「ワタシはモンスターだ(13)」
「これはどういうこと!? ちょっと、説明なさいな! どうしてプライグ様とルイドがこんなピリピリとして……!」
「あ、アルフィースつぁんっ!?」
2人の男が争う間隙。緊張が今にも解き放たれそうな時にそれを壊して響いたのは少女の声である。
少女アルフィースは森で何かをやっている男共の様子に大変驚いていた。遠目に憧れの人が何かを行い、ルイドの左腕から何かが炸裂した瞬間……を見事に目撃してしまっていたのである。それは驚く。
「なに……ルイド! あなた、プライグ様に何をしているの!?」
「あ~~~、アルフィースつぁん。それはオラにも解んねけども、ともかく2人は今、どえれぇ喧嘩をしてんだべ。だっけして邪魔さすっと良くね――」
「ぎゃっ!? パウロ、居たのね!? びっくりさせないで……このっ、“あなたは引っ込んでて”!!」
「いぁ、オラは最初っからここさ居て・・・・・って、オワァァアァァァァ!?!?!?」
ガサガサと凄まじい速度で後退しながら茂みの中へと突っ込んでいくパウロ少年。彼は何らかの木にぶつかってしたたかに後頭部を打ち付けたようだ。
それはともかく。やや遅れてそこに更なる何者かが追加で姿を現す。
「んもぅ、アルちゃんてばぁ~。いきなり猛ダッシュなんてしないでよぉ!」
それは看護師(?)のフィナンシアである。彼女は腐葉土で汚れた服を掃いながら、少女のやや手前で改めて転倒した。
「……ふぇ、フェイくん? それにアルフィース……どうしてここに……?」
ルイド・カチースキーは困惑していた。口元は立てた襟で隠されているものの、彼が気を削がれていることは確かだ。
「おやおや、これはこれは可憐なお客様方が……困りましたね」
同じく。プライグ・シャダールも落ち着いたように微笑んでいるものの、その内心では気持ちをどのように保てばよいのか解らなくなっていた。大事な戦い――さながら儀式だとすら考えていた矢先に予想外が生じて、狼狽えたのである。
「フェイっ、これがあなたの見せたかったもの!?」
「んノゥッ!! ……でも、なんだか思っていたものと違う場面に出くわしたことは確かっぽいわね!!」
当たり前である。フィナンシアこそが少女をこの場に導いた張本人ではあるのだが、彼女が思い描いていた光景は「頑張って訓練している少年とそれを見守る優しいドクター」の場面であった。それ以外の存在がここにあること自体、想定と異なる。
ましてやそれが“断じる者”と“逃亡者”が争う場面であるなど……。
「センセイ、その人まさか……」
「フェイくん……ああ、そうだ」
フィナンシアは理解している。これが初めてではないので、彼女は理解してこの場を静観するしかないと覚悟した。
・・・だが、少女アルフィースはまったくもって理解も納得もできない。
「説明を要求するわっ、ルイド!! どうして私の恩人とあなたがこのように野蛮な有様となっているのか!!!」
「……参ったな。なんと説明しても、きっと君は納得などしないと考えられる……」
ルイドの推測は正しい。現在の少女にとっては「憧れのあの人>怪しいルイド」であり、ルイドが肯定される返答は全て「否!」と断じられてしまうことだろう。
そこら辺の感情をルイドは察していたのだが……それは彼だけではない。
“憧れの人”自身も、その事を把握していた。
「別段、隠すことでもありませんので――私から説明させていただきます」
「!! プライグ様??」
微笑むプライグは淡々としたものだ。さっさとこの場を収めて再開したいと、それだけなのだ。要は彼にとって「宿命のドクター>>可憐なる少女」なのである。
「アルフィースさん。余計な混乱を防ぐ為に昨晩は申し上げませんでしたが……私ことプライグ・シャダールはマグナリア聖教会所属の人です」
「ふむふむ・・・・・えっ。」
「階層は創輝階。格式としてあなたの方が上の立場ではあります――が、残念なことに。現在のあなたはどちらの聖会にも所属できていません。まぁ、そのことは御承知でありましょうが……」
「・・・・・えぇ?」
「元とはいえ、聖圏の人として御存知かもしれませんが……創輝階に属する私は中でも“断罪者”であり、特に聖会を離反・異端となった存在を“狩る者”です」
「・・・・・はい?」
「ですが、ご安心を。現段階で私はあなた方、装怪者を狩るつもりは御座いません。役柄上、あくまで必然とはされない事項ですので。それに、あなたを狩りたいとは思えませんし……今は目の前に居られる“離反の医師、ルイド・カチースキー”を断じる所存。それ以外は目下、考えておりません」
