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「オラはモンスターだっぺや ~俺って、情けねぇんすよ(2)~」

「おっ!? おめさは……!! / あっ!? あんたは……!!」


 眠気ねむけまなここすって姿を現した男。どうやらパウロは彼のことを知っているらしい。


「おめさ、そうだ――“エリック”! そうらろ、あっこにったエリックらよな!?」


 宿屋の奥から姿を現した青年。パウロはその彼を“エリック”と呼んだ。となりのアルフィースは「ポカン」としたもので、まるで思い当たらないらしい。店主のマイサは「なんだ。知り合いかい、エリック?」と青年に笑いかけている。


 出現した青年――【エリック】と呼ばれた彼は「うん!うん!うん!」と、驚いた表情のまま何度もうなずく。


「いやはぁ~~! おめさこんなん、まっさかこの前“さよなら、またな!”ってすたばっかなんにぃ! アッハッハ、すぅぐ再会しちったなぁ~。元気そうでえがったわ!」


「い、いやぁ~~……ほんと。へへへ、偶然ってすごいっすねぇ。パウロさんも、つい先日ぶりだけど……ケガもすっかり良くなったようで、なによりっす!」


「けが?? ・・・んああ、胸の痛みはもう、すっかりよ! んでも、あれからそんなしってないのに色々あったわなぁ……カイルどうしてっかな?」


「え、カイル様になんかあったんすか?? そういや一昨日おとといに、何かすごい音と地鳴りがあったけど……」


 なつかかしむほどではなくとも、何か互いに共通な知識を交換し合う2人。少年の隣にある少女は唐突とうとつにパウロと親しくする人間を注意深く、指をVの字に顎へと当てた様相で観察している。


「なんだなんだい!? エリックや。あんた、この子らとどういった関係なんだい???」


 カウンターから身を乗り出してまで2人の会話に割り込んだのは店主のマイサだ。情報欲の方位磁針はこの2人に「ビンビン」らしい。


 女店主の好奇心ある視線にめあげられて、パウロは思わず一歩、退しりぞいた。同じくながめられたエリックは倒れそうになりながら壁に寄りかかっている。


 青年は「ア、いやぁ~」と少し頭の中を整理する。


「ぇえっとですね……パウロさんとはその、“例の廃墟”にた時に会いまして……ほら、マイサさんに話したでしょう? あの、俺がこうして真っ当にしようって、そう決心させてくれた人が――」


「ああ~~あ!? そうだったねぇ。パウロって、そういや聞いたことあるわ! ……なるほど、なるほど。つまりエリック、あんたに“強さ”を見せつけてくれたって大男が、この少年なんだね!?」


「ちょちょ、ちょっと!? ずかしいじゃないっすかぁ、本人前にしてそんなズカズカ言わんでもいいでしょぅ……?」


「あぁっははは!! 奇遇、偶然!! 運命ってのはあるんだねぇ~。また再会したいって、あんた言ってたものねぇ!」


「!! ったぁ~~、ほんっとマイサさんはペラペラペラペラ……おしゃべり好きなんだから、ったくぅ!」


 青年エリックはガリガリと後頭部を掻いて気恥きはずかしそうである。パウロは口を開けて「お~、そっただかぁ……」と取り合えず口を合わせた。


 一方、彼の背後でかくれるようにしている少女。これはまゆをひそめ、目を細め、口をゆがませて……警戒心を一切いっさい緩めようとしていない。


 実は“知り合い”というものではなくとも、どうにも彼女はエリックに見覚えがあるようだ。当のエリックにも、ぼんやりと心当たりはある。


 そう、このエリックという青年……彼は一昨日おととい(まだくだんの黒砦が傾いていないその日の早朝)にパウロと出会った人物だ。


 早朝の森の中でパウロに「もう盗賊はやめる」とちかった人こそ、このエリックなのである。パウロが迷いを捨て、カイル=ブローデンに再度詰め寄る切っ掛けを与えた人物でもある。


