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「ワタシはモンスターだ(12)」

「プライグ・シャダール……マグナリアの断人だんじんか。それが何故なぜ、不戦のカースエイドに……?」


「不戦だからこそです。危険な“杖持ち”の方々が不穏に思えましてね……独断専行にて潜伏せんぷくしていたおり、思わぬ発見をいたしまして……」


「発見……それは彼女のことか?」


「いいえ、それは……まぁ、そうとも言っておきましょう。ですが、私が発見した思わぬものは――」


「……ワタシ、か。なるほど、どうやら君は過去を知っているようだな」


「ええ、ぞんじていますよ。そのせつ曾祖父そうそふがお世話になりまして……」


「世話になったというか、世話をされたというか……まぁ、喜ばしいことではなかったな、少なくとも……」


「そうですか……それはともかくとして。あなたは間違いなく、決定的に私が“断じるべき者”です。そのことにがありますか? 100年前……そう、あなたはあの場で終わるべき存在だったのです……そうでしょう?」


「これも女神の導きだとするなら……異論はない。しかし、だからといって享受きょうじゅする気もないがな。それと、100年前……そうだな、まだこの身が人であった頃、確かにワタシは一度“終わった”存在だ。君の先祖に断じられてな……」


「そうです。だが、今こうしてあなたは存在している……それは我が家にとって不名誉なことです」


「不名誉……それは申し訳ない。だが、言っておくと君の先祖は確かに素晴らしい腕前だったよ。あの頃のワタシですら相打ちとするのがやっとだった……今ではとてもかなわないだろうな。だから彼の強さは名誉に思うといい」


「言われずとも……しかし、つまり? あなたは現在、あの頃に比べておとろえていると……そういうことですか?」


「衰えている……まぁ、そうかな。身体がこうなってしまっては……使えないというものもある。逆もまた、しかりではあるが……個人的にはおとったと感じるよ」


「なるほど、そう……ですか。それは残念です……本当に……」


「なに、気にするな。見立てたところだが……十分だと思われる」


「?? 何がでしょうか??」


「いや、これから君はワタシをだんじようとするのだろう? だから、その中で……戦う中でワタシの実力について君が不安を覚える必要はない」


「どういうことですか……言っている意味が解りません」


「なに、そうか。……つまりだな、君とワタシがこれから戦うとして。おそらく君が“物足りない”という事態は起こりえない。単純に過去の彼と比較したいというなら、まぁ参考程度にはなるだろう。君は知りたいのだろう、自分がどれほどのものなのか……彼に近づけているのか?」


「……構えも見ずに随分ずいぶんと言ってくれますね。つまり私ではあなたに敵わないと……そういうことですか?」


「いや、それはどうかな……君は確かに強者つわものだ。それだけの気配を感じるが……今のワタシでも十分な相手にはなるだろう」


「……非正規の医者がですね。ドクター、誤診ごしんをなさってますよ? それを証明してさしあげましょうか。私は曾祖父を超える者……あなたでは相手にもならない!!」


「そうかな? しかし、誤診だとすれば謝るが……あまりそんな気はしないな。君はどうにもそこまでではないような気がする。これから先は知らないが……」


「……ふぅ。いいです、解りました。ドクター……私はあなたをここで断じます。神々の信託しんたくは今、あなたの命運をここでつべきだと……そう告げているに違いありません。どうかお覚悟を――――」


「・・・・・あ、あんのぅ、よっぐわがんねんらけどぉ? あんたぁ、ルイドのお知り合いなんか? んだら……オラぁ、パウロ=スローデンっちゅぅもんだず! ほいでオラさ前までヤットコ村で薪割りさやってたんらけどな? 15才になったなぁって時にいきなしの事でほんにおでれぇたんらけど、あん子が――――」


「 …………。 / ――――。 」






| オレらはモンスター 第三章 ~ 微笑ほほえむ者 ~ |






 昼をひかえた穏やかなる時間帯。街のにぎやかさがかすれて聞こえる。


 街の防壁から少し離れて、森の中。強まりつつある陽射しが枝葉の雲を抜いて腐葉土の黒ずんだ茶色を照らし出していた。


 燕尾えんびの白衣をまとう男【ルイド・カチースキー】。それに相対あいたいするは青髪に清潔せいけつなブレザーがさわやかな青年【プライグ・シャダール】。


 10m程の距離を保ちつつ、2人は“同じ存在”を見ていた。それはルイドの隣に立っており、ヘコヘコと腰を曲げて間合いの対岸にあるプライグへと会釈えしゃくを繰り返している。


