プロローグ
これは、「合わない」二人の物語。
僕はいつまでも過去へ戻り、彼女はいつでも未来を求める。
意見が合う事のない二人を、今もつなぐ鎖の名は罪償いという。
それは、驚くほどに自然なことだった。
武富湯澤は屋上の冷たい手すりに後ろ向きに腰掛け、こちらを向いた。
「あなたたちといたら、なんだか世界のこと全てわかったような気がしたの。だからもういいんだよ」
武富湯澤は虚ろな目でこちらを見て、そのまま後ろに体重をかけて落ちていった。
まるで風に吹かれて木の葉が落ちるように、花びらが散るように、
それはひどく儚く、自然なものだった。
僕らは手すりに駆け寄ろうとはしなかった。もうわかっていたからだ。
武富湯澤はそこで崩れた。
完全と不完全の狭間で生きる事に耐えられなくなったのだ。
彼女も、所詮はただの人間だった。
僕らはそのまま、静かな屋上で沈みかけの夕日に照らされていた。
彼女の声が、耳の奥で響いていた。
それ以来、彼女はいつも僕の夢の中。あの日と同じ、真っ黒いセーラー服に、真っ黒いまっすぐな髪に、やけにタイだけがまぶしいくらいに真っ白な、あの日と同じ笑顔で僕を見る。
はじめまして、airfish[エア-フィッシュ]という者です。
小説を投稿するのは今作品が初めてです。
どうか温かい目でご閲覧ください。