「オレらはモンスター!!」
この世界には大きく分けて2つの勢力が存在する。
帝域、それは神を忘れた人々が住まう国。
聖圏、それは神を信じる人々が住まう国。
偉大なる祖竜の導きか、不憫なる女神の加護か……?
違いはそのどちらかということだ。争いはその違いが根幹となって続いている。そしてそれはもう何百年も解決していないし、これからも解決させてもらえないだろう。
意志ある争いによって波打つ秩序、競うように発展する文明。
そこに近年、新たなる争いの“火種”となるものが生じた。
それは神の呪いか、竜の加護か……?
――――心に怪物を飼う『女』、それは【装怪者】と呼ばれる。
――――怪物を受け取る『男』、それは【拠り人】と呼ばれる。
魔術でも魔法でも、霊術でも奇跡でも、技術でも科学でも解せないナニカ……。それを畏れて糾弾するか、調べて懐柔するかは“価値観”の違い。
未知なる“怪異”を巡って動く2つの文明圏。水面下で繰り広げられる中立地の策謀……。
そして、そうしたここまでの一切合切に……まるで無関係な【少年】。
山奥の“ヤットコ村”と呼ばれるのどかな地域。そこで自然と戯れながらスクスクと、いや“ムキムキ”と育った筋肉質かつ高身長で純朴純粋な少年。
それは今日も熊と取っ組みあい、遊び半分で組み伏せて笑い合う……そんなのんきな少年だ。ちょっと体力が異常な感じではあるが、精神的にも概ねは普通で平凡な少年。とてもではないが帝域がどうだの聖圏がどうしたと、そうしたことには関わりそうにない少年である。
15歳の誕生日――その日もきっと平凡なはずだった。平凡な誕生日を重ねて、やがては老いて孫たちにでも囲まれて山奥の故郷で平穏な永遠の眠りにつく……はずだった少年の運命。
平和であるはずの運命は何によって崩されたのだろう。運命の歯車は何らかによって急な加速を得て、火花を散らすような高速回転を始める。
森林を駆ける少女――零れた涙が乾かぬ少女。
もしも、その日その場所に――
少女が“逃げ込んで”こなければ、きっと少年の運命は平和で平穏で平凡だった。
想像もしなかっただろう、するはずもなかっただろう……。
まさか自分が最終的に――
『鱗の異形へと姿を変えて棘だらけの身体で翼を広げて青白い炎を纏いながら成層圏よりずいぶんと高い光り輝く女性へと音より速い速度で空を駆けて突撃を決行することになる』
――などと。
そんな未来、予想できるわけがないのである。
Title→「オレらはモンスター!!」