「――――ってなわけでな、ここで特訓さしてたんだわ。しっかす、いんやぁ~~! なんっか昔話さしてったんけ? らっけ、お2人は幼馴染おさななじみかなんかだか??」


 はたから見ても普通は「なんか緊張してるかな?」と察することができる状況ではあった。相対する2人の男はそういった空気をかもし出していたのだが……【パウロ少年】には伝わらなかったらしい。どうやら彼はそこに奇妙な“馴染み”のような感覚を覚えてしまったようだ。


「いや、パウロ……彼とワタシは別に幼馴染というわけではない」


「んだら、仕事仲間だか? なんかすっげ几帳面きちょうめんな服さ着てっけよぉ、えらいハイカラなんね~?」


「……パウロ、少し下がっていなさい。ここはワタシがやらねばならない……それも、1対1でだ」


「あり、お邪魔さすてしまっただか? そら、いけねっけオラは一足先に街ん中――」


 言い始めてから行動が早い。さっさと駆け出そうとしたパウロの体躯たいくをドクター・ルイドは片手で制した。


 ドクターはその無機質なまなこを向けて少年に語り掛ける。


「それは駄目だ。パウロ……これから起きることを、よく見ておくといい……」


「ほ?? なんね、なんかあんのか??」


「……技能の伝達というものは聞かせてやるよりも、“やってみせる”ことが肝要かんようである。よって君は、これからまばたきもしんでじっくりと“見る”べきだ……」


「ほぇ~~~……何言ってんだルイド。オラはまたまた、まるっきりわがんねけど……」


「…………ならば、簡略かんりゃくべよう。“そこのしげみに身を隠し、決して動かずワタシと彼の動きを凝視ぎょうししなさい”――解ったか?」


「おぉ、それならわがっぺ!! なんね、最初っからそうして解りやすく言ってくりぇりぇば良いんよ?」


「・・・・・。」


 本当にルイドが伝えたいことはまるで伝わっていない。だが、それも“見れば解る”と割り切ってドクターは指示を出した。


 素直なパウロは言われた通りに茂みの中にひそみ、野生の狼が獲物えものねらうかのような気配遮断をもちいつつ、2人の男を交互に凝視した。……正直、この場面でそのような野生の技能は用いなくともよいのだが。


