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「オレってマジモンスター(2)」

 すっかり夜になってしまったシャナーラの街路がいろ。暗がりの空には星が綺麗に輝いて見える……が、今は塩臭くってそれどころじゃない。


 泥と塩でベトベトなドレスを揺らして逃げるアルフィース。彼女は小路こうじへと逃げ込むと、すっかりヘタれて座り込んでしまった。


 追いかけてきたパウロは何が何だか……と言った具合である。いきなり怒り始めた老人が意味不明なのだろう、首を傾げている。確かに彼の反応は過剰かじょうではあった。


「うぅむ……なんだって、“金が無い”ってことであんな怒んだ?」


「うっ、ぅぅっ、ぐすっ……なんで、なんで……」


「ん? どうすた、アルフ――」


「なんで私ばっかり、こんな目にあうのよぉォォォォォ!!!!!」


「ドぉワァァァァっ!?」


 パウロ少年はすっかりたまげた。たまげすぎて跳び上がり、その強靭きょうじんな筋肉のバネによってふっ飛ばされたように倒れる。


 倒れた少年など気にもしていない。いきなりに絶叫ぜっきょうしたアルフィースはだらだらと涙を流し、動揺どうようしてわめき続けた。


「私がっ……私がぁ!! うぅっ、私が何で!? こんな知らない町で、たかが数千だかのPLぺるらに泣いて……あんまりよ!!!」


「ど、どどどうすたアルフィースつぁん? そんなにあのじいちゃんの塩まきが怖かっただか!?」


「こうなったのも全部あのちからが悪いんだわ!! 解るまでは優しかったじゃない!? パパも、ママも、みんなみんな……誰だって味方だったのに!! それが全部、がれ落ちたように裏切って、裏返って……!!」


「お、おちおち落ち着いて、落ち着いて! もう一度、今度はオラが……ええと、ほら、このズボンと交換条件で話すをしてみっけ――」


「何が悪い? “装怪者そうかいしゃ”だからって――何が悪いのよ!? こんな仕打ちを受けたら、誰だってうらんで仕返しをしたいとひねくれてしまうわよ!? 悪いのは一体、誰なのよ!?」


「んな、何の話だ?? 違うんだか、さっきの爺さんがおっかねぇって話すじゃねぇんか???」


「……もうヤダ。あたたかいおうちに帰りたいよぉ……我がまま言って、それでも頭をでてくれて……さびしいよぉ!」


「あ、アルフィースつぁん……!」


「こんな、こんな泥だらけ……少しでも汚れたら新しい物を買ってくれていたのに……。きずなや思い出より、誰かが作った規則きそくが大事なの……?」


「よ、よっぐわがんねけど――――ホリェッ!!」


「・・・・・えっ?」


 まったく解らない。パウロからして、少女が何を言っているのかまるで不明だ。


 何かが切ない、誰かに怒っている、ほんとうは戻りたい場所がある……。それくらいしか、なんとなくにしか解らない。


 何にもできないけど、“なにかしてあげられること”――必死になって傾聴けいちょうしていたパウロは少女のなげきから“可能な願い”を拾い上げ、それを実行した。


「・・・こ、こんな感じけ?」


「・・・・・。」


 つまり、“頭を撫でる”である。なるほど、これならだれでも出来る。


 パウロは少女に触れることすら戸惑とまどわれるのだが……涙を流す女を前にして、出来ることがあるなら何かをしなけりゃ男がすたる! と、酒を飲んでフラフラになりながら発された父の教えが少年を突き動かした。


 その結果として彼は少女の頭を撫で、そして……。


「なにしてんのよっ!?」


「ホンガァァアァァ――――!?」


 思いっきりほほをぶたれた。しかもご丁寧ていねいにわざわざ脱いだ靴の底による一撃である。


「人の頭をいきなり撫でるって……よく知りもしないあなたが!?」


「す、すまんす、すまんす!! お、オラはただ君を――」


「ただ何よ!? 馬鹿にしてるのね、そうなんでしょ!? こんな泥と塩塗しおまみれの女なんか、バカにして見下みくだしているのね!?」


「は? な、何を言って……オラはアルフィースつぁんのこと――」


「おだまりっ! “頭が高い”!!!」


「モンガァッ!?」


 強制的なものであった。パウロの意思とは無関係に彼はひざを伸ばしたまま全身をくの字に曲げ、腕を「ピン!」と伸ばした姿勢で頭部を前から地面に打ち付けた。まるで飛び立とうと空にいどみ、失敗して頭から墜落ついらくしたペンギンのような状態である。