 つまり、互いに感謝しつつ別れた2人の男達。それが偶然にもこの渓谷けいこくぐちの宿屋にて、再び顔を合わせたというわけだ。


「しっかし、そうか。エリック……おめさ、今はもう?」


「あっ……ええ。ハハハ、まだ2、3日だけど。すっかり元に戻った気分というか……おかげさまでね」


「んだか、なら、いいんさ。オラなんかがえらそうに言えんものだけど……おめさが真っ当に生きようとしてくれてんなら、そりゃうれしいことだわ。盗賊なんて、やっぱす良いもんじゃにぃからよ……」


「迷いはありますけどね。ああ、盗賊に戻ろうなんてことじゃなくって……いやぁ、俺ってやっぱり、ヒョロイっすから……決心ができなくて」


 気恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに。少年と青年は伏目ふしめがちに、はにかんだ笑顔で向かい合っている。


 営業中である宿屋のカウンター横で何かモジモジとしている2人。それを見たマイサが声を張り上げる。


「――まぁ、積もる話はなんとやらだ。まずは昼飯でも食べなさい! そうそう、いっけない! 料理が冷めちまうよ、ホラホラ……そこの席に座んな、3人とも!!」


 背中を押されたエリックはパウロに激突し、豪快なマイサに文句を言いながらパウロに謝罪している。パウロは笑って「そうさね、腹減ったねぇ~!」とまるで気にしない様子で答えた。


 客は彼ら3人だけの宿屋。いたテーブル席を使うことに遠慮えんりょは必要ない。笑顔をわしながら、パウロ少年とエリック青年は席に着いた。


 ――このかん。エリックの出現から通して、一切いっさいに無言をつらぬく人がある。


「・・・・・・。」


 アルフィースだ。少女はきびしい表情のまま、忍ぶようにしてパウロの背後を付いている。そのけわしい表情は最初こそエリックにのみ向けられていたが……次第に大柄な少年へと向けられる割合が増えていく。


 そうした存在に気が付いたエリックが、笑顔で挨拶をわしてくる。


「あっ! どうも、えと……」


「私はアルフィースよ。よろしく、エリックさん……だっけ?」


「あ、はい。エリックっす! どうも、よろしくっす!」


 エリックは「ニコニコ」としたものだ。しかし、アルフィースはどうにも……かない表情。


 そして、アルフィースはパウロと会話しようと思い、彼の腕を引っ張りながら見上げた。


「……お腹が空いたわ。楽しみね、ここのお料理はどのようなものかしら。ね、パウロ?」


「んぉ?? おお、そうだな、楽しみだわなぁ~~。腹いっぱい食いねぇ、アルフィースつぁん!」


「フっ、言われなくとも? あなたが横取りでもしない限りは――」


「あの、パウロさん……」


「ん、なした??」


「その、あいつらは……あの方はどうなったんすか? やっぱし、カイル様は今も……?」


「――――へへっ、やめたっぺや。カイルのやつ、まぁ色々あってな。盗賊はやめるって……あいつも約束してくれたんさ」


「……そうね、カイルは盗賊をやめたわ。私の発案によってね?」


「!? そ、そいつぁ良い! そうか、そうか……気がかりだったんすよ。ああ、ほんとよかった……これでアプルーザンは安泰あんたいだ。帝国のえませんね」


「あぷるーざん……ていこく?? あり、そりぇってあれか。カイルの本来の仕事っちゅーか、立場の話しかに??」


「……本来はって言うけど、割と盗賊も似合ってる風貌ふうぼうだけどね」


「・・・・・あっ!? い、いや、その……あ、あのカイル様はその、きっと違くて……でも、ほら、まさか皇子様がなんてね? 盗賊なぁんて、そんな……ハハハ、ホント。違うんです」


「いぁ、知ってんだわ。誤魔化ごまかさんでもいいよ。オラたつ、あいつが本当は偉いやつだって知ってんよ。んで、だからってわけでねーんだけど……誇り高いおめさがそんなんすんなやー! って、どうにか納得させたんだわ」