「……うふっふ、ふふふふ」


 少年とドクターの一部始終を観察していたプライグはこらえ切れずに笑っている。ドクター・ルイドは少々照れ臭そうに溜息ためいきいた。


「……度々、申し訳ないな。この少年は部外者……いや、君が“あの子”にも目を付けたというのならば、関係はあるか……」


 ガシャッ……と、金属の重厚な鞄が白衣の肩から降ろされた。ルイドは丁寧ていねいにそれを地面に置き、身を対面からはすに向けて正中線を隠す。


「いえ、構いませんよ。例え後にその少年と事を構える可能性があるとしても……問題ありません。無礼を承知に、こうしていどみかかっているのは私なのですから……」


 「パチパチッ」と火花が生じた。それはプライグの手元ではじけながら、彼に熱さを感じさせることもない。


 不思議な火花――もしくは電流のような青白い光である。


「……初手は同じか。それが一番の得意であるならば、やはり血筋なのだろう……」


 ルイドはだらりとしている左腕をかばうように、右半身を対面に向けている。


 対面している青年はつい数秒前まで何も手にしてはいなかった。しかし現在、彼はその両腕でしっかりと“長いつか”を支えている。


「重荷はろせたようですね――賢明です。我が刃はそのようなかばんなど容易たやすく……例えあなたの身体であっても、真っ二つにすることを可能としています」


 微笑ほほえみのプライグは“透明青クリアブルーの大鎌”をくるり、一周回してみせた。


「さて、お手合わせ願いましょうか。そして、どうかあなたの永遠なる眠りに安らぎを……異端なる者、人形ドール医師ドクターよ……」


 青年は微笑みの仮面を取り去った。紳士の衣を振り払うように清潔なブレザーを脱ぎ去り、ワイシャツ姿をあらわとする。


だんじる者、プライグ・シャダール……曽祖父の残影をここに越えるべく、創輝そうきくします!!」


 気を吐き出すように強く言い放つ“断じる者”。それは大鎌を下げて腐葉土を切りきながら、湾曲わんきょくした軌道きどうで森の静寂せいじゃくを駆け抜けた。


 大鎌の状な刃が虚空こくうを裂く。裂かれた空気の隙間すきまくぐり、白衣の影が前転の最中さなかに蹴り脚を高々と突き上げた。


 大鎌を振るった断じる者は同時にフワリと宙を舞い、距離を置いている。彼がつい半秒前まで存在した空間に「ゴウッ」と力強い蹴り脚が伸びている。


 大鎌を振るう動作は“回転”である。ぐるりと身体を回して、刃を振り抜く。そこに生じた遠心力を無駄にせず、次の動作につなげていく。断じる者は着地と同時に次の“回転”を生み出していた。


「……つまり、慣性かんせいを利用することは望ましい。制限をかせることは力を余分に使用することでもある。そのプロセスを省略して次の動作に繋げることは決して間違いではない……が」


 慣性のような力を用いる場合、それは「力の方角が定まっている」ことを意味する。例えば回転を利用するならば回転の向きは予測されてしまう。


 今現在。断じる者が振るった大鎌の刃が白衣の男によって“掴まれている”のはその軌道きどうが予測されていた結果と言えよう。右か左かが解れば、それくらいはドクターにとって容易たやすいものだ。


「なるほど、創輝そうきか……しかし」


 そして、その刃が――“消えた”。確かに掴んでいたはずの刃は「パチパチッ」と音を残して、虫食いのように次第と消えてしまった。


「そして“これも”――よく斬れます!」


 断じる者の“両刃剣”が素早く突き出される。


「…………悪いが、それも想定できている」


 その刃は白衣をわずかに裂いたが、同時に長いそでを揺らした“掌底しょうてい”が青年の顔面へとせまった。


「――ッぐ!? ……まだまだっ、まだありますよ!!」


 白衣の男が放った掌底が「ガウゥゥン」と、金属同士がカチ当ったかのような重低音をかなでる。衝撃によって突き飛ばされた青年は頭部を護っている“かぶと”越しに感じた威力をシビレとして実感していた。


 これも虫食いのごとく消えて行く兜。視界良好となる瞳孔どうこうには、迫りくる白衣の姿が映し出される。


「これは“響かない”から、気を付けたまえ……」


「油断ですよ。その油断こそが……あなたの甘さだ、ドクター!!!」


 痛烈な打撃音であった。白衣の男が放った拳の一撃は構えられた“大型の盾”によってさえぎられたものの、盾そのものは真ん中からくだけてしまった。


 砕けた欠片ごと、大型の盾は次第に虚空こくうへと消えてゆく。その後ろに姿を隠していた断じる者は下手したてで構えた投擲とうてき動作モーションを作り、“3本の直剣”を器用に指ではさんで勢いをつけている。


 下手から彼の腕が振り上げられると3本の直剣は直線軌道に宙へと解き放たれた。


 放たれた剣の3連撃。白衣の男は文字通り一蹴してそれらを蹴散らすと右腕を用いてその内の1本をつかむ。掴んだそれを投げ返そうとしたのだが……やはり、あっと言う間に直剣は虚空へとき消えてしまう。


「……っと、上手くはいかないか」


「我が術を甘く見ないで頂きたいッ!!」


「――――おっ!?」


 間一髪かんいっぱつであった。ある程度開いた距離があったのだが……踏み込んで振るわれた“大鎌の刃”は危うく白衣の男を横に両断するところであった。なんとか回避に成功したドクターだが、断じる者の攻撃はそれで終わりではない。


