表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/41

性質変化って、マジで変化球

午後の実技演習――

Dカップクラスの生徒たちは、魔法実習棟の第3演習室に集められていた。


部屋の奥には、黒板ではなく魔力反応を映す水晶パネルが設置されており、中央には標的用のダミーゴーレムが数体。緊張感を漂わせる中、僕たちは整列して立っていた。


「Yo! 待たせたな、未来のトップ魔導士たちィ!」


ドアを開けて入ってきたのは――


「オレが今日のお前らの実技担当――“シャイン先生”だッ!」


片側だけ刈り上げたドレッドヘアに、だぼだぼのジャージ。胸元のゴールドチェーンがゆらゆら揺れている。何より、その喋り方が妙に軽い。


「え……先生、なんですよね?」


「そこに食いつくなよティーチャーへのリスペクトを忘れんなYO? 見た目じゃねぇ、中身で語るのが魔導の流儀ってやつさ!」


「…………」


「なんだよその顔! 先生にだってスタイルってもんがあるんだぜ?」


思わず生徒たちが顔を見合わせていると、シャイン先生はにやりと笑った。


「見た目でナメるとケガするぜ。――さて、今日は“性質変化”の基礎。火なら熱、雷なら電流、風なら圧力って具合に、自分の属性を『どう扱うか』がキモってわけだ」


パネルに魔法陣を浮かべながら、先生は続ける。


「魔法は“属性”だけじゃなく、“性質”で勝負する時代。雷属性っつっても、ビリビリさせるだけじゃねぇ。破壊、麻痺、加速、帯電……使い道は無限大ってワケだな!」


その言葉に、リサがすっと目を細めた。


「……なるほど。“属性の幅”を知るってことね」


「お、そこのお嬢、なかなか見込みあるじゃん。よし、最初のデモンストレーション、ユーに任せるぜ?」


リサは小さくうなずくと、前に出た。


静かに手をかざし、雷の魔法を発動。バチリと音を立てて迸る電光が、空中で一度収束し、やがて細い針状に変化して標的を正確に貫いた。


「……制御型、貫通雷パーシング・ボルト。威力よりも精度重視」


「おおぉ、見事な“性質変化”! ただの雷を、貫通特化にしてるじゃねぇか!」


生徒たちがどよめく中、シャイン先生はサムズアップで笑う。


「こーゆーのが“応用力”ってやつよ! 単に力任せにぶっ放すだけが魔法じゃねぇ!」


続いてティアが手を上げる。


「……じゃあ私もやってみるわ」


彼女は炎属性。


火球を生み出したかと思えば、それを渦状に変化させ、スピンを加えて放つ。標的に命中した瞬間、火の塊は爆ぜることなく“燃焼の霧”となって広がった。


「……拡散型の性質変化。小規模範囲に持続的な熱を残すタイプ」


「ハハッ、イイねぇ~! お前ら、やるじゃん!」


先生が嬉しそうに手を叩き、生徒たちの士気も自然と高まっていく。


「じゃあ次! 我こそはってやつ、いるかぁ?」


「はーいっ!」


元気よく手を挙げたのは、もちろんユーニ。


「風属性で、いきまーす!」


両手を広げて構えると、風が渦巻き始めた。


だが――


「ユーニ、それ……巻き込まれてない?」


「えっ? きゃっ――わあああああっ!」


突風が逆方向に暴発し、彼女は宙に舞い、後方のハルトにドーンと激突。


「うぐっ……ユ、ユーニさん、顔が……すごく近いです……!」


「えへへ、ごめーん☆」


シャイン先生が大笑いしながら叫ぶ。


「ダイナミックな失敗も経験のうちだぜ! でもよー、少しはコントロールも考えような~!」


サナが顔を赤らめながら、ユーニを引きはがす。


「……も、もう……ハルトくんの顔の上に乗っちゃって……」


「え? 何が? え、乗ってた?」


「気づいてなかったの……!?」


ポカンとしたユーニの表情に驚くサナ。僕はドギマギしながら、ユーニの柔らかいお尻のことで、頭がいっぱいだった。


そんな騒動の横で、シャイン先生が言った。


「Oh、少年!それじゃ次はオマエがやってみYo!」


なんか愉快な先生だな。


僕は切り替えて立ち上がり、魔法を展開しようと両手を前に出した。


性質変化……。僕は前にもやったことがあるはず。おそらく、トーナメントで出したあの魔法。


キールとトーナメント戦で対決した時のことを思い出しつつ、サナを見やる。


「…………」


たまたまサナの隣にいたティアからなぜか無言の圧力を感じる。


あの時の魔法、あれと同じものを出したら授業後に僕の命は無い……!


必死に別のイメージを思い浮かべ、僕はシールド魔法を展開させた。


「……Oh、少年。……それはサプライズがすぎるぜ」


僕の前に現れたシールド魔法を見た生徒一同が沈黙。シャイン先生も絶句していた。


「……お、お尻じゃん」


生徒の1人が沈黙を破ると、一斉に笑いと罵声が飛んできていた。


僕の前にあるのは、スリムながらもぷっくらとした女性のお尻のような形をしたシールド魔法(性質変化後)があった。


僕は真顔で触ってみると……うん、たしかに柔らかい。これはまるで、さっきのーーー、


「ハルトのエッチーッ!」


ぱぁん!


一発、平手打ちが決まり、顔がくるりと反転するような衝撃が決まった。


「うわっ……ぐはっ……!? ぼ、僕の性質変化は……保護緩衝型、の予定だったのに……」


顔を真っ赤にして、すこし涙目になっているユーニ。その後ろで、シャイン先生が爆笑していた。


「ハハッ、サイコーだぜお前! 今の魔法、完全に性質を別モンにしちまってたな!」


「いやいや、違う意味で誤解されてる気が……!」


「いいんだよ! オレはそういうトチ狂った発想、嫌いじゃねぇ。クールな男だぜ、ハルト、お前」


「……褒めてます? それ?」


* * * 


こうして午後の実技演習は、笑いと熱気に包まれて進行していった。


教師のキャラは濃い。でも、伝えるべきことはブレていない。


「お前ら、魔法は“変化”してナンボ。型にハマるなよ? 自分の“色”を信じな!」


放課後の鐘が鳴るころ――


シャイン先生のその言葉が、教室にしっかりと刻まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