
それまでの恥じらいめいた仕草は露と掻き消え、「ビシッ」と力強く、拒絶するように振り払われる少女の腕。あたかも演説で断じる独裁者のそれである。
「え~~~~、そうかな? 美少女と美男子でお似合いって感じだけど?」
「そうじゃなくって、品格の問題です!!」
よっぽど頭にきたのか? なぜか顔が紅潮しているアルフィースはすっかりふて腐れてベッドに寝そべってしまった……というか疲労しているのであろう。そのまま反射的に掛け布団を被ろうとしている。
「……ふぅ、ん?」
おどけたように少女へと絡んでいたミリストリアだが、その最中から常に彼女の瞳は少女の仕草1つ1つを観察していた。言葉遣いや反応、知識や価値観を探っていたのである。それは失礼ながらと感じつつも……奇異な境遇を感じる2人のことを案じてのことであった。
同時に。“彼女だからこそ”解る、直感のようなものもそこに作用している。
「付き人ねぇ……それにしては、ちょっとまだ頼りないみたいだけど?」
「それには共感します。まったく、使えないと思うわ!」
「そんな彼とどうして2人っきりでこの町に? 旅行かしら、あのドレスで? だとしたらとんだトラブルにでも巻き込まれたのね?」
「――――別に、理由なんてないですわ。第一、申し訳ありませんけど……あなたには関係無い話です」
「そう……でも、気になっちゃうじゃない。お見受けするに“セイデン”の高階層令嬢様が……どうしてこのような辺境に、お供とたった2人で訪れたのか?」
「!? えっ、え……どうし、て??」
「“どうして”ですって? ……そうねぇ、だってあの“ドレス”。この頃、聖圏の上級階層で流行しているものではありませんこと?」
「――――!!」
アルフィースは目を丸くした。思わず掛け布団を捲り、半身を起こして確認する。そして視線の先にある女性の、男勝りな服装に似つかわしくない優美な立ち姿といったら……。
しかし、その風雅はアルフィースの知る感性ではない。その違和感の正体を少女は見破れないのである。だからポカンと眺めることしかできない。
「……なんてね♪ いいわ、余計な詮索は無しにしましょう。それよりアルフィースさん、随分とお疲れのようだし……どうする? 夕飯はパスして、夜食として後で何か頂く?」
「あっ……い、いいえ! 余計な気遣いは必要ないわ。私はお夕食もしっかりと頂きます!」
「大丈夫? 無理しないでね?」
「無理してないものっ!」
「だといいけど……だって、“装怪者”って気苦労が多いですものね。特に聖圏は強烈な異端排斥思想を形成しているし……」
「まぁ、そうね。そのせいで私は故郷を追われ、なんか飛ばされたら森の中で……おかげで足まで挫いたわ! しつこ過ぎるわよ、あいつら! どれだけ装怪者を亡き者にしようと・・・・・と??」
「ああ~~、やっぱり。だよね、そうだと思ったわ」
「・・・・・ほぇッ!?!?!?」
策にハマったとアルフィースが悟った時、既に自白は完了していた。思いっきり、自分の口で、少女は“装怪者です”と発言してしまったのである。親切に境遇のあらすじまでバッチリと……。
「――ッ、あなた!? まさか私を知って……!?」
「あらら、誤解しないで。大丈夫、私はまるっきりあなたを知らなかったし、発言を誘導したのも確認したかっただけだから」
「……だったら何よ、何が目的なの? 私を装怪者と知って、何をするつもりよ!?」
「何もしないわよ。私は聖圏の人間でもないし――ただ、“共感”したいってだけだから」
「共感?? 何のこと??」
「あのね、アルフィースさん……“私も”なの。そう、私もあなたと同じ――」
「――えっ?」
「怪物をその内に宿す、装怪者なの――――」
第7話 「オレってマジモンスター(3)」 END