「はぁっ、はぁっ……ふぅ。少しは気がまぎれたわ」


「お、オゴゴゴゴゴ……!」


「しかし、どうしようかしら……ううぅっ、夜は冷えるわね……!」


「!? 冷えるって、そりゃイカンべや!?」


 夜闇よやみ寒気さむけに震える少女の発言。それに反応したパウロは彼の意思通りに立ち上がって周囲を見渡している。


「……何、勝手に立ち上がってるのよ?」


「アルフィースつぁん! ちょっと待っててくろ!」


「あ、ちょっ……“待ちなさい”!!」


 少女の命令などあっという間に届かなくなる。夜の闇を全力で駆けだした少年の速度たるや、夢駆けるナイトメアと並走してもおかしくないほどに人間離れしたものである。障害物だらけの山道を駆け続けて来た彼にとってこれほどまでに心地良い走行は初めてのことであった。


 駆けるというより若干じゃっかん飛ぶような速度で闇に消えた少年。小路に取り残されたアルフィースは強い不安に駆られたが……ほんの数十秒で少年が戻ってきたのですぐに安堵あんどする。


「・・・で、何をしているの?」


「いいっけ、アルフィースつぁんはそこで座っててくんろ! 今、あったかくしてやっぺな……!!」


「それは……“枝”? 何よ、その動作は……」


 今度は別の意味で不安だ。アルフィースの視界からすれば、目の前でくるったように枝をクリクリしている少年の行動が不気味で仕方がない。すさまじい速度でクリクリされる枝の先端にはこれも太い枝が置かれており、そこからは次第に煙がたち昇り始めている。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、ファイャアアアアアア!!!!!」


「うわぁ、ちょっと止めなさいよ。あなたオカシクなってしまっ…………え??」


 座るどころか後ずさっていた少女。だが、パウロの手元付近にが見え始めたことに息をんだ。


 そう、パウロは“火”をしょうじさせようとしているのである。彼のかたわらにはあらかじめ組み上げられた枝葉のかたまりがある。これに種火たねびを加えることで、彼は焚火たきびを起こそうとしていたのだ! 


 それは少女の「冷える」という言葉に反応したからこその行動であり、脳裏によみがえった「女の身体は冷やしちゃなんねよ……」と語る母との思い出がその衝動しょうどうを呼び起こした。


「す、すごいわ……まるで霊術みたいね。植物なんて火と関係ないでしょうに……」


「なぁ~にさ! しょっちゅうやってっからね。フーっ、フーっ! ……ほれ、こんだけさかればあったまれるろ?」


 見事なものだ。メラメラと燃え盛った焚火は小路の闇に光の空間を生み出し、だんをヒトに与えて少女をやすらげる。


 何かはしらないが、ともかく寂しさと寒さで震える少女を護るため……。


 称賛しょうさんされるべき行動であろう。拍手はくしゅをもって文明におぼれた都会人はパウロに賛美さんびおくるべきである。ただし、それは彼の行動がこんな町中の、しかも家と家の狭間はざまで行われていなければの話だ。


 こんなものは危なくって仕方がない。しかも悪いことに左側の家屋は木造もくぞうである!


「どうだす? あったまっただか?」


「ふんっ、暖かいけどね……これでは解決にならないわよ」


「そ、そうだか? ま~、確かに腹も減ってしかたねし……」


「まったく、わびしいかぎりね。まさか私の人生、毛布の1枚すら無いとなげくことになろうとは……」


 少年と少女は色々と言葉を交わしているが……そういう場合ではない。


 一刻を争う自体である。迷惑行為もはなはだしい。即刻に火を消さねば大惨事になりかねない。それに……こんな闇夜に炎だ。


 誰かしらが気が付くであろうし、町の警備が存在するならばそれも駆けつけて最悪罰に問われて……。



「 ナニしてんの、あんたら。キャンプファイヤー? マジ、あり得ねぇわ―― 」



「オワァッ!?/


/ひっ!? だ、誰?!」


 闇の中から声が掛けられた。ジャリジャリと砂をんで近づいてくる不明な存在は焚火の近くにまでせまるとようやくに赤くらし出される。


「あたまイカレてんじゃね? あんたら、これ火事になったらど~するつもりよ? ――まさか放火目的じゃねぇっしょ?」


 不明な存在が何かを言っている。そうしている間に「フっ……」と、ロウソクの灯が消えるように終結する燃焼ねんしょう現象。再びの暗闇に少年と少女は不明者の姿を見失った。