「・・・・・・・。」
「どうでしょう。ご理解、頂けましたでしょうか??」
「・・・・・・・。」
これは何とも、正直なものである。ここでプライグが語った内容に偽りはなく、むしろ多少は偽った方が良いのではないか、とすら思われるものである。
しかし、彼は全てを白日の下に晒した。彼としては「あなたを狙うつもりはない、狙いはそこのドクターだ」とハッキリさせれば丸く収まるとでも思っていたのであろう。自分に恩義を感じている純朴な少女に、偽ることは返って逆効果だと断じたのである。
つまり甘く考えた。事はそれほど単純な感情によって構成されていない……。
「・・・ええ、理解しましたわ」
「左様で。ならばここは失礼ながら、お引き取り願いたい。あなたとの時間は後に――――」
「理解できたわよ、この無礼者。私を……この、可憐なるアルフィースを…………あなたはッ!!!」
「・・・・・ん???」
プライグの微笑みが硬直した。彼と少女にはやや距離があるのだが、それでも彼は……少女の表情が可憐とは程遠いものに変貌していく過程を理解できた。
少女アルフィースの顔が紅潮している。しかし、それは憧れの人を前にしての高まりによるものではない。まるで別方向にある“マグマのような心の熱”なのである。
「騙したのねッッッ!!! 私を騙して、心を弄んだのねッッッ!!!!!」
「・・・・・えっ??」
プライグは微笑みを失った。そうして真顔となり、地団太を踏み鳴らす少女を不思議そうに眺めている。
「甘い言葉で近寄って!!! そうか、知っていたのね?? そういえば“何かおかしいぞ?”とは思ったけど……なるほど、合点だわ!! 私を調べ、追ってきたのね……聖会の掟に従って!!!」
怒りに狂う少女アルフィースは力を溜めている。屈んだ姿勢でギリギリと歯と歯を噛み合わせ、拳を握り込んでいる。少女の感情は沸騰し、今にも理性の殻を破裂させようとしているかのようだ。
「あの……お待ちを、アルフィースさん。私があなたを知ったのは本当に偶然で……それに、ドクターのお連れさんだと知ったのはさらにその後でして――」
「私を裁く前に“遊んでやろう”と近寄って、たぶらかして……ッ! 私が喜んでいる、嬉しいと感じていることを察して、無様な女だと嘲笑っていた!?!? 最低よ!! 最低で、卑しい心理だわ!!!!!」
止まらない。もう、誰にも止められない。少女の感情は臨界点を超えてついに爆発する。
「え、いや、違っ……!? そのような騎士道に背く思いは断じて――」
「うるっさぁぁぁぁぁいいいいいい!!!! 許さない許さない許さない許さないッ、許さないッッッ……許さなななッいぃぃぃぃッッッ!!!!!」
火の点いた心は一向に収まらない。満タンに蓄えられていた希望という名の燃料が裏切りへの怒りによって燃え盛り、業火と化して少女の周囲に見えるかのようだ。
「許さなぁぁぁい!!! 絶対に、私を見下して、蔑んで、笑っていたあなたを――何をもってしても、私が断じてやるッッッ!!!!!」
「お、落ち着いてアルフィースさん! 私はあなたを――」
あまりの激情にあてられて放心する青年。まったく端に追いやられて場違いな程のドクター。「それは酷い話ね!」と鵜呑みにして頷いている看護師(?)。
そして……。
「・・・・・ん、なんした? アルフィースつぁん、なんか高まってっけど……便でも詰まって――んあっ!? いぁ、言ってない!! オラはそっただなこと言ってねよ!?」
まったくこれまでの経緯を知らない少年が、1人。茂みからガサガサと出てきて勝手に狼狽えた。
その姿を確認した激昂のアルフィース。少女は感情の命ずるままに彼を呼びつける。
「パウロっ、“来なさい”!!!」
「いっくらなんでも、女ん子にそういった類の話さすんのは失礼なこって――――テ? お、お、お、お、足がっ、勝手に………………ンムゥ!?!??!?!?」
急停止して棒立ちの少年。背の高いそれに、獣のように跳びつく少女。
首にしがみつかれても動じず、動ぜず。
首にしがみついて戸惑いなく、強引に。
3人の大人が見守る中、交わされるくちびるとくちびる。勢いで歯があたり、少年のくちびるから少々の出血があった。
「――――ん、んな、んななな、なななんぁ?????」
くちびるを抑えて乙女のようにへたり込む少年。一方、前歯を抑えて痛みを堪えつつ、ギラリと視線を横に送る少女。
「 許すものか……我が力で、我が暴力で……後悔させてやるっ!! 」
――逆枝の怪物―
バウランシア ―BOULUNCIA――
「 ほ、ほほホントだか? オラ、また、またまたき、きき、キッスをを…… 」
