Dカップクラス、始まりの昼下がり
春の陽光が、開け放たれた窓から差し込んでいる。
ここは、Dカップクラス専用の教室――僕たちが進級してきた、少しだけレベルの高い世界。
「……広っ」
入室初日こそそう呟いたものだけど、数日もすれば不思議と慣れてしまうものだ。
床は磨き上げられ、机は一人ひとりがゆったり使える広さ。魔法理論の資料や実習用の魔石、特殊紙まで常備されていて、設備の差は一目瞭然だった。
(これが“上位クラス”の待遇か……!)
僕、ハルトは、トーナメントでの成績を評価され、ティア、ユーニ、サナとともにBカップからDカップへと進級した。
その結果、今は4人でこのクラスに所属している。
そして、トーナメントで対戦したキール、リサと同じカップに追いつき、合計6人で一緒に授業を受ける日々が始まっていた。
* * *
「よーし、今日の授業はここまで! 午後は実技の担当教師が来るから、各自しっかり準備しておけよー!」
午前中の座学を終えた教師が、気だるそうに手を振って教室を後にする。
「……ふぅ。相変わらず授業の内容、難しいわね」
リサがため息をつきながらノートを閉じる。その横でキールが伸びをしながら笑った。
「なあに、イイ感じにやればいいさ。肩の力抜いてこーぜ?」
「……抜きすぎなのもどうかと思うけど」
リサの冷静なツッコミに、キールは「へいへい」と肩をすくめる。
さすがは、キールとリサ。元からDカップにいただけあってか、授業の姿勢に余裕が見える。
僕はというと、レベルの高い授業の内容にあまりついてこれず、話を聴いていてもちんぷんかんぷんだった。
ふと背後から聞こえてきたユーニの声に振り返った。
「ハル、はやくはやくっ! お昼食べに行こー!」
「ユーニちゃん、走ると、危ないよ」
サナがユーニの袖を掴みながら、後ろから追いかけるように教室を出ていく。
難しい授業を受けて疲れたというのに、元気そうなユーニ。サナもしれっとしていて授業に疲れた様子はなかった。
「……やれやれ。行くか」
僕も立ち上がり、ティアと目を合わせる。彼女は軽く肩をすくめて一言。
「……アンタ、あんまり授業の内容、分かってなかったでしょ。あとでノート見せてあげるわ」
「……助かります」
* * *
学園中央の食堂は、いつも通り学生たちで賑わっていた。
僕たちは6人で、窓際の少し広めのテーブルを確保し、それぞれの昼食を並べていく。
「……ハルト、あーんしてあげよっか?」
ユーニが唐揚げを箸で摘まみながら、無邪気に迫ってくる。僕は慌ててそれを断る。
「やめて。注目集まるから。ほんとに」
実際は皆が注目してるわけではないが、サナからの視線が痛い。その隣で、サナが「ユーニちゃん、からかいすぎだよ(ハルトくん、わかってるよね?)」と小声で注意していたけど、本人にまったく響いてないし、僕にはまったく別の幻聴が聴こえてきている。
一方、ティアはというと、淡々と自分の食事を進めている。その様子を見ていたことに彼女が気づき、ふいに僕に言った。
「どうしてもって言うなら……あーん、してあげてもいいわよ」
「ティア、今はそういう冗談いいからさ」
「……ッ!!」
僕が苦笑しながら答えると、フォークが飛んできた。慌てて僕はシールドを張る。
キールが口にご飯を詰めたまま言った。
「ハハッ、仲いいなお前ら」
「茶化さないの」
そんなこんなで、6人の昼食風景は、どこまでもにぎやかだった。
トーナメントのときのような張り詰めた空気はない。
でも、こうして自然に集まって、笑い合って、じゃれ合って……。
(……悪くない)
何気ない、けれど確かな、日常の一コマ。
進級したばかりのこの生活は、まだ始まったばかりだけど、僕たちの関係性はもう、ちゃんとそこにある。
* * *
午後の授業は、実技演習。
いよいよ新しい教師との出会いが控えている――という話を聞いて、僕たちはどこかソワソワしていた。
「どんな先生なんだろうな……まさかまた“鬼教官系”じゃないだろうな」
「むしろ、“破天荒系”の可能性もあるわね」
そんなことを話しながら、僕たちは魔法実習棟へと歩いていく。
その足取りは軽く、期待と少しの不安を胸に――。