「……そんな雑な感じじゃないでしょう? 良くも悪くも、カイルの行動原理は全てリーリアなのよ?」


「アララ、よくご存じで。さっすが、あのカイル様と引き分けたパウロさん! やっぱりすげぇ人だよ。俺みたいなのからしたら、あんたは本当にまぶしいくらい頼れるっす!! 背中が広いっす!!」


「よ、よせやい……てへへ、照れるようなこと言うでね! オラさほんと、図体ずうたいばっかしでかくってよ。まぁだまだ、半人前の小僧なんらっけよぉ~?」


「……頼れるですって? パウロ、あなた調子に――」


「半人前?? なに言ってんすかぁ! おれぁ、カイル様をガチ尊敬そんけいしてるんすけどね。それと同じくらいあんただってすげぇと思ってんすよ、マジで! あぁ、あなた達の喧嘩けんか、俺も見てみたかったなぁ~~。あこがれっす、あのもんみたいに強ぇ人と……一体、どんな戦いがあったんだろう?」


「たっははぁ~~、参ったね、コレ! なになに、あいつとの喧嘩か? ほんなん、こうっ……こう!! お互い拳さ当てあってよ。ほんでこれまた、アイツの拳が硬ぇこと硬ぇこと! 脚もこれまた上手いんさぁ~~、けらんねのよ?」


(……お食事、まだかしら。香りが空腹に痛むわ)


「うぉぉぉおおお!! あのカイル様と拳を当てあう!? き、いたんすか、あんたの拳!? いや、効いたのか、引き分けたんだし……そもそもよく当たったな」


「うやぁ、そらあいつが・・・・・おん?? よっくよく思い返すと……やっぱしアイツの方がオラに打ち込んでた気がすっぺな。まぁ、オラの一発の方が重そうだったけど……」


(…………ふぅ。この花瓶の花、綺麗きれいね)


「うぉぉぉおおおおおおお!!! か、カイル様より拳が重いって……すげぇこと言ってるぅぅぅ!? マジ半端ないっすよ、マジ尊敬っす!!!」


「なにさぁ~こいつ♪ そげなアイツと並べられるとオラも気がでっけくなっちまうっけよぉ。ほどほどにしちくりぃ~~、てっへへへへ~~~☆」


 いた宿屋。たった3人の客人。窓際のテーブル席に座る男女。


 青年はひとみを輝かせて前のめりに話し、少年は頬を赤らめながら得意げに頬を掻いている。


 そして少女は……


( ………………はぁ。 )


 花瓶を眺めてため息をいた。


「あいよ、お待たせ~~~。まずはサラダを食べなさい、野菜を!!」


 「ガチャガチャ」と皿を鳴らしながら慌ただしく店主が現れる。店主のマイサは豪快に、しかし器用に腕や肩に乗せた皿をテーブルに並べた。


 色とりどりの野菜に、鶏肉がえられている。続けてコーンのスープが置かれると、そこからせきを切ったように次々と料理が並べられた。


 「どうせいてるから」と、隣のテーブルにまで広げられる料理の数々。張り切っているらしい店主の辣腕らつわんが、さながら帝都流行りのバイキング形式かのようなランチタイムを作り出した。


 形式ばった順序などなく「好きに食べな!」と店主が両腕を広げてせる。


「オっホホぉ~~~、ほんに美味うまそうだ!! さぁさ、食べよう…………ぬ。アルフィースつぁん???」


「う~~~ん?? ……あらまぁ、やっときたの。そうね、食べましょうか――――って、わぁ。本当に美味しそう!! パウロ、これ――このトマトが多いお皿はさわらないで? 私、食べたい!」


 どうしてか険しかった少女の表情はご馳走ちそうを前に「ハッ」と晴れ渡る。食欲が彼女の心にある“乱れ”を押しのけたのであろう。パウロが真っ先に少女を気遣きづかったのもこの事態において効果的だった。決して意図したものではないだろうが……。