揺らぐ少年の心身。心と体が分裂したような、それとも融合したような――違和感。
『・・・・・・・えっ?』
痛みは無かった。ただ「あれ、なぁ~んかこれって前にも?」と感覚を思い出す。
黒茨を生やした樹木が2本、大地を裂いて葉の無い枝を広げていく。
2本の刺々しい樹木の狭間にあるのは人ではない。それは先ほどまで少年であった“怪物”。黒々しい全身には樹木と同じく棘が生えており、さながら手足の生えた枯れ木のようでもある。
ただしそれは重厚で幹の胴体は太く、手足も生半可ではない厚みを得ている。直立しても地に触れるほど、その腕は長い。
「貫き、裁きなさい我が怪物よ!! 乙女心を玩具にした罪を、償いきれぬ咎を見せしめよ!! ――――“行けッ”!!」
『おわぁ……なしたんよ、オラの身体。これって確か前にも――あっ!? こ、これが怪物化だっけか? ジェットの言ってた、なんかオラとアルフィースつぁんが“協力して”できるっていう・・・・・んぬぅ??? なしてさ、オラの足さ勝手に……ああ、これもアルフィースつぁんさ命令して――』
怪物と化したパウロは状況の理解に勤しんでいる。そして彼の意思とは無関係に怪物の足はズンズンと一歩一歩に轟音を上げて進んでいる。
「ほぅ、これが彼らの……/わぁ、なんか真っ黒ですねぇ/――しまったな」
巨体の異形を目にした他の3人はそれぞれがそれぞれの想いを描いたことであろう。特に、ここで“標的”とされたワイシャツの青年は即座に状況を整理した。
「怪物化が成ったか……こうなってはどうにもなりませんね。どこで間違えたか……ここは、退くしかないでしょう」
口惜しそうに言いながらプライグはその場を去ろうとする。その姿を見た少女は「“逃がすなッ!!”」と怪物に命じた。
すると、突如として黒々とした茨の枝が地面から生え始める。
凄まじい速度でそれは森の枝葉に混じり、木々を越えて周囲一帯を包み込む“黒茨の巨大な檻”を形成したのである。
どうやらそれらは茨の怪物、その足に直接繋がっているらしい。まるで根っこのように生えた枝を引きずり・伸ばしながら怪物の歩行は緩まない。
「これが……これが心の怪物、その力ですか……! だがっ、ここで尽きるわけにはいきません!!」
行先を阻まれたプライグは両腕に大鎌を創り出し、道を開こうとそれらを振り下ろした。
鋭い切れ味だ。確かに大鎌の2本は茨のドームに切れ目を入れたのだが……ほんの一瞬にしてその切れ目は修復されてしまう。再度試みても結果は同じだ。
「なんてことっ……ならばっ!!」
創り出した双剣を振り回して闇雲に突進してみるが……頑丈な茨の壁は開かない。ドーム状に形成された茨の壁に逃げ道はなく、作れない。八方塞がりとはこのことである。
そして背後には重厚で刺々しい影が迫っている。8m近くにまで育った茨の怪物だ。
『あ、あんさ……そこん人? なんかオラ、あんたをどうにかしちまいそうな気がすっけ……なんとか逃げてくんねが?』
「――出来ればそうしてます。ですが、あなたの茨が邪魔をして逃げられません!」
『そ、そっか。ほしたら……ああ、なんでだ? なんかオラ、あんたを逃がせねぇ……その壁さ、確かにオラの一部らしいけんど、自由にできねぇ……』
「……なるほど。そのような関係性なのですね、あなた方は――――ですが、お許しを。せめて全力で抵抗を試みます!!」
プライグは剣と鎧を虚空に掻き消し、代わりに鎖の付いた小鎌と槍をそれぞれの手に携えた。
怪物の背後から聞こえる「“掴んでしまいなさい”!」の声。それによって怪物パウロは衝動的に目の前の人を握ろうと腕を伸ばす。
「……身のこなしには自信があります、捉えてみなさい!」
跳び上がった。鎖を伸ばしてその先端を怪物の肩に引っ掛け、大きく飛ぶように跳躍したプライグは槍の一突きを怪物の顔面へと突き立てる。
『なしてだ、危ねって!? おおい、アルフィースつぁん、キミさこれやってんなら止めてやれや! こんなトゲばっかの手で掴んだら、こん人どうかしちまうっぺよ!?』
槍が顔に刺さったまま、怪物パウロは振り向いて少女に訴えている。どうやら顔に槍が刺さっていることなど気が付かず、痛みすら感じてはいないらしい。やがて突き刺さっていた槍は消滅してしまった。怪物の傷口も、すぐに修復されていく……。
怪物の肩から弾かれるように跳んだプライグ。彼は腐葉土の上に転がり落ちると、「はっ」と横を見た。
「――――これは、無様な姿をお見せした。ですが、せめて創輝の意地というものを……ご覧に入れて魅せますよ!!」
