貫け、信じる心と盾の覚醒!意外なる大逆転!
土煙が静かに晴れていく。
観客席から、誰かの息を呑む音が聞こえた。
崩れた土の壁の先に、ハルトが立っていた。
ボロボロの制服。息は乱れていたが、その足は確かに地を踏みしめている。
「……よかった、ハルト!」
ティアが心底安堵したように呟く。
しかしその瞬間、土煙の奥から姿を現した“もう一つ”のものが、場の空気を変えた。
「……あれ、なんだ?」
「魔法の……造形?」
そこに現れていたのは――戦場にまったく似つかわしくない、異様な魔法の結晶。
その形状は、なめらかな曲線を描き、丸みを帯びた左右対称の柔らかそうな膨らみ。
まるで、誰かの胸部をそのまま実体化したような――
おっぱい。
シールド魔法で形成された、それはまさに巨大なおっぱい型魔法防壁だった。
「……やっぱり、変態だわ」
観客席の上段、かつての試験官・マリエ・エルディアが静かに呟いた。
その一言を皮切りに、観客席がざわめき、次第に笑いと罵声の嵐へと変わっていく。
「お、おっぱい……魔法?」
「ふざけてんのかよ!でも守れてるし!?」
「斬新すぎるだろ!」
ザカリーは片手で顔を覆い、深く溜め息をつく。
ユーニは「あはは……ハルトくん、やっちゃった~」と気まずそうに笑い、
サナは自分の胸を両腕で隠すようにしながら顔を真っ赤に染めた。
ティアはと言えば……背後に冷たい風が吹いたような、怒気のこもった殺気を漂わせていた。
一方、キールは呆れを通り越してあっけに取られていたが、目の前で真剣な表情を浮かべるハルトを見て、フッと笑う。
「……なるほど、ふざけた魔法の形だが、気迫は本物ってわけか」
再び、土を裂くように両手を地面に押し当て、魔力を練り始める。
「だがな、受け止めるだけじゃ、勝てねぇってこと……思い知らせてやるよ!」
轟音とともに再び放たれる《ガイア・ランページ》!
全身全霊の一撃を込めた大地の怒りが、ハルトを目がけて唸りを上げて襲いかかる。
「今度こそ終わりだぁぁぁああ!!」
ハルトは、再び両手を突き出す。
「《マジック・バスト・フォートレス》!」
巨大な魔力の塊が、まるで滑らかな絹のように空間に展開し――
――キールの攻撃を、包み込むように受け止め、はじき返した。
「なにっ――!?」
その一撃は、まるでリフレクターのように、角度を変えてそのままキールの前へ跳ね返る。
「ちっ、間に合えッ!」
キールも反射的に土の壁を展開するが、急ごしらえのそれはあまりにも脆かった。
返された大地の奔流が、キールを真正面から襲い――
「がっ……!」
キールの体が宙を舞い、土煙を巻き上げて激しく地面に叩きつけられた。
「き、キール!」
審判が駆け寄ろうとするが、キールはゆっくりと、よろめきながら立ち上がる。
(まだ……負けたくねぇ……こんな形で……)
その瞬間。
「――えいっ!」
ハルトがキールに向かって跳躍し、展開した小型のシールドを押し付けるようにぶつける!
キールは、シールドとハルトの体重の両方を受け止めきれず、再び地面へと叩き伏せられた。
「ぐ……くっ……!」
歯を食いしばりながらも、ついに力尽き、キールは震える声で言った。
「……ギブアップだ」
審判が高らかに手を振り上げる!
「勝者――ハルトッ!」
会場は数秒の沈黙の後、まるで爆発するような大歓声に包まれた。
「ハルトくん!」「すごい……!」「あの盾、マジで最強かも!」
最初は嘲笑されていたハルトの魔法が、今や“守り”と“反撃”を兼ね備えた唯一無二の力として、会場の心を震わせていた。
(やった……僕、ちゃんと守れた……)
力を使い果たし、膝をつくハルト。その肩に、そっと手が置かれる。
「……よくやったわね、バカハルト」
振り返ると、ティアがそこにいた。怒っているようで、どこか嬉しそうで。
ハルトは照れ笑いを浮かべながら、ようやく答えた。
「うん……ただ、あの魔法の形については、黙秘します……」
ティアはふふっと笑い、答える。
「そうね。あとでしっかり、覚悟しておきなさい?」
──こうして、ハルトの激闘の末、彼らのチームは見事に勝利を手にした。




