絶対絶命!守りきれ、信念の盾!
地面が裂け、空気が震える。
キール=バリオットの拳が振るわれるたび、地面から咆哮を上げるように土塊が噴き上がり、ハルトに襲いかかっていた。
「ぐっ……っ!! シールド・アームッ!」
腕に纏わせた小型の盾を瞬時に生成し、迫る岩槍を片っ端から弾く。
しかし、押し返すどころか守るのがやっとだった。
(ダメだ……動きの予測はできているのに、対応が追いつかない。速度も威力も桁違いだ!)
観客席は静まり返っていた。
先ほどまでの歓声が嘘のように、誰もが戦いの行方を見守っていた。
「……まだかよ、もう限界だろ」
キールが呆れたように言い、拳を下ろす。
「残念だ。お前の魔法、防御しかできねぇだろ」
(……そう、僕の魔法は“守るだけ”。攻撃する力も、派手さもない。でも――)
頭に浮かんだのは、あの銀縁の眼鏡の男、ザカリーの姿だった。
『魔法には“イメージ”が大事だ。
俺は“絶対に仲間を死なせない”って思いで、シールド魔法を鍛えてきた』
(……僕も。僕だって、“守りたい”ものがある)
ティアの怒鳴るような叱咤。
ユーニの底抜けの元気と、サナの繊細な勇気。
ザカリーの厳しくも的確な導き。
――そして、みんなが、僕を信じてくれていた。
「……僕の盾は、“みんなの想い”でできてるんだ……!」
歯を食いしばり、もう一度構える。
キールの目が鋭く光った。
「おもしれぇ。だったらこれで、終わらせてやるよ」
地面に両掌を突き立てる。魔力が一気に収束し、空気がビリビリと震えだした。
「見せてやるよ、Dカップ最強の一撃をなァッ! 《ガイア・ランページ》!」
大地がうねり、巨大な腕のような土柱が数本、ハルトを中心に隆起していく。
(――やばい! 今までのとは格が違う!)
観客席がざわつき始めた。
「ハルトくん、下がって!」
「降参していいのよ、あんなの受けたら……!」
ティアとサナの悲痛な叫びが届く。
だが、ハルトは一歩も引かない。
(……やめるもんか。みんなが繋いできた勝利を、僕が捨てるわけにはいかない)
「……僕が、“最後の盾”になるんだ!」
力を込めて、手を前に突き出す。
「《シールド・フォートレス》ッ!!」
何枚ものシールドを展開し、それらが重なり合い、一つの巨大な壁へと変貌していく。
だが――
「足りねぇんだよ、それじゃ……吹き飛べッ!!」
キールの大技が、怒涛の勢いで襲いかかる!
ハルトのシールドに、衝撃の塊がぶつかった。
ゴオォォォォオオオオンッッ!!!
大地が軋み、空が揺れ、衝撃波が四方八方に広がっていく。
その瞬間。
(ああ、もう……ダメかもしれない……)
意識の奥底で、走馬灯のように思い出がよぎる。
寮で交わした冗談。訓練での悔しさ。はじめて自分の魔法が人の役に立った瞬間――、そしてこの日に向けた1週間の努力も。
(……いや)
光が差す。イメージが脳内に拡がる。
“すべてを包み込む、柔らかく、強靭な盾”
“守るためじゃない、生きるための壁”
(これだ……!)
その瞬間、ハルトの足元に展開していたシールドが、まるで生き物のように形を変え、嵐のような土の波を受け止めた。
「!!?」
観客がどよめいた。
“何かが”、ハルトの前に出現していた。
それは、かつてザカリーが見せた“応用型の盾”とは似つかわない異様なものだった。
巨大で、二つの山のような曲面を描き、攻撃のエネルギーをすべて吸収していく、まさしく“防御の理想形”だった。
キールの大技が、そのすべての威力が包みこまれていくようだった。
ハルトの姿は、土煙に包まれ、誰の目にも映っていなかった。
「……ハルト!!」
ティアが叫ぶ。
果たして、彼は大地の猛威を――耐えきったのか。