微笑む青年。彼は隣に立っていた人へと覚悟の詰まった言葉を告げ、迫る大木の腕を駆け上がって行った。
跳び上がって放たれる矢の6連弾。それらは怪物を貫通するものの、まるで影響なく茨の身体は修復され、新たに腕を生やして不規則に獲物を追い回す。鋭い茨塗れの身体を跳び、走るプライグのワイシャツはすでにボロボロだ。浅くも無数の傷が生じているようで、赤色が滲んでいる。
血しぶきを撒きながらも戦う青年。『止めてくろ!』と叫びながらも、追撃を緩められない怪物。怪物の声も聞かず「“さっさと貫きなさい”!」と命じる少女。
それらの凄惨たる状況をただ見ることしかできていない医者(?)と看護師(?)。
「…………。」
「センセイ?」
「…………うん?」
「彼は、センセイの敵対者なのですよ?」
「…………解っている」
「えへへ、解っているなら……どうしてそんなに悔しそうなのです?」
「…………君には隠し事、できないものだな」
「え~~~、だってセンセイってば、すぐ顔に感情がでちゃうんだもの!」
「…………そうかな?」
「そうですよぉ! 絶対、賭け事しちゃダメですからね! 負けて損しますよ!!」
「…………うん」
「…………。」
「…………。」
「――ねぇ、センセイ? センセイは、どうして私と一緒にいるのかしら??」
「…………なんだね、突然に」
「聞かせてほしくなっちゃった。だって、最近ろくに会話もしてないし……」
「…………そう、だったかな」
「そぅよぉ。センセイってば、あの子に夢中になっちゃってさ!」
「…………すまない」
「フンっ――だ! ……だから、ね? 私、寂しくなっちゃって……」
「そうだな……あの日から、変わらない。“君を護る”――それが今、ワタシがここに在るただ一つの理由だ」
「――――えへへ♪」
「それに、ワタシだって鈍感ではない。“君が何を護りたいのか”……解っているつもりだ」
「・・・うぅ~~ん。嬉しいけどっ! なぁ~~~んか、引っ掛かりませんかね??」
「いや、フェイくん。決してワタシは嘘や偽りなど――」
「そんなことは解ってますぅ! たぁだ、センセイの自己評価が怪しすぎるんですよぉ! 今度、私が診断してさしあげましょうか?」
「??? どうしたんだ、フェイくん。こんな時にワタシの健康を考えてくれているのかね……」
ドクターの返答に呆れた様子で「ベーっ!」と舌をだす看護師。どうしてそのような態度をとられたのか……ドクターは無機質な瞳を彼女へと向け、黙ってその動向を観察している。
看護師は彼の瞳を見返して。じぃっと、真っ直ぐにそれを見つめた。
「――――ねぇ、センセイ?」
「何かね、フェイくん?」
「私、護りたい。あの子が見失わないように……私、助けてあげたいの」
「……まったく、人の話を聞き給えよ、フェイくん。それについてはワタシも理解済みだ」
「だったら――――ね♪」
「ふむ……いや、なんだろう。こう、解ってはいるのだが……」
「いつだったか、“人工呼吸みたいなもの”とか言ってたクセにぃ~~♪」
「それは、だって……自分が行うとなると、その……どうしたことか……」
「んもぅっ! ほら、目を逸らさないの!」
「あ……あぁ。解った……」
黒茨の檻に囲われて向き合う男と女。枝の折り重なりを越えて射し込む陽の光が2人を照らす。
「――護りましょう。その為に力を……私たちの、力を使います!」
「解っている。しかし、それとは別に……今はただ、純粋でありたい」
「・・・うふふっ、センセイの照れ屋さん!」
「茶化さないでくれ、ワタシは真剣なんだ。いつだって、君に対しては……」
外されるボタン。露わとなる男の異形。異質な顔面だが、それは女にとって最愛の姿である。
「――――ありがとう、私のルイド先生」
「フェイ……いや、フィナンシア。少し、強く抱き寄せるよ……」
右腕でしっかりと、男は彼女の身体を引き寄せた。女は身を任せ、彼の胸元に顔を寄せる。
見つめ合う。互いに瞳を眺め、他は何も見えない。そして吸い付くように近づく顔と顔。
ふと、冷たい顎を気にして僅かに男が戸惑った。それを見て強引に……少しだけかかとを上げて、女から迫る。
交わされたくちびるとくちびる。冷たさなんてまるで無い。温まる、2人の心――。
「…………すまない。こんな顔でなければ――」
「“こんな”ですって?? 私の大好きな顔に、そんな言い方はやめてよね!!」
離れたくちびるの感触。その名残を覚えながら、2人は見つめ合う。
「……あはは、参ったな。まるで生身のように身体が火照ってしまうよ」
「えっへへ~♪ 私の方が、ずぅっと暖かいですよぉ~~だ!」