「んぉ、わがった! よす、ならオラはこっちの皿から――」


「そうそう。料理と言えば、カイル様の手腕しゅわんたいしたもんでしたね。いや、むしろ帝国でもかなりな腕前でしょうよ!」


 エリックがフォークを片手に、楽しに発言した。同時にアルフィースのフォークが止まる。


「んだっぺなぁ!? そうそう、カイルの飯もすっげ美味かったわ! んでもここの飯も負けずおとらず!! うんめ、うんめ、こっちのパンには何がはさまってんだ!?」


「ハハハ、豪快っすねぇ~~パウロさん! やべやべ、ぼぅっとしてると全部なくなりそうだ。やっぱし強ぇ人って、飯もよく喰うんだなぁ~……俺みたいにヒョロクねぇや、ほんと」


「うんめぇぇぇぇ!!! こっちのシャッキシャキして、歯ごたえ抜群ばつぐん!! エリック、ほれ、これ喰ってみぃ!!」


「え、どれっすか・・・って、もう無いじゃないっすか!? その皿もう、なんも無い!」


「ありぃ、ほぉだか?? ……タハハぁ~~! あんまし美味いっけ、いつの間にか喰っちまったぁ……わりぃ!」


「アッハハハ、んもぉ~~パウロさんったら。やることなすことけた外れっすねぇ! そこんとこもマジ、尊敬っす!」


「そ、そっか? いやまぁ、飯喰うのも大事らっけな。この身体さ、おっかぁ(母)の飯をたらふく食ったからこそ、こんなんなってんだわ。きっと!」


「オっホぉぉ~~!! すんげぇ胸筋、二の腕! 力強ぇぇ~~~、憧れるわ……」


「フっフフ、んだか? ちっとさわっても……いいっぺよ? コチコチらっけよ、ホレ」


「どれどれ……わぁ、ほんと~~! パウロさんの腕、カッチカチぃ~~! マジ感動っす! いい記念になるっす!!」


「ワっハハハハ! エリック、君さなんか気が合うっぺなぁ~~、ほんに再会できてよかったわ!!」


「エっへへへへ。パウロさん、俺こそこの出会いにマジ感謝っすよ。あんたと話してると……なんか勇気、出てくるっす!」


「 わぁっはははは!! / あぁっはははは!! 」


 窓際で光をび、笑いあう2人。


 そして――


「………………(プシャッ!)」


 壁際の影になる席に座り、トマトをかじる少女。


 ほがらかな2人と対照して少女の表情は険しい。片肘を着いて食事をる様はあまりにも淑女からかけ離れたものであろう。つまりそれほど、自分を見失うほど……現在の彼女は心が乱れている。

 

 男同士。胸筋をさらして、それを触り触られて「キャッキャ」と騒いでいる様が乱れの原因であろうか?


 食事中にも関わらず、立ち上がって「ペチャクチャ」とうるさくしていることが乱れの原因であろうか?


 会話に置いていかれて、この場のから外されたような「疎外そがい感」が乱れの原因であろうか?


(やっぱり――――ろくでもないのよ、きっと!)


 自分が一番ではないと感じる現状が――時間を奪われているような感覚が――いら立ってしょうがないのであろうか。


 少女は胸中きょうちゅうで「盗賊は所詮しょせん盗人よ!」と悪態をいた。改心したとべ、実際に少なくとも現在は悪事を行っていない目の前の青年に対して、心の中で嫌味が止まらない。


 少女はパウロのことなど見もせず、ただよく知らない青年だけを視界のはしで監視し続けている。


 そんな自分の心が、今の場所が……。


(…………ろくでもない、か。)


