秘密の特訓とFカップの刺客たち
「やったわね、ハルト!」
「あはは……まだ偶然の爆発だけどね……」
Aカップ対抗戦での初勝利から数日。僕とティアは、連携の強化のために、放課後の訓練場で自主練を重ねていた。
ティアは火属性の中でも“高圧縮火球”の練習に取り組んでいて、僕は相変わらずエレメント操作の基礎からやり直し中。
(エレメントを感じて、力を“均等に”流す……焦っちゃダメ、力まず、丁寧に……)
「ふぬぬぬぬぬぬッ!」
ボンッ!!
またしても小規模な爆発。
「またか!」
「……あんたの魔法、やっぱり爆発系なんじゃない?」
「いや違うんだって! むしろ“制御できてない”だけなんだよ!」
苦笑いを浮かべながら、僕は焦げた袖をぱんぱんと叩いた。
ティアは少し呆れたように僕を見ながらも、以前のような完全拒絶の雰囲気はもう無かった。
「……でもまぁ、あんた、意外と努力家なのね」
「えっ、それ褒めてる?」
「少しだけ」
ティアがポツリと言ったその時──
「ふふん。なーんか微笑ましいわねえ、Aカップペアさん?」
訓練場の入り口に、ふたりの女子生徒が現れた。どちらもスタイル抜群。おまけに、揃いの制服の胸元が……明らかに他のカップとはレベルが違う。まさに「Fカップ」。
「あ、あれって……」
ティアが顔をしかめる。
「Fカップの上位ペア、“リナ&メル”よ。去年の演習でA~Dカップを全滅させたって噂の……!」
「な、なんだって……!」
リナは金髪ロングでクールな眼差し、メルは銀髪ショートの快活タイプ。どちらも一目で分かる実力者のオーラをまとっている。
「次の演習で、ウチらが相手するみたいだから──ちょっと様子見に来ただけ。まぁせいぜい仲良く爆発してなさい?」
「ふん、あんたたちなんかに負けないんだから!」
ティアが強気に睨み返すが、僕は内心(ちょっと無理かも)と思っていた。
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その日の夜、寮の部屋。
「……なによその顔」
「いや……ほんとに勝てるのかなぁって」
ティアはベッドに寝転びながら、真剣な顔で天井を見つめていた。
「たぶん、実力だけでいえばあっちの方が上。でも……私たちには“連携”がある。あんたが暴発ばっかじゃなきゃ、チャンスはあると思ってる」
「……ごめん。もっとちゃんと魔法使えるように頑張るよ」
僕は机の上の教本を見つめる。魔力の操作、エレメントの理解、呪文の詠唱。
それを1から詰め込むのは、簡単じゃない。でも、今まで逃げてた僕が初めて真剣に努力している。それだけは──自信を持てる気がしてた。
「そうだ。明日、特訓付き合ってあげるわよ。……たまには、私が主導でやってもいいでしょ?」
「えっ、いいの?」
「べ、別にアンタのためとかじゃないし! 負けたらあたしの評価も下がるからよ! 勘違いしないで!」
「はいはい、ありがとうツンデレ先生」
「うっさい!! 変態!!」
バコッ。
今日もティアの拳は鋭かった。