「確かに、暖かく心地よい……しかし、行かねば。離れ難いけど、のんびりもしてられないからね」
瞳を向けたまま、|男|はそっと抱き寄せていた腕を解いた。
「二ヒヒ。せっかちさんだからなぁ、センセイって……」
うつむいて髪を弄り、|女|はぼそぼそと呟く。
「 もうちょっと、あと何秒かくっついていたって……いいのにぃ! 」
――停滞の怪物―
ルフライド ―LUFFRIDE――
「 さて、やるだけやっ……ん? 今、何か言ったかね、フェイくん?? 」
それまで射し込んでいた陽光が遮られる。それははるか上空に生じた雲のせいであり、この森はもちろんのこと、カースエイド全域に渡って曇り空の天気を生じさせた。
雲はそれ自体が薄く光っており、やたらと暗がりを作らない。返って眩いくらいに照らしながら、深々として停滞の結晶を降り注がせ始める……。
「“貫きなさい”、バウランシア!!」
『う、うわわぁ、ダミだ! 当たっちまう! すまんす、すまんすぅ!!』
「――――ぐぅぅっ!?」
茨の怪物はその全身に生えた棘を伸ばした。身体にまとわりつく小虫を弾くように、躍動していた人間を貫き飛ばして地面へと落下させる。
落下の最中。プライグは一際大きな火花を散らすと、長い砲身を備えた“大砲”を創り出した。「ズシン!!」と音を鳴らして落下した彼は、生成がまだ完全に終わっていないままに大砲背部の引き金を両手で倒す。
打ち放たれる砲弾は回転体であり、周囲に電流をまき散らしながら茨の巨体へと衝突する。轟音が鳴り響くと爆発で生じた煙によって視界は曇り、巻き起こる風によって青い頭髪が激しく騒いだ。
電流の残火がちらつく中、徐々に晴れていく煙。良好となったプライグの見上げた視界。
そこには――成長を続けてさらに巨体と化した茨の怪物が、悠々として眼下を見下ろす偉容が確認できた。
「はぁっ、はぁっ――――無傷、か。いや、きっと傷はあったのだろうけど……既に治ってしまったようですね。どの道、絶望的ですけど……」
青年は微笑んでいるが、それは苦笑であろう。しかし、やるだけやったという想いから妙に清々しい感情が彼の胸に去来していた。
満身創痍に膝を着く。貫かれた脇腹を抑え、青年はボロボロになったワイシャツの襟元を気にしている。
「――――あれ? なんでしょう、これ……出血多量で視界がオカシクなったかな?」
チラチラと視界に瞬く光の粒子。一瞬それが「死の寸前に見える幻覚か」とも考えたが……違うらしい。
真上を見ると、茨のドームの隙間から何かが降り注いできている。それは――“雪”だ。いくら地元の人間ではないにしろ、プライグだって「この時期に雪??」と疑問を抱いた。
同じく地元の存在ではない怪物パウロも己の一部である茨のドーム天井に積もり始めたそれが“雪”なのだと理解している。おかげで『はぇぇ~、都会はこの時期に雪が降るんだすなぁ』といった誤解を獲得した。
唯一、興奮状態にある少女は気が付かない。そう、雪にはまだ気が付かないのだが……さすがに“その異形の姿”は嫌でも視界に入る。
茨のドーム内で“宙にある存在”、大きさとしては2mあるかどうか。巨大ではないが、姿形はまるで人のそれではない。翼は無いものの、それは確かに浮遊している。
ドームに降りそそぐ雪の原因たるそれは、表して【双剣の怪物】と言えよう。
イカのように尖った頭部に、黄色く不気味に光る2つの大きな眼。両腕は真っ直ぐと薄く伸びた硬質な“剣”のようなものであり、下半身は蛇のように足無くぶら下がっている。半透明なこともあり、さながら海に漂う“クラゲ”に似た様相にも思われる。
浮遊する『停滞のルフライド』は不気味な2つの眼で黒茨の怪物を見下ろしていた。
突如として出現した異形を目撃して、少女アルフィースは畏れて身構えた。しかし、直感から「まさか!?」と思い至って周囲を見渡す。
「フェ――――って、痛たぁ!? い、いつの間に隣で立っているのよ、フェイってば!!」
「えへへ~~☆」
いつの間にかすぐ隣に立っていた看護師(?)はニコニコしながら照れ臭そうにしている。
「……でも、どうして? フェイ、これって??」
「ごめんね。解ってたんだけど……たぶん、アルちゃんってばそうかなぁ~~って。でも、もし違ってたら恥ずかしいし……それに、“装怪者です”と名乗って嫌われちゃうことも……あるからね?」
「フェイ……い、いや、いいの、それは! 私だって黙ってたのだから……。それより、どうして?? 今、怪物を出すってことはあなたまさか――」
「うん、邪魔してあげる。アルちゃんのやろうとすることを妨害するために、装ッ心ッ――したのだぁ!!!」