 少女は立ち上がった。立ち上がって、何も言わずにテーブル下に椅子を仕舞う。


「んや?? アルフィースつぁん、なしたんね。もう喰わねぇんか??」


「……うん。もう、一杯。沢山たくさん歩いてつかれたし……部屋で休むわ」


「そっか? ……どっか悪くしたんなら、言いね? なんか顔色良くねぇっけよ……」


 突然立ち上がった少女は暗がりに立っている。その少女を見下ろして、少年は自身の表情をくもらせた。


 ふと見た彼の表情を確認して、少女は表情を明るくしてみせる。


「――ううん、本当! 健康、元気だから! ただ、疲れただけ……だから寝るの。心配しないで?」


「お、おぉ。んならいいんらが……」


 押し付けるような元気に面食めんくらって、少年はかえって表情をいぶかにした。少女が実は明るい状況ではないのだと、彼は経験から理解したのである。


 そして、大体こういうときは……と考える。


「も、もしかすてまたなんかオラ――」


「だぁから違うってぇ、あなたは何も悪くないの! ・・・ふわぁぁぁ~~あ、っと。アラ、いけない。さてと、お部屋はどこかしらね??」


 淑女しゅくじょたる様を見せようとして振る舞う少女。すぐに背を向けてしまった彼女の姿を、少年は納得いかない様子で見つめている。


「あ、アルフィースさん! よく休んでください、お疲れさまっしたぁ!!」


 エリックは満面に朗らかな表情で手を振ってくれている。


 「チラリ」と。振り返った少女は軽く会釈えしゃくをしてからドレスの裾をひるがした。そしてツカツカと、宿屋の奥へと向かっていく。


「おや、アルフィースや! どうしたんだい、もうお昼はいいのかね?」


「マイサさん……ええ。御昼食、とっても美味しく堪能たんのういたしましたわ。どうもありがとう。それで……お部屋はこの鍵、“りんご”と“みかん”って……?」


「ああ、“りんご”はこっち……このカーテンをくぐって左側にあるよ。“みかん”は右側の方にあって、トイレが近いね!」


「じゃ、りんごを利用させていただきます・・・って、ん?? トイレ……もしかして部屋にない?」


「うん、無いよ! でも大丈夫、男女で分けてあるから……安心して!」


「・・・・・うん。」


 そういう問題ではない、といった様相ようそう。しかしそれも解ってはもらえず、アルフィースは「どうも」と会釈を返して宿屋奥の左側へと向かって行った。


 店主のマイサは口をすぼめ、そしてあごでている。


「なぁんか、あるようだねぇ……」


 マイサは「ニヤリ」とし、長い後髪を指ですくい上げた。


 その頃、テーブル席では2人の男達が呆然ぼうぜんとしていた。特にパウロは少女のことが気になるようで……。


 しかし、こういった状況で下手に追いかけても怒られると思い、彼はどうすることもできない。だから呆然と立ちくしているのである。


「―――っしたんすか、パウロさん? もう飯、喰わないっすか?」


「おっ…………おぉ! そうらな、喰おう。こんなうめぇもん、残すのもったいねぇっけよ。エリック、おめさも食いねぇ!」


「はいっ、いただきましょう! ……それにしても。アルフィースさんって……」


「ん、あん子がどうしたって??」


「あ、いや……アルフィースさんてまだ若いだろうに、随分としっかりしてますよね。りんとしているというか、物静かで……意外でした。最初会ったときの啖呵たんかはそりゃもう、ビックらしたもんですがね。もっとさわがしい人なのかと……」


「お~~~おお! そうなんよ。アルフィースつぁんさ、ほんにしっかりしててな。オラはいっつも、助けられてんだわ!」


「頼りになる感じしますもんね。それになんっつーか……綺麗というか。可愛さより、そんな感じっすよね。挨拶1つにしたって、なんとも気品があって……ただ者じゃない感じ」