「え、なによっ!? 暗くなったわ!!」


「ふんとだ、暗――いや、まぶすッ!?」


 ピカァ~っ、と。まばゆい輝きが周囲に明度と色彩をもたらす。集約された光はごく一部にのみ、日中に近い灯りを提供している。これによってパウロとアルフィースはようやく状況をつかむことができた。


 突然として闇から現れたのは人間であり、それも男性らしい。帽子から長髪がするりと伸びているが、声色からして推測すいそくできる。細身ではあるが暗がりにわずか、ノドのふくらみが確認できた。


 不明な男は機械的なつえを手にしており、その曲がった取っ手部から輝きは放たれているらしい。目元は帽子のツバでよく見えないが……高い鼻の下でくちびるが動く様子までくっきりと見える。それほど明るいのだ。


 その男はロングコートをまとっているのだが……コートの右袖みぎそでは不自然なまでにダラッとれ下がっている。


 不明な男は言う。


「んで、ナニしてたんよ? 見たところおじょうちゃんと、男の方は……あんた、こうして見ると随分ずいぶん若いんだな?」


「お、オラだすか? オラは15になったばかりだすから……若いっちゃわかいね?」


「15って、マジか。それでオレより身長タッパあるなんて……何事だよ、オイ」


「いぁ、そげなことオラに聞かれても……」


「まぁ、いいや。そんで、なんだってガキ共が夜の町中で火遊びしてんだ?」


(・・・ガキ共? ふんっ!)


 不明な男の質問は当然なものである。危うく大事件にいたろうかという所業しょぎょう。何をもってしてそのような行為におよんだのか……聞かれて当然だ。ただ、アルフィースはそんなことより「ガキ共」という発言にかなり気分を悪くしているらしい。


「いあぁ、ちょっとだんをとうろうとすて……ほら、夜は冷えるべ? アルフィースつぁんが冷えたらドえれぇこったと――」


「アルフィース? ああ、そっちの嬢ちゃんか。そうか……そんで、あんたは?」


「お、オラ? オラはほれ、ヤットコ村から出て来たばかりのパウロ=スローデンだっぺ。まき割と薪運びが仕事だ」


「ヤットコ村……はちょっと解らねぇがよ。お前、なんだ“スローデン”だと? ……まぁ、いいか。んで、あんたはついさっき“非常に危険な事を行った”と理解できているか?」


「んあ、何がだ?? むしろアルフィースつぁんを護るために――」


「結構なことだがよ? まぁ、ちょっと横見てみなよ。ほら、木造の壁があるだろ? 中には人が住んでるぜ。

 ……例えばだな。あんたが起こした火がそこの壁に移って広がり、家を焼き尽くし、中の人間をがしてなおも広がりをみせ、町全体を大火事に飲み込んでいく……そんな可能性があったと、想像できるか?」


「えっ?? 木の家、火……近い…………うぇぇっ!? ほ、ほんとだ……あっぶねぇ!?」


「やれやれ。つーことはよ、あんたは反省しなきゃならねぇよな。できるか?」


「……お、オラはなんてことを……オラって男は、とんでもねぇアホタレだべッ……!!」


「違ぇ、違ぇ、自虐じぎゃくしろってんじゃねぇよ。反省して“もうするもんか!”と腹に決めてくれりゃそれでイイ。町中で焚火をしてはいけない、火のあつかいには注意する……守れるか?」


「お、おぅ! もっちろんだぁ、オラもうこれからはすっげ気をつけるだよ! 何せ、こんな家と家がちけーんだもんな! そら、火がいたらえらいこったでよぉ~~。森ん中で火さ焚くのとおんなじだっぺや!」