「・・・・・な、なんですって!?」
フィナンシアは何やらポーズを決めて勢いよく言っているが……アルフィースとしては余計なお世話である。
言いたいことは色々あるにせよ……それよりもまず、成すべきことを成そうと振り切る。
「ぐ、ぐぬぬ……ええいっ、バウランシア! 構わないわ、そのままそいつを“ヤってしま――/
/――おおっとぉ、センセェイッ!! アルちゃんが危険な発言をしてますよぉ~~、止めたげてぇ!!」
少女の言葉を遮り、フィナンシアが双剣の怪物へと声を張り上げる。
応じたように瞳を輝かせ、双剣の怪物は自らの意思によってスイスイと、宙を泳いで茨の怪物へと迫った。
怪物2体を比べたら単純にサイズで圧倒的な差がある。一見して無謀な突進だ。
『ん、ぬぉぉ?? なんね、こりぇ……虫みてぇなんが近づいて!?』
迫る虫を掃うように黒茨の腕が振るわれる。棘に覆われた危険な腕がクラゲのような怪物へと向けられた。
それをかわすようにクルリ、宙で回る双剣の怪物。掠めた茨の腕によってその身が裂けたようだが、それもすぐに修復された。
「くっ……バウランシア!! “茨を伸ばしなさい”、とにかく“捉えて動きを封じなさい!!”/
/センセイっ、よけて避けてぇ! そしてバッサバサ、斬ってしまってくださいな!!」
ぼんやりと光を放つ2人の少女。怪物を見上げる2人は互いの声を打ち消しあうかのように言葉を張り合っている。
『う、うおっ…………ぬぉぉぉおおお!!!???』
黒茨の怪物が困惑のままに命令を聞き入れる。その巨体から、全身から吹き出すように鋭い茨が無数に伸び、対象を突き出した。
双剣の怪物は冷静なままに希望を無視する。まったく無防備に、揺らぎながら茨の弾幕へと突き進む。
無数の槍に突き刺されるような有様。何度も千切れ、修復を高速で繰り返しながら……双剣の怪物はそれでも止まらない。
| 想いの強さが、力になる―― |
『あまり頑張るな……実はワタシも慣れていない。加減が利かんのだ』
その身を貫かれながらも突き進み、ついに双剣の怪物は茨の巨体に接近した。
『ぬぁぁぁぁ・・・んぉ?? その声、なんかどっかで……??』
聞きなれた声に惑う黒茨の怪物。その巨体を剣のような腕が切り裂く。
何度も何度も振るわれる双剣。黒茨の怪物は切り裂かれてもすぐに再生するが……しかし。
『お、おっ……おぉぉ???』
斬られた傷口は修復するが、その周囲に違和感。霜が張ったかのように色は白くなり、次第に黒茨の身体がそれに覆われていく。
斬れば斬るほど、斬られるほどに……“広がる白色”は黒茨の怪物を鈍くした。まるで氷漬けにされていくかのような光景に、見上げる少女は狼狽える。
「バウランシア、どうしたの!? 身体が、これって……凍ってる??」
最初から覚悟などなかった。装怪者アルフィースは「憎い男を亡き者に」という突発的な憎悪によって怪物を呼び出した。怪物同士の戦いなど、微塵も考えにない。
つまり、彼女の心は容易く揺らぐのである。命じることも忘れ、伝える想いもなく……簡単に動揺して怖じ気た。さらに言うなら、彼女と少年は何ら心を通わせていない。それでは無理だ。
言葉もなく見上げる少女の視界。そこには全身が真っ白になり、完全に硬直した怪物の姿がある。
雪像のように真っ白、霜だらけで停止した黒茨の怪物。その頭上で回転しているのは双剣の怪物であり、それは回りながら縦一文字に茨の巨体を切り裂いた。いや、氷塊を砕いたと言った方が正しいか。
ともかく、そのようにして黒茨の怪物は……怪物と化したパウロは“砕け散った”。
「ひっ……!? そ、そんな……パウロが…………パウロぉ!?!?」
衝撃的な光景である。異形と化していたとはいえ、それは元々“少年”なのである。その身体が砕け散ったのだから、少女アルフィースは恐怖と絶望によって顔面が蒼白となる。そしてショックのあまり口を押えてその場に座り込んだ。
完全に怒りを失った少女の瞳から涙が溢れる。
すると、砕け散った巨体の欠片たちが次第に薄く、薄く……消えて行くように無くなり始めた。代わりに次第と濃く、濃く……少年の姿が森の中に現れ始める。
やがてくっきりと明確になった少年。そこに異状はないようで、ましてや真っ二つなどでもない。健康で筋肉質な肉体がそこにある。ズボンとポロシャツもしっかりと着用されているようだ。
「ん、んぬぬ?? なした、オラさっきまで……ああ、そうだ! なんか小せぇ虫みたいなのが近寄ってきて・・・・・って、デケェーーーーッ!!!? なんね、コレ!? この、このこの……巨大な虫か化け物か?? なんね、コレェ!?!?」
