初めての共同課題! カップ対抗戦、開幕!
「ようやくコツを掴んできた、ってとこか……」
昼休みの訓練場。僕は両手を前に突き出して、掌の上でゆらゆらと火花を踊らせていた。
もちろん、まだ火球にするには不安定すぎる。だけど──最初の頃、まともにエレメントを形成できなかった自分と比べれば、随分と成長したと思う。
ふと、背後からの視線を感じる。
「ふーん……ちょっとはマシになってきたじゃない」
ツンとした声。赤髪ツインテールが風になびく。ティアだった。
「一カ月前とは雲泥の差ね。……まあ、あくまで“マシ”程度だけど」
「そ、そっか……ありがと」
不器用な言葉だけど、それでも褒めてくれてる。彼女なりに、僕の努力を見ていてくれたのかもしれない。
---
放課後。教室にて、教師から課題が発表された。
「明日より三日間、カップ対抗の初級魔法演習を実施する」
教師の声に教室中がざわつく。
「今回の演習で優秀な成績を収めたペアは、評価により上位カップへと昇格できる可能性がある。AカップからBカップへの昇級も例外ではない」
「マジかよ!」「これはチャンスじゃん!」
歓声が上がる中、ティアと僕は顔を見合わせた。
「やるしかないね」
「……ま、足引っ張ったら承知しないから」
「わ、わかってるって」
---
その日の夕方。演習前の顔合わせとして、ライバルとなるペアたちが全員呼び集められた。
「Dカップの精鋭ペア。女神の右腕・左腕って呼ばれてるんだってさ……」
「えっ、なんか中二っぽい」
Dカップからは、長身のイケメン男子エリオと、クール系美少女セラが登場。二人とも無駄のない所作で、並んで立つだけで絵になっていた。
さらに──
「Eカップの爆裂双子、通称・デュアルボマー!」
「えっ、こっちはなんか派手っ!!」
二人組の女の子は金髪ポニテと黒髪ショートの姉妹ペア。登場から派手に爆炎魔法を打ち上げて騒ぎ立てる。
「はあ……こんな連中と戦うの……?」
ティアがげんなりした表情でつぶやく。
「でも……やってみる価値はあるよ。Aカップってだけでバカにされるのは、もううんざりだ」
そう口にした僕を、ティアが意外そうな目で見た。
「……あんたにしては、珍しく真面目ね」
「え、僕って普段そんなに不真面目?」
「……八割変態、二割アホ」
「酷くない!?」
ぷいっと横を向いたティアの口元が、わずかに緩んでいた。
---
夜の寮部屋。
明日からの対抗戦に向けて、少しでもイメージトレーニングをしておこうと、ベッドに座ったままエレメントを練る。
「……もう寝なさいよ、魔力が尽きるわよ?」
ティアがパジャマ姿でこちらを見て言う。
「……魔力、無限じゃなかったっぽいからな。少しずつ鍛えないと」
「ふん。……最初の頃と比べたら、だいぶマシになったと思うわよ」
ティアが背中を向ける。そして、小さな声でぽつり。
「……少しくらいは、認めてあげる」
「えっ?」
「なんでもない!おやすみ!」
バサッとベッドに潜り込んでしまうティア。
(……あのツンデレ具合、相変わらずだな)
でも、少しだけ心が温かくなった。
---
次の日の朝。
訓練場にはすでに、各カップのペアたちが集まっていた。
その中で──
「さあ、始めようじゃないか。カップ対抗・魔法演習、開幕だ!」
教師の号令と共に、戦いの幕が上がる。
ティアと僕は並んで、目の前の敵ペアを見据える。
「ハルト……行くわよ!」
「おう、任せとけ!」
初めて、並んで戦える気がした。