すれ違い三重奏(トリオ)!波乱の休日スタート
休日の朝。空は高く晴れわたり、風も穏やか。ハルトとの約束に、それぞれが思い思いの気持ちを胸に秘めながら、3人の少女たちは街へ向かっていた。
ティア・クラヴィアは、いつものツインテールをやめて、サイドに編み込んだフィッシュボーン風の一束を肩に流すような髪型にしていた。髪飾りもシンプルな銀のクリップで、どこか大人っぽい雰囲気を醸し出している。服装も、清楚な白のブラウスに落ち着いたグレーのロングスカートという、普段とは違う上品な装いだった。
「……別に、特別な意味があるわけじゃないから」
そう言いながらも、口元はほんのりと緩んでいる。
ユーニ・グランシェルは、いつものパンツスタイルから一転して、淡い花柄のスカートと、肩が少しだけ出るオフショルダーのシャツという軽やかで可愛らしい格好。髪もサイドに緩くまとめ、揺れるイヤリングをつけていた。
「うーん、これで変じゃないよね? ハルトくん、びっくりするかな?」
不安と期待が入り混じった笑みを浮かべながら、彼女は足早に待ち合わせ場所へ向かう。
サナ・リヴェールは、胸元に緩やかなカットが入った黒のブラウスと、ウエストを絞ったベージュのフレアスカートという、シンプルながらも胸元のラインを強調するようなコーディネート。髪はゆるく巻かれ、香り立つような色気すら感じさせた。
「……このくらい、気合い入れないとね」
柔らかく微笑みながらも、その目にはどこか緊張の色が浮かんでいる。
──だが、3人が同じ場所に集まった瞬間、空気が一変した。
「……あなたも来てたの」 「そっちこそ」 「……まさかとは思うけど」
数秒の沈黙。視線が絡み、勘の鋭い彼女たちはすぐに悟った。
(まさか、3人ともハルト(くん)に……!?)
その時──
「みんなー!お待たせー!」
のんきな声と共に現れたのは、当然のように手を振るハルトだった。
「……なんであんたがここにいるのよ」 「ハルトくん……?」 「もしかして、これって……」
状況を何も理解していない笑顔のハルトを見て、3人の視線が一斉に彼に突き刺さる。
だが──
「うわっ……今日のみんな、すっごく可愛い!」
その一言で空気がピタリと止まる。
「ティアのその髪型……すごく落ち着いてて綺麗だし」 「ユーニのスカート姿、新鮮で似合ってるよ!」 「サナの服も……なんていうか、大人っぽくてドキッとするな」
完璧なまでに刺さる褒め言葉に、3人は一瞬言葉を失う。
(な、なんで分かってるのよ……!?)
(う、嬉しい……けど、これはちょっとズルいよぉ〜)
(落ち着いて……わたし、別にハルトくんの言葉なんかで……でも、嬉しい……)
──もちろん、こんな的確な褒め言葉が、ハルトのセンスで出せるわけもなく。
【数日前・学園内の談話スペース】
「リサ先生! 僕みたいな女性経験ゼロの男になにかアドバイスをください!」
土下座するハルト。
リサ・アルディスは、いきなりの出来事にドン引きし、呆れながらため息をついた。
「あんた、自分で言ってて悲しくならないそれ。……まあ、いいけどさ」
頬杖をついて、土下座を続けるハルトを見やる。
「なんか最近みんな元気なさそうで。ちょっとでもリフレッシュできたらって」
「じゃあ、褒めときなさい。髪型、服の色、雰囲気。女の子は“気づいてもらう”のが一番嬉しいんだから」
「なるほど……!」
「あと、ちゃんと褒める順番にも気をつけなさいよ?」
「え、順番!?」
「…最初に言った子の印象が強く残るんだから。えこひいきに思われないように、全員ちゃんと平等にね」
こうして、リサの“女子攻略アドバイス講座”を受けたハルトは、今日の勘違い三重奏に、なんとか地雷を踏まずに済んだのであった。
「…………まあ、仕方ないわね」 「別に怒ってないしー」 「……ありがと、ハルトくん」
顔を見合わせた3人は、なんとなく心を落ち着けたような様子で、ハルトの後に続く。
(ありがとう……リサ先生……!)
ハルトは心の中で、リサに最大の感謝を叫んでいた──。