再びに姿を現した【パウロ少年】はさっそくに喧しい。彼はどうやら見上げた先に浮かんでいる怪物の姿を見てびっくらこいたようだ。先ほどまで見下ろしていたものと同じものだとは解らないほどギャップがある。
『……パウロ、無事でなによりだ……っと。フェイくん、頼むよ』
その発言の直後。パウロいわくの虫っぽい化け物は夢か幻だったかのように消え去った。そして似ても似つかぬ白衣の男が代わりとして地上にポツンと立っている。
「おおっ、ルイド!! 無事だったけ? なんぞ今、化け物さおってな!」
「理解している。何せ、それは私だからな……」
「おー、そうか。それならそうと・・・・・いぁいぁ、なに言ってんだ、おめさ??」
困惑しているパウロ。それに理路整然として、何が起きていたのかを説明し始める【ドクター・ルイド】。
涙を流していた少女は「それほんとけ!?」と驚きまくっている少年の姿を見て……「ほっ」と、胸を撫で下ろしていた。その上で改めて流れる涙――。
看護師(?)のフィナンシアは泣いている少女の肩を抱いて「よしよし」と慰めている。彼女には何故少女が泣いているのか、何故少女があのような振る舞いをしてしまったのか……それらが理解できていた。
|男と男|、|女と女|が何やらゴソゴソしている状況。そこで、まったく蚊帳の外となった青年、プライグ・シャダール。
ボロボロな青年は「やれやれ」と零し、その場で大の字に寝転がった。
「まぁ、いいんですけどね……ただ、それなら早めに介入して欲しかったものです」
見上げた空に茨のドームは既にない。もとよりある枝葉の先から燦々と、昼時に最高潮を迎えつつある太陽の輝きが眩しく。
暖かな様子で森に射し込んでいた――――――。
第26話 「ワタシはモンスターだ(13)」 END
「――――おいっ、この畜生!! 審問の時間だ、さっさと出ろ!!!」
カースエイドの“治安維持管轄所”。重厚な塀に囲われた施設である。秩序を重んじる街にとっては平和の象徴であり、“法の城”として畏れられている。
ここでは罪を問われる者の審問や裁判が行われ、場合によっては処刑の執行まで行う。それなりの規模である牢獄も備えており、“疑わしくは封じよ”の精神と共にカースエイドを護る要所と言えよう。
この牢獄に先日、1人の罪人が護送されてきた。
その男は付近の町で盗賊行為を主導していたところを有志によって捕縛され、町の裁量では手に余るとのことでここに移されたらしい。そもそも、それはカースエイドが以前から“指名手配”を独自に行っている存在でもあったので……法の城は喜んでこれを受け入れた。
1年ほど前。この街を襲った市場集団強盗事件。それの首謀者と目され、また同時に発生した資産家一家惨殺事件の犯人として限りなく濃厚な人物としてその男は指名手配を受けていた。……というか、護送されたその日に呆気なく認めていたので確定と言ってよいだろう。
尋問するまでもなく、単に質問しただけで彼は答えたらしい。
『…………?? だって、その方が効率的でいいでしょう。せっかく市場を襲うんだから、騒ぎの中でもう1つくらい何か盗った方がお金にいいではありませんか? …………ああ、それは話し合う時間など無いと思いましたからね。もたついて邪魔をされたらたまりませんし…………ええ、それは満足したから。当たり前でしょう、それだけですよ…………はぁ、そうですか。それは残念な……それはそうと、ジェット=ロイダー先生はどこにいます?? 彼に少し用事がありまして――』
まるで緊張感なく、その男は審問官に対面していた。直後、カースエイドの誇りを持つ審問官達はその場で彼を痛めつけたらしいが、終始それは「僕は悪くない!僕は豚じゃない!」と繰り返していたらしい。
それから数日――現在、その男は牢獄の中でブツブツと独り、何やら呟いて一日中を過ごしている。
堅牢な牢獄の扉。その錠が外された。
「……ここは豚小屋じゃない、ここは豚小屋じゃない。ここは楽園、ここは楽園……」
「――ッ、おい! 薄気味悪いぞ、“ブリューゲル”!! さっさと出ろ、このっ……!!!」
法の城に務める審問官が3人、牢の1つに押し入った。秩序を重んじるカースエイドの役人達だが、その秩序を乱した存在に対しては“秩序なんて必要ない”と考えている節がある。
3人は思い切り踏みつけ、罪人の頭を床に叩きつけた。牢獄の罪人――――【ブリューゲル=シュライザー】は奇声を発して悶えている。
審問官達は乱暴だ。街を穢された恨みというものもあるだろう。だが、それ以上にこの存在が薄気味悪く……また、こんなザマでもブリューゲルは帝都から“逸脱級”と手配されている凶悪犯罪者でもある。そんな者を前にすれば誰だって恐れくらい感じるだろう。