 断じる者は遠心力に身を任せ、さらなる加速を加えて大鎌の一撃を繰り出す。そう、同じ向きの回転によって……。


「甘く見ているのはそちらだ。同じ手を、それも見破られた技術を繰り返すなど……それがその証左として――」


 白衣の男は大ぶりな攻撃に合わせて踏み込み、つかの部分を右腕で受け止め、同時にひざをカチ上げて大鎌をへし折った。そして直後に身体を回し、後ろに強く蹴りを放つ。反動によってだらりと、左腕が揺らぐ。


「だから……その油断が気に入らないと申し上げたはずッ!!!」


「うっ…………!?」


 確かに油断があった。より正しく言い表せば、“見せつけてやろう”という感情があったのかもしれない。大げさな動作を連続しすぎたのである。


 全てを読み切っていた断じる者は大鎌をとっくの前に手放して後ろに跳んでいたらしい。距離を開いて返されるであろう一撃をやり過ごし、“引きしぼった弓の一矢”を食らわせてやろうと画策かくさくしていた。


 熱を上げてを繰り返したと錯覚さっかくさせ、おびき出した“すき”。そこに穿うがたれた矢の一本は鋭く空を切り、“だらりとした白衣の左腕”をつらぬいた。


 透明青クリアブルーの一矢に射抜かれた白衣の左腕からは電流がはしり、開かれた穴から火花が飛び散っている。それは断じる者がしばしば生じるものとは異なり、明確に熱い“本物の火花”だ。


「……しまったな、穴が開いては貴重な外皮が――」


「――――なるほど。片腕遊びにきょうじていたわけではなく……“使えなかった”のですか。これは失礼しました……そして、残念です」


 明らかにねらわれたにも関わらず、だらりとして無力だった有様。それを見て取った断じる者は相手が“手負い”であることを理解して強い無念むねんを覚えた。


 断じる者――聖圏の暗殺者たるプライグ・シャダールがもちいる技術。それは霊術れいじゅつと呼ばれる魔術とは異なる術理じゅつりをもとにした技法であり、遠く離れた自身の聖域から主に武器などの金属を“召喚しょうかん”する技である。青白い光は武器召喚による霊力拡散が生じた発光現象だ。古くはこれにより、彼らは“創輝”を名乗るようになったと伝えられる。


 対してドクター・ルイドは武術を用いた。それは様々に複合された技の集合体であるのだが……主には収空拳しゅうくうけんという技法をじくとしている。これは彼がまだ“生身”であった古い時代にとある導士どうしから学んだものらしい。元来がんらいは健康法らしいので身体にも良い。



 ・・・・・と、これまでの一連にあった応酬おうしゅう。技と技、力と力、知と知が入り乱れる未知なる攻防を言いつけの通りに“見ていた”者がある。


 パウロ少年だ。彼は茂みにひそみながら、無駄に気配を完全に消し去って2人の戦いを観察していた。呆然ぼうぜんと開かれた口から「なんね、こりぇは……」と言葉がこぼれ落ちていく。


 まるで理解の範疇はんちゅうを超えたものであった。パウロは呆然としながらも素直に言われたまま、あらゆる動作を7.2の視力と優れた動体視力によって目線で追いかけていた。