「キレイ……おぉ、そうなんよな。キレイで、メンコイって……そうなんらよな。それがなしてこんな、オラなんかと――」


「お似合いの2人っすよ。冷静なアルフィースさんに、豪快なパウロさん。俺ァ、あなた達2人みたいなのに憧れるっす」


「え――――そ、そっただか? んやぁ、にしてもオラなんてほりぇ、こんなんだしよ……」


「なぁに言ってんすか。あんたみたいに強い人じゃなきゃ、いかんでしょ。あれほど可憐な女性でも、まだ幼そうだし……きっと、あんたなら護れるっすからね!」


「!! ――――そうさな。オラが、護るんだわ。フっ、エリック……おめさほんに解ってんなぁ!!」


「ハハハ、そっすか? アッハハハ!」


 少女のぬ場で語る2人。しばらく彼らはその場で談笑し、再び盛り上がったようで……食事を終えてからもそのままエリックの部屋へと笑いあいながら入っていった。 


 “とりで屋”は部屋の名称をどうしてか果物にしているらしい。


 エリックの部屋は“メロン”。階段を上って、“りんご”とは反対側である――――。






第58話 「オラはモンスターだっぺや ~俺って、情けねぇんすよ(2)~」END







 部屋の中は「しん…」としていて静かだ。わずかに誰かの笑い声が聞こえるが、それでも静かなものである。


「・・・・・ッ、ハァァ!!」


 ため息であろうか。それにしては随分と勢いよく吐き出された息吹いぶき


 少女アルフィースはたった1人の部屋でため息をき、そしてツカツカとあゆんでベッドに飛び込んだ。


 だらりと……力なくまくらにに顔をうずめる。身体全体も力が抜けたらしく、水に浮かんでいるような浮遊感がある。


「……私って、何なのかしら」


 誰もいない。そこには彼女1人である。だが、少女は何かをしゃべっている。うている。


「何って何よ。私はアルフィース……ハァ。一体、何が気に食わないのよ、アルフィース?」


 ぐりぐりと枕にひたいを押し付けて、何かを問いかけている。部屋には他に誰もいない。


「…………さびしいって、それ本当? 何がよ、一緒に食事をしただけでしょう? いつもと変わらず、2人と……誰かと」


 先ほどにあった自分の状況を第三者的に、宿屋の角から見下ろすかのように、想像する。


 ポツンと、そこに1人。トマトをかじる少女の姿があった。


「…………やっぱり悪いじゃない! そう、悪いわ!!」


 不意に起き上がり、それまでいとおしに顔を埋めていた枕をつかんだ。


「なんだって私がッ、このアルフィースともあろうものが……ッ!! 孤独こどくを感じて食事をるというのか!? 有り得ないでしょう!!?」


 わし掴みに両手で握り込み、シワだらけになった枕をかかげる。


「んんんぎぃぃぃぃぃぃぃっ!!! 何が頼れるですって!? 惚気のろけたような顔して!? このっ、このっ……私はッ、1人ッ、寂しくッ、どう、してッ!!! ――――んんん、解ってよォ!!!」


 言葉のアクセントごとにくらし気に叩きつけられる枕。最後の「解ってよ!」にいたっては頭突きのように硬い頭部をそこに押し付けられた。


「ハァハァっ、ッ……ハァっ、フゥ……ハァァァ。何も悪いこと……してないけどさ」


 ぐしゃぐしゃになってしまった枕。その有様を見て、どうやら少女は若干じゃっかんの冷静さを取り戻したらしい。


「・・・・・シャワーびるッ!!」


 少女はまた突発的に立ち上がり、他に誰もいない部屋でとげ々しく宣言せんげんした。


 そして見渡した後、気が付く。


 この宿屋、トイレは部屋に無い。そして、浴室もまた……。


「……んんんもぉぉぉッ!!? 全部、アイツがッ……パウロが悪いんだぁぁぁ!!! ばかぁぁぁあああ!!!!!」


 助走をつけて跳び、叩きつけるようにして顔を埋めた枕。それに吐き出すようにした少女の叫び声……。



 それは他の誰にも届かず。ただ、自身のノドを痛めただけであった――――――。






|オレらはモンスター!!|






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