「うぅぅぅ……豚が話しているよ? 怖い、怖い……お腹がすいたよぉ!」
カビた牢獄の床を舐めながら微笑んでいる男……その瞳がギョロリと動くだけで審問官達は一歩、退く。
「くっ……こ、こいつ……本当に気味が悪い奴! さっさと連行しちまおう!」
「ああ、ここはカビ臭くってしかたない。つまりお似合いだな、こいつには!」
「このクズ! どうせ処刑されるんだ。その時は嗤ってやるからな!」
審問官達は口々に罪人を罵り、引きずるようにその男を牢から出した。ブリューゲルの手は背後で縄に縛られており、重厚な扉の角に顎や膝をぶつけながら、ヨタヨタと廊下に出でる。
彼は一週間ほどこのカビた牢獄で過ごした。衣類や縄はすっかり湿っており、風呂にも入れず薄汚れた表情には化粧の名残が黒ずんでいる。
「…………やっぱりあんなの、楽園じゃないや」
変わらない微笑みの表情でブリューゲルが呟く。
審問官達はその呟きに気づかず、さっさとこの気味の悪い仕事を終えようと歩き始めた。罪人を3人で囲い、警戒の中、廊下を進む。
――――ふと、審問官の1人が窓の外を見た。そこにあった意外な光景に思わず視線を向ける。
「・・・あれ、おかしいな。この季節に“雪が降っている”ぞ??」
晴天なる午前10時過ぎの頃合い。何を言っているのかと他の2人は呆れたが……外を眺めて納得。
確かに鉄の柵越し……窓から見える風景には異常がある。
「ほんとうだ……雪じゃないか! しかも凄いな、積もり始めている!」
「ははは、ここはカースエイドだぞ? 珍しくもないだろう……いや、待てよ? そうだ、今は夏を控えた季節じゃぁないか。ならば変だ、これは珍しい……」
異常な気候変化に審問官3人は揃って外を眺める。時間にしておよそ10秒くらいのことだったか。
カースエイドは季節によって雪が積もる。それは毎年珍しくはないのだが……今は時期が異なる。真逆の季節、夏なのだ。
だから、あまりに不思議だったので……意識を奪われた。
季節違いの雪景色に見とれる審問官達。まず、その1人が倒れた。彼は縄で勢いよく首を締め上げられ、頸椎をへし折られて絶命した。
次に、これも同じく首を縄で締め上げられ、怪力によって強引に首を捻られて即死。廊下の壁に倒れかかる。
その時点に至って最後の1人は気が付いた。間近の異常に気が付いた審問官は腰元に手をやり、“取り出そう”とそういった動きを行った。だが、そこに“ソレ”は無い。
「――ングッ!?!? フッ……ムムゥッ!?!?」
「シィ~~~っ…………お静かに。ここは厳粛を求める法の要。役人であるあなたが騒いでは……子供達の悪い見本になります」
「ンアッ!! ッッッ…………。」
口元を手で抑えられ、いつの間にか盗られてしまっていた“ナイフ”に首を裂かれた。最後の審問官は鮮血を首から噴き、冷たい廊下に崩れ落ちる。
壁にもたれかかった死体の背中でナイフの汚れをふき取り、汚くなった縄を放り捨てる。鉄の柵越しに見える雪景色に「寒そうだ」と零して。
何か厚着と……できればお風呂。あとは手ごろな“得物”が欲しいな……と。
「……さて、ひもじい思いをさせられましたね。これもそれもあれもどれも……全部、全ぇぇぇん部!! そうっ、“ジェットのせい”です!!!」
罪人――――【荒天のブリューゲル】が解放を得た。解き放たれた狂人は法の城を進み、何名かを葬りつつ、ほとんど留まることを知らずに街へと出でる。
このブリューゲルという男の本領は暴れ狂うことではない。奇術師と称される程に卓越した器用で神出鬼没な立ち回り。そして凶行を続けながらも押さえ難い、生存本能にある。
「ジェット……ジェットぉぉぉぉぉ!? どこにいますか、ねぇ?? 会いたいですねぇ……次はあなたが、あなたこそがッ――――豚の番はキサマだからなぁぁあ!?!?」
途中で“借りた”軍服が街の中で迷彩となり、これも“借りた”商店の風呂ですっきり、爽やか。ついでに“商品”を物色して……化粧もキチンと、身なりを整えて。鳴らされる時計塔の警告音を背景にパンを頬張る。後はとりあえず……シャナーラ方面の街道、そこを目指すことにした。
それはここ数日、「怪しい余所者が勝手に木こり業を行っている」ともっぱらに噂となっている方角。
【逃亡者ブリューゲル】は借りた“得物”を慣らしながら歩く。雪の降る寒空、季節に合わない寒さに身体を震わせながら。
街の外、森の中へと向かっていった――――――。
第25話 「ワタシはモンスターだ(12)」 END