「そっか。なら、よかったじゃねぇか……何事もなくてよ」


「ほんと危ねぇ……いぁ、だっけ、あんがとぅ御座いますだ! 教えてくれたおかげで、とんでもないことせずにすんだ! あんがとぅ、あんがとぅよぉ!!」


「せ、迫ってくるなよデカいガタイしやがって! ……しっかし、ちゃんと礼を言えるたぁ、見所あるぜ? オレがあんたくらいの頃だったら、きっと逆ギレしてただろうよ」


「え……んだか? こんなん当然らろ……あんがてぇって、そう思うわな?」


「イヤイヤ、立派なもんだぜ。それにあんたの動機だってよ、聞けば間違いでもないしな? 恰好かっこう良いじゃねぇか、お前さん」


「ん、んだか? へっへへ……なんかめられてると照れるっぺやなぁ~!」


 不明な男とパウロは会話を交わすうちにどんどんと距離が近づいていく。距離というのは物理的なものではなく、心のそれである。


「・・・ちょっと待ってくれる?」


 何やら不明の男と勝手に打ち解け始めたパウロ。その状況に「待った!」をかけたのは不服そうな顔で状況を静観していたアルフィースであった。


「あのね、そこの……名前も知らないどなた様? ちょっと質問をさせて頂いてよろしいかしら?」


「おっと、こいつぁ悪かったな。名乗り遅れて申し訳ない――オレは“ジェット=ロイダー”。普段は旅人だがよ、今はたまに軽い記事なんか書いて発表している記者ってことで……ヨロシク!」


「……つまり、普段は仕事をせずにフラフラしてる大人って認識で良い?」


「おっと、言うじゃん!? ま、その通りだよ。大丈夫、かねはメッチャあるからさ」


「何が大丈夫なのよ……」


 不明な男もとい、【ジェット=ロイダー】の発言内容から「少年少女にとって大丈夫な要素」は何も見当たらない。


 ジェットはやたらと自信に満ちた様子で帽子のツバを機械的な杖の先で押し上げた。よく見れば、それは単なる杖というわけでもないらしい。突起とっきやら何やらがえている。


 安全かどうかはともかくとして……彼には「メッチャ」金があるらしい。そして少年少女にはまるで金が無い。だからこそ火を焚いた。


 その辺りの関係性をジェットはすで把握はあくしていた。ついでにいうと彼は宿泊している宿の1階で交わされていた会話を聞いていた。だから細かい情報も得ている。


「――それで、ガキ共よ?」


「おっ、なした?」


「・・・・・。」


 このジェットという男。口調と態度からどうにも威圧感というか感じの悪さがにじみ出ている。悪気があってのことかはともかくとして、言葉の端々でアルフィースの表情をけわしくしてしまう。パウロは彼の口の悪さなどまったく気にしていないのだが……。


「あんたらが暴挙ぼうきょおよんだのは暖を取りたかったからだろう? それだったらそこいらの宿に入ればいいものを……どうしてだ?」


「・・・・・。」


「んぉ……それはだな、ずばり金がぇからさ。入ったけんど、なんか追い出されたんだわな」


「えっ、マジ? そりゃ大変だな。すっげぇピンチじゃん、あんたら!」


「・・・・・ふんっ!」


「んだなぁ……火も使えねし、どうすっかな。かといってアルフィースつぁんをこごえさせるわけには――」


「――パウロっつったな? あんた、そのに随分と世話を焼くんだな」


「おぅ、そらそう……むぐっ!?」


「“世話を焼く”……?? あなた、先ほどから言葉使いがあらいわよ? この人は私の付き人なの。だから世話を焼いているのではなくて、“世話をさせてあげている”のです。どうか、誤解なさらないで?」


 ついに堪忍袋かんにんぶくろが切れたアルフィース。少女は強引に会話をさえぎってあやまちを訂正した。彼女のプライドがパウロとの関係を間違っても「対等」だなどと認識されることを嫌ったのだろう。


 にらみ顔のアルフィースに対して……この時のジェットはこころよい感情を抱かなかった。「おごり高ぶった貴族あるある」に該当がいとうするなぁ、と彼女のドレスをチラリと眺めて考える。


 そしてそのドレスが泥と塩によって汚れていることに興味も覚えた。彼女の攻撃性を現在得ている情報から解析かいせきしようと試みていたのである。また、同時にそれを“護る”と発言したパウロの動機にも思いをせた。


