寮生活と学園の授業開始
「はあ……最悪」
入学初日、僕とティアの共同生活が始まった。
僕らの割り当てられた部屋は、Aカップ(階級)用の学生寮の一角。二人部屋で、ベッドと机が一つずつ並んでいるだけのシンプルな作りだ。
ティアは真っ赤なツインテールを揺らしながら、無言で荷物を片付けている。胸は控えめで、まさにAカップ。それがカップ制度と相まって、僕の妄想が微妙に刺激された。
(いや、こんな子と共同生活……普通はテンション上がるはずだろ……でも、なんでこんなにピリピリしてるんだ……)
「何、ニヤついてんのよ」
「えっ、い、いや!別に!」
(しまった、顔に出てたか)
入学早々、ティアからの印象は最悪になってしまった。
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翌朝。学園生活の初日。
最初の授業は、学園の中庭にある実技用のフィールドで行われた。
「魔法基礎の授業を始めまーす!」
担当は、おっとりとした声の優しい女性教師、レーナ先生。医療魔法に長けており、生徒の間でも密かに人気があるらしい。
「まずは《エレメント操作》。魔力を集中させ、手のひらに火花を灯してみましょう」
「ふん、これくらい朝飯前ね」
ティアがすっと前に出る。小さな手のひらを掲げ、魔力を練ると──
パチンッ、と赤い火花が舞った。彼女は火の魔法適性があるのだろうか。火花は形を保ち、ふわりと空中で浮かんだまま消えた。
「おぉ……!」
思わず拍手しそうになるのを我慢して、僕も見よう見まねで魔力を練る。
(よし、集中だ。魔力量は普通にあるって昨日の試験でわかった。ならあとは……)
手を前に出し、魔力を込める。──けど。
「うっ……!」
魔法式のイメージが上手く描けない。練った魔力が制御できず、ぐらついた力が暴走を始める。
パチンッ!
次の瞬間、僕の手のひらから暴発した火花が、一直線にティアの服へと飛んだ。
「きゃあっ!?」
シュウゥッ……
布地の一部が焦げ、制服の肩口が破ける。露わになった白い肩と、ブラ紐がちらりと見えた。
「えっ、ご、ごめ──」
「……今、アンタ……どこ見てた?」
「ち、ちが……」
言い訳の途中で、ティアの拳が振り抜かれた。
「この、変態ッ!!」
ドゴォッ!!
僕の身体はグラウンドの地面に叩きつけられる。
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午後の座学。痛む頬を押さえながら、僕は必死でノートを取り続けた。
(くそぅ……完全に印象最悪だ)
火魔法の才能もあって、要領もいいティアに対し、僕は魔法すらまともに扱えない。
それでも、魔法という新しい力の世界にワクワクしていた。魔力量は普通にある。なら、あとは努力だ。
そして──あのチート能力「精力無限大」がいつか役に立つ日も来る……たぶん。
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その夜。寮の部屋。
「……アンタ、さっきのアレ、わざとじゃないでしょうね」
「ち、ちがうってば……!」
「……もしまた変な目で見たら、次は火球だから」
「うぅ……」
枕を抱えて縮こまりながら、僕は心に誓った。
(……いつか、絶対見返してやる)
こうして、僕のギスギス寮生活と魔法学園の日々が本格的に始まったのだった。