 彼は初めてこのような戦いを目にする。気絶もせず、まともに知覚できたのはこれが最初だった。


 そして素直なパウロは学習を行っていた。目に見えるもの全てを、師が言いつけた通りに自分なりの解釈で取り込んでいたのである。


 彼の拳が……ただ見ているだけの少年が自分の拳を熱く感じる理由。それは集中をもって学習に取り組んでいる証であろう。



 そんな少年の視線はともかくとして……森の静寂せいじゃくを乱して争う2人は一時的にをおいていた。


 片や貫かれた左腕と貫いた相手に敬意をもって。片や発覚した事実とこれまでの攻防を振り返り……口惜くやしさに歯噛はがみして。


 ドクター・ルイドは追跡者に向けて「やるな……だが、やはりまだ遠い」と自分のこめかみを指差してみせた。


 断じる者、プライグ・シャダールはそれを受けて「私を測るのはまだ早いです」と、さらなる激しさでバチバチと火花のまがい物を炸裂さくれつさせ始める。


 それらを見ているパウロはただ、何も言わずに息をむ。


 呑んでそして・・・・・そして“むせた”。


 なぜ少年は突然と咽たのであろうか? こんな緊迫した状況にあって、“別に何かを見た”らしい少年は一体、何故……。




「・・・・・んなっ・・・・・ンなにをしているのよ、あなた方ッッッ!?!?!?」






|オレらはモンスター!!|







 カースエイドの風紀は何よりも騒乱を嫌う。それは過去に負ったえない傷が今も、街の人々に深く刻まれているからであろう。


 争いを無くすにはどうすればよいのか? それは第一に予防である。つまりは争いの種となりそうなモノを早期に発見・警戒し、場合によっては排除はいじょすべしということだ。その強い警戒心があるからこそ、時として部外者に対するアレルギー反応をおこすこともある。そうでなくとも表立って笑いつつ、積極的な関与は好まない気風が存在しているのは確かだ。


 そういった考えは悪いことではないだろう。平和と秩序を護ろうという、人々の知恵が折り重なって街は独自の風に吹かれる。時折その風がてつく冷たいことがあっても仕方ない。


 そして彼らは執念しゅうねん深く、執拗しつようである。この街に生まれた人が受けた傷は、決して忘れない。



 ……一年ほど前、この街をある悲劇が襲った。


 灰色の残環ざんかん付近で開かれていた市場マーケット生憎あいにくの若干な雨模様にも露店ろてん盛況せいきょうで、家族連れを中心とした市民の交流や物品のやり取りが盛んに行われていた。


 何の前ぶりもなかったらしい。正午しょうごを前にしたある時、突如とつじょとして悲鳴が上がり、人々は逃げまどい始めた。


 盗賊の襲撃である。街になだれ込んだ盗賊の集団がマーケットに集っていた人々を襲っていた。荒くれの者達は血眼ちまなこの様子で我先にと強奪・暴行の限りを尽くし、警備軍が到着した時にはすでに、広い範囲の石畳が血で黒く湿っていたという。


 雨天の悲劇に警備軍が混じり、混乱の中で数十分……ようやくに事態は収まった。


 負傷者は数十名にのぼり、死者も出た。強盗による被害も総額を把握はあくするのにすらかなり時間をようしたほどである。


 盗賊共もいくらか捕縛ほばくされたり、争いの中で死んだりした。捕縛した盗賊を尋問じんもんすると「やるしかなかったんだ」と誰もがおびえた表情で答えたらしい。それも、かなりの苦痛を経てようやく話すものがほとんどだった。


 彼らは数日前に集められた即興そっきょうの集団だったらしいが、その割には規模が大きく、また、どうして彼らがやすやすとこのカースエイドになだれ込めたのか疑問が残った。


 灰色の残環には警備もあるし、相手の多さから襲われて突破されるにしても、それだけで騒ぎとなって時計塔の鐘から調べが鳴っていたはずだ。尋問により、その理由は「ボスがやってくれた。詳しくはしらない」と、何人かが答えたらしい。


 ……実は事件の同日、同時刻。もう1つの事件が発生していた。


 それは騒ぎとなったマーケットから少し離れた一軒での出来事であり、カースエイドでも名の知れた資産家の家族が犠牲になったという強盗・殺人事件である。一家5人の内、長女だけが暴行被害のみで生き残った。


 生き残った長女いわく……。犯人は全身を白の衣装で包み、フードを被っていて表情も曖昧あいまいなものだったらしい。しかし、暴行の最中に見た顔には薄く化粧がほどこしてあったらしく、体系としては細身の男性だったという。


 薄化粧の男は細長い……おそらく鞭と思われる物を凶器として用いた。遺体の状況から、相手によって頸椎けいついを破壊する即死か、無数の打撃によるショック死かを使い分けていたらしい。その男は笑っていたかと思えば怒り狂ったりと、情緒じょうちょが非常に不安定だったという。



 ……情報をまとめると。凄惨せいさんな一家惨殺事件の犯人像と、マーケットを襲った盗賊共が話す「まとめ役」の姿は一致していることが判明した。以来、カースエイド警備軍は捜査を続け、犯人を断定。



 その男の名は――――――。






第24話 「ワタシはモンスターだ(11)」 END






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