「……そいつぁ、悪かったな。まっ、それはそれとして……結局あんたらはどうするんだい? 凍えて死ぬの?」


「ぐっ……そ、それは……!」


「んだな、どうすっぺ? こっからオラんまで戻るけ? んでも、きっとおっとぅ(父)が怒るだろうし……」


「ん、家は近いのか?」


 「家」と聞いてジェットが意外そうな表情を浮かべる。しかし、彼の記憶でこの近くに町や村などないはずだ。状況からしてこの町の人間とも思いにくいし……。


「それほどじゃねぇけど……そこに森があんだわな? あれをまずう~んと行って、そん先に山があるろ? あれを越してだな、ほんでまた森があるろ? それをう~~~んと行ってだな――」


「あぁ、わかった。んじゃぁ、しょうがねぇなぁ……オレらと同じ宿に泊まるか? まぁ、さっきあんたらが追い出された宿だけど……」


「おっ、それ……いぁ、だからだな? 金がねっからオラたつは追い出されてだな――」


「金ならオレが払えばいいだろ?」


「そうだなぁ、そうすっと泊まれる……んなにぃぃぃぃ!?」


「うるせっ!? オイ、ビビらせんなよ……どんな肺活量してやがんだ、あんた?」


「いあぁ、そっただなこと、悪ぃだよぉ! だってさっき会ったばかりだべ??」


「別にいいよ。だってオレ、金あるし。それにあんたらほうっておくと何かまたやらかしそうでオチオチ寝てもいられねぇからよ。旅は道ずれ、世は情け……いいぜ、一泊くらい」


「そうだかぁ? いやぁ、なんか悪いだなぁ……んでも、他に選択ねっけ、ここは――」


 すっかりパウロは好意に甘えようとしている。彼の村でもなぁなぁでよく物のやりとりを行っているので、この辺は彼として違和感ない事なのであろう。


 しかし、アルフィースにとっては違和感の塊でしかない。


「――あなたのご厚意こういには感謝したいわ。でも、そのあまりに慈悲深い行いに何かわけがあると考えてしまうのだけど……」


「ワケ?? ……あ~、さっき言ったのだけではダメって?」


「不十分ね。私は警戒を続けるでしょう、きっと眠れないわ」


「ん~~~、つっても言って解るかな? あんたに?」


「……何よ、その言いぐさ。私がそこのパウロより物分りが悪いとでも?」


「そりゃぁそう――おっとと。いやいや、そうじゃなくてさ。“そっち側”のあんたが共感できるかって話でね?」


「……誤魔化ごまかした言葉を使わないで頂戴ちょうだい?」


「まいったなぁ……マジ、この子面倒クサイっすわ。苦労するよ、パウロくん?」


「はぁぁぁあぁぁぁあ????」


 ジェットも大人気おとなげない。確かに食らいついてくるアルフィースの態度も問題かもしれないが、内容としては至極しごく真っ当であり、それに対してジェットが誤魔化しているのは事実である。


 何か、言い難い理由でも隠されているのでは……? そう思われて当然と言えよう。実際そうであるのだし。


 一気に緊張する空間。一部だけ明るい小路にて、少女が大人を睨み上げている。対してその大人はわざとらしく視線をらし、ニヤケて見せながら機械的な杖の先で帽子のツバを押し下げた。パウロは鼻水でもらしそうな表情で呆然ぼうぜんとしている。


 そこに……“新たに不明な存在”。


 小路の闇から“女の声”が3人に向けて発された。


「やけに遅いと思ったら……何をしているのよ、ジェット?」


「あっ、ヤベ……悪ぃ、な~んか上手く事が運ばなくってさ」


 ジェットが振り返った先。そこには杖の輝きに照らされて女性の姿がはっきりと現れた。ショートカットに革のジャケット、ズボンのよそおいからシルエットだけ見れば男性的ではある。だが、その顔立ちや体格、声色からしてそれは女性らしい。



 そしてこの時、少女は考えていた。「質問をしたい」と切り出したが、結局流されてしまったからである。



 今現在その場を照らしている「光」は、一体どういったものなのか?

 それに、燃え盛っていた焚火の火は……どうして突然と消えたのか?


 そうした謎を抱きつつ、目の前のいけ好かない男に対する不審のゲージは跳ね上がっていく――――。






第6話 「オレってマジモンスター(2)」END






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