世界の私
自分の特技に気づいたのは小学生のとき。
使いこなせるようになったのは高校生のとき。
現在大学生の私は、゛違う世界の私゛と意識を共有できるらしい。
私の住んでいるところは、東京で、面白みもない学園ものだけれど、
他の世界にはいろいろなものがあった。
剣と魔法で世界を救う、なんてのもあったし
(もちろん私は村人Kくらいだったけど)
超能力で満たされた都市もあり、
(もちろん私はそんな力備わってなかった)
変な生命体がたむろしていたお店があったり
(入ることさえ叶わないものだった)
暴力で支配された世界もあった。
(意識を共有した二週間後にその世界の私は死んだ)
八年特技と付き合って、分かったことがある。
世の中はそこまで面白みがない、ということだ。
世界が変わっても立ち回りはあまり変わらず。
地味な脇役ポジションで。
主人公を眺めることも、かなわずに。
がんばれば、多少結果は変わるが、
それでいいと思ったし、いい年だったからもうあきらめていた。
正直、飽きてきたのだ。
この特技にも欠点というものが存在する。
それが゛違う世界の私゛の立場を少々危うくするものだったのだ。
「記憶を共有できない」
その世界の私の特技の欠点。
世界によってはこれっぽちのことでも命にかかわる。
ある世界ではある決断を迫られ、
選択を少々ミスって、命を落とした。
違う人が死んだときもあるし。
ココで私が何しても、アッチには響かない。
私に直接の関係があるわけでもないが、
(核が生きてる限り、私という存在は消えないものだから)
後味が悪いというのも事実。
だから。
私はこの力を使わないことにした。
昨日決めた。
それからは普通の大学生という事で生活をしているのだ。
いつものとおりの起床は、少し久々だったが。
この世界の友達と返るのも本当に久々だ。
信号が変わるのを待ちながら話す。
本当に久々。
「ひさしりだよね、一緒に帰るの」
『そうだね』
「本当に待ってたんだからね」
トン、
肩が押された。
押したのは友人。
私は車に引かれて。
゛この世界の私゛は死んだ。
かくとなるわたしが。
「本当に、まっていたんだから」
ネタバレを。簡単ですけど・・・
主は違う世界に行った時間ぴったりに戻ってこれるという設定。
主にとっては友人は久々かもしれない。
でも友人にとっては?
時間は行ったときに戻ってくるので、友人にとってはいつもどおり主に会ったはず
なのに・・・。「久しぶり」
この世界でも主人公と同じようなことができる人がいたっておかしくない。
友人は主に違う世界で知人(家族か、友達)を殺されていて主を恨む。
能力を持っている友人は核となる主を探し、主を殺した。